構造変化と補助金1(過疎地1)

個人レベルでは、飽くまで衰退して行く地元に残っている人の中にも農漁業に固執する人もいれば、中央からの補助金期待の土木建設業その他に転進する人もいたでしょう。
地元に残っている人は郷土愛の固まりかと誤解しがちですが、(震災報道はそう言うイメージです)中央からの地方交付金や各種補助金は、個々人に配られるのではなく地方公共団体経由ですので、この補助金に群がって(いるつもりはないでしょうが・・)地元に生き残る人も多くいました。
補助金目当てに生き残っていると言えば、土木建設業ばかり連想しますが、実際には多くの教員、保育士、医師関連職種、地方公務員、個人商店も実は同じ人たちです。
過疎地の医師は元は地元で代々医師をしていた人でしょうが、今では中央から派遣されて義務感で赴任してる人が多いので、補助金の恩恵に浴していないように見えます。
過疎地の医療保険は独立採算であればとっくに破綻している筈ですから、地元経済に限定すれば医療費支払能力が大幅に縮小している筈です。
全国の平準化した保険料と国庫負担金が中央から回って来るから、過疎地の医療財政は成り立っているし、派遣される医師も存在・高給が支給されるのです。
我々弁護士需要でも、日弁連補助金で過疎地に法律事務所を設置したり、国庫金による法テラススタッフ弁護士が、過疎地の法律需要に対応していますが、地元の支払能力のみであれば、これらの設備・事務員等の維持が出来ません。
そもそも補助金とは何かですが、地元の経済水準による支払能力が低すぎると、都市でその何倍も高額収入のある職種は寄り付きませんので、(例えば芸術家やタレントは一日1〜数万円で公演してくれと言われても応じられないでしょう)都会に出かけて行くしか近代文明の恩恵に浴せません。
教育者に来てもらったり芸能人に公演してもらったり、不採算の医療その他の専門家に来てもらうためには、何らかの補助金でその一部を負担し、(医師や教師は相場の給与で赴任するみたいですが・・)残りは弁護士等の公徳心による減額(採算割れ価格)で成り立っています。
ちなみに弁護士にとっては、過疎地の法律相談に行ってると、事務所維持費が出ないので、事務所経費負担がいらないイソ弁等若手が分担している状態です。
東北の震災被害の法律相談もそうですが、当事者がその費用負担能力がないので、日弁連が担当者に交通費の外に一日3〜4万円支給して現地相談を行っているのですが、これでは事務所家賃・事務員の給与その他経費にすらならないので、赤字で協力している関係です。
(日弁連はどこからも援助してもらってないので、弁護士から集めた会費で相談に行く人に支給しています)
土木工事の場合も地元経済水準で払える限度で土木工事をしようとする場合・・・仮に地域の産業として江戸時代同様の農漁業しかない場合を例にすると、その生産力だけでは江戸時代まであった程度の木造の橋や砂利道しか造れないし、(砂利だって買って来る資金がないでしょう)勿論村役場も木造平屋建てがやっとですし、学校も幼稚園も病院もその程度のものしか造れない筈です。

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