正規・非正規の分類と社会保障

非正規雇用が世界的に急激に広がった原因・・社会の需要とこれによって引き起こされた社会矛盾の解決・・労働の細分化による人間性喪失・・様々な懸案解決に必要な線引き・基準として何が有用か、待遇改善を急ぐべき基準で考えれば、正規と非正規の区別基準は自ずから明らかです。
私の法的アプローチでは、期間が来ても更新が原則か否か・終身的かどうかで社会の基本システムに違いが出るのであって、1週間とか1ヶ月の労働時間だけで区別して保護すべきかどうかを決めるのは、ほとんど意味がないように思えます。
仮に2〜3ヶ月間でも期間満了で自動的に雇用が終わる関係では、労働者の生活が安定しないことは同じですし、企業もすぐにやめていく予定の労働者の技能アップや健康管理に関心が低くなるし同僚間でも親しくする気持ちが起きにくいでしょう。
非正規雇用増加が社会問題になっている理由は、雇用条件劣悪・技術訓練のチャンスがない結果最低収入から抜け出せない・・年齢上昇しても収入が増えない結果、(年齢に比例して昇級する年功性社会を前提にすればの話です)結婚できないし子供を育てられないなど・社会の持続性に問題が起きているからです。
従来型年功(終身雇用的)モデル社会が崩壊しつつあると言えます。
この大規模な変化を放置できなくなって社会問題になり、問題解決のために統計等の必要性が出ているのですから、この問題意識によって非正規雇用とは何かの分類すべきでしょう。
非正規雇用が広がった原因を見ると根本は解雇制限による企業の機動性が失われたことによるのですから、この例外にあたる雇用形式か否かで分類すべきです。
非正規が急増した背景は、雇用調整ができない不都合解決の必要に迫られて発達したものですが、・・短期・臨時的雇用付随的要素として熟練不要=低賃金化できる・・短期入れ替えが多い面から(手作業時代に始まっているので)源泉徴収等の煩雑さを免除していることから、保険年金制度からの除外・・企業負担がないなど雇用者側にとって、コストメリットが大きかった点が特徴です。
勘ぐれば、非正規雇用を増やすための一種の優遇策だったことになります。
本来国際競争が激烈になって、技術陳腐化・サイクルが早まったことへの対応力強化目的だけで見れば、解雇規制柔軟化に対応できる「期間の定めのある契約」(解雇規制除外雇用の拡大)だけで良いはずでそれ以上の付随的マイナス処遇は不要のはずす。
労働者からいえば、上記付随的要素は不必要・不合理な差別ですからIT化進展によって事務作業の煩雑さが解消されればこの種の差別がなくなるべきです。
IT化の進展に合わせて、源泉徴収、保険、年金等の履歴作成や給与天引き等の事務作業が容易になっているのですから、いつまでも短期労働者からの各種天引き事務が煩雑だという理由で各種天引きシステムに加入させない差別は無くしていくべきです。
この数年政府がいわゆる非正規職種への公的保険・年金加入を認める方向へ舵を切っているのは、合理的方向性というべきでしょう。
このように見ていくと各種保険等に加入できるかどうかは正規非正規の派生した結果に過ぎないから、これらの有無で分類するのではなく、本質的理由・・解雇規制が及ぶかどうか・及ぼすべきかどうかで分類すべきです。
例えば週30時間以内の労働であろうと何十年も勤続した人を合理的根拠なく雇い止めにするのは解雇権の乱用になるべきであって、非正規に分類されているか否かは関係がありません。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/

厚労省  改正労働契約法のポイント
有期労働契約(※)の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消し、働く方が安心して働き続けることができるようにするため、労働契約法が改正され、有期労働契約の適正な利用のためのルールが整備されました。
※有期労働契約・・・1年契約、6か月契約など契約期間の定めのある労働契約のことをいいます。
有期労働契約であれば、パート、アルバイト、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、対象となります。
「労働契約法の一部を改正する法律」が平成24年8月10日に公布されました。今回の改正では、有期労働契約について、下記の3つのルールを規定しています。
1  無期労働契約への転換
有期労働契約とは、1年契約、6か月契約など期間の定めのある労働契約のことをいいます。
パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、有期労働契約で働く人であれば、新しいルールの対象となります。
無期労働契約への転換
有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。
II  雇止め法理」の法定化
最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定されました。
一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになるルールです。
III 不合理な労働条件の禁止
有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働
条件の相違を設けることを禁止するルールです。

上記の通り判例では契約期間の長短は一つの要素ではあるものの、契約の実質・実態から見て、雇い止めがないものと期待されている就労形態かどうかで解雇の正当事由を見ています。
期間制限がなければ終身雇用的になりやすいし、(後で労働法の判例を紹介しますが、半年でも1年でも期間の長短はそれほど意味がありません・正当事由がないと簡単に雇い止めしにくい判例が定着しているからです)希望の党が定義していないものの同党いう「正社員」という呼称にも近いか?という印象でした。
小池氏は流行語であるダイバーシテイ化を強調しながら、他方で正社員就労支援というのですから何を考えているのか?流行語を追いかけているだけではなかったかとの疑問が生じます。
非正規雇用者の生活を何とかしたいならば、非正規雇用の待遇改善の主張・・解雇規制や社内教育の需実・各種社会保障制度の見直し・職業訓練のあり方等々について与党との違いを示すことではないでしょうか。
ところで継続的契約関係では、3年続けば5年続くと思うし10年続けば20年続くような期待が相互に生まれるのが人情です。
ただこれも生活維持に必須の関係でこそ永続性が(法的保護)期待されるのであって、友達や趣味その他稽古事ではいつの間にか疎遠になって行くのを誰も不思議に思いません。
生活維持必須性に基礎をおく関係については、永続性(生活基盤保障・弱者保護)重視のために判例では継続関係断ち切りには慎重な方向で解釈運用されてきました。
長期関係を打ち切るには打ち切らざるを得ないような「正当事由が必要」という法理論が判例上いろんな分野で徐々に形成されてきたのは社会的必要性があったからです。
ところが、弱者救済の精神で始まった正当事由を要求する判例がかたまってくると今度は社会の硬直化を招く弊害の方が目立ってきました。
このような硬直的な制度構築が日本社会の隅々にまでいきわたってくると硬直化を避けるための国民の知恵というか、労働分野では非正規が増えてきたのではないかの視点で書いています。
これらの判例法にはそれなりの合理性があったのですが、まず借地法借家法で見ると高度成長に伴う都市の拡大その他の社会変化に対応できない・硬直化を招く弊害が目立ってきました。

希望の党の公約6(正社員を増やす?2)

従来型の正社員で就労したい人の就労を支援する→大企業のトータル採用を増やすという意味であれば、容量の拡大・経済規模拡大しかないのですから幼稚園児の夢ではなく政党の公約である以上、どのようにして活性化を図るかのビジョンを示す必要があるでしょう。
内部留保課税で活性化するという程度の意見では、重税課になるのみならず、投資済み資金の引き上げを強制することになるので経済縮小路線です。
現預金だけに課税するとすれば、決済用資金すら持ってはいけないとなって取り付け騒ぎが起きて大混乱になるでしょう。
もしも経済活性化と関係なく・すなわちトータル採用数が同じでも支援するというならば、就活支援業者を増やすという程度でしょうか?
今後産業界はロボット化や自動化する一方で単純作業が減っていくだけではなく、一般事務職程度の事務職も減って行きます。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-06-15/ORKAID6JIJUO010

17年6月15日 17:22 J
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が今後10年程度で過去最大となる1万人規模の人員削減を検討していることが分かった。超低金利の環境下で収益性が低下する中、金融と情報技術(IT)を融合したフィンテックで業務合理化を進め、店舗の閉鎖や軽量化などによって余剰人員削減につなげる方針。MUFGの社員数は世界で約14万7000人おり、約7%の人員カットとなる。
・・・・フィンテックの進展や店舗政策の見直しによる人員削減は三井住友フィナンシャルグループも取り組んでいる。5月に公表した3カ年の新中期経営計画で、店舗のデジタル化や事業の効率化などで人員削減効果を約4000人とし・・・。

IT〜AI化によって一定の頭脳職種(弁護士で言えばある事件についてどの方向(論点)の判例を検索すれば良いかの選択を若手弁護士が担当している場合に、この種作業をAIが代用する時代が来るかも?)でさえ減って行く趨勢は如何ともし難いので、経済活性化による事業規模拡大に成功しても必ずしも正社員増加を図れるわけではありません。
上記新時代に対応できる人材が不足するとせっかく規模拡大した大手企業は、AI操作に優れた外国人に頼らざるを得ないので(優秀な外国人の国内雇用を制限して職場を守ろうとすれば、企業は人材の揃った外国にその部門を移していかないと国際競争に負けるので国内空洞化になり正社員を増やすどころではありません。
過去約20年あまり国際競争に勝ち抜くために人件費の安い中国.新興国等へ工場を移転したように、今後はIT〜AIを駆使できる人材が揃っている割に人件費の安い地域へ事務部門を含めて拠点を移動していく時代がきます。
正社員就労を増やすというより、大幅減にならないようにするには、新時代の雇用が海外に逃げないように国民の絶えざるスキルアップが必須です。
関税で守られていた企業が徐々に国際競争に直接曝されるようになった時代から、企業の保護幕が取り払われて個々人がストレートに国際競争にさらされる時代が始まっています。
今後IT化・技術陳腐化の早い時代に、これまでの正社員・終身雇用中心を前提にした国民教育システムで対応できるのか?むしろ多様な就労形態に軸足を置いて人生の途中で再度新技術を身につける方式にした方が良いのではないか・それにはどうするかのテーマを解決して行く必要があるでしょう。
人材育成は文科省の専門分野か?というとそうではなく、就労形態に関する価値観の柔軟性・インフラ次第で必要とする人材の方向性も変わってくるのを重視すべきです。
公約で「正社員で働くことを支援する」と言うだけでは、仮に政権担当者になればどんな労働観〜人生観を提示しどう言う人間を育てるための政治をしたいのか不明です・・。
日本の将来像をきっちり認識して何を具体的にするのかをはっきりさせないと、政党の公約としては意味不明となります。
希望の党の公約には、一見して「正社員が理想でありその比率をふやして行くべき」という政治姿勢・・社会のあり方として期間や時間の定めのある契約等多様な雇用・働き方をへらしていく、単線・画一的雇用社会になるのを「希望」するというアナウンス効果を狙った公約でしょうか?
ところが一方では、小池氏はダイバーシテイ化を進めるといっていたように思います。
http://www.asahi.com/articles/ASKB632GWKB6UTFK002.html

別宮潤一 2017年10月6日12時48分
「希望の党代表の小池百合子・東京都知事は6日午前、衆院選公約と新党の政策集を発表した。「タブーに挑戦する気持ちで思い切った案を公約に盛り込んだ」と説明。公約に9本の柱を盛り込み、このうち「消費税増税の凍結」「原発ゼロ」「憲法改正論議を進める」ことを主要な「3本柱」とし、政策集では原発ゼロについて「憲法への明記を目指す」とした。
特集:2017衆院選
「3本柱」のほかの柱は「議員定数・議員報酬の削減」「ポスト・アベノミクスの経済政策」「ダイバーシティー(多様性)社会の実現」など。柱のほかに「『希望への道』しるべ 12のゼロ」をスローガンに掲げ、隠蔽(いんぺい)ゼロ、受動喫煙ゼロ、花粉症ゼロ――などを打ち出した。」

法人税軽減の主張をしながら、納税後余っている帳簿上の資産・・内部留保課税→結果的に法人税加重方向を主張する不思議さと同じちぐはぐさがここにも出てきます。
ダイバーシテイ化を目指す政策と「正社員で働くことを支援する」政策とは両立できるのでしょうか?
07/03/03(2003年)「超高齢化社会の生き方5(多様な生き方を保障する社会1)」前後で、高齢化社会向けに書いたことがありますが、要はいろんな(LGBTを含めて)生き方ができる社会にすべきだという意見ですが、この4〜5年では(小池氏がダイバーシテイ化をトレンドとして採用するほど)社会的合意が出来て来たと思われます。
働き方〜生き方が千差万別・多様化していく方が労使双方にとって行きやすい社会であるという意見が、今では日本社会で受け入れられているとすれば、「正社員として働けるように支援する」という公約とどのように整合するのか不明です。
AI~IT化が進展する今後の社会では、終身雇用〜正社員意識・それ以外の働き方を異端(イレギュラー)と決めつける社会が成り立たなくなる・・とりわけIT化に背を向ける姿勢と思われます。
もともと終身雇用を正社員と言い、それ以外を非正規(イレギュラー)と区別する固定意識社会は、上司〜同僚と折り合いが悪いその他嫌なことがあってもやめると生活できないから嫌々ながら従属するしかない窮屈な社会・イジメがあってもやめられない人権侵害の温床になる社会ではないでしょうか?
やめる自由がない・失業→生活展望がない社会では必死になって一旦得た地位にしがみつきますし、学校でいじめられても容易に辞められない意識が子供を自殺にまで追い込むインフラになっています。
いじめ事件が起きると先生ばかり批判していますが、多様な育ち方が認められていない・受け皿不足社会だから繰り返し起きるのです。
被雇用者その他弱者が逃げる選択肢がない状態で意見が合わないという理由で経営者が簡単に解雇したり、校風にあわないと退学処分できると、解雇や放校、離婚された方は死活問題ですから、雇用者や学校あるいは婚家の方でもよほどのことがない限り関係切断できない社会になって行った・主流雇用形態が社会意識の基幹・・多様な影響を及ぼすので、社会のあり方を代表して終身雇用的社会というものです。
ですから雇用のあり方をどうするかは社会意識のあり方を規定する重要な指標です。

希望の党の公約5(正社員で働くことを支援とは?1)

希望の党の公約に戻します。
(2)若者が正社員で働くことを支援し、家計の教育費と住宅費の負担を下げ、医療介護費の不安を解消する」
と言うのですが、正社員で働く(とは終身雇用化のことでしょうか?)を「支援する」と言っても、これは(文字通り専制政治でさえどうこうできない経済のうねりで非正規化が生じているもので)政治が号令かけてできるものではありません。
ベルトコンベアー方式に始まる分業化の進展が仕事を細分化する一方であり、細切れの作業工程の結果、引き継ぎらしい引き継ぎ不要の細切れ交代就業を可能にして来ました。
マクドナルド店員やクリーニング受付で言えば、5時間前に出勤した人も1時間前に出勤した店員も顧客サービスに差がありません。
工場のラインでも同じです。
作業が細分化されて行くにつれて限定された作業能力さえ同じならばその他の総合力の比率がさがる結果、10〜20年の年功者も1〜2年前からの経験者も差異がありません。
タイピストや電話交換手のような特殊分野だけの細切れ作業分野が、家事保育や医療・介護・教育(全人格教育の掛け声があっても実際には塾の盛行に知られるように小学生相手の教育でもさえ専門分化が進んでいます)を含めてほとんどの分野に広がって来たのが現在社会です。この結果午前中だけや午後だけ、夕方から、週に2〜3日だけ働きたい人も働ける社会になっています。
正社員で働けるように支援するという時の「正社員」は何を意味するかを決めないと意味不明になります。
従来型意味では上記のような不規則〜不連続勤務しか出来ない人は臨時雇用原則で、正社員とは言われていませんでした。
社会構造が変わりつつある現在、従来型の正規非正規の区分けを前提に正規(正社員・終身雇用)社員就職支援するとすれば、時代錯誤な印象を受ける人が多いでしょう。
仮に正規(正社員)化に引き戻すのが正しいとしても「言うだけ番長」という単語がありますが、どうやって働き方を正規(終身雇用)化に変えていくかを政治家はいうべきでしょう。
「平和主義」というだけで平和は来ないので、どうやって実現するかこそ政治が語るべきなのと同様に、「正社員(終身雇用)化」普及が正しいとしてもそれをどうやって実現するかを主張してこそ政党の公約になります。
そもそも正規(正社員)と非正規(非正社員)の違いは何でしょう?
左翼生政治家は、平和主義というだけでどうやって平和を守るかの具体論がないのと同じで「正社員就職支援」というスローガンだけでは何もわかりません。
本来「正」に対する反対熟語は「不正」ですが、メデイアはしきりに「非正規」とマイナス的表現するものの、実はモグリでもなければ違法就労ではありません。
「正社員就労を支援する」の「正社員」自体曖昧模糊としていて、鳩山氏の「少なくとも県外へ!」のスローガン同様に国民に対するイメージ強調の印象です。
違法就労ならば権力者が合法化しそれまであった処罰を廃止すれば済むことですが、臨時雇用・短時間不規則勤務は違法でもない多様な雇用形態をいうに過ぎない・社会実態によるものですから、政党が「正社員就労を支援する」と言い、法令改廃だけすれば7〜8時間の連続勤務に変わるものではありません。
革新系には権力信奉者が多いので、政府が正社員を増やせといえば正社員が増えると思い込んでいる人が多いでしょうが、経済の動きはそうはいきません。
1日8時間以下の就労を禁止しても3〜4時間しか働けない人や、週に1〜2日しかバイトできない人が、毎日出勤できるようにはなりません。
あるいは、「日に数時間しか働けない人も今後正社員と呼ぶようにします」という「言葉狩り」ならば、あまり意味のない公約です。
アルバイトやパートも期間工でも皆企業にとっては正式雇用した従業員ですし、パート・バイト等も違法に企業内で働いているものではありません。
正社員とは何でしょうか?
ホンの一時期特定の歴史状況下で大手企業や公務員で主流「的」(終身雇用最盛期の高度成長期にも零細商店や個人的修理屋や中小規模の建設関連業種等々では、臨時雇用不定期就労者が国民の大半であったに思われます)雇用形態について、度重なる労働法判例によって不合理な解雇が認められない・雇用が守られるようになってきたのを、一般に終身雇用「制」といってきたに過ぎません。
労働判例の集積で守られるようになった「終身雇用」方式の被雇用者をいつから「正社員」と言うようになったのか知りませんが、その背後にはこれを正式就労形式と賞賛する意識があり、結果的に多様な労働形式を否定的に見る→画一労働形態社会にしていくべきとする意識の高い?人々が言い出したのでしょうか。
正社員・終身雇用を増やすべきかどうかの前提として、終身雇用「制」とは何か?と考えると「制度」ではなく単なる自然発生的・・多様な雇用形態の中で大きな落ち度さえなければ、希望すれば定年まで原則的に雇用が守られるようになっていた状態をメデイアが理想と考えて?これを「正式社員」それ以外は保障のない労働者=イレギュラーであり、ゆくゆくは淘汰されてくべき・・あるいは一段下に見下すべき階層を作っていく価値観があって「非正規」という言葉を普及させた用語と思われます。
共産主義思想・・労働組合に基礎を置く左翼系政党やメデイアにとっては労働組合によって守られた労働者・・これのみが「正」社員であって、この枠組みから外れたものを江戸時代の部外者「非人」的位置付けに差別化したものと思われます。
欧米の民主主義といっても元は「市民」と「それ以外」という差別思想を基礎にするのと同じ系譜に属します。
左翼系やメデイアの信奉する中国では今でも都市住民と農民戸籍にはっきり分けられて統治されているのと同じです。
韓国では大手(財閥系)企業正社員・労働貴族とそれ以外の格差が半端でない実態・このために大手(サムスン就職塾という個別企業就職塾が幅を利かしています)に就職するための専門塾が発達し就職浪人が普通になっている実態もはよく知られている通りです。
いわば、李氏朝鮮時代のヤンパン支配を就職試験で区別するようになった社会のようです。
このかなり後で書く予定ですが、欧米では何事も支配・被支配その他2項対立区分けが基本ですが、その影響下にあるように見えます。
ところで、わが国では不合理な解雇が認められないのはアルバイトやパート期間工でも同じですから、正規・非正規の問題ではなく多様な契約形態による効果の違いであり、結局は期間の定めのない雇用契約の解約事由と期間の定めのある雇用契約の解雇事由をどう区別すべきかの問題です。
また各種年金や保険加入等のインフラ参入の資格も正規化非正規かによる区別の合理性がない・・多様な就労形態に応じて多様な加入資格/あるいは給付内容を多様化すれば良いことで、非正規=何の社会保証もないという極端な格差を設けることがおかしいのです。
公権力で長期雇用を商店等零細企業(繁閑差の大きい商店やリゾートホテルなど)に強制するのは無理すぎるし、一方で短時間・不規則に働きたい需要を禁止するのも無理過ぎます。

希望の党の公約等4(法人税軽減の逆張り)

希望の党の公約等4(法人税軽減の逆張り)

民間企業は経済変動や社会変化への対応・・構造転換コストなどに備えるための予備資金を持っているのであって、この決断は配当を受けるべき株主の承諾によるものです。
本来株主は(株主総会・株価変動を通じて)税引後利益全部を配当して貰う権利行使を我慢して一定額企業に保留してこの資金で再投資などするのを許容しているのであって、企業が予備資金を持っているからと政府がとりあげられる・どうせ取られるならばと結果的に利益100%社外に流出させるのでは、経済変動に耐える力が削がれてしまいます。
個々人が数万円前後多く配当してもらうよりは、これを企業が安定資金として持っているか、まとめて将来のための研究資金に使うとか、増産投資立ち上げや企業買収資金等に使うかを個々の株主が決めるのが資本主義経済の醍醐味ですから、その選択(配当を多くもらって友人との食事等に使うか、企業に使い道を委ねて大きく使ってもらうかは市場経済・個々の株主の判断に委ねるべきです。
政府が増税の脅迫で個人還元を強制するべきではありません。
ただし、資本家が大金を溜め込んでいるというやっかみ的批判・・感情論による制裁的内部留保吐き出し要求ではなく、株主の多くが本当に将来のために内部留保する意思があるのか?単なる擬制ではないか?という視点からの再チェックは必要です。
このためには・・投資意識確認と税金納付という意味で、税引き後利益は実際に配当しなくともこの時点で配当を 受けたものとみなして源泉徴収してしまう方法も検討の余地がありますし、株主意思の再確認のためには少なくとも税引き後利益のうち50〜80%(2〜30%は予備費)までを実際の配当を義務付け、企業買収や新規投資金が必要ならばその旨明示して市場から再募集する・増資で対応するのが合理的という政策選択肢は将来あり得るでしょう。
韓国文政権も日本の革新系政権も同じですが、口先では人権重視と言いますが個人の決めるべき領域に国家が踏み込みすぎる傾向があります。
内部留保課税は法人税の2重取りですが、小池氏は一方で法人税減税も求めているのですから(法人を痛めつける気持ちはないという意思表示でしょうが・・)おかしな主張です。
19日引用した続きです。
http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/171112/ecn17111209150001-n2.html

企業に「ため過ぎ」批判 内部留保課税は有効か 論説委員・井伊重之
2017.11.12 09:15
小池氏は東京をアジアにおける国際金融都市とするため、政府に法人税減税を求めている。法人税を下げる一方で、内部留保に課税するのではアクセルとブレーキを同時に踏むようなものだ。

内部留保課税は法人税重課政策ですが、法人税軽減化の流れをどう理解するかの問題でしょう。
以下は法人税率をめぐるアメリカの動きと国際比較です。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGN28H04_Y7A920C1000000/
米大統領「歴史的な減税」 法人税下げ20%案を発表 2017/9/28 5:48
【ワシントン=河浪武史】「トランプ米大統領は27日、連邦法人税率を35%から20%に下げる税制改革案を正式に発表した。」
これがようやくこの11月に下院通過したという報道です。
https://www.iforex.jpn.com/analysis

税制改革法案が米下院を通過-8537
(2017年1月現在)筆者 鳥羽賢 | 11/17/2017 – 09:40
「アメリカで16日に税制改革法案が下院を通過した。上院は別法案を提出トランプ政権の目玉政策である税制改革法案が、16日に米下院を227対205の賛成多数で可決した。この中には法人税減税の2018年実施が盛り込まれている。しかし上院の方は法人税減税を2019年にする別の法案を提出しており、今後は上院と下院で審議がもめることが予想される。この通過を受け、16日のNY株式市場は大幅高となった。」

アメリカで法人税減税法案が下院を通過しただけで株式相場が大幅アップしたことからみて、・・内部留保課税・実質的法人税アップの脅しがあると、この逆張りの効果・・2回税金を取られるよりは配当を増やそうとするので一時的に配当が増えて株主の懐が潤い、一見消費がふえますが・・企業の景気や社会構造変動に対する耐性が落ちることから株式相場で見れば大幅に下げてしまう方向に働くことが明らかです。
目先消費を増やせそうに見えますが、株式の値上がり益による消費拡大とどちらが健全か明らかでしょう。
小口株式保有の一般市民とって小銭が同じ額入るならば、税に取られる前に急いで分配してくれるよりも大幅減税を市場が好感して株式相場が大幅アップしたことによる方が合理的です。
https://www.nikkei.com/markets/kabu/japanidx/によると11月18日現在の東証時価総額は以下の通りです。

東証1部     東証2部   ジャスダック

時価総額(普通株式ベース)   6,597,983億円   106,804億円   105,901億円

東証だけで約680兆円ですから、もしも1%値上がりで6、8兆円2%で13、6兆円の値上がり益・日銀が13、6兆円を市中に資金供給したのと同じだけのインパクトがあります。
外国人投資家の 保有分もありますので、全部が国内で循環する訳ではないとしても大きな経済効果です。
1日で1%の変動が滅多にないとしても1ヶ月単位だとその何倍もの変化があるとした場合、消費拡大・経済活性化に大きな影響があります。
内部留保課税によって企業を痛めつけるのとどちらの方が税収増加/国民の懐を温める効果プラス株価上昇による心理効果が大きいかが明らかです。
ちなみに我が国の最近株価変動のグラフは以下の通りです。
http://ecodb.net/stock/nikkei.html日経平均株価の推移(月次)

ところで、厳しい国際競争下にある現在、世界の法人税の趨勢を無視できません。
現在世界最高税率のアメリカが法人税大幅減税に成功すると、日本が世界最高税率の国になります。
このまま放置すると軍事力背景にトランプ氏のように吠えて回る方法のない日本から、大手世界企業が徐々に日本から逃げていくのをどうするかの大問題・・・トヨタなどの民族愛だけに頼っていつまで持つのか?の心配があります。
いきなり本社移転しないまでもシンガポールなどにアジア統括本社を設けるなどのかたちで徐々に動き始めている現実を無視できません。
この国際情勢下で日本が内部留保=二重課税・法人税増税にひた走るには、ムードだけではなく、かなりの突っ込んだ根拠が必要です。
希望の党の公約では内部留保課税だけではなく、法人税軽減を主張しているのですが、内部留保課税は結果的に法人に対する重課税路線ですから支離滅裂の印象です。

 

最低賃金制度(非正規)

大手の場合本社ビル清掃などは外注でしょうから、もしかするとシステムエンジニア−など陳腐化の早いプロを派遣や非正規に頼っていることが多いかも知れません。
高級技術者は、終身雇用・出世期待よりは腕一本で行きたい・・腕に自信のある人=プロは終身的保障がない分時給が正規職より高い方を選ぶ傾向があります。
メデイアの世界でも、これを狙ってフリーライターやフリージャーナリストになる人が多いことから見ても、大手の非正規は正規より「格上」と言うことがあります。
大手の非正規の正規化は待遇改善になるよりは、解雇が利かない・終身雇用化する程度・・もしかすると社会硬直化を進めることになるかも知れません。
フランスが経済低迷・失業率の高止まりで苦しんでいるのは、長い社会党政権時代を経て労働者保護が進み過ぎて解雇困難→企業がリスク回避のために新事業開拓=新規採用に及び腰になっている結果によると言われています。
国民・若者が解雇され難い大手や公務員志向ばかりになるとイノベーションが起き難くなります。
前オランド政権の経済政策は文政権の公約に似ていて、(トランプ公約も同じですが・・)工場の海外展開・既存工場閉鎖による失業をなくすためには閉鎖に対する政府権限強化策で対応するのが中心・・1昨年あたりから政府保有株式の議決権を2倍にする法施行がありました。http://www.nikkei.com/article/DGXKZO86759970U5A510C1EA1000/心配なフランス「2倍議決権」2015/5/14付
「株主の権利をめぐるフランスの新法が波紋を広げている。当該企業の株式を2年以上保有している株主に2倍の議決権を付与するのが骨子だ。表向きの理由は長期の視点に基づく経営を促すことだが、実際には仏政府などの発言力が強まりすぎて、健全な企業統治が損なわれる懸念がある。
 新たな法律は通称「フロランジュ法」と呼ばれ、鉄鋼大手の欧アルセロール・ミタルが2012年に仏北東部フロランジュの製鉄所の閉鎖を決めたことに端を発する。この決定に世論が激しく反発し、仏政府も介入した。」
「その後、企業が工場を閉める前に売却先を探すことを義務づける法律づくりが進み、その中にもうひとつの目玉として2倍議決権の規定も盛り込まれた。」
「今回のフランスの動きは利点よりもマイナスが大きいのではないか。議決権の2倍化で権限が増大する大株主のひとつが仏政府だ。例えば自動車大手のルノーは仏政府の議決権が17%から28%に増える見通し。経営者のなかには、経営に対する政府の介入が強まらないか懸念する向きもある。航空大手のエールフランスKLMについても、仏政府は株式買い増しに乗り出した。」
これによるとルノーが日産の株式を保有していることによって、日産の海外展開にまで仏政府が口出し・・拒否権行使出来るのか?と言うことで、日本でも大騒ぎしたばかりですが、経済原理を無視した短絡的政策ばかりでは余計企業が萎縮してしまいます。
素人向けには海外工場移転を抑制するために・・「工場閉鎖を認めない」と言えば(トランプ大統領も同じで)・・短期的には強権政治が成り立ちますし、選挙民向けには結果を端的に明示し易いですが、こんな無茶は長く続きません。
鳩山民主党が「少なくとも県外へ」と言うスローガンで選挙に買ったのとの同じで、その道筋がない・・結果だけ宣伝するパフォーマンスでしかありません。
マクロン氏はこのような政策に訣別する新鮮味の訴えで大躍進したのです。
韓国でも途中解雇のあるサムスンなどよりも公務員志向でこのために浪人してでも予備校に通う状態をこの後で紹介しますが、現代労組の横暴が知れ渡っていますが、韓国の企業間格差は正規雇用に関する解雇規制の強さ・・大手正規になれば地上の楽園を謳歌出来るし、入れなければ人間扱いされない社会意識とも関係があります。
オランド政権でマクロン氏が解雇規制緩和を主張していたのにオランド大統領が労組の圧力に屈してしまった→これに不満を抱いたマクロン氏が下野して大統領選に出馬して大勝した経緯が重要です。
日経新聞昨日の夕刊によると見出しでは「2大政党歴史的大敗」と言う宣伝ですが、内容を見ると選挙前の第1党社会党系284人が44人に大激減に対して第2党だった共和党が199から137ですから共和党の減少率はそれほどではありません。
大手にもいろんな非正規がいるとしても全体の5%の人に対する人件費アップが仮に2割上がっても労働分配率が少し上がる程度ですが、それでも総人件費が上がります。
その分下請けに対する発注代金が下がるリスクが起きて来ます。
これでは却って弱者イジメになってしまう・やり易い大手から始めるのは、格差を是正する効果がない可能性があります。
言わばパフォーマンスに過ぎず大手財閥系と中小零細の格差が大き過ぎることに対する社会不満に対する解決になっていません。
非正規のうち中小以下で働く者が95%を占める・・5%しか大手や公社で働いていないのですから、95%の非正規労働者の待遇を良くするには、中小の採算性を上げるしか方法はありません。
ところで中小の取引条件を改善しないままで非正規職員を強制的に正規転換したらどうなるか・・待遇改善になるでしょうか?
倒産スレスレの中小零細がこれ以上労働側取り分を増やせない・・結果的に中小の労働分配分を元非正規と平等分配する・既存正規社員の給与を削減するしかないのでしょうか?
末端サービス業では、個人経営者が健康を害するほど負担をしていることが多いものです。
日本のコンビニ経営者で言えば、時間給の上がる深夜を経営者家族が担当し、昼間をバイトやパートに頼っていることが多いと言われていました。
この結果末端店舗経営者夫婦・家族が健康を害する悲劇が一般化していましたが、この結果チエーン化が進むと、今度は「名ばかり」店長化が進みます。
「名ばかり店長」に過重労働のしわ寄せが行くようになったので、マクドナルドの店長事件(残残業手当のいらない管理職か?)の判例が出た背景です。
中小零細の賃金低下は、中小経営者自身の経営不振が背景にあります。
強制的に非正規を禁止した場合、中小労働者を等しく貧しくするしかないのでは、大手との格差拡大に不満のある庶民の怒りに対する何ら解決にもなりません。
結果的に大企業の下請け発注金額をアップさせるしかないので、文政権がここまで踏み込めるかどうかが彼の評価を分けます。
短絡的に命令しても経済活動と言うものは簡単には動きませんので、したたかな仕掛けが必要です。
ところで、最低賃金について6月17日に紹介したとおり、日本の全国平均823円と書いているのですが、全国平均をどう言う計算で出したかが不明です。(私が知らないだけですが)
仮に地方市町村ごとの?数字を合計して平均化した場合で考えると、たとえば非正規雇用者が万単位でいる大都市の900円台と1〜2人しかいない過疎地市町村・・概ね労賃も安くなります・700円と足して2で割ると社会の実態が出ません。
マスメデイアはアベノミクスによって、如何に賃金が上がっていないか、低いかを強調するために全国平均を発表する傾向があります。
正確には全国ではなく、「全労働者」平均にすべきでしょう。
大都市の5万人の労働者平均が900円台で過疎地の一人が700円台の場合、市町村数で割れば、(900+700)÷2=800円台平均になりますが、全労働者平均にすれば900円台の人5万人に700円台の人が一人ですから平均値はほぼ5万分の1しか変わりません。

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