密室外交と情報開示1

手みやげなしに「軍事同盟だけ強化しましょう」と言っても、メリットがなければアメリカが乗って来ないとすれば、安倍政権は尖閣諸島防衛協力の見返りに何を、どの程度アメリカに売り渡すつもりで言っているのでしょうか。
安保条約を片務関係から相互条約に変える・・米軍防衛もする方向に変える必要があるのは当然と思われます。
これ以上に日米相互防衛の範囲を台湾、フィリッピン〜東南アジア全域(シーレーン防衛)に広げる・・この当たりでも日本が米軍に協力・補完するのは、対中国関係でも戦力強化訓練になるし、将来アメリカの防衛がそれほど当てにならなくなった場合、ある程度自力防衛出来る準備になるので日本にもメリットです。
(ただし憲法9条との関係では別の検討課題であることは当然です)
重要なのはTPP(具体的内容が何故か賛否双方からあまり開示されません)その他経済支配関係の受入れですが、安倍政権は密室取引で受入れるのではなく、これをきっちり国民に開示する必要があります。
ただし、元旦から書き始めていて横に行っていますので後に書きますが、かなりの部分で解放に同意しても日本は最先端の国ですから、欧米勢に席巻されることは滅多にありません。
誰でも知っている例で言えば、仏の世界大手カルフールが日本上陸しても日本市場ではまるで歯が立たなかった例で直ぐに分るでしょう。
(牛肉でもサクランボでもアメリカからのものは最低品としてしか扱われていません)
韓国が外資の支配を受けているのは資本蓄積がマイナスだったから起きたことですが、日本の場合世界一の純債権国・資本蓄積が厚いので心配がありません。
いつも書きますが、日本社会は何周回も世界の先を行っているのですから相互解放は日本に有利です。
ですから相互市場開放で日本が少し多めに譲っても日本植民地化の始まりではなく、実は日本に有利です。
何を譲って何を守るかを国民が知ってこそ、そのどちら(同盟強化か否か)をとるかの判断を国民が出来ます。
この取引を密室で行う・・国民判断を仰ぐのを回避する(参院選挙後に行う)のは、国民の意思によらない取引をしたいからでしょうから、結果的に国民利益に反することになります。
(国民の利益になる自信があれば、選挙前に国民に手土産・取引内容を開示すれば良いでしょう)
アメリカの要求が日本の弱みに付けこんだ不当なものかどうかではなく、不当であってもそれ以上の国益を守れれば良いし、「そこまで要求されるなら尖閣諸島防衛してくれなくて結構」と突き放す判断の前提を国民に明らかにすべきです。
不当な要求でもトヨタはアメリカで商売するために、解決金を支払っていることを3日のコラムで紹介しました。
対中国関係のために同盟を強化するならば、アメリカの要求を飲む場合の日本の不利益と尖閣諸島を死守する国益とどちらが大きいかの判断は国民がするべきであって密室取引にする必要はありません。
右翼のようにナショナリズムだけ煽って、「どんな不利な取引でも(これ闇に隠して)尖閣諸島さえ守れれば良い」という雰囲気を作り出すのではアメリカの思う壷にはまります。
湾岸戦争時の約1兆円だったかの冥加金の支払や・・トヨタのようにインチキな不具合と判明しているのに解決金を払わざるを得ない・・不当賠償金支払決断ならば1回切りのお金の損害で済みます。
国債をドンドン外国に買って貰い、企業支配まで受入れるお土産では、韓国のように半永久的に経済植民地支配を受けるようになります。
企業のみ栄えて(その利益は外国資本家・・外国流出)国民は貧民化する・・このようなことと引き換えに尖閣諸島防衛を口先だけ言ってもらうのでは、日本にとってどう言う価値があるのか分らない尖閣諸島を死守する必要があるのか?となります。
離島1つの防衛よりは、(年末に書いたようにイザ戦時になると尖閣諸島防衛は放棄することさえあり得ます)民族全体で植民地支配を受けるかどうかの方が重要でしょう。
辺境の防衛は本土防衛のために意味があるのであって、本土国民が離島防衛約束と引き換えにアメリカに隷属するしかないのでは本末転倒です。
口先表明してもらっても・・数年〜10数年先に危機が具体化したときに本当に防衛してくれるかは、そのときの世界情勢次第ですから、今からの口約束は大した約束にはなりません・・・。
(これまで60年以上も広大な基地を提供し、巨額防衛分担金を払って来ていても、今回具体的な危機が起きると口先だけでも言ってもらうのに何か手みやげがいるのが現実です)
尖閣諸島防衛の口約束と引き換えに何をアメリカに提供(先履行)するのかを明確に国民に提示すべきです。
湾岸戦争協力金のように現金支払だけならば、緊急時に本当に戦争に参加してもらうための追加支払もまた出来ますが、企業支配を許した後では、もう追加提供するものがないので、もっと酷い追加要求・・非正規雇用の比率増加・環境規制の緩和など医薬品であれ食品であれ、「全てアメリカ基準どおりであれば何でも国内パスするようにしろ」(全ての分野で国内検査禁止)と言う内政干渉そのものが待っているでしょう。
言い換えれば企業支配を受入れない・・民族資本である限り古くは東芝、最近ではトヨタのように時々不当な巨額資金の支出を求められる危険がありますが、その程度で口先防衛してくれるかどうかです。
韓国のように植民地支配を受け入れてしまえば、アメリカ内国企業並み恩恵・・時々巨額資金の支払を求められることは今後なくなるでしょう。
アメリカは中国の圧力を利用して(日本が弱ったこのチャンスに)今回は一時金ではなく国債を含めた金融支配・恒久的企業支配を求めて来ると思われます。
安倍政権が、外見上の日米蜜月を作り出す自己の得点稼ぎのためにこっそりと日本の一番守らねばならない部分をアメリカに売り渡してしまわないかと心配しています。
歴史上対外的に勇ましいことを言ったりやったりしている政治家ほど、これを実現するために裏で国の大事な部分を売ってきたのではないでしょうか?
一方的な戦勝による軍事占領であれ、何であれ一見大きな成果獲得には、必ずそれに伴うマイナス(戦費負担・傷病兵の増加・相手国に恨まれるなど後世へのマイナスははかりしれません)がつきものです。
民事交渉でも同様で、ヤクザのようにやらずぶったくりなどあり得ないのですから、交渉妥結には必ず正当な対価(以上)が必要です。
多めに譲ったように見えても上記のとおり日本社会は進んでいるので実際に(何周回遅れの後進国)アメリカが日本の懐に手を突っ込めることは殆どありませんから、右翼・言論人が大げさに騒ぐほどのことは有りません。
右翼・言論人の主張の多くは日本が大幅に遅れを取っていること・劣等意識を前提にした意見が多いことになります。
(この辺は中韓の愛国的発言も潜在意識として自国の遅れ・・劣等意識の裏返しになっているのと同じです)

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC