都市住民内格差3

少子化が進んだ現在では子供が2人もいれば立派な方ですが、都市住民2〜3世で子供・兄弟が(少子化の結果)男女二人以下の場合、マイホームを保有している親が亡くなれば双方(配偶者)の親の家(遺産)をそれぞれ2分の1ずつ相続出来るので、自分で自宅をゼロから購入する必要がありません。
長寿化で親は長生きですので親の遺産相続は当面期待出来ないとしても、子供が30代頃になると親の親(祖父母)がちょうど亡くなる時期に来ているので、都市中心部の遺産を親が相続して処分してお金のはいった(まとまった退職金が入り年金もあって金の使い道のない)親からマイホーム資金を出して貰えるなどで、結果的に都市住民3世は得をしています。
これをスムースにするために、11/07/03「相続税法 5 (相続時精算課税適用者とは)」で解説したことがありますが、ここ10年ばかり前から生前贈与税の軽減政策が繰り返されて(今年度予算案でもこの点の拡充が報道されて)いるのです。
地方出身者に限らず都市住民2〜3世の中でも親・祖父母がマイホームその他まとまった資産を持っている(こういう親は年金も潤沢です)場合と、代々アパート(借家)住まいかによる格差が生じつつあります。
ただし、一定以上の安定就職の場合、今でも結婚すれば親の家があってもマンションを買ったり借りたりして自立するのが普通ですので、都市住民2〜3世と地方出身者とでは大した格差になりません。
親がしっかりしていれば親からマイホーム取得時に相当額の援助を受けられるのは、地方出身者でも同じと言えないこともありませんが、比率で言えば地方の方が資金力の高い人が少ない筈です。
例えば自営業者を見れば分りますが、50年前に同じ規模の年商の商店や開業医・薬局・飲食業・建築業者等がいたとした場合、人口がじりじりと減少して行って半分になって行った地域に立地していた業者と人口が2倍になった地域の業者とでは、(個人差があるとしても大方の傾向の話です)50年後の盛衰が明らかです。
サラリーマンでも同じで、成功した大企業ほど本社を大都市に立地する傾向があるので、本社部門勤務者が大都市に住んでいる率が高くなります。
このように、これからも人口が集まってくる首都圏と人口が減って行く一方の地方都市住民とでは、親の資力にも原則として差があることになります。
とは言え、弁護士や医師のような特殊職業(これもこれから怪しいですが・・・)の場合、親からマイホーム取得資金の援助などあってもなくても、自分自身の収入が多いので結果的に殆ど関係がありません。
このように若者自身の所得が高ければ親の資力差は問題が少ないのですが、所得が低くなるに連れて親から援助の有無による格差が大きくなって来ますので、エンゲル係数の高い底辺労働・非正規雇用者が増えてくると親の資力差が放置出来ない社会不正義になって来ます。
高度成長期にも集団就職で地方から(今よりも)大量に出て来ていたのですが、高度成長期には安定職業に就く人が多く、結果的に自前で何とかマイホームを入手出来る人が多かった(・・これに対応するために昭和30年代末から住宅ローンが発達しましたし、郊外住宅地開発が進みました)ので、その格差は乗り越え可能だったので社会問題にする必要がなかったとも言えます。
その上、当時は都市住民2〜3世も兄弟が多い時代で、親が長寿化し始めたときでしたから、結婚後も親の家に同居する人は皆無に近く、自分で独立してアパート等に住み最後はマイホームを入手する必要があった点は地方出身者と同じでした。
まして子供が4〜5人の時代でしたので親からの一人当たり援助も知れていました。
戦中戦後は食料不足時代の結果、戦争で良い思いをしたのは農民だけで、しかも戦後の農地解放で生産性や収入も増えて引き続き急激に豊かになった時代でした。
私の知っている限りでは小さな家を大きな家に立て替えたり新宅と言って次男用に立派な家を建てるうちもあって、(建築ラッシュでした)地方が豊かな時代でもあったのに対して、東京などは焼け野が原でゼロからの出発だったので、むしろ地方が豊か時代でした。
都市では、高度成長期に入っても漸くバラックを建て替えるところで、まだまだ蓄積した経済力は農家の方が大きい時代でした。
私は池袋で高校・大学と過ごしましたが、高校時代の友人の多くは池袋近辺の生家から出て、郊外にマイホームを得て転出して行きましたので通っていた高校周辺にそのまま住んでいる人はごく少数です。
何時の時代・・高度成長期にも日雇い労務者等不安定底辺労働者はいたことはいたのですが、低成長期に入ってしかも人余りで非正規雇用・・不安定職業に就く人の比率が上がって来たことで、放置出来ない社会問題になって来たと言えます。

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