大臣辞任要求と審議拒否(世論調査の役割?)1

ところで、審議拒否=優先順位の問題では全く国民意識調査をしない朝日新聞が憲法改正問題に関しては以下のような優先順位調査をしています。
https://www.asahi.com/articles/DA3S13476815.htm

政策優先度、憲法改正は最下位 朝日新聞社世論調査
2020年までの改憲をめざす安倍晋三首相と国民との隔たりがはっきり表れた。国民が求める政策優先度でも「憲法改正」は最下位。
安倍首相に優先的に取り組んでほしい政治課題をいくつでも挙げてもらうと、最も多かったのは「景気・雇用」60%、次いで「高齢者向けの社会保障」56%、「教育・子育て支援」50%。「憲法改正」を選んだ人は11%で、九つの選択肢の中で最も少なかった。

憲法改正問題は、仮に通常国会での発議になるにしても国民生活に直結する予算案や関連法案の審議を優先するに決まっています。
重要法案をスムースに採決したうえで改正発議の審議を行うか、あるいは通常国会を終えてから憲法改正発議の可否だけをテーマにした臨時国会でやればいいことですから、憲法改正国会発議は必ずしも予算審議を止めたり、各種法令審議を止めることにはなりません。
フランス大革命時のような大騒乱の結果の憲法制定の場合には、まず最高機関であるべき議会の位置付けから決める必要があって、革命は諸勢力との新政権の綱領合意・憲法が優先審議事項です(今でも新党結成や合流するときにはこれが優先決定事項です)が平時の場合、日常生活に支障がないように目先の政策を滞りなく進めながら憲法案をすり合わせるのが原則です。
昭和20年8月以降敗戦時の革命的状況下(家督相続制歯医者男女平等など民法その他法令を抜本的に変更必要な場合でも、新憲法制定のために停滞することなく逆に日常的議案の審議可決は速やかに進めて滞りなく行われていました。
まして今回の改正の大争点である憲法9条を変えるかどうかの議論が決まらなければ、その他法案審議ができない性質のものではありません。
ですから、憲法改正発議と他の一般法案審議が両立しないかのような前提を設定して優先順位を質問すること自体が変な予断を誘導している印象です。
国民は憲法改正よりも通常政策の実現を優先してほしいと思っているという宣伝意図の見え透いた調査結果発表というべきですが、この調査結果から見ると、5月4日に書いたように立憲民主その他革新系の「憲法を守れ」とか「平和主義」(文書改ざんによって)「行政の信用がなくなる)などの原理論で具体政策に何でもいちゃもんつけては審議拒否の戦術?に国民は関心が低く、具体的政策重視の国民意識が逆に出ていることがわかります。
優先順位を調査するならば、野党審議拒否戦術=ズバリ優先順位の問題ですし、山積している政策課題が置き去りにされて国民生活に対する影響が大きいのですから、これこそ即時に国民の意識調査すべきだったでしょう。
審議拒否が何と19日間に及んだとのことですから、この長期間の間に日経新聞以外のメデイアが審議拒否の可否について世論調査を何故しなかったのか不思議です。
4月23日の立憲民主党の辻元氏の強硬意見→4月25日自民国対委員長の解散選択肢発言→解散風が吹き始めるといきなり審議再開合意になったのは、世論調査結果によるのでしょうか?
日経新聞の世論調査発表がありましたが、朝日等のメデイアはダンマリでした。
与野党ともに政治家はメデイアの世論誘導目的的な世論調査をそれほど信用していない・・独自の民情把握能力によっているように見えます。
日常政策審議と憲法改正論は上記のように両立できない二択関係でないのに無駄な?優先順位の世論調査を行いながら、現に必要としている政策課題の審議が止まって国民が困っている緊急政治課題についての世論調査をしない偏った状態で大手メデイアの役割を果たせるのでしょうか?
大手メデイアの世論調査は自社の推し進める政治誘導目的に都合の良い結果が出そうなテーマだけやるものなのでしょうか?
5月8に新聞発表の国会審議再開合意によって、審議拒否について議論する必要性が薄れましたが、審議拒否の不当性についてこの機会にもう少し書いておきます。
公文書改ざんがあるとすれば、行政の信頼をなくす由々しき自体・・政府組織信頼の基礎ですから、ないがしろに出来ない点は確かですが、その議論の必要性と保育所増設やTPP参加その他の山積している財政や福祉、働き方改革、経済政策、TPPや外交課題の議論とは先後の関係がありません。
並行議論可能なテーマです。
大臣辞任がない限り審議拒否できるという主張は、野党に大臣任命拒否権を認めろという主張に等しい主張になります。
戦前軍部の協力がないと内閣が倒れてしまった・陸海軍大臣現役制の結果、組閣に協力してくれないと組閣できなかった悪弊の再現に繋がりかねない重大な憲法違反行為です。
戦後憲法の原則である多数民意よって総理が選ばれ、その総理が自分の責任で内閣を運営する担保として国務大臣任免権があるのです。
これは戦後民主主義の根幹を支える制度です。
国務大臣が無能であればその責任は内閣が負うのであって、その判断は総理がすべきことであって野党にして貰う必要はありません。
総理が「大臣辞職する必要なし」と判断したら、その結果責任は総理が負うのですから、その次に野党が迫るべきはこういう無能な大臣を罷免しないならば、国民の支持を失うぞ!」すなわち「応じないならば国民の支持を失う→「内閣総辞職を迫るぞ!」=解散できるのか!」という意味になります。
そこで、「じゃ受けて立つ!」という解散権の発動がテーマになってきたのです。
これが戦前の(軍部の協力がないと組閣できなかった)弱体内閣の反省から改革された譲ることのできない戦後の議院内閣制の基本原理です。

明治憲法
第4条天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ
第7条天皇ハ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会停会及衆議院ノ解散ヲ命ス
第10条天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ条項ニ依ル

上記のとおり、天皇は「統治権ヲ総攬」する結果、「天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス」る・・すなわち総理大臣を含めた各大臣も天皇が直接任命し罷免する仕組みでした。
議会が揉めれば「天皇の行政権を委ねられた内閣の不手際」として責任を取らせて別の政治家に交代させる仕組みで、騒いでいる方が民意を代弁しているか逆に内閣の方が民意にあっているのかを問わない制度でした。
第7条で解散権が天皇にあるのは、統治の責任は天皇にあって内閣にはない以上(民意によらない天皇の任命制ですから、内閣が自分の政策の方が正しいと思っても自分の方が正しいとして地位を守るための)内閣による解散制度も予定されていませんでした。
財務大臣の辞職要求同様で、総理が守ってくれない限り「辞職を要求するなら解散する」財務大臣が言えないのと同じでした。
これでは正しいと思って信念に従った根性のある政治家が育ちません。

国会審議拒否と内閣総辞職(戦前の教訓)1

野党(立憲民主党は森かけ等の一連疑惑追及の急先鋒ですが・・)は、次官が懲戒を受ければ大臣の任命責任という順序の主張であり、メデイアはそれとなく国民理解が得られないと(5月2日紹介記事のように)主張して次官や大臣の辞任要求に徹しています。
最重要閣僚の解任になれば、総理の任命責任という図式を描いているイメージです。
これまで戦前の総辞職の事例を書いてきたように、内容の真偽や是非ではなく、「これだけの騒ぎになった以上内閣が責任を取るべき」と言う戦前の悪しき習慣の再現を野党とメデイアは共同して狙っているように見えます。
反論さえさせない・事実不明にしたままで「ともかく責任を取れ」という強引な態度を国民がどう見るかです。
野党やメデイア界全般の強引な対応を見ると、事実の有無を明らかにしない・他の審議を一切止める・・こういうことが国政上どういう意味があるかの議論よりも、政局に持ち込みたい?野党とメデイアの変な意図に対する憶測をたくましくする意見も一応の説得力があります。
この辺で自民党側から解散説が出てきたので、メデイアや野党の意向が民意の支持を受けているかの関心が高まってきました。
民主国家における「民意は何か」となると、戦後民主主義国家においてはメデイアの偏った?世論調査結果よりは選挙結果が文字通りの民意です。
昨年の解散直前の世論調査と選挙結果がまるで違っていた事実があります。
ここにきて野党は内閣総辞職に追い込んで選挙に勝てる自信があるか・本当に国民支持を受けて騒いでいるかの問題であることが、次第にはっきりしてきました。
戦前の天皇大権下のエセ民主主義時代・繰り返し書いてきたように、政治テーマの是非に関わらず騒動がおきると野党に政権交代させる西園寺ルール・・悪しき慣習によりかかっている野党やメデイアが困ってきたようです。
戦後は枢密院が次の政権を指名する時代ではなくなっている・・民意=選挙結果で政権交代交代する時代になっているのに、騒ぎさえすれば政権交代になる戦前からノスタルジアに浸っているメデイア・野党の限界が見えてきました。
戦後60年安保当時は戦前政権交代のルールに親しんでいる国民が多かったのでまだ内閣総辞職で対応しましたが、当たり前のことですが(国民の多くがソ連と仲良くするよりは日米友好基軸体制・・安保条約を支持していたので?)政権交代にならなかったので騒動を起こした支持者が失望しました。
その後国民に民主主義の意識が浸透するに比例して内容の是非に関わらず「騒動さえ起こせばいい」という運動に対する疑問が起きてきて、一般学生運動というよりは、原理主義というか過激運動家中心・ともかく「暴れることに意味がある」暴発運動に変わってきました。
この開き直りを正当化しようとしたのが?毛沢東語録「造反有理」のスローガンでしたし、政党的にはなんでも反対の社会党への変質であったと思われます。
このように戦前政治回帰は不可能になっているのに、いまだにその夢を追っているのがメデイアであり革新系政治家です。
造反有理は文化大革命の悲惨な実態が伝わるにつれて、なんでも反対で騒動を起こす政治運動が無理になったので、さらに開き直って、国民支持を気にしない一種のテロ活動(三菱重工爆破事件や連合赤軍によるあさま山荘事件)に変わって行き.ついには一般学生も国民の共感も得られなくなったのがその後の経過です。
メデイアが軍部(戦後は中ソの応援・ソ連崩壊後ソ連から、社会党に資金が流れていたことが明らかになった記事を紹介しました・・)等を背景に騒動を煽りさえすれば政権交代があった・戦前政治風土への回帰は民主化が本物になった戦後は、不可能になっているのに、いまだにその夢を追っているのがメデイアであり革新系政治家です。
ここ数十年では単なる反対では国民が相手にしなくなったので「護憲」「民主主義」「平和主義」というスローガンによっていますが、具体的処理の必要な政治決断を何でも「護憲」「平和」と言う原理さえ言えば解決できるはずがありません。
今の時代内乱は滅多にないので平和主義とは国際紛争解決をどうするかが中心テーマですが、中東の戦乱・イスラエルとアラブ諸国との紛争、サウジを中心とする湾岸諸国とイランを中心とするシーア派の抗争・イエメンでの内乱、シリア内戦に関するトルコやイランの立場の違いとクルド族の独立問題、シーア派とスンニ派の宗教対立とイランの浸透などなど・・・これを平和主義という一言で解決ができるでしょうか?
高校の頃だったか?現実理解がなかったのでソクラテス・プラトンの授業だったかで哲人政治という言葉に惹かれましたが、大人になると世の中具体的事象に応じた例外の例外の例外の応用・TPOが必要で原則論さえ知っていれば物事が解決できるものでない・哲学者や憲法学者に政治ができるものではないことが分かりました。
ノーベル賞物理学者が、車や電気釜、自転車一つまともに作れないのと同じです。
原理論しか言えない人は、(そんなことは中学生でも知っているレベルです)政治家あるいはまともな政党・・実務家とは言えないでしょう。
「花の都パリ」というだけで、文明開花の匂いを嗅いだ気になっていたのですが、みんなが海外旅行出来るようになると「憧れ」の時代が終わり具体的運用が重要になる・・民主主義や平和主義という原理論のスローガンだけで酔い痴れるレベルの人は、具体的な民主主義の運用など知らなかった時代の人のことです。
・・April 7, 2018のコラムにに新宿駅前の反〇〇集会写真を紹介しましたが、参集しているのはほぼ旧時代の人・・夢多き時代の生き残り・・高齢者中心です。
戦後いきなり始まった民主主義の言葉に酔いしれた高齢者がまだ(現実をみようとしないで)夢を追い続けていることがわかります。
現在の国会審議拒否状態を国民がどう見ているか?については以下の記事を引用しておきましょう。
undgarge.com/20180313a-nikkei-early-bird

財務省の問題と、内閣総辞職の必要性とは、全くリンクしない
今朝の日経朝刊(3/13)早読み。本稿を書こうと新聞を読んで、記事を選ぼうとして、一旦は止めました。あまりに下らない。税金を使って運営されている国会の実態が小学生の学級会以下だと思われてならないからだ。
なぜ、財務省の倫理、コンプライアンスの類の問題から一足飛びに「内閣総辞職」という言葉がチラつくまでにエスカレートするのだろうか?新聞記事の紙面も、経済新聞でありながら、殆どがこれ関連だけだ。
仮にもし、こうしたことで政治空白が生じ、市場や経済に影響が出たら、野党はどう責任を取るつもりなのだろう。
またそれを面白おかしくヒステリックに煽り立てるマスコミという存在は何なのだろうかと思ってしまう。
・・・公文書を行政の現場で書き換えたこと自体は非常に由々しき問題であるが「野党側は強く反発しており、安倍晋三首相は厳しい政権運営を迫られる」というのは、正直解せない。
何を誰に対して、どうして野党側は反発しているのか?国政を司る国会運営という原点に立ち戻った時、野党のすべきことは「反発」なのだろうか?
民主主義の中でのマイノリティが、何かと問題を見つけてはマジョリティの転覆を諮ることだけを大命題にしている気がしてならない。
事実首相は「「行政全体の信頼を揺るがしかねない事態であり、責任を痛感している。国民に深くおわびする」と謝罪した」とある。一方野党側は「組織的に行われ、極めて悪質だ。内閣全体の問題だ」(希望の党の玉木雄一郎代表)と指摘して組織的な隠蔽だと批判、内閣総辞職を求めた」とある。まるで指先の怪我とは言わないが、手首を挫いた程度で「死ぬ、死ぬ」と騒ぎ立てている子供のように思えてしまうのは私だけであろうか?

以上が常識的感想と言うべきでしょう。

安保理拒否権行使3とロシアの孤立)2

ロシアは安保理での拒否権を盾にして(それがあることが自慢の種でしょうか?)アンチョコな拒否権行使で交渉時間を自らつぶしてしまい、その先どうなるかを読めなかったのでしょうか?
米英仏連合軍も明確な化学兵器使用の直接証拠「物」を入手できていない(シリア政府軍制圧地内なので)点に弱点があるようですが、数々の現地映像や報告の間接証拠がある以上は、調査拒否する以上は仕方ないと言う論理でしょう。
これが国際世論です。
数日前の日経朝刊によれば、米英仏のシリア空爆を侵略戦争だというロシア提出非難決議案が、15理事国中、賛成はロシア、中国、ボリビアの3カ国だけだったと報じられています。
国際世論の理解を得られていない・日本の旧社会党のように恥をかくのを知らずに?ただ否決されるのを承知でアリバイ作りのために?問責決議案を出す・・ただやっているだけの政治同様で・いわば外交能力がない国です。
日本メデイアは日経新聞も昨日か1昨日の記事では朝日新聞同様にロシアや中国への親近感が強いからか?化学兵器仕様による悲惨さ・人道問題を一切論じないで米英の他国主権侵害の「正当化」について論証されていない点を大きな見出しで取り扱っています。
この見出しを見ると、そもそも米英仏の空爆は不当行為をしている前提で正当化の主張責任があるかのような書き方です。
強盗や殺傷現場を見たら他人の家でも飛び込んでいってこれを抑止するのは正当な行為として、刑法では違法性阻却事由になっていますが、国際法では整備されていないから、正当化の主張立証責任が米英仏側にあるという形式論によっているのでしょう。
国際法上正当防衛等の法整備がないだけであって、前提になる化学兵器使用によって、一般市民が泡を吹いて倒れている状態を不問にしたこういう形式論がメデイアで主流になっているのには驚きます。
本質的に必要な議論は形式論ではなく本当に化学兵器による殺傷が行われていたか否かでしょう。
こういうメデイアは日本政府批判のためには、森かけや財務次官のパワハラにしろ、疑惑だけ大騒ぎし疑惑がない証明をしろと騒いでいますし・・日頃から人権人権と騒いでいるのですから、片手落ちというか御都合主義です。

刑法
(正当防衛)
第三六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
(緊急避難)
第三七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

トランプ氏もプーチン以上に内政で追い詰められている・中間選挙の展望がひらけない・・目くらまし的不純動機が指摘されるようですし、英(EU離脱交渉のもたつきによる求心力低下)仏(新大統領としてのEUヘゲモニーの見せ場)もそれぞれ内政上の思惑一致らしいですが、ここでは政治背景の分析が目的ではなく、「ロシアは伝統的に軍事力をひけらかすことしか能がない」という点を書いています。
幕末にロシア軍艦が、対馬に実力上陸して英国の勧告があるまで退去しなかった事件をSep 20, 2017前後「ロシアの脅威」シリーズで紹介したこととがありますが、ロシアは伝統的に交渉よりは実力行使が先立つ国です。
ヤクザは警察が来るまで威張れるように、威嚇力をひけらかす事しか存在感を示せない国では、自分より強い国が出て来たら黙ってスゴスゴ?しかありません。
ロシアが得意分野への投資→国力不相当に軍事力強化に精出す・・その分民生部門への投資が減る→社会発展がさらに遅れる悪循環→国民不満の高まり→ガス抜き→対外プレゼンスを高めるための武力威嚇を繰り返す危険性が高まります。
2014年のクリミヤ併合やウクライナ侵攻は、色々な理由をつければつけられますが、大局から見れば、中国による資源爆買い縮小による資源価格下落による国内経済困窮の限界(資源価格高騰時の蓄えがあるので)下落による資金枯渇までに数年かかります)が近づいたので、なりふり構わず対外冒険主義に出たと見るのが妥当でしょう。
東洋経済からの記事です。
https://toyokeizai.net/articles/-/180689

ロシアの経済危機はかなり深刻なはずだ
プーチン大統領によって隠されているが・・・
ハーバード大学教授2017年07月27日
原油価格はピーク時から急落
・・・・ロシアの経済学者グリエフ氏(後に亡命)が、司法などの制度が脆弱なままでは、資源輸出依存のロシア経済が変わる望みはないと主張していた。
あまりに多くの決定が1人の人間によって行われていたからだ。同じ会議で私は、大規模な改革が行われないかぎり、エネルギー価格の急落は深刻な問題を引き起こすことになると力説した。
かくして、原油価格は暴落した。現在の市況(7月上旬時点で50ドル以下)ですら、2011〜2012年ピークの半分に届かない。
輸出の大半を石油と天然ガスに頼っている国にとっては大打撃だ。
ロシアが財政危機を免れていること自体、驚くべきことである。これには、ロシア連邦中央銀行が果たしている役割が大きい。だが、そのしわ寄せの大部分は消費者に降りかかっている。
通貨ルーブルの価値は米ドルに対して5割も減少。実質賃金と消費はともに急落した。以前は1000ルーブルを持ってスーパーに行けば2袋分の買い物ができたが、今や1袋分だと、あるロシア人が言っていた。
プーチンの失策を隠す国営メディア
ロシア規模の不況が民主主義の西側諸国で起きたとすれば、政治的に乗り切るのは極めて困難だったろう。だが、プーチン氏の権力は、まるで揺らいでいない。
国営メディアは失政を覆い隠すために、西側からの経済制裁を非難したり、クリミア併合やシリアへの軍事介入への支持をあおっている。
たいていのロシア人は、学校教育や国営メディアによって、西側諸国のほうがひどい状況にあると信じ込まされている。残念ながら、そのような情報操作は改革への処方箋とはなりえない。

改革の処方箋にならないとしても北朝鮮同様に閉鎖強権支配社会では、経済失策による飢え死にが、仮に何千万と出ても(スターリンによる穀物の飢餓輸出や毛沢東の大躍進政策の失敗でそれぞれ何千万単位の餓死者が出ていますが)政権危機にならない・・ことが歴史の鉄則です。
相手を弱体化するには、経済制裁ではなく豊かな生活をさせて(国民に豊かな生活の味を占めさせて抵抗力を削ぐ方が現実的です。
三国志演義で有名な曹操が劉備を籠絡するために贅沢させる・・「髀肉の嘆」あるいは孫権が劉備を招いて贅沢させる政策です。
一般的に豊かな地域の兵の方が貧しい地域の兵より弱いのが原則です。

 安保理拒否権行使2とロシアの孤立1

話題をロシアに戻しますと、ロシアの方ではアメリカの空爆事件に巻き込まれても何も反撃できないと却って面目を失うので、プーチンの政権維持にマイナスになるので、困ってしまう関係でしょう。
そのつもりで(ロシアの客観状況がどうなっているかを)ネットを見ると以下の記事が出てきました。
以下に紹介するのは今年2月の事件ですが、自国民兵が米軍の攻撃で約200人も死亡していても5人だけとしか発表できないのがコワモテロシアの現実です。
中国でどのような大騒乱や災害が起きても発表できる死傷者数の最大人数が「35人」に限定されているから、それ以上の大災害が発生することはないと言われている・もちろん根拠ない憶測ですが・・のと似た感じで、居丈高の割には自分より強い米軍の前では、縮こまっていることを国民に知られたくないからでしょう。
https://matome.naver.jp/odai/2142319664095117501

中国で事故が起きた際、死亡者の上限が35人となっているのはご存じだろうか? その理由や原因まとめ
更新日: 2015年08月25日
“『ビートたけしのTVタックル』の中で中国で大勢の犠牲者が出る事故が起こると、なぜか毎回のように「死者は35人」と発表される理由について解説された。”
“「中国は大事故が多いので、数週間に1度はそういう事故が発生している。最初に最少人数を発表し、あとから数字を修正することも多い」と、あくまでも「35人」という数字に深い意味はないことを説明した。”
過去に起きた事件の死亡者数を見てみると確かに数多くの死亡者数が35人以下になっているのがわかる
2003年貴州省 ガス爆発事故 :35人
2009年 河南省 平頂山炭鉱事故 :35人
昨年の大みそか、30万人が駆け付けた上海のカウントダウンイベントで転倒事故が発生。発表によると、35人が死亡、48人が負傷という大事故となった。
997年5月深センの飛行機事故、2008年11月雲南省の土砂崩れ、
2011年7月高速鉄道の事故、
2013年11月山東省の石油パイプライン大爆発など、
日本でも報道された大事故において「死者35人」という不可解な数字が何度も発表されている。
<過去に起きた事件 死亡者が35人以下のもの>
以下多数事例省略

以下紹介する今年2月の事件は不思議にもロシア民兵と称する軍団が、最強を誇る米軍基地攻撃を計画して撃退されてほぼ壊滅した事件らしいです。
ロシアとしては、自国兵が米軍基地を正面から攻撃したとは言えないので、自国関与を否定するのは当然としても、死傷者数くらいまともに認めても良さそうですが、それが出来ない様子です。
この後で書きますが、米軍基地をロシア民兵と名乗って正面から攻撃する図太さ・・オバマが「世界の警察官をやれない発言」以来、世界中の無法者が我が物顔に羽を広げている状態がわかります。
こんなことをされているのでは、ロシア疑惑を書き立てられているトランプ氏が国内政治対策上も放置できなかったでしょう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-02-13/P43FS16K50XT01

シリアのアサド政権を支持するロシア人を中心とする雇い兵部隊がデリゾール県で先週、米軍と有志連合が拠点とする基地に攻撃を仕掛けて失敗し、200人以上の兵士が死亡した。米当局者1人と事情に詳しいロシア人3人の情報で明らかになった。
かつての冷戦で対立した両国にとり、これまでにない数の犠牲者が出たもよう。
ロシア軍はこの攻撃には一切関与していないと表明。米軍もロシア軍の主張に異議を唱えていない。

https://www.cnn.co.jp/world/35115132.html

ロシア、「多数の」自国民死傷認める 米軍によるシリア空爆で
2018.02.22 Thu posted at 19:33 JST
(CNN) ロシア外務省は22日までに、シリア北部デリゾール近くで今月初旬、アサド政権支持の武装勢力が米軍支援の「シリア民主軍(SDF)」に攻撃を仕掛けた際、米軍による空爆の反撃で多数のロシア人が死傷したことを初めて認めた。
負傷者数は「数十人規模」としたが、死者数には触れなかった。
ロシア政府はこれまで多くのロシア人が死亡したとの一部報道を否定、死者については最大5人としていた。
戦闘にロシア軍兵士は関与していないとも主張。死亡したロシア人の遺族は、ロシアの民間軍事企業「ワグネル」に所属していたことを明らかにしていた。
マティス米国防長官はこれら雇い兵とは関係がないとするロシア政府の主張を疑問視する見方を示していた。
記者団に先週末、「257人の武装勢力が自らの判断で敵対勢力の領地に進攻し、砲撃や戦車の攻撃を実施したとは思えない」と疑問視していた。

上記のようにロシアは自国兵または民兵の被害を認めても、米軍へ報復できないから政権の威信に関わるから政府と関係ない民兵だといい、しかもわずか5人という発表しかできない状態です。
これではウクライナに展開している偽装?民兵が、米軍の空爆を受けても文句言わないのかな?
このような弱腰状態のロシアが、拒否権行使の結果米英仏のシリア空爆で自国兵が被害を受けたと主張して対米報復戦・・戦線の拡大などする勇気はないでしょう。
ということは、拒否権行使は政治的失敗だったことになります。
合同調査団派遣に同意していれば、空爆を先送りできたしその調査方法や結果に対する評価など色々交渉の余地があるのですから、これを頭から拒否した外交能力の拙劣さが際立ちます。
平昌五輪をチャンスに北朝鮮がギリギリのところで交渉に応じる姿勢を見せたのは、米軍の単独武力行使威嚇に対して、中国もロシアもせいぜい武力行使は遺憾の意を表する程度で具体的に動いてくれない・・「北朝鮮が自力で米軍に対抗出来るか否か」だけと見極めたからでしょう。
自分がある程度対抗できると思っても米国がそうは思わないで突っ込んでくるとなれば、大変です。
北朝鮮とすれば、交渉に入って仮に決裂してもその期間(平昌五輪から見れば約半年前後は時間を稼げるでしょう)だけ稼いで先送りできるメリット(半年あまりの違いでもっと核兵器運用準備が進む?)だけです。
・・この間に中韓を取り込める・・引きのばし交渉に米国が怒っても交渉うち切りは乱暴だなどと主張すると、その程度のことならばもうちょっと譲歩しても良いかなどの立場の違いを利用して欧米諸国分断チャンスもあります。

安保理拒否権行使とシリア空爆1

ここに至る過程を素描しておきましょう。
シリア化学兵器使用に関する安保理の採決は以下の通りでした。https://www.jiji.com/jc/article?k=2018041100200&g=intシリア化学兵器で機能

不全=米ロ対立で3決議案否決-国連安保理
【ニューヨーク時事】シリアの首都ダマスカス近郊、東グータ地区ドゥーマでの化学兵器使用疑惑をめぐり、国連安全保障理事会は10日、加害者を特定する独立調査団設置を決める米国作成の決議案を採決したが、シリア・アサド政権の後ろ盾ロシアが拒否権を行使し、否決された。この後、ロシア作成の2決議案も採択に必要な支持が得られず、廃案になった。
アサド政権の関与を主張する米国と、ロシアの対立で責任追及に向けた措置を打ち出せない安保理の機能不全が再び浮き彫りになった。
国際社会が一致して対応できない中で、トランプ米政権がシリア攻撃に踏み切ることに対する懸念が強まっている。
米国案は12カ国が賛成し、ロシアとボリビアが反対、中国は棄権した。シリア内戦をめぐるロシアの拒否権行使は12回目。一方、ロシア作成の独立調査団新設決議案は、採択に必要な9カ国の支持を得られず否決。賛成は中国など6カ国、反対は米英など7カ国、棄権は2カ国だった。

メデイア好みの「機能不全」というよりは、拒否権制度というものは、もともと大国間の紛争に国連は関与しないためにあるのですから、制度機能そのものです。
拒否権行使すれば国連としての関与はできない=その先は国連が関与しないので土俵外でルールなき戦いを勝手にやって下さいという方式です。
弱小国にとっては強国の横暴を訴えるためには国連のお墨付きが必要ですが、ロシアより何倍も強い米国が国連のお墨付きがなくとも「自分独自に空爆してもロシアが歯向かえないだろう」という読みで、大義を求めて安保理にかけているに過ぎない場合に「賛成12対反対2棄権は中国のみ」という状態であれば、ロシアが拒否権行使すればその結果どうなるかは明らかだったことです。
化学兵器使用論はフェイクだと主張しながら問答無用式の拒否権行使では、国際世論の支持を受けるのは無理がある・・米英仏は国際世論を味方に つけたことになります。
その上で米英仏の強硬論を批判しても始まらない・・・その先は強硬論同士の衝突・・どちらが戦端を開く勇気があるかにかかっていたのです。
ロシア軍をまともに攻撃するのではなく、ロシアが応援しているシリア空爆程度では、ロシアから先に米軍に攻撃を仕掛ける勇気などあるわけがないという私の読みと同じで米英仏国は空爆実施したのでしょう。
米英仏はロシアが怖いから安保理に掛けたのではなく、国際世論対策の手順として現地調査案をしたのに拒否権行使してくれたからタイミング良しと空爆に踏みきっただけのことです。
拒否権行使が却って空爆の時期を早めた事になりますが、ロシアは米国がロシア軍を怖くて米英仏が空爆実行できないと誤解していたのでしょうか?
ロシアは自国存亡の危機でもないことで、米軍に戦いを自分から挑むはずがない・・無謀な挑戦をできるはずがない・1962年のケネデイ対フルシチョフのキューバ危機で証明されている通りです。
その後相次いだイスラエルとアラブ諸国との間で連続した第何次戦争でも、その後のフォークランド紛争の時でもイスラエルや英国をソ連は脅迫することができませんでした。
その後ソ連崩壊→ロシアの国力減退・軍事能力低下が明らかですから、ロシアが米国の軍事力行使に対して、自分が直接の標的にもなっていないのに、米軍の行動を妨害するためにあえてちょっかいを出す能力があるとは到底思えません。
メデイアはシリア駐留ロシア軍に被害が出ると本当の戦争に発展すると頻りに騒いでいましたが、米軍の行動に当つる危機感を煽って実力行使を辞めさせる方向・「シリア国民が化学兵器の犠牲になっても主権の問題だから放置せよ」という結果?に向けてブレーキをかけたい特定の傾向がアリアリです。
今朝の日経新聞はロシアによる空爆非難決議案について、安保理事15カ国中、中国とボリビアしか賛成がなかったのは当然のような書き方でしたが、たまたま事務所へ行く途中の電車で、座席に放置されていた朝日新聞をちらっと見ると米英仏が空爆正当化という見出しでいかにも不当なイメージの表現が踊っていました。
仕事が終わって自宅に帰ってから朝日新聞ニュースを見ると以下の通りです。
(この部分は夜の書き足しです。)
https://www.asahi.com/articles/ASL4G7W43L4GUHBI044.html

朝日新聞が入手した決議案によると、主権国家への攻撃に「深刻な懸念」を示した上で、「米国とその同盟国に即座に侵略を止め、更なる武力行使を自制するよう求める」としていた。
しかし、採決の結果、賛成はロシアと中国、ボリビアの3カ国にとどまり、採択に必要な9票に届かず廃案になった。反対は8カ国、棄権は4カ国だった。
ロシアの主張ばかりで、「しかし・・」と残念そうな書き方です。

朝日(読者)の好きな綺麗事ばかりでは、正義が行われなくなるのをどうするかの視点がありません。
March 17, 2018,にゲリラや犯罪者が私有地を自由に横切って逃げているときに、警察官が私有地に入れないのでぐるっと遠回りしていると逃してしまうという矛盾を書きましたが、この1週間ほどの間にその事例が報道されています。
瀬戸内海の小島で刑務作業中に逃走した受刑者の捜索で、過疎地のために空き家が多すぎて、逃走者が空き家に潜んでいてもその家主の同意がないと勝手に入れない・遠隔地に出たままの持ち主を探して連絡を取っているうちに逃げられてしまうので捜索逮捕に苦労しているという報道です。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180414/k10011403211000.html

愛媛県今治市の刑務所から男の受刑者が逃走してから14日で7日目となり、男が潜伏していると見られる広島県尾道市の島では、予定されていたイベントが中止になるなどの影響も出ています。警察は引き続き1200人態勢で捜索を続けています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180413/k10011401031000.html?utm_int=detail_contents_news-related_002
島には空き家が1000軒以上ありますが、所有者などの許可が必要なため捜索は難航し、これまでに有力な手がかりは見つかっていないということです。

主権は必要ですが、政府が自国民相手に化学兵器使用しても政府の勝手と言えるのかともっと高い視点からの対策が必要ということです。
家庭内に警察がむやみに介入すべきではないですが、家庭内暴力が行き過ぎれば刑事事件として介入できるようになってきましたが、物ごとにはもっと大所高所からの視点が必要でしょう。

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