犯罪多発社会と正義感

中国政府は内政がにっちもさっちもいかなくなったことから、尖閣諸島に限らず周辺国との領土問題を起こして国民の目をそらせようとしていると言えないこともありません。
中国がイキナリあちこちで始めた領土紛争はうまく行けば政権の得点になるし、逆に危機的になればなるほど国民の不満・関心をそらせるメリットがあります。
一見1石2鳥のようですが、そんなうまい結果には滅多になりません。
この方式は自ら反省する・・国民の不満に正面から向き合わないで、一時的に関心を逸らせる最低・安直な方法ですから、むしろ事態を悪化させるばかりで抜本的解決にはなりません。
安直なだけにどこの国でも、子どもの躾をマトモにしない母親が・・言うことを聞かない幼児に「お巡りさんが来る・・」と脅して黙らせるなど・・レベルの低い人が昔から採用する方法と同じです。
中国人民が貧しいのは太古の昔から最近の解放前までずっと続いていたことですから、(大躍進政策では約5000万人も餓死しているというのですから、貧しさも半端ではありません)貧しくなって怒っているのではなく、不公正な政治に国民が怒っているのです。
巨額流入している外資・巨額資金を特定のグループ・・共産党幹部・・これを順次下部へお裾分けして行ったとしてもお裾分けしてもらえない・関係のない人の方が多いので・・関係のない階層にとっては一部のグループが私腹を肥やし過ぎている不正に対する怒りが強まります。
産油国で原油採掘料収入を国王一族が独り占めにしていると、国民が不満を持つのと同じです。
中国人でも自分が損しているときには正義感が働くのを見ると、中国国民に正義の物差しが全くないとは言い切れません。
普段から権力者の不正義に慣れているから、日常的に自分も不正をすることを何とも思わなくなっている・・自分だけ正直に生きているとバカらしいと思うようになって,他人がゴミを捨てて汚くするなら自分もゴミを棄てる・泥棒やその他各種違反をやり返しているだけかも知れません。
中国人でも日本に来れば道路に痰を吐いたり、放尿するのをあまり見かけません。
泥棒や交通違反、暴力行為・汚い行為が多ければ自分もやり返せば良いという互換性がありますが、権力に近いことによる私腹を肥やす行為がある程度まで我慢出来るとしてもその程度を超えれば、互換性がない分許せない気分になるのでしょう。
競馬で他人が万馬券当てても腹が立たないのは挑戦権が平等・・互換性があると信じている・・今度は自分も・・説きたい出来るからですが、これが八百長だったとなれば話が変わります。
この点同じ格差社会と行ってもアメリカのジョブズやビルゲイツ等の巨額収入格差と中国共産党幹部とは意味が違うと「腐敗政治と最低賃金引き上げ1」  May 19, 2013に書きましたが、誰でも挑戦して成功すれば良い社会ではない・・生まれつきの共産党大幹部の子弟(太子党)かどうかにかかっている点・・王朝社会の身分制を引きずっている点が違います。
共産党幹部の巨額収賄行為は立場が代われない点で,八百長で損をした・・そりあ大騒ぎしますよ!・・その他大勢の競馬ファンの関係になります。
アメリカのように誰でも挑戦権がある・・能力次第の社会であっても、あまりにも格差が開いてきたので社会問題になったのですが、中国の場合・・能力次第でもない上に共産党大幹部が私腹を肥やす程度と国民の苦しみとの格差が激しすぎる・・不正義が大きくなり過ぎたことによって我慢の限界に来ている感じです。

腐敗政治と最低賃金引き上げ2(暴動の頻発1)

最低賃金引き上げに成功して中国で仮に月額数千円賃金を引き上げても、流入した巨額外資(約1000億ドル)を地方幹部やその上の大幹部が懐に入れたままでは、農地を取り上げられて流民化(農民が都市に追い出されて農民工になっても都市戸籍を貰えない差別があります)してしまっている国民の不満が収まらないでしょう。
ところが、共産党幹部の腐敗政治をやめさせられないので、(これを本気でやると政府首脳の命取りになるので保身のために手をつけられないのが実態です)外資に賃上げを無理に飲ませることにしたのですが、こうなると採算が取れない外資だけではなく国内資本までも国外に逃げ始めます。
その結果、工場閉鎖の続出→失業増大・・あるいは新卒学卒の就職難(・・大卒のネズミ族の発生)で不満が極限に達している・・国内政治がどうにもならなくなっているのが中国政治の現状です。
中国では2011年度には年間に発生した暴動(無許可デモ→一般的には暴力事件に発展して問答無用で収監されますが・・)が20万件(公表データですから実際にはもっと多いでしょう)という日本では想像を絶する数字が発表されています・・殆ど中国歴代王朝政権末期の状態になっています。
タマタマうろ覚えだった暴動件数をサーチしてみたら、以下の文章が見つかりました。
暴動件数だけではなく、最低賃金引き上げに関しても私同様の関心で書いていることが分ります。
(私一人の意見ではなさそうですので安心したと同時に、人が先に書いていたのには驚きました。
ただし私の意見は賃上げの結果、企業が海外に逃げて、失業が増え政府は余計困難な状態になりつつあると言う点に重点があります。)
以下は下記ネットからの引用です。

◆中国の暴動・デモ1日548件 公安費予算9.1兆で国防費上回る
http://news.ameba.jp/20120528-401/
中国政府が、賃金は市場経済で決まるという原則を無視してまで、賃金を上げようとしている理由は、民衆蜂起を恐れているからだ。
中国各地では、貧富の差の拡大や役人の腐敗・汚職に怒った民衆の暴動やデモ(…群体性事件)が頻発しており、昨年は約20万件に達したという情報もある。
なんと1日当たり548件。
収拾不能な数字である。
このため、それを取り締まる公安費(公共安全費)が2010年以降、膨張を続ける国防費をも上回るという異常事態になっている。
2012年予算では公安費が7018億元(約9兆1000億円)、国防費が6703億元(約8兆7000億円)。
もはや公安は公共の安全を守る組織ではなく“民衆蜂起から不正官僚を守る”ための組織に成り下がってしまった観がある。
ことほどさように民衆蜂起の危険性が高まっているため、政府は民衆の怒りを和らげようと、企業にシワ寄せをしているわけだ。
だが、暴動やデモが頻発している背景には、賃上げだけでは解決できない国民の鬱積した不満がある。」

以上のように現共産党政権は現地歴代王朝末期より酷い状態にあるのですが、May 2, 2013「中国共産党→中国政府→人民3(モラルなき社会)」で書いたように近代装備の政府軍・・中国の場合、軍+公安部隊は強大です。
上記コラムでも書きましたが、中国の場合外国から守るための国防軍は存在せず、共産党の私兵=人民解放軍が中国全土を占領したままですから、いずれも共産党を守り、強制するための組織・・対国内戦争用です。
(ここ数年海軍に力を入れていますが、陸軍中心で来た意味が分かるでしょう)
・・・・人民解放という内戦向きの軍・・国内で敵対する相手と戦う軍しか存在しない・・国府軍を台湾に追い払った後には敵は国民しかいないのにまだ軍があると言うギャグのような組織のママですから、上記ネット意見では軍より公安予算の方が大きいと書いていますが、そもそも公安部隊と人民解放軍との区別が論理的には存在しません。
元々国民対策用強制装置の内、公安の方が情報収集や民間を下部組織として使うようになっている違いに過ぎません。
江戸時代にもとは対外戦闘用であった武士が治安を担当するようになって「寄り騎」→与力制度が生まれたと書いたことがありましたが、中国ではこの逆の成長をして来たのです。

腐敗政治と最低賃金引き上げ1 

中国深圳あたりの労働者の平均賃金が月額2〜3万円で(こうした大企業に勤められるのは恵まれた方です)他方で共産党幹部の蓄財が数千億から兆単位というのでは、国民が怒り出すのは当然です。
格差拡大の酷さ・・裸官の実態がネットで暴露されるようになって、政権の正当性を揺るがす事態になって来たので、ここ数年共産党政府は労働者手取りの底上げのために強制的な最低賃金引き上げに動き出しています。
そうなると低賃金を当てにして成り立っている産業(外資に限らず国内資本も)はやって行けないのでベトナム等に逃げて行きます。
日本マスコミでは、低賃金では人が集まり難くなっていると如何にも自然現象のごとく最低賃金の強制引き揚げ政策を擁護していますが、膨大な失業者がいるし農村部にはその何分の1の収入もない人が億単位でいる・・・もっと低賃金でも働きたい予備軍が無限にいるのですから、そんな経済現象はまだまだ先の話し筈です。
元々最低賃金制は市場原理に委ねると最低生活も出来ない人が出て来るから、制度上最低賃金を強制する制度ですから市場の需給で決まるものではありません。
実際深圳周辺のどこかの市では中央で決められた最低賃金の方針を実施しない市(地方政府)もあるようですから、経済原理に反した強制は地域経済に深刻なダメージを与えているようです。
日本でも解雇規制が強過ぎたり、非正規雇用を法で規制すると却って失業者が増えるのと同じで、経済を権力で規制すると無理が出ます。
中国では失業率等の統計自体あてにならないですが、幹部の汚職に対する不満解消のために最低低賃金引き上げに動いた結果、国外移転の加速→工場閉鎖の頻発→大量失業発生によって、大変な事態に陥り始めている筈です。
深圳等で閉鎖された大規模工場の報道が以前には結構ありましたが、尖閣諸島問題で日中紛争が始まると、その後日本のマスコミでは中国に都合の悪いこの種の現場報道が何故か全くなくなりました。
大卒の就職率・失業率(ネズミ族等)その他、中韓の不利な情報・・社会の暗部に関するテーマの情報でも、(データが当てにならないまでも)以前一杯あったのに、最近では何故か大手マスコミから全く姿を消しています。
中国の暗部をテーマ化して報道しないまでも単発的報道・・例えばシャープへの出資交渉で有名になった受託製造大手の台湾の鴻海グループが中国で経営する受託製造工場を縮小・閉鎖する方向になっているなど、同社や個別企業動向として結果的にマスコミにパラパラと出て来ています。
中国の場合、人海戦術の国ですから1つの受託製造工場に5〜6000人もいるのはざらですから、これが1〜2つ閉鎖するだけでも日本では想像のつかないほどの大規模失業が発生します。
賃上げが経済現象として起きるならば、それだけの生産性が挙がっている証拠ですから無理がないのですが、生産性の上昇がないのに賄賂・腐敗政治に対する不満解消のために最低賃金を権力的に引き上げて誤摩化そうとすると、却って職場が減るなど経済的に無理が出るし国民の納得性も低いでしょう。
格差社会になっている点はアメリカと似ていますが、プレスリーやジョブスなどは、自力で稼いだものですが・・、激しい腐敗による超格差社会になっている中国とはその成り立ちが違います。
共産党幹部の腐敗に対する国内不満をなくすには、日本が近郊農民を土地成金として豊かにし、過疎地に何十年も国費を投入して来たように、地方政府や幹部の収賄・・・これこそ共産主義者の好きな「搾取」そのものです・・をやめて、外資が入れば地元民に恩恵がそのまま行き渡るようにするのが先ず第一の王道です。
外資が入って来て地元のただみたいな土地が高額で売れた場合、タマタマ地元で原油が沸いて採掘料金を取れるようになったのと同じで、外資による資金取得は一種の不労所得です。
中国の最低賃金引き上げ命令は、原油利権料をアラブ王族が独り占めしていることによって民衆の不満がたまってきたからと言う理由で、(石油掘削会社に勤める現地人は国民の一部でしかないのに)国際石油資本の現場労働者の賃金引き揚げを求めているようなものです。
共産党幹部の得ている利権料収入・・中国への外資流入は年間1000億ドル=約10兆円・・を国民に分配することこそが国民不満解消の王道です。

最低賃金4と外国人労働者1

我が国の人件費の決め方は、労働の対価性が低く生活給的要素が強かったのですが、グローバルな経済競争時代に突入した以上は、純粋な労働対価と民族国家としての助け合い・生活保障部分を峻別して行くべきです。
我が国で賃金を決める基準として労働対価より生活水準維持を強調するようになったのは、意外に歴史が浅いのです。
10月7日、日経朝刊第19面に紹介されている「日本労働関係史」(アンドル・ゴードン氏著)によれば、戦時中(私の想像では満州事変ころからではないでしょうか)に一般国民からの兵士徴用の結果、銃後の生活保障が重視されて生活給が強調されるようになったとあります。
(ちなみにゴードン氏の著作には関係ないですが、企業の厚生年金制度も戦時中に銃後の生活を安定させるために昭和17年に始まったものです)
戦後経済は廃墟からの始まりですから、国家全体が貧しかったのでその思想・習慣がそのまま定着していて、私の若いころの労働運動のキャッチフレーズの中心は「これでは結婚も出来ない」(子供産めない)などという生活保障の主張が中心でした。
本来労働能力に対する対価は(適正な労働分配率によって)対価としてきちんと支払い、それでも「生活出来ない・子供を生むと育てられない」という部分は本来国家が補償すべきものでしたが、戦争経済で国家財政が疲弊していたので民間・企業にその負担を求めるようになったのが始まりです。
その伝統の無批判踏襲で今日に至っているのですが、戦後70年近くも経過したのでこの辺で労働の対価と社会保障を峻別すべきです。
世界第2位の経済大国になっても貧困時代のママ社会保障部分を企業負担にして来たのですが、(障害者の一定率雇用や厚生年金の企業側半額負担もその1例です)世界中で似たような制度があるから(どこの国でも財政赤字は困るのでこのやり方を踏襲しています)と言って、正しいとは限りません。
人材の交流が盛んとなり、外国人底辺労働者が増えて来ると過去何十年にわたる蓄積の取り崩し・利用による社会保障・生活保障部分までを参入して来たばかりの外国人労働者にも保障するのは行き過ぎです。
今後は、正当な労働対価と社会保障部分を峻別して行かないと外国人排斥運動が激しくなりかねません。
外国人排斥運動が起きるようになったのは、インフラ整備や社会保障政策が行き渡って来るとただ乗りに対する不満が出て来るからです。
我が国では昔から稲作=ムラ社会・・灌漑設備等のインフラが充実していたので他所ものに対して冷たかったのは、インフラ瀬尾の進む近代社会の千年単位の先取りだったと言えます。
他所ものを・・簡単にムラの寄り合い仲間に入れなかったのは、社会資本・農道の整備・灌漑設備の新設や維持負担等々を千年単位で先祖代々営々と築いて来た蓄積があったからです。
社会保障政策は個々人の能力不足分を同胞としての一体感もあって民族国家成立後(我が国の場合その前から村落共同体)社会=国家全体で助け合う・その資金は結局は民族が蓄積して来た結果によるものですから、(高齢者の貯蓄取り崩し・年金生活を考えれば分りますが、)過去の蓄積に関与していない外来者が来たばかりで、ある国・領域・場所にいるだけで同じように恩恵を受けるのは狡いと思う人が出て来るのは仕方のないことです。
排外的右翼の主張に大して狭量だと批判していても始まらないので、そう言う批判が起きないように労働の対価と過去の蓄積を利用した同胞間の助け合いである社会保障部分を峻別して行くべきだという考えを書いています。
私は外国人をヤミクモに差別しろという主張ではなく、受けるべきでないメリットは与えるべきではない・・与え過ぎるとそれに対する反感が嵩じて本来受けるべき権利まで迫害する方向に行き過ぎてしまう懸念を書いています。
外国人のただ乗りを放置しているとナチスによるユダヤ人迫害だけではなく、昨年夏だったかノルウエーで青年による銃乱射事件がありましたが、どこでも起き得る危険・・命まで奪う・・根こそぎの反感に行き過ぎてしまう危険があります。
外国人居住者の問題は、労賃に関しては労働の対価部分と生活保障給部分を峻別して外国人には労働対価だけ支払えば良いとすれば解決します。
ただし、これでも生活保障的公共料金・医療費などは実費以下の供給を受けるなど生活保障的給付を外国人が知らず知らずのうちに享受するただ乗りの問題があります。
この分の差額徴収をどうするかも決めないと、税で整備した公衆便所・医療機関等を外国人が何らの負担もしないで使えるのはおかしいとなります。
千葉県弁護士会では会館建設資金・あるいは維持管理費?負担金について、数十年以上負担して来た会員には免除する規則が何年か前に成立しています。
過去の会員が長年積み立てた資金で漸く出来上がった会館を新入会員が無償で使い、維持管理費も長年積み立てて来た会員と平等分担が続いていたのですが、それでは長年積み立てて来て会館建設後数年〜5年程度で隠退する予定の会員と比較して却って不公平になるからです。
同じように外国人労働者には純粋な労働対価しか支払わないだけではなく、出来上がった膨大なインフラを無償で利用するばかりでは不公平です。
建設国債と言う概念をご存知の方が多いと思いますが、各種インフラ整備は借金で賄っていてそれを次世代が負担する仕組みです。
国民はその借金支払を分担しているのに外国人(旅行者等)はその分担をしないままインフラを無償利用しているのは不公平です。
外国人にはインフラ使用料あるいは維持費税を国民一般が負担する所得税や住民税にプラスして徴収したり、保険証のようにカード提示者だけが会員価格としてそれ以外は電車その他のすべての分野で正規料金を払う仕組みにすれば右翼の不満がかなり減るでしょう。
会員制システム・会員割引を国のいろんなシステムに導入するのは、電子機器の発達した現在、それほど困難ではありません。
いろんな弊害もあり得るので今のところ私は必ずしも推奨している訳ではありませんが、例えばの話・・国民総番号制にすれば・全部共通番号になるので、1枚のカードで足りて簡単です。

最低賃金3と国際人権1

海外・新興国の労働者と同じレベルの仕事しか出来ない人の賃金は、同じレベルの賃金しか貰えないのが人道的にも正義です。
企業が能力に応じた賃金しか払わないのは搾取でも何でもありません・・むしろ日本人というだけ・・生まれによる差別で新興国労働者と同じ仕事をしているのに現在中国人の約10倍も賃金を要求し、これを保障している方が不正義です。
自分の働きよりも多く賃金を貰う人にとっては、彼らが得するだけで人権侵害ではないようですが、政府高官の子息だけが何倍もの給与をもらう仕組みがあるとすれば分るように、生まれによる特別待遇を受ける事自体が許されない差別です。
新興国の労働者と同じ仕事しているのに日本人というだけで約10倍あるいは何倍もの高賃金を支払え・維持しろと主張して最低賃金の引き上げを主張している勢力に、国際的人権派がもしも重なっているとした場合矛盾した主張になります。
外国人の人権問題では、日本にいる限り日本人と同額の給与や待遇を受ける権利があるというのは至極尤もなことですが、論者は彼らが日本にいる限り・・目に触れる限度においての人権を論じていることになります。
不法滞在等で収容所に隔離されている彼らの状況・・あるいはひっそりと住む外国人の子供の置かれた状況は一般には知られていないのですから、海外の人権と本質的には同じです。
これを発掘して来て我々一般弁護士に映像等で紹介したのが先日紹介した「外国人の人権」をテーマにしたシンポジュームでした。
海外の人権問題もどこまで発掘して来て問題にするか、目をつぶるかの基準は、彼らのご都合によって気の向いた部分だけ取り上げて、例えば中国の人権は大変だと主張していることになります。
最低賃金の補償要求の根底には、海外との何倍もの格差は当然許されるという視点で議論していることからすれば、その主張者と国際的人権活動の支持者とがほぼ重なっているように見えるところにどこか違和感を覚えます。
・・実証的研究数字を見ていませんが、印象的には支持層がかなり重なる印象ですし、重なるからこそ国内一般弁護士がこうした主張に対する支持層予備軍として、頻りにこうした情報が提供されているのだと思います・・。
「外国人の人権」という熟語から見れば、そこでは確かに国内に所在する「外国人」だけが対象で海外の人権は問題にしないのは当然ですが、古代ギリシャの民主主義と言っても市民権のある選ばれた階層だけのことでしたし、ローマ市民権も同じでした。
現在の国内人権派の人たちは、古代ギリシャの民主主義と同じような格差是認論者なのでしょうか?
同じ国民である限り差別しないという点では、古代ギリシャやローマに比べて平等保障の範囲が広がっていますが、古代には、同一種族・民族意識の範囲が狭かっただけであって、その当時でも同一出身者は同士では対等の市民権があったと思われます。
ギリシャ・ローマ時代に市民権のなかった奴隷階級は被征服民・・今で言えば外国人労働者みたいな関係だったでしょう。
今はその範囲が(今では多民族混在ですが)民族国家というもっと広い概念に広がっただけのことではないでしょうか?
一定の場所的範囲に居住している限り、生まれや人種にかかわらず同じ人権を保障するように変わっただけです。
垣根の基準が現在の民族国家の領域に広げたのでギリシャ・ローマ時代よりもより広いことは確かですが、古代国家に比べて人種や生い立ちに変えて保障の基準を居住している場所的境界に変えたというだけで何らかの差別をしようとしている点では本質は変わらない気がします。
かと言って、他所の国の人たちがタマタマきている場合にまで、同じ基準で生活保障するのはまだ誰も承服しない時代ですから、その差別は昨日書いたように社会保障分野・これに関する参政権分野で残した上で、その他の純粋な人権基準としては世界人類共通にすべきだと思います。
商品交換場面で言えば、何人であろうと500円のものは500円で売るし、(香港や中国では日本人と見れば数倍の値段を吹っかけて来るようですが・・)500円のものは何人であろうと500円で買えるようにすべき・・労働能力も一種の商品としてみれば、一定の能力に応じて何人であろうとも同じ待遇を受けるべきです。
日本や先進国では、労働対価と社会保障分が混在しているから右翼から外国人排斥の不満が出るし、外国人労働者が自分の提供する労働以上の対価を受けるメリットがあって、ドンドン出稼ぎに来る圧力になります。
労働対価と社会保障分の峻別をして社会保障部分は国民だけしか受けられないとすれば、自国で働くのとと同じ賃金しか繰れないのでは、出稼ぎに来るメリットが縮小するし右翼の不満が起きません。

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