国債残高の危機水準5(海外保有資産はあてになるか?2)

中国や韓国などではイザというときのために大分前から金持ちから順に海外国籍取得が盛んですし、海外資金逃避が盛んです。
この意味するところは、国難・危機に際して逃げる準備・・3分の1〜半分でも海外逃避しておいてイザ危機が来たら残った資金も出来るだけ速やかに逃げ出そうとしているものであって、国難のときに買い支えるために海外に資金をプールしているとは考え難いところです。
大幅に値下がりすれば、儲けるための底値買いを入れることはあるでしょうが、それは純粋の(金儲け目的だけの)外国人投資家でも同じです。
中国(地域)の歴史は周知のとおり異民族の支配下にあったときの方が長いくらいですから、今一般に言うところの中国人というのは元々いない・・順次の被征服民がその地域にいただけですから、一族の紐帯以上のものがないのは当然です。
EUもいろんな国の集まりですが、一応民族別、国の原形を残したままの交流・一体化ですが、(ユーロ・通貨統合しながらも財政は別に行っている・主権が残る状態がその象徴でしょう)中国の場合、チベットやウイグルその他少数民族・自治区の例外がありますが、漢民族と言われる人たちは元はいろいろな人たちがごっちゃになっている点でアメリカ合衆国と成り立ちが似ています。
意外に思うかも知れませんが、アメリカにはムラ社会がない分、親族間の交際の密な社会です。
今から15年ほど前にニューヨーク郊外のある町のホテルに滞在しているときに、毎日のように朝食後ホテルでのレストランで長時間粘って・・朝食の後はコーヒーしか出ません・・コーヒーばかりがぶがぶ飲んでいたことがありました。
(アメリカのコーヒーは日本の麦茶みたいに薄くていくらで飲めるのです)
ボーイが通るたびに呼び止めるものですから、ボーイさんからMr.コーヒーと言われるほど仲良くなっていました。
(英語はマトモに話せなくとも気心は直ぐに通じるものです)
ホテルの部屋にいたのでは、都市型ホテルの弊で窓も狭いし狭苦しいのですが、レストランの窓際は眼下に道路が見えて行き交う車の流れを見ているだけで何時間でもボーッとしていられる良い場所です。
ある日いつものように夫婦で朝食後コーヒーを飲んでいると今日のお昼は貸し切りになっていると言うのですが、(英語は通じなくとも身振で何とか理解出来ました)困った顔をしてると結果的にお気に入りのいつも座っていた場所(コーナー)にいても良いと言って例外的に使用させてもらえました。
そのときレストラン中央部で集まって始まった貸し切りパーテイを見ていると、高齢の夫婦らしい人やその兄弟らしい人がいて彼らの子供夫婦や孫達の集まりらしく一族和やかにパーテイをしているのです。
後で聞くと、それは一族会みたいなものでアメリカではしょっ中こうした一族のパーテイを行っているそうです。
日本国民は、戦後地方から東京等大都会への人口移動の結果もあって、親族のつながりが薄れてしまいましたが、(今でも残るのは法事くらいでしょうか?)それでも愛国心というよりか郷土愛や同胞意識が強固ですからお金があるからと言って同胞を見捨てて海外国籍まで取得したい人が今でも少ない点は韓国人や中国人とは違います。
とは言え、それでも資金運用というものは合理的に行動するものですから、(前もって逃げ出さないまでも)海外に既に保有している資金をイザというときに国内救援のために逆ばり運用する人がどのくらいあるかとなると疑問なしとしません。
それどころか日本人でも国内株式が暴落傾向になれば自己防衛のために株式の損切りをするために売り急ぐ人が増え、銀行が倒産しそうになれば解約に走る人が増えるのはよその国とあまり変わらないのではないでしょうか?
現在国内企業が国内投資を控えて海外投資にシフトしているのも、その動きの一環と言えます。
ただし、繰り返し書くように日本国債も国内銀行の預金も円建てなので日銀券を印刷すればいくらでも払えることから、(円相場下落の心配は別として)国民は(預金保険の範囲内であれば)あわてて預金を解約する必要のない点が自国通貨を持たないギリシャとも違います。
国内金融資産だけは、既に質に取ったようなもので確かな資金と言えるからマスコミはこれを重視するのでしょう。

国債残高の危機水準3(個人金融資産1)

  Mar 28, 2012以降国債増発から日銀引き受け・インフレ問題にずれてしまいましたので国債増発の限界問題に戻ります。
国債発行残高が年間GDPの何倍になったら危険であるとか、個人金融資産の範囲内なら大丈夫・・ひいては個人金融資産を越えたら危険という論法が近年盛んです。
本当にそうでしょうか?
たとえば、中国が外貨準備の分散のために日本の国債を50兆円買うとした場合、日本もアメリカ国債ばかり集中しないでおつきあいで中国国債を同じ額だけ買った場合を考えて見ましょう。
日本国債の保有者が仮に80%〜100%外国人投資家であったとしても、日本も同額以上の海外国債を持っていれば、安全性としては同じことになります。
日本の経済危機時には円相場が下落するので、仮に1割下がればそれまで5分5分で相互保有していたのが、為替相場の下落の結果、日本の外貨保有価値が6割に上がって相手国の日本国債保有価値が4割に下がるメリットがあります。
このときに外貨準備として保有している外国国債を売って日本国債を買い戻せば2割残って黒字になります。
相互持ち合いメリットについては、09/08/08「国債引き受け先の分散3」前後のコラムで書いたことがあります。
すなわち国債発行残高がどれだけあるかの議論よりは、日本の対外債権がどれだけあるかの関連で考える必要があることが分ります。
発行残高が仮に6000兆円になっても8000兆円になっても、外国の国債を7000〜9000兆円分持っていれば、何の問題もないことになるのですから、対外債権と切り離して独立に考えるのは意味がありません。
個人金融資産の範囲内ならば安全であることは間違いがいないのですが、これを越えたら危険とは言えません。
親子の貸し借りの例をこれまで書いていますが、親が子供から借りている限り夜逃げする心配はないのですが、他人から借りたら直ぐ行き詰まるとは限りません。
個人金融資産額を基準に考える最近の風潮は、個人で言えば年収の何倍の借金があるかよりは、持っている対内金融資産・・息子から借りている限り安全とする論理です。
年収が1000万円しかなくとも10億円の対外(個人で言えば銀行預金など家族以外という意味です)金融資産を持っていれば、数億円を他人から借金しても心配ありません。
そこで個人金融資産とは国内資産だけを意味するのか、対外資産も含めて意味するのかが重要となります。
世上言われている個人金融資産が国内だけでなく、対外債権を含むのか、あるいは海外に保有している分を計上していないのかの問題です。
日銀の個人金融資産のデータ(内訳)を見ると国内金融機関だけのようです(国内金融機関の海外出張所分を含むかどうかをどこかに書いてあったように記憶しています・・記憶によって書いていますので間違いもあるつもりでお読みください )ので、私の素人判断では国内金融機関等から集めた限度でのデータによっているものと思われます。
国内機関は日銀からデータ提出を命じれば応じるでしょうが、海外機関にはそのような義務があり得ません。
まして無限とも言える膨大な世界中の金融機関からデータを求めるなど不可能でしょう。
ですから、国内法の及ぶ国内機関からの報告だけで作っているとすれば、個人金融資産と言っても国民の保有している資産の一部でしかないことになります。

構造変化と格差7(不適応対策)

補助金に話題がそれていましたが、2011-12-19「構造変化と格差4」の続きに戻ります。
グロ−バル化=賃金の国際平準化進行」ですが、これまでみて来た構造転換を国別格差でみて行くと、高度産業への転換に成功出来ない国々は新興国の追い上げにあって、(海外進出する力もなく)じり貧になるばかりで新たな受け皿も造れず失業者が溢れるようになってしまいます。
最終的には、失業の増加→賃金の低下を通じて新興国と賃金水準・ひいては生活水準が同等以下になって落ち着くことになるのでしょう。
従来の先進国の中で大量生産工場が新興国へ出て行った後も国内産業の高度化に成功出来る国と出来ない国に分かれて行きます。
ホワイトカラーの次世代で高度化向きに転進出来るものと非正規雇用に転落するものとに分かれるのと同じ結果が国にも待っています。
私の知っている分野では、顧客企業のサラリーマンの息子が弁護士(今から弁護士が良いとは限りませんが・・・)になった人が、結構いますがそのたぐいです。
元2流以下の先進国、あるいは中くらいの国々で高度化転換するだけの技術蓄積が少ない国々は、国内輸出産業・工場が縮小して行く穴埋め産業が育たず、それまでの貿易収支のトントンないし黒字国から赤字国へ転落して行きます。
一家で言えば、大量生産分野で働いていたお父さんが失業ないし非正規雇用になっても息子がハイテク系であれば良いのですが、親子まで現場系だと厳しいことになります。
巨額貿易黒字による蓄積がない国が、失業対策として黒字国並みに介護、福祉、公共工事を増やして行くと、貿易赤字が拡大して財政破綻の方向に進むしかありません。
これがイギリスポンドの恒常的下落・ギリシャ、南欧危機の基本的経済構造です。
農業や漁業は何千年も最も多くの人口を養える産業でしたが、産業革命以降の上昇した生活水準で人口を大量に維持出来るのは、近代工業化した産業だけです。
(知財も多くを養えません)
農漁業収入のままで、生活水準を近代化した都市・地域並みに引き上げるためには、地域人口を減らして一人当たり所得を上げるしかありません。
人口流出により仮に人口を半減〜6〜7割減にしても都市並みの生活水準を維持出来ない・・産業革命以降の生活水準向上は2〜3倍以上・・中国の改革解放以前我が国と数十倍の格差があったことから分りますので、国内格差の場合はどこの国でも、近代工業化に成功した地域・都市部からの資金流入・補助金で平衡を保っているのが普通です。
日本でも東北や沖縄・四国・山陰その他過疎地は、今回のグローバル化の2周回(明治維新と戦後の高度成長)前の明治以降現在に至る農業主体から近代工業社会化への構造転換がスムースに出来なかった地域です。
上記は国内の一部ですので、近代工業化に転換できた地域・都会へ人口が流出して行き易かったので、構造転換出来なかった地方に残る人が減って行く・・これを過疎化と呼んでいます・・メリットがありました。
時代変化に適応出来ない以上は、転換出来ない人や地域の人口が減れば減るほど格差是正の補助金が少なくて済みます。
とは言え、来年予算案では一般的な各種補助金とは別枠の沖縄新興予算が2937億円にものぼる巨額(僅か1年でこれだけ出て行くのですから10年では大変な額になります)が、南欧諸国はドイツ等豊かな國は別の国ですので、簡単に人口流出・過疎化しない上に補助金ももらえないので大変です。

ギリシャ危機4(財政赤字の結末)

ギリシャ(最近ではイタリアの経済危機がクローズアップされていますが、実力以上の借金経済の結果が出た点は同じです)を見殺しにして破綻させて貸付金をパーにすると独仏蘭等の銀行や輸出企業が参ってしまい(その株主や預金者・株主・債権者・・ほぼ自国民や自国企業が損をする)大混乱が起きるので、EUとしては財政出動で誤摩化すしかなくなったのが今回の騒動です。
解決の仕方としては、焦げ付くにまかせた場合、ギリシャ国債保有率の高い銀行や対ギリシャ取引率の高い企業が自己資本不足でやって行けないならば、(独仏国内でも銀行や企業によって関与・保有比率はいろいろでしょう)個別の資金不足に応じた経営責任を問いながら公的資金を注入する方法もあり得るでしょう。
この方が個別金融機関や企業ごとの責任が明確になっていいのですが、その代わり、ギリシャ政府のデフォルトを招いて、経済が大混乱に陥るマイナスが有るので、金融機関が何割の債権カット、残りをEU各国政府=EU中央銀行の資金投入と言う二段階方式が採用されたのでしょう。
(金融機関を除いた一般企業はそのまま取引代金の支払いを100%受けられる方式)
仮に50%の焦げ付き率の場合に放置してデフォルトを待てば、債権者は等しく半額の損失ですが、(大混乱による回り回っての二次、三次〜四次損害も発生して結果的に総損害が2〜300%を超えることもあり得ます)債権カット3割として、2割をEU中央銀行が負担するとした場合、EU域外国の金融機関は、3割だけの損失で済みます。
本来ならば、5割損するところを3割で済むのですから、残りの2割をEUの公的資金投入=域内国みんなで負担して域外国債権者に掛ける迷惑を少なくする方式です。
実際には域外国の金融機関の方がギリシャ国債保有率が低いのと、その国の業界がギリシャとの取引が少ないので2〜3次被害のダメージを受ける比率が低いのに対して、域内国の方は・・特に黒字国のドイツ等がギリシャ国債保有率が高いのと、これまでの取引量も債権に比例して大きいので危機発生後ギリシャへの輸出が停滞することによる二重3重のダメージを受けることになります。
これが国内的には連鎖的被害の拡大を招くので、取引停止の大混乱・ダメージを和らげるために、デフオルト回避にEU全体の死活的利害がかかって必死になっているのです。
日本企業も少しは拘っているでしょうが、日本全体の経済活動から見れば微々たるものでしょう。(あっても1%〜数%?)
EUの騒ぎは、青森や東北各県がデフォルト寸前になった場合に貸し込んでいた東京の金融機関・あるいは販売会社等救済のために東京等の裕福なところの連合体が、どこまで企業の自己責任とし、どこまで財政出動するか騒いでいるような構図です。
(青森等東北各県を例に出して申し訳ないですが、たとえばの話ですので気にしないで下さい・・)
外国金融機関や企業が青森県等に債権を持っていても微々たるものでしょう。
今回の危機が解決したときの結果を想定すれば(独仏蘭等から南欧諸国に対する貿易黒字をさし引けば)独仏蘭等も実質大した黒字国ではなくなってしまう・・財政赤字になりかねない事態が始まりました。

ギリシャ危機とEUの制度矛盾4

日本列島が300諸候に分割統治されていた徳川政権時代でも、都道府県に分れている現在でも1つの国であるように、EU参加国全部を日本の地方自治体のようにしてその住民は自国よりもEUの人の意識であり、出身地の有利不利はあまり関心がないようにして行くつもりだったでしょう。
日本でも、千葉市や東京の調布市に住んでいるのは便宜上そこにいるだけであって、千葉や調布が何らかの理由で立地上不利になればあっさりと捨てて有利になった場所へ移動しても良いと考えている人が大半でしょう。
EU諸国民も今では居住地にこだわる人が少ない・・好きに移動出来るのだから「どこが損な役回りでも良いでしょう」という意味かも知れません。
とは言え、移動の自由を謳歌出来る人は限られていて、大半(特に高齢者)は生まれ育った場所にしがみついているものです。
千葉の住民なども、ここ4〜50年間で移住して来た人が大半ですから都合によってどこへ引っ越しても良いという意識の人が多いだけであって、首都圏等大都会の近郊以外の数世代前から同じ地域に住んでいる人の多い地域(殆どの地方)では、そんな単純なものではない筈です。
実際には地元から動きたくない・・大半が移動しない・・移動の自由が事実上ない人が多いのです。
日本国内・300諸候統治場所の統合と違って、EUの場合はこちらから見れば同じアルファベットの国々のように見えますが、実際にはドイツ語とフランス語スペイン語やギリシャ、イタリアなどそれぞれ言語が違い、日本国内の方言の差とはまるで違います。
政治・法的に統合・移住が自由化されても、実際に自由に移住しても生活に困らない人は、外国語への適応力の有る人に限られます。
日本の国内移住でも方言しか話せない人は尻込みしたくなるでしょうが、それよりももっとハードルが高く法制度だけ自由化しても(特に高齢者にとっては)簡単では有りません。
同一経済圏にして実際には、移住の自由がない人の方が多い期間には、ドイツやオランダ等で富を独り占めしないで、EU全体で均衡ある発展が出来るように、日本の地方交付金のような制度・・再配分制度が日本以上に必要だったと思われます。
内部分配問題はEUに任せておくとして、EUそのものの価値(相対評価)について考えて行きたいと思います。
欧州諸国の内先進国は、日本の台頭によって世界市場競争に負け始めるとアメリカのように内需拡大路線をとらず、(アメリカのように蓄積がなかったので内需拡大をする資金がなかったことによります)他方技術革新で対抗するのでもなく半分正攻法?(外国人労働力を入れて平均賃金を引き下げて輸出単価を下げる)で貿易黒字獲得を目指していたので、内需拡大・財政赤字政策ではありません。
それでもアメリカ、アジア市場での輸出競争で日本に負けるばかりでしたが、安い外国人労働力確保によって、南欧東欧諸国を内庭・市場としてEUに囲い込んで一息ついていたことになります。
グーグルのストリートビユ-で世界中の都市の状況を見られますが、発展著しいアジア諸国の都市(公開されているのは日本くらいかな?)の一般報道(水害関連でバンコクの映像が流れたりしています)で接する上海、香港、マレーシアやシンガポール等の映像に比べて欧州諸国の都市はおしなべて、沈滞している様子が明らかです。
欧州諸国は、新規建造物が増える中で歴史建造物を大事にしているのではなく、まるで新規投資がない、寂れ行く日本の地方都市の様相を呈している印象です。
(ベルリンは東西ドイツ統合後の新規建設都市ですから新しいのは当然ですが・・その他の諸都市のことです)

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