日銀国債引き受け5

個人金融資産が減少するだけではなく国債発行の増加(赤字財政の拡大)が進むと資金不足がダブルで拡大して行きます。
4月3日まで書いたように小刻み融資で足りるのその結果増えた既発行債がまた次の担保になるので、ロンバート型融資でさえ賄えなくなるのは何十〜何百年先でしょうが、そのときでも日銀の直接引き受けができます。
日銀直接引き受けの場合、無担保で出来るので際限ないところがロバート方式とは違うでしょうが、March 28, 2012「日銀の国債引き受けとインフレ論1」で財政法を紹介したときに書きましたが、国会議決には担保の範囲内などという付帯条件がついている筈ですから、今のところ結果としてロンバート型と効果が似たようなものかも知れません。
銀行が借りるのは借金ですから何らかの担保が要りますが、日銀の紙幣発行は借金ではないので担保の引き当てが本質的要件ではありません。
付帯条件があってもそれは日銀の健全性維持のための条件でしかないので、国会議決はその都度必要に応じて変えられるので担保不足に関してはどうにでもなるでしょう。
もしも個人金融資産残高よりも国債残高が大きくなって、海外勢に買って貰う必要があるとしても、(個人金融資産残高が上限になるかどうかについては別に書きます)海外勢は自国の金利より低いのでは買いません。
そこで金利を上げる必要が出て来て行き詰まるのではないかと多く・・主に学者やマスコミが心配しているのですが、ゼロ金利近辺での国債の買い手がつかないのは今でも同じです。
苦しくなってから無理して海外勢に買ってもらわなくとも(むしろ買ってもらわない方が良いでしょう・・)日銀引き受け・円紙幣を増刷して返済すれば足ります。
そんなことを繰り返して行って大丈夫か心配したくなるのが人情ですが、例えば現在の2〜3倍〜10倍の紙幣量になればどうなるでしょうか?
これまで書いているように、日本では紙幣が大量に出回っても国内物価が直ぐには上がらずに先ず円キャリー取引によって円を変換したドルやユーロ・あるいはポンド・人民元紙幣等が世界中に広がって行きます。
何しろ今の日本は世界最低金利ですから、日本が発行した大量紙幣は直ぐに借り手がついて、これを海外で両替が進む仕組みです。
この結果最貧国等への資金流入が進み、その結果産業投資が進んでその内購買力がついて次第に最貧国が新興国となって物価が上がって行きますが、その効果が日本に及ぶまでには海の水を暖めているようなものでかなり時間がかかります。
例えば回り回って中国の物価=人件費が今の2倍になっても、まだ日本の5分の1にしかなりません。
中国の物価が今の10倍になって日本と同じになればその時点で漸く中国からの低価格品の流入がなくなって日本のデフレが収まる程度でしかなく、その段階でもまだインフレにはなりません。
大量垂れ流しが続けば円の価値がその内に下がることは間違いないですが、円キャリー取引による流出額が経常収支黒字と同額であれば収支トントンで円相場は均衡状態ですし、黒字分よりも多めに垂れ流す方が少しばかり円が下がって日本経済にはメリットの方が大きくなります。
円キャリー取引の盛んなときには貿易黒字分以上の円の流出があったので一時的に円が下がっていて日本は貿易上有利な状態でした。
これまで 05/26/07「キャピタルゲインの時代17(国際収支表2)」その他で何回も国際収支表を紹介していますが、リーマンショック前には貿易黒字が約10兆、所得収支黒字が約10兆に達していました。
国際的な決済資金に必要な資金・・例えば決済資金として常時1000億円前後が動いているときに流動している資金の1割多くの円を経常収支黒字以上に流出させれば、理論的には1割円が下がることになります。
あるいは経常収支黒字がなくなって収支トントンから赤字に転落すると、円キャリー取引がなくとも赤字流出分だけそっくり円安要因になります。
仮に円が下がることになっても時間をかけて下がる場合、輸入物価が上がるので対外競争力が回復してまた貿易黒字に戻ってしまいます。
その結果直ぐに円安傾向が是正されます。
ここ3週間前後の円安傾向(と言っても82〜83円台になった程度です)だけで、株式相場の反転(4月1日ころの日経新聞によれば19%近くも上がっています)が著しいのを見れば分ります。
円安の結果黒字になると再び経常収支黒字分以上に円を垂れ流さないと円高になってしまうので、円の紙幣流通量を更に増やして円キャリーで持ち出してもらう必要の繰り返しとなり、この範囲である限り円紙幣発行が際限なく増えても急暴落することはありません。
その上に日本は対外純債権国なので仮に円が下がれば、対外債券評価が逆に上がって儲けられます。
債務国のアメリカや韓国のウオン安とは効果が逆になるので、外国の例を引いても始まりません。
円安になれば、日本の輸出が増えるので中国や韓国が困りアメリカも困る・・世界中が困るので、陰に陽にマスコミを通じて日本は大変なことになると言わされている状態です。
マスコミは殆どアメリカの言いなり・・アメリカの代弁者と思っていれば正解でしょう。

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