国際競争力低下と内需拡大3

我が国のように過労死するほど忙しかった状態(「24時間戦えますか」のキャッチフレーズが風靡した地代)から普通の忙しさに戻った国や企業・家計では、内需拡大・支出増になる政策は、国民が頑張って稼いだ貿易黒字の恩恵を受けられるようになって目出たいことです。
その外に、あまりにも超過しすぎていた黒字幅を縮小させて国際協調(海外の失業を減らす)の意味でも合理的でした。
(日本一人勝ちで世界中が赤字では国際経済上無理が来るので、巨額黒字縮小が世界の主要テーマになっていました)
この失業の輸出に関する国際非難があって、日本は以後国内工場新増設出来ず海外工場展開するより外なくなったことも繰り返しこのコラムで書いてきました。
貿易黒字を増やすのは限界に来たので、国際非難をかわすために貿易黒字を現状のままにして・・国内生産を現状維持=国内成長率は内需拡大分しか上昇しない政策に切り替えて来ました。
この政策により、貿易黒字=輸出用生産が現状維持になった・・国内成長が微増しかしなくなったのは計画通りの成果が出ている・大成功だったと言えます。
その代わり海外展開(国内工場新設に代えて海外新設)が加速したので所得収支(海外工場の儲けによる送金)が次第に増えて、リーマンショック直前には貿易黒字を僅かに超過するようになっていたのです。
(リーマンショック前には貿易黒字もバブル前に比べて減っていませんでした・・あまり増やさないようにしていただけです)
成長率の鈍化(国内生産施設増化の停滞)を見て「もう日本はもう駄目だ」というマスコミの論調・・失なわれた20年の宣伝は日本のしたたかな変身の意味を理解しない意見です。
日本の場合、10月19日に紹介したように2010年度でも17兆円台の黒字が続いているのですからまだまだこの黒字を使って国内生活水準の底上げ・内需拡大を続けるのは合理的でしょう。
(リーマンショック前は約20兆円前後の黒字でした)
17兆円台と言えば、どのくらいの規模か分り難いと思いますが、05/26/07「キャピタルゲインの時代17(国際収支表2)」で紹介した国際収支表をクリックして戴ければ分りますが、昭和60年の黒字が11兆9000億円、62年が12兆円余り、63年が10兆1000億円余り平成元年が8兆円あまりでしたから、リーマンショック後でさえバブル前の日本の最好調期・・景気の超良かった頃の黒字より1、7倍近くに増えていることが分ります。
対外的には打たれないように、「駄目だ駄目だ」といいながらこっそり儲けていたのです。
経済実務界ではこれを知っているので、マスコミがどう言おうとも、円高基調になっています。
日本と違ってヒマの程度がさらに進んで赤字になった国・企業や家計では、内需振興よりは過去の黒字蓄積のあるうちに体勢を立て直すための投資を中心にして行くべきですし、それでも劣勢を挽回出来ずに蓄積がなくなって来たら、自己啓発の外にヒマになった時間があってもあまりお金を使わない近くの散歩、自宅の草むしり程度にスリム化して生きて行くのが合理的です。
過去の蓄積・貯蓄がなくなった後も内需振興・・自宅のリフォーム・旅行など出費を続けていると生活水準は上がりますが、その分出費が以前より増えますので、家計が破綻してしまいます。
国家も同じで、貯蓄のなくなった対外純債務国になれば緊縮政策しかないのが当然のことですが、政治の場合、苦しいときには逆に人気取りのためにバラまき・内需拡大策に傾斜しがちで赤字・経済窮乏化がいよいよ進んでしまいます。
長期的トレンドとして赤字傾向の国や家計・・結局は、技術・品質が悪いから競争に負けて仕事が少なくなったときに、競争力強化・回復のための投資ではなく、不景気を誤摩化すために(見た目だけ国民が忙しく働けるようにするのは、)もっと支出を増やす・コスト増になってしまう内需拡大策を採用するのは論理的に無理があります。

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