都市住民内格差6

地方での雇用維持に関しては、都市と地方の格差是正のためには地方に職場を作るしかないことから、我が国では長年かけて地方に研究機関や大企業を誘致し、これを固定資産税の免除等各種税優遇などで助成して来ましたが、関係者は腰掛け的に勤務(単身赴任)するだけであって、地方に安定して住む魅力・原動力にはなりません。
これらがいくら進出しても周辺底辺労働以外には、元々の地方住民の雇用には、あまり効果がないのです。
研究機関・大学やその土地の工場に勤める人自身にとってはその近くに住めば通勤に便利ですが、自分の子供が世襲でそこの研究者や大学教授に就職出来たり、あるいはその大学に入学し、その企業に就職出来るとは限らないので、子供の就職や進学に困ってしまう・・地方には多様な選択肢がないので困ってしまうからです。
最近では奥さんの勤め先としても困る事例が増えてきます。
だからと言って、世襲制の復活を求めるのは無理です。
結局多様な進路のある大都会に住まないと奥さんの再就職や子供の進学・就職等の選択段階で困ってしまうので、結果的にJanuary 2011「都市住民内格差5」まで書いたように地方出身者は居住費その他がかさむことになってしまうので、定住を望まない・・・都内からの単身赴任が普通になっています。
種子島にロケットの打ち上げ基地があるからと言って、ロケット研究者関係者が妻帯で定住する人がいない筈です。
公的委員会で一緒になる女性大学教授で妻子が都内に残っていて、(千葉の場合都内から通えるので)夫だけが筑波に単身赴任していると言う人もいます。
昭和40年代に多くの大学が都心から多摩地区に移転しましたが、不便なだけでメリットが少ないので今になって都心回帰が模索され始めています。 
都心にあれば大学教員が他大学授業の掛け持ちに便利ですし、各種政府委員あるいはマスコミに出るなどいろんな面で便利ですが、八王子に行ってしまうと授業のある日は都内の他の用を足せない不便があって有能な教員ほど困ってしまうのです。
勿論学生もアルバイトその他何かと不便です。
これからは熱効率その他いろんな面で考えて都市集住の時代であるべき・・むしろ促進すべきです。
2月3日の日経夕刊の3面では、インターネットの速度では韓国が世界最速であると出ていましたが、その原因として韓国ではソウルに人口が集中していて高速化に有利であることが上げられていました。
ネット時代には分散して仕事ができるとマスコミが宣伝しますが、そんなことはありません。
都市集中の自然の動きに逆行するために税を使って僻地に研究所を作っても砂に水を撒いているようなもので定住効果が薄いので、地方から都会への移動・・自然の流れを受け入れた上でこの過渡期に地方から都会に移住する人たちへの手当・・都市内格差是正に税を使う方が合理的です。
地域格差よりも出身地・階層による格差がものすごく大きくなりつつある点では、新たな身分社会・人種差別に似た問題になっていることは日本でも中国でも同じです。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC