国債残高の危機水準6(国際収支の現状)

  個人金融資産とは別に対外純債権額という枠組がありますので、これを基準にする考え方もあります。
対外純債権・・貿易・サービス収支が仮に赤字になっても、経常収支黒字が続いている限り、そもそも国債残高がいくらであろうとも国内資金の移動でしかない以上何ら問題がないことを、April 9, 2012「国際収支4(赤字を何年続けられるか)で書きました。
上記ブログで書いたように貿易赤字且つ経常収支赤字になってから、対外純債権を何年で食いつぶすかの議論が本来の国債発行限度論となります。
年間いくらの赤字額で何年持ちこたえられるかを知るには先ず対外純債権がいくらかが重要です。
対外純債権額とは結局のところ、過去の貿易黒字の累積(元本合計)プラスその黒字で投資した収益の積み増し・・元利合計と言うことでしょうか?
そうとすれば、対外純債権額は、過去の貿易収支黒字の総和=対外投資元金であり、それに長期間の投資収益分をプラスしたものになります。
(ただしその間に円高になったりしますので、ドル表示の合計額でないと円表示の歴年黒字合計をしても分りません)
元金分は資本収支赤字の合計と言えないこともないでしょうが、実際には、貿易黒字が続いた国では、黒字を大きくし過ぎないために海外不動産を購入したり、個人でハワイその他に別荘を買っているなどの外、金地金や宝飾品の輸入を増やしたり貿易摩擦を緩めるために前倒しで飛行機を買ったりするなど、一定割合の膨らみ(イザとなれば、身の回りで売れるものを多く持っている)があるのが普通です。
当たり前のことですが、個人金融資産には持ち家や高級外車やヘリコプター、貴金属などの金融資産以外の高額資産を含めません・・。
戦後の食糧難の時代に資産家は高額な着物その他を換金しては食料品と交換したと伝えられているように、イザとなれば高額な絵画・美術品その他の資産は大きな力を発揮します。
債務整理等で相談に来る人たちはその逆で、修理や買い替えねばならないものを限度ギリギリまで先延ばししているので、数字上の債務より負けが込んでいる人が殆どです。
健康上も無理して働いていることが多く病気になり易い・・家具類は直ぐに壊れることなどを予定して生活設計を助言する必要があるのと似ています。
古いデータしか分りませんが、2012年になった今のところ、私の直感では約250兆円程度ではないかとおもわれます。
昨年は40年ぶりの貿易・サービス収支赤字と言っても日銀速報によれば-3兆2,496億円
ですから、経常収支黒字を無視し、その間の収益収入(4%利回りでも年に10兆円あります)を無視しても80年も赤字を続けられる勘定です。
まして日銀速報によれば、所得収支は140,296億円もの黒字だったようですから、移転収支赤字約1兆円を足してもまだまだトータルとして経常収支の黒字の方が約10兆円も大きい状態です。
ですから国債発行限度問題は経常収支赤字に転落してから、赤字の規模等を含めて議論すべきであって今から議論しておく必要は全くありません。
以下はhttp://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/preliminary/pg2011cy.htm 日銀速報からの引用です。
グラフはコピー出来ましたが、表の方はコピー出来ないので下記のpdfにリンクしていただければ、上記の細かい数字が表になっています。

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