税と国債の違い1

仮に、最後に国債がデフォルトして一から出直しとなった場合、余裕資金で投資していた人が損するだけですからお金のない人から無理矢理にとった税が無駄遣いされるのとは違い「なかったことにするか・・」という諦めがつき易いでしょう。
アメリカで発達している寄付文化も同じで、ともかく金のある人が共同体運営資金を出す点は同じです。
寄付の場合、返してもらう気持ちもない点が大きく違うようですが、元々国債保持者は、満期が来てもその償還金をそっくり使うことは滅多にありません。
倒産とか破綻状況・あるいは自宅建築など特別出費以外は再購入の繰り返し・・郵貯定期の場合で言えば、更新して行くのが圧倒的多数ですから、満期が来て換金してタンス預金するよりは別の社債等を買う・あるいは預貯金するかしかないのが普通です。
寄付の場合、困ったときに誰か自分に寄付して助けてくれる保障がないのですが、国債の場合困ればいつでも中途換金売り出来るので、預貯金や国債は一種の保険のような役割があることになります。
社会保障・保険の充実と個人預貯金率は一応の関連性があります。
ただし、12/28/08「中国の高貯蓄率と高金利(社会保障制度の関連)」で書きましたが、これは中間層にのみ当てはまる関連性でしょう。
自宅購入資金・子供の大学入学金等に使うためあるいは事業資金の穴埋めのために預貯金や国債を解約しっぱなしにすることはあるでしょうが、日本の経済状況が一定であれば一定割合での新規参入成功者(貯蓄を始める人)がいるので国債保有者はトータルでは変わらないことになります。
結局は国内消化出来る国債発行残高は、経済が上向き拡張か縮小か現状維持かによるので、銀行等の預金残高の数値に経済的に似ています。
国内銀行の預金、郵貯定期残高が増えたことをもって、危機だと騒ぐ人はいないでしょう。
超低金利でも預金する人がいて、預金である以上はいつでも払い戻しに応じなければならないとしても、その代わり誰かが代わって預金に来るので銀行はいつも預金残高全部を金庫に保有している必要がありません。
だからこそ預金を元手にその数倍〜10倍単位の貸し出し(国際的信用創造機能は約50倍とも言われています)を出来るし、逆に信用不安が起きて一斉に預金払い戻し請求が殺到するとパンクするのです。
この辺の原理・信用創造機能については、10/18/08「銀行の融資機能7(衰退)」前後のコラムで連載しました。
国全体の経済状況が下降縮小気味である場合、国債購入層・これを支える預金層から脱落して行く人の方が多いでしょうから、(国債の国内消化率が下がる)国債発行残高の信用力は残高の絶対値よりはその辺の違いによる方が大きいでしょう。
と言うことは、日本の経済状態さえ良ければ・・・国際収支の黒字が続く限り、その範囲内で国債残高数量が増えて行っても全く問題になりません。
国民にと
って儲けた分だけ一種の預貯金の一種として国債が増えて行く関係ではないでしょうか?
投融資先の選別を民間がやるべきか否かは別として、長期間の国際収支黒字の結果国内に使い切れない・余っている資金が一杯あることは同じですから、タンス預金で眠らせておくよりは、政府の信用を利用して安い金利でドンドン資金を集めて海外進出資金投資ファンドを組成して投融資して行き、余剰資金を有効利用して行くこと自体は悪いことではありません。
4月27日の日経朝刊17ページの「国庫短期証券の応札高水準」の欄では、資金余剰感が強く行き場を失った資金が短期証券応札に集まっていると紹介されています。
日銀の買い入れ資金5兆円増額発表が予定されているが、市中には資金がだぶついていて、結局日銀当座預金残高(4月以降37〜39兆円台・大量緩和時代を上回る水準)がその分だけ増えるような見通しが書かれていました。
民間で有効利用出来ないから政府が有効(か無駄遣いかは意見が分かれるでしょうが・・)利用しているのが日本経済の現状と言うべきでしょうか?
10/22/08「郵貯残高と信用創造機能」その他で郵貯は政府の借金の一種だと書いたことがありますが、郵貯残高を問題にせずに国債残高だけを心配して議論するのはおかしなものです。
(預貯金が大きくなれば、個人金融資産が大きいと逆に自慢している人が普通です・・預金の代わりに国債を持つと危機だと騒ぐのはおかしいでしょう)

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