最低賃金引き揚げ4と外資流入減4

中国国民不満の激しさについては別に機会があるときに譲って、外資流入減問題に戻ります。
地方政府・幹部→中央の大幹部の搾取・私腹を肥やす構造をそのままにして、庶民の不満解消のために外資(に限らず国内企業も含めて)に賃上げを要求・強制するのでは、外資(国内企業)にとって投資効率が悪くなってしまいます。
諸外国との賃金格差があってそのコスト計算の結果、巨額の初期投資をしてもペイするので外資が中国に投資するのですから、工場・店舗等立ち上げ後操業時に高騰した賃金を払うリスクや暴動リスクが出て来ると、外資は新規投資をやめるか抑える・・慎重方向になります。
(中国国内資本でも外国へ逃げ出す余力のある企業は、国内新規投資・第2〜3工場増設よりはベトナム等に生産工場を一部新設する方向になります)
借地や家賃で言えば、賃料が安ければ契約時の権利金支払が割高でも良いが、賃料が高額ならば、契約時に支払う権利金・保証金等初期投資を少なくしないと借りないでしょう。
工場用地や店舗用地購入金額・初期投資資金も、操業後の収益を計算して行なうものですから、初期投資金とその後の収益予想(工員・店員等の給与水準あるいはその後の暴動リスクを含めた収益率)とは相関係数になります。
最低賃金の強制的引き揚げ政策は・・結果的に地方政府に支払う土地代金や幹部への裏金その他の初期資金=外資導入額が減る方向になるので、結果的に共産党幹部の懐に入るお金が減り・・格差率が下がる方向に落ち着くのでしょう。
共産党大幹部相手に難しい汚職撲滅運動・・時々見せしめ的に高級幹部の摘発をするよりは、最低賃金引き上げを企業に強制する方が・・これが大量失業を引き起こさないで成功した場合のことですが、実は幹部の汚職縮小・・格差是正に効果が高いことになります。
実際には賃上げによって経済が縮小して失業が増え、他方で末端・部下・汚職協力者への分配金が減ることによる忠誠心喪失となり、却って社会不安が増大します。
失業増大も見方を変えれば,所得分配機能の喪失状態と言えます。
所得分配構造が機能しなくなってリビヤやチュニジュアの春その他アラブで騒乱が起き始めたことをこれまで書いてきました。
ちなみに、人件費上昇分として土地代・初期投資が下がれば良いというのは、個人経営の場合のことで、法人企業の場合はそうでもありません。
企業決算では、土地等はバランスシート上取得資金がそのまま資産計上されるので経費(マイナス)になりませんから、土地購入代金の上下は(評価損を計上しなければならない場合以外)短期的には原則として決算には何ら反映されない・・中立項目です。
短期的には操業後のフローコストの方が、企業収益発表(株主対策)にとって重要です。
土地購入資金が半値〜3分の1に下がっても、(評価損を計上しなくて良い限度では)法人のバランスシート上は中立ですから(ただし初期投資資金が借入による場合、各年度の金利負担は減るでしょうが・・その程度の誤差です)労賃が高くなって経費率が上がると、各年度の決算上は労賃の上がった分だけ利益率が下がり・もしかしたら赤字になります。
法人企業にとっては、初期投資資金が安くなれば、その分開業後の賃金が高くなっても良いとは言い切れません。
地元政府にとっても同じで、苦労して誘致しても初期投資が減ると地元政府に入る公式資金が減るだけではなく、幹部の懐に入る裏金が比例して減るので、地元政府・幹部の誘致熱意が以前よりも下がります。
あれやこれやで、ローエンド工場向け外資流入が減り、この種工場が逆に中国から出て行く一方になりつつあります。
他方で中級品工場設置目当てに入って来る外資が増えるならばバランスが取れますが、まだ中国では中級品製造技術が殆ど成長していないので、逆に資金流入が下火・減少して来たのが、この1〜2年の傾向でした。

犯罪多発社会と正義感

中国政府は内政がにっちもさっちもいかなくなったことから、尖閣諸島に限らず周辺国との領土問題を起こして国民の目をそらせようとしていると言えないこともありません。
中国がイキナリあちこちで始めた領土紛争はうまく行けば政権の得点になるし、逆に危機的になればなるほど国民の不満・関心をそらせるメリットがあります。
一見1石2鳥のようですが、そんなうまい結果には滅多になりません。
この方式は自ら反省する・・国民の不満に正面から向き合わないで、一時的に関心を逸らせる最低・安直な方法ですから、むしろ事態を悪化させるばかりで抜本的解決にはなりません。
安直なだけにどこの国でも、子どもの躾をマトモにしない母親が・・言うことを聞かない幼児に「お巡りさんが来る・・」と脅して黙らせるなど・・レベルの低い人が昔から採用する方法と同じです。
中国人民が貧しいのは太古の昔から最近の解放前までずっと続いていたことですから、(大躍進政策では約5000万人も餓死しているというのですから、貧しさも半端ではありません)貧しくなって怒っているのではなく、不公正な政治に国民が怒っているのです。
巨額流入している外資・巨額資金を特定のグループ・・共産党幹部・・これを順次下部へお裾分けして行ったとしてもお裾分けしてもらえない・関係のない人の方が多いので・・関係のない階層にとっては一部のグループが私腹を肥やし過ぎている不正に対する怒りが強まります。
産油国で原油採掘料収入を国王一族が独り占めにしていると、国民が不満を持つのと同じです。
中国人でも自分が損しているときには正義感が働くのを見ると、中国国民に正義の物差しが全くないとは言い切れません。
普段から権力者の不正義に慣れているから、日常的に自分も不正をすることを何とも思わなくなっている・・自分だけ正直に生きているとバカらしいと思うようになって,他人がゴミを捨てて汚くするなら自分もゴミを棄てる・泥棒やその他各種違反をやり返しているだけかも知れません。
中国人でも日本に来れば道路に痰を吐いたり、放尿するのをあまり見かけません。
泥棒や交通違反、暴力行為・汚い行為が多ければ自分もやり返せば良いという互換性がありますが、権力に近いことによる私腹を肥やす行為がある程度まで我慢出来るとしてもその程度を超えれば、互換性がない分許せない気分になるのでしょう。
競馬で他人が万馬券当てても腹が立たないのは挑戦権が平等・・互換性があると信じている・・今度は自分も・・説きたい出来るからですが、これが八百長だったとなれば話が変わります。
この点同じ格差社会と行ってもアメリカのジョブズやビルゲイツ等の巨額収入格差と中国共産党幹部とは意味が違うと「腐敗政治と最低賃金引き上げ1」  May 19, 2013に書きましたが、誰でも挑戦して成功すれば良い社会ではない・・生まれつきの共産党大幹部の子弟(太子党)かどうかにかかっている点・・王朝社会の身分制を引きずっている点が違います。
共産党幹部の巨額収賄行為は立場が代われない点で,八百長で損をした・・そりあ大騒ぎしますよ!・・その他大勢の競馬ファンの関係になります。
アメリカのように誰でも挑戦権がある・・能力次第の社会であっても、あまりにも格差が開いてきたので社会問題になったのですが、中国の場合・・能力次第でもない上に共産党大幹部が私腹を肥やす程度と国民の苦しみとの格差が激しすぎる・・不正義が大きくなり過ぎたことによって我慢の限界に来ている感じです。

逆グローバル化時代(資本引き揚げに直面する韓国・中国)

通貨下落が一時的なものならナンピンを掛けるつもりでドル下落に乗じて更に追加投資出来ますが、今後も持続的に通貨がドンドン下落するとなれば新規投資を出来ませんし、逆に既存投資を引き上げる動きとなります。
株式相場で言えば下落が一時的か持続的かの見通しによって、投資家が売り急ぐか底値買いを入れるかの態度を決めるのと同じです。
これがアジア危機であり韓国通貨危機でもあって、今回の欧州危機で昨年秋に韓国の通貨危機が再燃しかけた原因です。
早く売り抜けて下がり切ったところで買い戻せば大もうけします。
アジア通貨危機のときに売り浴びせて大暴落した後で欧米金融資本が底値で買いあさって、大部分の韓国資本の買い占めをして主な企業を支配下に置いてしまいました。
その後韓国は欧米の非公式植民地化してしまい、通貨安で国民に犠牲を強いていくら儲けてもその儲けは海外に持って行かれる構図・・国民が悲惨な状態に陥ってしまいました。
韓国がもう一度通貨危機になるとそれこそ根こそぎ欧米資本に収奪されてしまうので、(今は外資占有率が約7割と言われますが、残り3割は財閥系個人が占有しているので一般国民に企業利益の恩恵が及びません)今度危機が来たら99%近くが欧米資本に買収されてしまいかねません。
韓国に泣きつかれて、昨年秋に日本がいつでも巨額融資しますというスワップ協定を締結し、さらに「韓国国債も買いますよ」と約束したことによって、韓国ウオンの底割れ懸念が薄らいで漸く韓国の通貨不安・・売り攻勢が収まったばかりです。
ロシアに併呑されそうになっても宗主国の中国が何も出来ないので、日本が助けてやったのに、今になって文句言われているのと似た構図です。
欧州危機小康化の原因について誰も書きませんが、マスコミは欧州中央銀行の誰それが何を言ったという意味のないニュースばかり流しますが、そんな口先の議論で(長期的には意味があっても)目の前の危機が小康化することはありません。
日本がIMFに巨額増資引き受けを決めたことによって、それ以降ぴたりと収まって小康状態になったものです。
巨額外貨準備を豪語している中国は、自分自身が外資引き上げに直面していて人の面倒を見るどころではないことから、結局IMF増資に1銭も出せませんでした。
ちなみに中国では資金流出が深刻になっていて尖閣諸島問題の大騒動のサナカにも中国への投資促進のミッションが日本国内を回っている状態です。
新規技術導入が停まっているだけはなく、内需拡大策を打ち出しているもののその資金がなくて困っている状態になっているのです。
前向きに応じれば尖閣諸島への圧力を弱めても良いというくらいの脅しと一体化した動きです。
今や世界の富みの何割かが日本に集中し、しかも余剰資金は日本にしかないので資金出し手は日本しかない現実があって、日本の挙動が世界経済を動かす時代です。
通貨安競争の継続は資本引き揚げリスクと裏表ですが、(昨日書いたように物事には副作用・マイナス面があります)韓国はウオン安で日本との貿易競争で有利になっている分のリスク・・資金引き上げリスクげ現実化していたのです。
このリスクを日本がファイナンスしてやっていることによって免れたので、恩を仇で返すために安心して日本を標的にした通貨安競争を仕掛けているのです。
今や韓国は危機を脱したので表向き怖いものなしというところで、「日本の力は落ちた」と宣言し「天皇を後ろ手に縛り上げてに謝りに来い」という非礼発言に繋がっています。
実際にはこれまで書いて来たように資金引き上げに直面して際限ないウオン安に見舞われている韓国経済まだ日本の買い支え協力宣言で小康を保っているに過ぎず、実態は破産の瀬戸際にあって苦しんでいるのですが、こういうときに空威張りしたくなるのが韓国流思考方式です。
空威張りの延長で日本をもっと困らせばもっと協力して貰えるだろう式の発想で最近特に問題もなかった竹島をイキナリ争点にして喧嘩を仕掛けて来たものと思われます。
日本歴代政権はこれまで韓国と中国に対しては理不尽なことを言ってくれば怒るのではなく、その都度何かを渡してうやむやにして来た歴史が彼らを増長させて(品性を卑しくして)しまったのです。
「日本の国力が落ちた」と韓国の李大統領に言わしめたのは、これまで何でも聞いてくれたのにこんなに怒るとは・・「大人の風格がなくなった」という李大統領の嘆きとも受け取れます。
今回は天皇にまで言及してしまったので、如何に大人しい日本でも、ここはケジメを付けさせば一歩も引かないところに来てしまいました。
「通貨安競争をやめる」「竹島は日本領土である」「慰安婦問題はでっち上げで申し訳なかった」とはっきり認めるまでは、すべての援助を打ち切るべきでしょう。
韓国がデフォルトになれば日本も困るから助けるというマスコミが多く、今回の争乱でも中国から観光客が減って困るという変な報道ばかりします。
僅かな痛みを強調することでいつも譲るばかりでは何も解決出来ないし、その是非については明日書きます。

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