希望の党の公約7(正社員を増やす?3)

11月26日以来内部留保・手元資金問題が割り込んでしまいましたが、希望の党の公約である「正社員で働けるように支援する」というテーマに戻ります。
選挙が終わってからこのテーマの連載では、読者によっては気の抜けたテーマと思う方がいるでしょうが、ムードに頼る選挙・実現する気持ちが全くない公約で選挙民のウケを狙う選挙が行われるのでは社会にとって害悪です・・・こういう公約が堂々と発表されるのでは健全な政治議論ができない・日本のために良くないと思うので、(選挙中には自制して書かなかったのですが)以下書き続けます。
政党が公約に掲げる以上は、他の政策と矛盾しないか既存システム改廃の可能性・・利害調整が可能かの実現性有無を吟味した上での意見を言うべきです。
「実現の可能性はないが顧望を言って見るだけ」という無責任な公約では困るからです。
そこで「正社員で働けるように支援する」と言う公約を実現する場合どのような社会を想定しているかを、まず決める必要があります。
正社員の定義がはっきりしない点・終身雇用的理解を21〜23日頃に書いていますが、非正規雇用の拡大・待遇改善が社会的テーマになっている関連で考えれば、正社員とは非正規雇用の対比で使用しているものと考えられ、結果的に雇用期間の定めのない社員を正社員と称するのが常識的用語になっていると思われます。
そうとすれば、「正社員で働けるように支援する」という意味は、期間の定めのある労働比率を下げて正社員比率を上げるという意味になるように思われます。
私は正規と非正規の区分け・「正式の雇用と正式ではない雇用」という二分論自体・・期間も労働内容も無限定な終身的雇用を「正式」それ以外は正式ではない」という社会構造を固定化するのは問題がないか?の視点でこのシリーズで書いてきました。
長期継続を原則とする社会では労働者や生徒あるいは嫁、借家人等々弱者の地位が安定しひいては社会安定にもつながり良い面があることは確かです。
しかし、この仕組みは、先祖代々の職種しかなくひいては世襲の職場以外にない・女性が離婚すると再婚しない限り独立の生活を営めない・学校や就職先でいじめがあったり、自分の適性に合わないからと途中で辞めると同等の受け皿がない等々のりゆうで修正可能性の乏しい社会を前提に出来上がってきたシステムです。
数百年前から続く事業しか世の中にない時代が終わり、新規事業創出に向けた国際競争が熾烈な現在、能力さえあればいろんな分野での活躍チャンスのある社会になると、固定社会を前提とする終身雇用システムは一旦就職したものの途中別のことをやりたい人にとってはむしろ窮屈な社会になり発展阻害によるマイナスの方が大きくなります。
他方企業の方も国内外で日々新規事業分野開拓の競争があるので、雇ってみて外れ人材であっても才能不足・不適合理由では(証明困難で)解雇不能社会では困るし、新規事業分野挑戦目的で採用したものの、事業開始してみると予想が外れて不採算でも配置転換等の努力をした後でないと簡単に解雇・人員整理できないのでは、怖くて採用を最小限に絞る傾向・企業としてはチャレンジ意欲にブレーキがかかります。
被雇用者も就職してみて企業内環境や方向性が自分に合わないと思っても(終身雇用=中途採用市場不足)定年前にやめると再就職先が簡単にみつからないので、不適合のままくすぶった人生を送るしかない不健全なことも起きてきます。
社会構造の変化が激しい時代には、長期変化のない安定社会向け終身雇用・継続関係重視の仕組みは労使共(各種契約当事者)に社会の変化について行けないマイナス面が大きくなります。
全員が全員自由競争をしたい人ばかりではないでしょうから、必要な人から順に自由市場型生活を選べるように社会を柔軟に変えて行く姿勢が必要です。
必要を感じる人の自由移動を白い目でみたり嫌がらせ的冷遇(保険や年金制度からはずすなど)をする必要もなければ、逆に特別優遇する必要もない、政治は自然の流れに合わせて従来型労働形態に合わせてできている諸制度のうちで新型労働契約に不合理に不利にできている部分の修正等に努力すべきです。
この点はLGBTであれ、各種障害者や女性や子育てや介護中の人の就労環境であれ同じです。
一般に言われるクオーターのように実力以上に優遇するのは、なぜ優遇しなければならないのか?(たとえば人口比率比例して知的障害者や身体障害者を国会議員や大学教授や企業役員にすべきだ・上場企業の何%を知的障害者をトップにすべきだといえば、おかしい主張だと誰でも思うでしょう。
職業は能力に応じて就職できるべきであって、弱者認定さえあれば、一定率で就任できるものではありません。
クオーター制は実質的不公正を政府が強制する結果、贔屓の引倒し的側面もありうまくいかないでしょう。
必要以上に不利益な制度は改めるべきですが、能力がなくとも一流大学や1流企業の宰予数を同数・・例えば男女同数あるいは各種障害者の人口比率にあわせるべきとなってくるとおかしくなってきます。
最近弱者ビジネスという言葉が流行していますが、一旦被害者の立場になると何をしても要求しても許されるかのような振る舞いをする人・クレーマー・モンスター保護者などが増えています。
希望の党が、「正社員で働けるように支援する」というスローガンを掲げれば正社員が増えるものではないだけではなく、もしも自然の変化を政治が妨害してその流れを止めて正社員比率を引き上げようとするのであれば邪道です。
終身雇用の基礎にある精神・・よほどのことがないと一旦できた関係性を断ち切れない社会構造の典型的場面である借地借家制度や婚姻法制がこの数拾年で大きく変化してきたし、最近では労働契約解雇法制改正(金銭解決)の機運が俎上に上ってきた事情をこれから紹介していきます。
共通項は、長期関係切断による不利益を受ける方(多くは弱者)の期待利益保障が基礎にある点を直視して・・切断を禁止するのではなく、期待利益保障整備の進展具合を総合した雇用や生活保障の問題に移ってきていることがわかります。
離婚に長年抵抗があったのは主として離婚後の生活・・子育てに不都合があるからですが、今は社会の受け皿が揃って来たので(実家の経済力が気にならなくなり)4〜50年前に比べて離婚のハードルが下がっていることを見れば実感できるでしょう。
正社員(毎週約40時間以上働けるか必要に応じて残業ができるか転勤可能等)かどうかで「正式な市民」になれるかどうかが決まるのでは窮屈すぎます。
1日数時間しか働けない人、午前中だけ〜午後だけ働ける人と8時間連日働ける人や、2〜3年で技術を習得したらやめたい人、場合によっては定年までそのまま働いてもいいが、途中4〜5年別のことをしてみたい人・転勤可能な人とそうでない人などの多様な働き方を前提にした社会にした方がいいでしょう。
働き方の違いによって待遇(給与体系等)が変わるのは仕方がないとしても、働き方の違いに比例した合理的待遇差にすべきということではないでしょうか?
実際にこの数年「同一労働・同一賃」政策やパート臨時雇用に対する年金制度の拡大・社会保険制度加入など具体的な変化が進み始めています。
実際にこの数年「同一労働・同一賃」政策やパート臨時雇用に対する年金制度の拡大・社会保険制度加入促進など具体的な整備が進み始めています。
これに対して希望の党が政府と施策とは違う「正社員で働けるように支援する」という公約は何をどうしたいのかまるで見えない・現在の政策方向をどのように変えるという主張なのか不明です。
希望の党は政権交代可能な政党として結党したという大宣伝で売り出した以上は、「正社員で働けるように支援する」公約を希望の党が政権を取った場合にどうやって何をするのかのビジョンとセットでければなりません。

希望の党の公約6(正社員を増やす?2)

従来型の正社員で就労したい人の就労を支援する→大企業のトータル採用を増やすという意味であれば、容量の拡大・経済規模拡大しかないのですから幼稚園児の夢ではなく政党の公約である以上、どのようにして活性化を図るかのビジョンを示す必要があるでしょう。
内部留保課税で活性化するという程度の意見では、重税課になるのみならず、投資済み資金の引き上げを強制することになるので経済縮小路線です。
現預金だけに課税するとすれば、決済用資金すら持ってはいけないとなって取り付け騒ぎが起きて大混乱になるでしょう。
もしも経済活性化と関係なく・すなわちトータル採用数が同じでも支援するというならば、就活支援業者を増やすという程度でしょうか?
今後産業界はロボット化や自動化する一方で単純作業が減っていくだけではなく、一般事務職程度の事務職も減って行きます。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-06-15/ORKAID6JIJUO010

17年6月15日 17:22 J
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が今後10年程度で過去最大となる1万人規模の人員削減を検討していることが分かった。超低金利の環境下で収益性が低下する中、金融と情報技術(IT)を融合したフィンテックで業務合理化を進め、店舗の閉鎖や軽量化などによって余剰人員削減につなげる方針。MUFGの社員数は世界で約14万7000人おり、約7%の人員カットとなる。
・・・・フィンテックの進展や店舗政策の見直しによる人員削減は三井住友フィナンシャルグループも取り組んでいる。5月に公表した3カ年の新中期経営計画で、店舗のデジタル化や事業の効率化などで人員削減効果を約4000人とし・・・。

IT〜AI化によって一定の頭脳職種(弁護士で言えばある事件についてどの方向(論点)の判例を検索すれば良いかの選択を若手弁護士が担当している場合に、この種作業をAIが代用する時代が来るかも?)でさえ減って行く趨勢は如何ともし難いので、経済活性化による事業規模拡大に成功しても必ずしも正社員増加を図れるわけではありません。
上記新時代に対応できる人材が不足するとせっかく規模拡大した大手企業は、AI操作に優れた外国人に頼らざるを得ないので(優秀な外国人の国内雇用を制限して職場を守ろうとすれば、企業は人材の揃った外国にその部門を移していかないと国際競争に負けるので国内空洞化になり正社員を増やすどころではありません。
過去約20年あまり国際競争に勝ち抜くために人件費の安い中国.新興国等へ工場を移転したように、今後はIT〜AIを駆使できる人材が揃っている割に人件費の安い地域へ事務部門を含めて拠点を移動していく時代がきます。
正社員就労を増やすというより、大幅減にならないようにするには、新時代の雇用が海外に逃げないように国民の絶えざるスキルアップが必須です。
関税で守られていた企業が徐々に国際競争に直接曝されるようになった時代から、企業の保護幕が取り払われて個々人がストレートに国際競争にさらされる時代が始まっています。
今後IT化・技術陳腐化の早い時代に、これまでの正社員・終身雇用中心を前提にした国民教育システムで対応できるのか?むしろ多様な就労形態に軸足を置いて人生の途中で再度新技術を身につける方式にした方が良いのではないか・それにはどうするかのテーマを解決して行く必要があるでしょう。
人材育成は文科省の専門分野か?というとそうではなく、就労形態に関する価値観の柔軟性・インフラ次第で必要とする人材の方向性も変わってくるのを重視すべきです。
公約で「正社員で働くことを支援する」と言うだけでは、仮に政権担当者になればどんな労働観〜人生観を提示しどう言う人間を育てるための政治をしたいのか不明です・・。
日本の将来像をきっちり認識して何を具体的にするのかをはっきりさせないと、政党の公約としては意味不明となります。
希望の党の公約には、一見して「正社員が理想でありその比率をふやして行くべき」という政治姿勢・・社会のあり方として期間や時間の定めのある契約等多様な雇用・働き方をへらしていく、単線・画一的雇用社会になるのを「希望」するというアナウンス効果を狙った公約でしょうか?
ところが一方では、小池氏はダイバーシテイ化を進めるといっていたように思います。
http://www.asahi.com/articles/ASKB632GWKB6UTFK002.html

別宮潤一 2017年10月6日12時48分
「希望の党代表の小池百合子・東京都知事は6日午前、衆院選公約と新党の政策集を発表した。「タブーに挑戦する気持ちで思い切った案を公約に盛り込んだ」と説明。公約に9本の柱を盛り込み、このうち「消費税増税の凍結」「原発ゼロ」「憲法改正論議を進める」ことを主要な「3本柱」とし、政策集では原発ゼロについて「憲法への明記を目指す」とした。
特集:2017衆院選
「3本柱」のほかの柱は「議員定数・議員報酬の削減」「ポスト・アベノミクスの経済政策」「ダイバーシティー(多様性)社会の実現」など。柱のほかに「『希望への道』しるべ 12のゼロ」をスローガンに掲げ、隠蔽(いんぺい)ゼロ、受動喫煙ゼロ、花粉症ゼロ――などを打ち出した。」

法人税軽減の主張をしながら、納税後余っている帳簿上の資産・・内部留保課税→結果的に法人税加重方向を主張する不思議さと同じちぐはぐさがここにも出てきます。
ダイバーシテイ化を目指す政策と「正社員で働くことを支援する」政策とは両立できるのでしょうか?
07/03/03(2003年)「超高齢化社会の生き方5(多様な生き方を保障する社会1)」前後で、高齢化社会向けに書いたことがありますが、要はいろんな(LGBTを含めて)生き方ができる社会にすべきだという意見ですが、この4〜5年では(小池氏がダイバーシテイ化をトレンドとして採用するほど)社会的合意が出来て来たと思われます。
働き方〜生き方が千差万別・多様化していく方が労使双方にとって行きやすい社会であるという意見が、今では日本社会で受け入れられているとすれば、「正社員として働けるように支援する」という公約とどのように整合するのか不明です。
AI~IT化が進展する今後の社会では、終身雇用〜正社員意識・それ以外の働き方を異端(イレギュラー)と決めつける社会が成り立たなくなる・・とりわけIT化に背を向ける姿勢と思われます。
もともと終身雇用を正社員と言い、それ以外を非正規(イレギュラー)と区別する固定意識社会は、上司〜同僚と折り合いが悪いその他嫌なことがあってもやめると生活できないから嫌々ながら従属するしかない窮屈な社会・イジメがあってもやめられない人権侵害の温床になる社会ではないでしょうか?
やめる自由がない・失業→生活展望がない社会では必死になって一旦得た地位にしがみつきますし、学校でいじめられても容易に辞められない意識が子供を自殺にまで追い込むインフラになっています。
いじめ事件が起きると先生ばかり批判していますが、多様な育ち方が認められていない・受け皿不足社会だから繰り返し起きるのです。
被雇用者その他弱者が逃げる選択肢がない状態で意見が合わないという理由で経営者が簡単に解雇したり、校風にあわないと退学処分できると、解雇や放校、離婚された方は死活問題ですから、雇用者や学校あるいは婚家の方でもよほどのことがない限り関係切断できない社会になって行った・主流雇用形態が社会意識の基幹・・多様な影響を及ぼすので、社会のあり方を代表して終身雇用的社会というものです。
ですから雇用のあり方をどうするかは社会意識のあり方を規定する重要な指標です。

希望の党の公約5(正社員で働くことを支援とは?1)

希望の党の公約に戻します。
(2)若者が正社員で働くことを支援し、家計の教育費と住宅費の負担を下げ、医療介護費の不安を解消する」
と言うのですが、正社員で働く(とは終身雇用化のことでしょうか?)を「支援する」と言っても、これは(文字通り専制政治でさえどうこうできない経済のうねりで非正規化が生じているもので)政治が号令かけてできるものではありません。
ベルトコンベアー方式に始まる分業化の進展が仕事を細分化する一方であり、細切れの作業工程の結果、引き継ぎらしい引き継ぎ不要の細切れ交代就業を可能にして来ました。
マクドナルド店員やクリーニング受付で言えば、5時間前に出勤した人も1時間前に出勤した店員も顧客サービスに差がありません。
工場のラインでも同じです。
作業が細分化されて行くにつれて限定された作業能力さえ同じならばその他の総合力の比率がさがる結果、10〜20年の年功者も1〜2年前からの経験者も差異がありません。
タイピストや電話交換手のような特殊分野だけの細切れ作業分野が、家事保育や医療・介護・教育(全人格教育の掛け声があっても実際には塾の盛行に知られるように小学生相手の教育でもさえ専門分化が進んでいます)を含めてほとんどの分野に広がって来たのが現在社会です。この結果午前中だけや午後だけ、夕方から、週に2〜3日だけ働きたい人も働ける社会になっています。
正社員で働けるように支援するという時の「正社員」は何を意味するかを決めないと意味不明になります。
従来型意味では上記のような不規則〜不連続勤務しか出来ない人は臨時雇用原則で、正社員とは言われていませんでした。
社会構造が変わりつつある現在、従来型の正規非正規の区分けを前提に正規(正社員・終身雇用)社員就職支援するとすれば、時代錯誤な印象を受ける人が多いでしょう。
仮に正規(正社員)化に引き戻すのが正しいとしても「言うだけ番長」という単語がありますが、どうやって働き方を正規(終身雇用)化に変えていくかを政治家はいうべきでしょう。
「平和主義」というだけで平和は来ないので、どうやって実現するかこそ政治が語るべきなのと同様に、「正社員(終身雇用)化」普及が正しいとしてもそれをどうやって実現するかを主張してこそ政党の公約になります。
そもそも正規(正社員)と非正規(非正社員)の違いは何でしょう?
左翼生政治家は、平和主義というだけでどうやって平和を守るかの具体論がないのと同じで「正社員就職支援」というスローガンだけでは何もわかりません。
本来「正」に対する反対熟語は「不正」ですが、メデイアはしきりに「非正規」とマイナス的表現するものの、実はモグリでもなければ違法就労ではありません。
「正社員就労を支援する」の「正社員」自体曖昧模糊としていて、鳩山氏の「少なくとも県外へ!」のスローガン同様に国民に対するイメージ強調の印象です。
違法就労ならば権力者が合法化しそれまであった処罰を廃止すれば済むことですが、臨時雇用・短時間不規則勤務は違法でもない多様な雇用形態をいうに過ぎない・社会実態によるものですから、政党が「正社員就労を支援する」と言い、法令改廃だけすれば7〜8時間の連続勤務に変わるものではありません。
革新系には権力信奉者が多いので、政府が正社員を増やせといえば正社員が増えると思い込んでいる人が多いでしょうが、経済の動きはそうはいきません。
1日8時間以下の就労を禁止しても3〜4時間しか働けない人や、週に1〜2日しかバイトできない人が、毎日出勤できるようにはなりません。
あるいは、「日に数時間しか働けない人も今後正社員と呼ぶようにします」という「言葉狩り」ならば、あまり意味のない公約です。
アルバイトやパートも期間工でも皆企業にとっては正式雇用した従業員ですし、パート・バイト等も違法に企業内で働いているものではありません。
正社員とは何でしょうか?
ホンの一時期特定の歴史状況下で大手企業や公務員で主流「的」(終身雇用最盛期の高度成長期にも零細商店や個人的修理屋や中小規模の建設関連業種等々では、臨時雇用不定期就労者が国民の大半であったに思われます)雇用形態について、度重なる労働法判例によって不合理な解雇が認められない・雇用が守られるようになってきたのを、一般に終身雇用「制」といってきたに過ぎません。
労働判例の集積で守られるようになった「終身雇用」方式の被雇用者をいつから「正社員」と言うようになったのか知りませんが、その背後にはこれを正式就労形式と賞賛する意識があり、結果的に多様な労働形式を否定的に見る→画一労働形態社会にしていくべきとする意識の高い?人々が言い出したのでしょうか。
正社員・終身雇用を増やすべきかどうかの前提として、終身雇用「制」とは何か?と考えると「制度」ではなく単なる自然発生的・・多様な雇用形態の中で大きな落ち度さえなければ、希望すれば定年まで原則的に雇用が守られるようになっていた状態をメデイアが理想と考えて?これを「正式社員」それ以外は保障のない労働者=イレギュラーであり、ゆくゆくは淘汰されてくべき・・あるいは一段下に見下すべき階層を作っていく価値観があって「非正規」という言葉を普及させた用語と思われます。
共産主義思想・・労働組合に基礎を置く左翼系政党やメデイアにとっては労働組合によって守られた労働者・・これのみが「正」社員であって、この枠組みから外れたものを江戸時代の部外者「非人」的位置付けに差別化したものと思われます。
欧米の民主主義といっても元は「市民」と「それ以外」という差別思想を基礎にするのと同じ系譜に属します。
左翼系やメデイアの信奉する中国では今でも都市住民と農民戸籍にはっきり分けられて統治されているのと同じです。
韓国では大手(財閥系)企業正社員・労働貴族とそれ以外の格差が半端でない実態・このために大手(サムスン就職塾という個別企業就職塾が幅を利かしています)に就職するための専門塾が発達し就職浪人が普通になっている実態もはよく知られている通りです。
いわば、李氏朝鮮時代のヤンパン支配を就職試験で区別するようになった社会のようです。
このかなり後で書く予定ですが、欧米では何事も支配・被支配その他2項対立区分けが基本ですが、その影響下にあるように見えます。
ところで、わが国では不合理な解雇が認められないのはアルバイトやパート期間工でも同じですから、正規・非正規の問題ではなく多様な契約形態による効果の違いであり、結局は期間の定めのない雇用契約の解約事由と期間の定めのある雇用契約の解雇事由をどう区別すべきかの問題です。
また各種年金や保険加入等のインフラ参入の資格も正規化非正規かによる区別の合理性がない・・多様な就労形態に応じて多様な加入資格/あるいは給付内容を多様化すれば良いことで、非正規=何の社会保証もないという極端な格差を設けることがおかしいのです。
公権力で長期雇用を商店等零細企業(繁閑差の大きい商店やリゾートホテルなど)に強制するのは無理すぎるし、一方で短時間・不規則に働きたい需要を禁止するのも無理過ぎます。

希望の党の公約等4(法人税軽減の逆張り)

希望の党の公約等4(法人税軽減の逆張り)

民間企業は経済変動や社会変化への対応・・構造転換コストなどに備えるための予備資金を持っているのであって、この決断は配当を受けるべき株主の承諾によるものです。
本来株主は(株主総会・株価変動を通じて)税引後利益全部を配当して貰う権利行使を我慢して一定額企業に保留してこの資金で再投資などするのを許容しているのであって、企業が予備資金を持っているからと政府がとりあげられる・どうせ取られるならばと結果的に利益100%社外に流出させるのでは、経済変動に耐える力が削がれてしまいます。
個々人が数万円前後多く配当してもらうよりは、これを企業が安定資金として持っているか、まとめて将来のための研究資金に使うとか、増産投資立ち上げや企業買収資金等に使うかを個々の株主が決めるのが資本主義経済の醍醐味ですから、その選択(配当を多くもらって友人との食事等に使うか、企業に使い道を委ねて大きく使ってもらうかは市場経済・個々の株主の判断に委ねるべきです。
政府が増税の脅迫で個人還元を強制するべきではありません。
ただし、資本家が大金を溜め込んでいるというやっかみ的批判・・感情論による制裁的内部留保吐き出し要求ではなく、株主の多くが本当に将来のために内部留保する意思があるのか?単なる擬制ではないか?という視点からの再チェックは必要です。
このためには・・投資意識確認と税金納付という意味で、税引き後利益は実際に配当しなくともこの時点で配当を 受けたものとみなして源泉徴収してしまう方法も検討の余地がありますし、株主意思の再確認のためには少なくとも税引き後利益のうち50〜80%(2〜30%は予備費)までを実際の配当を義務付け、企業買収や新規投資金が必要ならばその旨明示して市場から再募集する・増資で対応するのが合理的という政策選択肢は将来あり得るでしょう。
韓国文政権も日本の革新系政権も同じですが、口先では人権重視と言いますが個人の決めるべき領域に国家が踏み込みすぎる傾向があります。
内部留保課税は法人税の2重取りですが、小池氏は一方で法人税減税も求めているのですから(法人を痛めつける気持ちはないという意思表示でしょうが・・)おかしな主張です。
19日引用した続きです。
http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/171112/ecn17111209150001-n2.html

企業に「ため過ぎ」批判 内部留保課税は有効か 論説委員・井伊重之
2017.11.12 09:15
小池氏は東京をアジアにおける国際金融都市とするため、政府に法人税減税を求めている。法人税を下げる一方で、内部留保に課税するのではアクセルとブレーキを同時に踏むようなものだ。

内部留保課税は法人税重課政策ですが、法人税軽減化の流れをどう理解するかの問題でしょう。
以下は法人税率をめぐるアメリカの動きと国際比較です。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGN28H04_Y7A920C1000000/
米大統領「歴史的な減税」 法人税下げ20%案を発表 2017/9/28 5:48
【ワシントン=河浪武史】「トランプ米大統領は27日、連邦法人税率を35%から20%に下げる税制改革案を正式に発表した。」
これがようやくこの11月に下院通過したという報道です。
https://www.iforex.jpn.com/analysis

税制改革法案が米下院を通過-8537
(2017年1月現在)筆者 鳥羽賢 | 11/17/2017 – 09:40
「アメリカで16日に税制改革法案が下院を通過した。上院は別法案を提出トランプ政権の目玉政策である税制改革法案が、16日に米下院を227対205の賛成多数で可決した。この中には法人税減税の2018年実施が盛り込まれている。しかし上院の方は法人税減税を2019年にする別の法案を提出しており、今後は上院と下院で審議がもめることが予想される。この通過を受け、16日のNY株式市場は大幅高となった。」

アメリカで法人税減税法案が下院を通過しただけで株式相場が大幅アップしたことからみて、・・内部留保課税・実質的法人税アップの脅しがあると、この逆張りの効果・・2回税金を取られるよりは配当を増やそうとするので一時的に配当が増えて株主の懐が潤い、一見消費がふえますが・・企業の景気や社会構造変動に対する耐性が落ちることから株式相場で見れば大幅に下げてしまう方向に働くことが明らかです。
目先消費を増やせそうに見えますが、株式の値上がり益による消費拡大とどちらが健全か明らかでしょう。
小口株式保有の一般市民とって小銭が同じ額入るならば、税に取られる前に急いで分配してくれるよりも大幅減税を市場が好感して株式相場が大幅アップしたことによる方が合理的です。
https://www.nikkei.com/markets/kabu/japanidx/によると11月18日現在の東証時価総額は以下の通りです。

東証1部     東証2部   ジャスダック

時価総額(普通株式ベース)   6,597,983億円   106,804億円   105,901億円

東証だけで約680兆円ですから、もしも1%値上がりで6、8兆円2%で13、6兆円の値上がり益・日銀が13、6兆円を市中に資金供給したのと同じだけのインパクトがあります。
外国人投資家の 保有分もありますので、全部が国内で循環する訳ではないとしても大きな経済効果です。
1日で1%の変動が滅多にないとしても1ヶ月単位だとその何倍もの変化があるとした場合、消費拡大・経済活性化に大きな影響があります。
内部留保課税によって企業を痛めつけるのとどちらの方が税収増加/国民の懐を温める効果プラス株価上昇による心理効果が大きいかが明らかです。
ちなみに我が国の最近株価変動のグラフは以下の通りです。
http://ecodb.net/stock/nikkei.html日経平均株価の推移(月次)

ところで、厳しい国際競争下にある現在、世界の法人税の趨勢を無視できません。
現在世界最高税率のアメリカが法人税大幅減税に成功すると、日本が世界最高税率の国になります。
このまま放置すると軍事力背景にトランプ氏のように吠えて回る方法のない日本から、大手世界企業が徐々に日本から逃げていくのをどうするかの大問題・・・トヨタなどの民族愛だけに頼っていつまで持つのか?の心配があります。
いきなり本社移転しないまでもシンガポールなどにアジア統括本社を設けるなどのかたちで徐々に動き始めている現実を無視できません。
この国際情勢下で日本が内部留保=二重課税・法人税増税にひた走るには、ムードだけではなく、かなりの突っ込んだ根拠が必要です。
希望の党の公約では内部留保課税だけではなく、法人税軽減を主張しているのですが、内部留保課税は結果的に法人に対する重課税路線ですから支離滅裂の印象です。

 

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