国内生産過剰9(人口縮小策3)

1943年の300万人に及ぶベンガル飢饉は有名ですが、これはチャーチルの政治責任による飢餓・・植民地支配害悪の象徴ですが、インド独立後・私の20代にもこのような大飢饉があってしょっ中写真等で(2〜3年も続けば大ニュースです)今年も飢饉と言う形でガリガリにやせこけた子供の写真が繰り返し報道されていました。
その頃貧乏人の子沢山と言う解説が流布していたので、私の基礎意識に刷り込まれてしまい、その延長観念で書いていますが、今の学問では(全て政治責任?)間違っているかも知れません。
インドで繰り返されていた飢饉は、イギリスの植民地化による継続的赤字・・搾取されつづけていたので、搾取されたことによる失業の増大・・マイナス圧力に安易に人口縮小で適応して行くことはできない民族抵抗の意地・歴史の故だったかも知れません。
(イギリスは7つの海を支配していたと習いますが、実際にはインドを除く全世界に対して貿易赤字でした(これがアヘン戦争の原因ですしアメリカ独立戦戦争の原因でした)が、対インド貿易だけ黒字・・対インド搾取で赤字の穴埋めをしていたのでインドは「大英帝国の宝庫」と言われていたのです)
戦後イギリスからの独立後も飢饉が相次いだ理由は、インド政府の内政能力の低さによるように思われますが今のところ私にはよく分っていません。
仮に民族存亡の危機感が貧乏人の子沢山現象を生じさせているとした場合、合理的冷静に考えれば、例えば、1億人が3〜4000万に減ったところで安定して豊かな生活を出来るとすれば、そこまで減少するように努力すれば良いのであって、人口が適正なところまで減ること=民族存亡の危機とは関係がありません。
企業が過剰生産設備廃棄してスリムになって、利益率を改善するのが合理的行動であるように・・・逆に過剰設備・過剰雇用のママでは却って全滅してしまいます。
製品輸入国・・農業だけの国の場合は、1000万人分の食糧・農産物生産出来ても生活水準の上昇につれてその500万人分→600万人分→700万人分→800万人分の食糧を輸出してでも洋服や原油・鉄鉱石や電気製品・車を買わねばならないので、(農家が全部自家消費出来ないのと同じ原理です)人口を減らして行く(仕事のある国に稼ぎに出る)か生活水準を落とすしかありません。
即ち食糧自給率だけでは生活できないので、食糧生産で養えるよりはるかに少ない人口しか養えません。
国内でも純農業地域は江戸時代以上に生産性が上がって米や野菜を作っていますが、家族で全部食べてしまう訳には行かない・・子供を進学させたり車や電気製品を買うようになると農産物の大部分を売るしかない・・それでも足りない分は出稼ぎに出る・・結局は養える人口が減って来て過疎化が進みます。
過疎化はいろんな角度からの分析が可能ですが、詰まるところその地域で養える人口・・生産量が少なくなると言う経済現象に忠実に適応している結果です。
高度成長(生活水準上昇)と高度成長について行けない農村地域の急激な人口減少圧力→急激適応は地域社会崩壊を起こしますので、緩和措置として公共工事、地方交付税その他で中央から過疎地へ資金投入を続けた事自体は、(高度成長期には中央に資金が集まっていたのでこれが可能でした)正しかったと思います。
今後は日本の地方だけではなく、国全体が貿易赤字になって行く過程が始まると国全体で人口減社会に適応して行かねばならないのですから、激変緩和措置の資金源として、これを海外収益の送金がある間にやるべきだ・・少子化をもっと早く進めるべきだと繰り返し書いてきました。
EUで言えば今のところ南欧諸国は(日本の地方同様)赤字で、ドイツやオランダなど(日本の東京、大阪・名古屋圏のように)が黒字ですが、EU全体が将来赤字化して行くことも考えられます。)
EUは次々と周辺後進国を取り込んで消費人口を増やしてドイツ等先進国がこれを市場にして成長していますが、規模が大きいので分り難いだけです。
10月8日の最後に書いたように、客を増やすために従業員を増やして従業員に食わせたり物を買わせているので、外見上売れ行きが良くなったと言っているようなものです。
給料等生活費負担するのが東欧や南欧諸国で、車やラーメン・ハンバーガー等の売上を持って行くのがドイツ等北欧諸国と、遠くに分かれているので分り難いだけで、これを1つの企業・経済体としてみれば簡単です。
1企業で見れば従業員を増やしてパンなど多く買わせても、一方で給与支払が増える関係ですが、EU内先進国は給与支払を域内他国に押し付けている関係です。
日本の場合地方交付金等で再分配していますが、EUではこの機能がないままですから南欧諸国が一方的に割を食っていることを南欧危機に際して書いたことがあります。
EU全体で見れば、人口を増やして(版図を広げて)1時的に売上が伸びても、結果的に養うべき人口が増えているので、最後は地盤沈下に苦しむことになるでしょう。

国内生産過剰8(人口縮小策2)

経済の活性化=国内生産が減るのを防ぐには、輸出用国内生産維持・拡大の見通しが立つようにすることが必要です。
輸出産業が、ドンドン海外立地して出て行くのは止めようがないのですから、新たな輸出産業を育成しない限り国内産業は内需向けばかりになってジリ貧です。
長期的な成長戦略としては農産物輸出品育成こそが有望です。
工業品はいくら良い物を開発してもすぐに海外進出するしかなくなるので、今後工業製品の新規開発・研究は労多くして実があまりありません。
研究開発には多大なコストがかかるのに、これを真似する方はジェネリック薬品で知られているとおり安く出来るからです。
サムスンも日本の開発した技術を模倣しているうちは有利でしたが、トップランナーになると(日本企業がこの分野から撤退してしまって、日本の研究開発・技術者引き抜きができなくなったら)行き詰まるだろうと言われていましたが、最近の急激な売上減を見ればその結果が出て来た感じです。
その点、食料品は(特に味付けなどは)簡単に真似できない上に気候性があるので簡単に海外で真似して作れませんので、長期的に輸出品・交易品としての地位を維持出来ます。
日本人の味覚が優れているので、輸出品にするつもりで頑張れば必ず良いものが作れるでしょうし、農業に力を入れて農産物や嗜好品輸出に活路を見出すのが今後有望な選択肢だと思います。
日本はアメリカやオーストラリアと量で勝負する必要がなく味で勝負すべきです。
とは言え、工業製品と違って食糧増産で大量の労働力がいりませんので、工業品輸出時代に増やした人口・・従来どおりの多くの人口を養うのは無理があるので、長期的戦略としては工業品輸出開始前の適正人口に減らして行く必要があります。
人口拡大策に反対の意味でもう一度書きますと、内需用の人口を百倍千倍に増やしても、増えた人口を食わさねばならないし、輸出用生産が減って行き内需分しか生産できない限り、国内総生産が減って行く・・景気沈滞の方向性が変わりません。
しかも貿易赤字拡大傾向のママ内需ばかり増やすと、これまでの蓄積の食いつぶしが早くなるだけであって、経済破綻してしまう時期が早く来てしまいます。
過去の蓄積で次の時代が到来するまで食いつなぐには、植物が葉を落とすように冬の間身を小さくする・・少ない人口で使った方が長持ちできます。
輸出増=貿易黒字国は赤字国に失業を輸出していると言われていましたが、輸入品に押される国では、職場縮小して行くか、賃金下落圧力が高まる(非正規雇用化)と次世代を養えないので(非正規雇用では結婚できないと世上言われています)必然的に窮乏化→人口が縮小して行くしかありません。
イキナリ融資枠を増やして国内消費を増やしても、一時しのぎにしかならず、(今後の赤字補填用資金が早く減るだけで)どうなる訳でもありません。
雇用が減れば雇用できる産業を増やすか、これが出来ないならば労働者の供給を減らすしかないのですが、(企業は売上が減ったら売り増の努力するか、経費・雇用削減の2択しかありません)これを政治家が言えないで、逆に人口増加を叫んでいるのですが、(国民は賢くてこの宣伝には乗らないので助かっていますが・・)こんな政策がもしも実現すれば国の将来を危うくするものであって、言わば国賊ものです。
世界中では、人口を減らしましょうと言える政治家はいないので政治家の自己保身政策としての政治的プロパガンダを真に受ける国民が多く、貧乏人の子沢山と言われるように大量の餓死者を出していてもなお多くの子を産み続けて来たのが、アフリカやインドの現実でした。
最近の人はアフリカの飢饉くらいしか想像できないでしょうが、私の若い頃にはインド飢饉がしょっ中報道されていました。
ウイキペデイアの飢饉の一覧を見ると以下のとおりです。

1965年–1967年 – インドで旱魃のため、150万人が死亡した[67]。
1967年–1970年 – ナイジェリアの封鎖により、ビアフラ共和国で飢饉。
1968年–1972年 サヘルの旱魃のため、100万人が死亡する飢饉が発生[68]。
1973年 – エチオピアで飢饉。政府はこの危機の処理に失敗した。
1974年 – バングラデシュで飢饉。

国内生産過剰7(金融政策の効能)

従来から繰り返し書いていますが、金融収益は時間稼ぎや一時のショック療法にはなりますが、億単位の国民を長期に養えません・・いくら株価を上げても恩恵を受けるのは株主だけですし、しかも3割の外国人投資家が収益を3割外国へ持って行ってしまいます。
歴代政権は成長戦略と言う名で公共工事や商品券その他バラマキを続けてきましたが、今度は株主限定の一時金バラマキと評価できます。
一握りの株主優遇策と言う批判を避けるために5万円10万でもほぼ誰でも参加できるように個人株主の裾野を広げるための政策/NISAが展開され、これがしきりに宣伝されています。
一握りの株主ではなく5万円10万円の株主が100〜200万人増えれば、その人たちも株価上昇政策を支持してくれると言う政治的読みでしょう。
しかし、この政策は5万10万の小金しか持っていない非正規雇用の人も参加できると言うだけであって、経済効果で見れば、株式市場は参加数を増やしても恩恵は頭数に比例しないで金額に比例する仕組みですから、金額比率で言えば彼らは一握りにさえ行かないホンの僅かです。
10万円で買った株式が5%上がっても金額的には大したことがありませんが、何億単位で持っている人や機関投資家にとっては大きな意味があります・・・・結果的に外国人株式保有比率が急激に上がっていることからも、超金融緩和の目指す真の政策意図が分ります。
金融超緩和策が、株価上昇策以外に実体経済にどのような効果があるのか見えません。
日本の大手企業の内部留保・・使い道のないまま眠っている資金の巨額さがいつも批判されていますが、このような資金あまりの日本で金融緩和しても、銀行が企業の投資資金を貸しようがない・・国債購入や株式バブルに向かうしかない状態です。
今朝の日経新聞を見ると金融庁は検査基準をリスク先へどれだけ貸しているかをプラス評価に改めると書いています。
リスク先以外の優良企業では資金あまりで借りたがらないから、いくら緩和してもどうにもならない実態・・リスク先へもどれだけ貸しているか・・もっと果敢に貸せと言う行政指導を強化する意味を表しています。
こうした行政圧力の結果、その先に発生する大量の貸し倒れの損害を誰が責任持つのでしょうか?
金融緩和政策や法人税減税政策は外国人投資家にメリットのある政策・・株価上昇政策になるので外国人には人気があるでしょうが、本当に国内産業振興策になるのか・・むしろ貴重な資金(人口減が実現するまで赤字補填に徐々に使って行く必要のある資金を)を外国人にバラまいて(早く国力消耗して)終わらないか心配です。
成長戦略の意味は、事業主に取っては国内事業拡大よりは海外進出を成功裏に行なうことが多くの企業の目標ですから、株が上がって資金力に余裕ができても国内投資より海外進出に使うでしょう。
上記結果地方での成長戦略とは、地銀や地方中小企業でも如何にして海外に出て行くか(輸出比率を下げる話題・・)世界は広いぞ!の話題ばかりで県内で新規立地して生産し海外輸出しようとする企業は皆無です。
弁護士の世界でも海外雄飛しませんかの話題が成長戦略のような印象になっていますが、皆様の世界・業界ではどうでしょうか?
人口を増やせばその分内需が増えると言う変な論理で人口減抑制//人口拡大政策がマスコミで盛んです。
しかし、その分養うべき人口も増えるでしょうから、現在の国内生産業のうち、輸出用国内生産比率が3割だとした場合今後この比率を維持できるか減って行くのかの議論が重要です。
現在存在する輸出用国内生産比率が今後2割→1割と減って行き、最後は内需分だけしか生産できなくなると資源輸入が出来なくなります。
貿易赤字の結果は別に考えるとしても、輸出用生産が減る分を内需で補うために人口を増やすのでは無理があります。
「車やテレビの輸出が減った分を補うために人口を増やして国民が買いましょう」と言う政策っておかしいことは誰でも分るでしょう。
ラーメン屋や百貨店の客が減ったら、従業員を100倍に増やしてラーメンを食べてもらい、百貨店で買い物してもらおうと言う政策と同じです。
いま金融緩和でこれの後押しをやろうとしていることになります。

国内生産過剰6(人口縮小策1)

工業国が製品輸出する能力が落ちると、食糧その他資源を自給できない国は資源輸入代金の支払能力が下がりますので、食糧その他資源等を自給できる限度プラスアルファまで人口を減らして行くか、生活水準を落として行くしかありません。
原油代金支払いに困れば電気ガスの料金値上げ→利用を減らす・・あるいは食糧輸入(高級食材輸入減から始まるでしょう)を減らす・すべての分野で質素倹約しかなくなるでしょう。
適正人口まで縮小する前に単純に輸出を減らして行くと、赤字が膨らんでギリシャ等南欧諸国同様の結果になってしまいます。
輸出不振で生産量が減少し、輸入品に押される国では、国内生産業生産減にあわせて雇用を減らす→失業増大=購買力低下しかありません。
貿易収支の赤字転換が始まると赤字幅拡大は急激ですが、人口は急には減らせないので当面は財政赤字で政府(失業保険や公共工事で)あるいは企業が(社内失業の抱え込みや円安による輸入代金アップを直ぐに価格に反映しないで)負担して、国民にはすぐには直接負担させないでしょうが、いつまでも続きません。
貿易赤字が恒常化すると継続的通貨安になり輸入物価が上がり続けますが、これもすぐに価格転嫁しないで補助金で何とかするのが普通です。
しかし、いつかは財政赤字の穴埋めのために日本のように増税するか、電気代等輸入関連品の値上げ・・収入が増えないで値上げが続けば節電・節約と言う名の窮乏化が始まるしかありません。
7月6日の日経新聞5pダイジェスト欄には、エジプトが財政赤字に耐えられなくなって、ガソリンを78%も値上げする(→消費減退=窮乏化の始まりです)と出ていました。
経済縮小中の国では当初政府や企業が輸入価格アップ分を抱え込んでいても、いつかは増税か価格転嫁しかありません。
収入減少中のときに増税するのは無理があるので、(政府による差額負担金の減少・・ガソリン価格値上げ))物価上昇と言う形で国民に転嫁して行くしかないからでしょう。
企業の場合、社内失業を抱えている帳尻あわせに政府のように強制的に値上げすることも出来ない・・経済縮小中=不景気下で市場原理によれば値上げできないとなれば、最後は解雇するしかなくなってきます。
日本の場合企業に体力があった(海外展開して収益の送金があった)ので約20年間時間稼ぎをしていて、毎年定年で退場して行くのを待っていられた(・・補充を非正規雇用に)し、値上げしなくても何とかなったので幸せでした。
さすがに日本も、政府は増税し民間は徐々に値上げしないと成り立たなくなって来たので、安倍政権は消費税アップと値上げムード醸成に必死になっています。
いわゆる不景気下の物価上昇・・スタグフレーションの始まりですが、安倍政権はこれを誤摩化すために当面は株価上昇から入って行きます。
金融操作によって株が上がろうと上がるまいと、これは飽くまで金融レベルの問題であって、海外進出トレンドによって国内生産が経済縮小過程に入っている点は変わりませんから、今後雇用は減少するし貿易収支は悪化の一途をたどることは間違いがありません。
貿易収支の悪化が続けばトレンドとしては円安になる方向性ですし、輸入物価が上がるトレンドになります。
人件費も上がると言うアナウンスで国民を安心させた上で、輸入物価の上昇・・電気代等を引き上げるもくろみがあるように思いますが、実際には国内生産が減って行き雇用数が減少するしかない以上は、国民の数が同数であれば一人当たり収入が減って行きますので局部的な賃上げは別として日本全体の賃金底上げは難しいでしょう。
マスコミが現場系労務者不足→単価上昇を大宣伝して如何にも賃上げが始まる印象を広めていますが、現場系労働者は日本の局部であって全部ではない・・大多数を占める常用雇用者の賃上げには結びつきません。
常用雇用者の賃上げには国内生産力増強が必須要件であって、株価上昇は関係がありません。

海外進出と現地化(本国生産縮小)

世界企業の国際進出競争は当面新興国の人件費の安さに注目して完成品の輸出基地としての利用目的でしたし、(日本の場合欧米による貿易黒字対する圧力回避目的に合致しました)中国等も原則輸出基地として(全量輸出)のみ特区を作って進出を許可していました。
国内販売を認めなければ国内企業が先進国企業によって淘汰されないで済み、外貨を稼げるほかに進出した企業で働くことによる一部国民の所得向上や技術移転が見込める1石3鳥の政策でした。
実際そのように進行していて中国に限らず東南アジア諸国の国民所得が上がる一方で、他方で地場産業が興隆していて、今や日本企業(サンヨーの白物家電部門は中国のハイアールだったかに買収されています)を脅かしていますから、この政策は成功を収めています。
輸出基地である限り完成品(現地組み立て)を欧米に輸出する競争だけで、部品には関係がないかのように見えていましたが、輸出基地としての工場進出によって現地人の所得が上がり、現地人が顧客に成長して行くのは時間の問題です。
低賃金利用による輸出代替基地から現地消費目的生産に代わって来ると現地人の嗜好にあったものをつくるしかないので、部品競争でも似たような競争となります。
部品自体にエンドユーザーーは関心がないのですが、ニーズにあったものを早く作るには部品メーカーが近くにないと困ります。
現地ニーズに如何に早く対応して製品を早く開発して市場に出すかの競争になると、納品の迅速さ・部品擦り合わせ作業などの競争があって、品質差が余程大きくないと遠くから輸出・納品する方が擦り合わせや即時納品競争に不便なので不利になります。
元々輪島塗であれ何であれ、特定産業の周辺にその関連産業が集積しているのが普通ですし、トヨタの周辺に部品工場が集積していた原理の国際版ですから当たり前です。
トヨタ・ホンダなどが海外進出すると部品会社もついて出て行くしかなくなるのは、この原理によります。
昨日書いたように貿易の活性化は物品や技術の偏在を調整が完了するまでの過渡的なものに過ぎないのですが、産業革命以降数百年かかっていたので貿易の活発化が恒久的・無限であるかのように誤解していたに過ぎません。
最近では通信技術発展の加速化によって、グローバル化のスピードが早いので今後20〜30年もすればこの過渡期が終わり、結果的に工業製品貿易量が急激に縮小して行くことになります。
当面は研究開発拠点が現地そのものではなく、地域統括本社みたいなものがある場所・・シンガポールみたいな地域が幅を利かすでしょうが、将来的にはそれぞれの国・消費地での研究開発が主流になって行く筈です。
「高度部品を日本は作っているから・・研究開発部門が残るからいつまでも貿易赤字にならない」と言う希望にすがりついているのは危険です。
(高度部品や基礎研究等は残るにしても、今の人口を養うに足る燃料や食料品等輸入を賄えるほど稼げるようにはならないでしょう)
この結果FTAやTPP等が進み関税等の障壁縮小がどんなに進んでも、・・進めば進むほどグローバル化の加速が貿易量の増加を招くよりは、逆に縮小方向になって行くだろうと言うのが私の意見です。
将来の現地生産時代到来・・物品貿易量が減少して行き、貿易黒字を少ししか稼げなくなると資源輸入代金の獲得源も縮小します。
グローバル化=現地生産化とは工業製品限定のことであって、食糧や資源類は古代からの原則どおり交易によるしかありません。
グローバル化が完成し、工業製品の世界平準化=自給自足化が進めば、工業品の輸出によって食糧自給能力以上に人口を増やして養っていた国ではその咎めが出てきます。
自給能力が人口の上限を決めていた時代には農業=領土の広さに人口が比例していましたが、工業品輸出代金で食糧等の資源を輸入できるようになると、この制約が取り払われて、輸出能力向上に応じた人口増が可能でした。
企業で言えば製品の売れ行きに応じて生産増→従業員増になっていたのと軌を一にしています。
この結果日本では幕末の3〜4000万程度の人口が今の一億数千万人までふくれあがって、なお豊かな生活が出来ているのです。

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