米国の高家賃(収益還元法に頼る危険)1

住宅価格が家賃収益還元の範囲内なら安泰か(理論整合性だけで良いか?)というとそうではないでしょう。
私は日本のバブルの頃から、こんなに上がれば家賃やローンを払えなくなる・支払い能力を超えているからそのうち収まるはずだという信念があり、(その頃バブルという流行語が出回る前で知りませんでしたが)ローンや家賃支払い能力が不動産価格の限界値という考え方で生きてきました。
住宅価格急低下を防ぐために・・例えば金利を5%から2、5%に下げると2000万円しかローンを組めない人が4000万円まで借りても月額支払額が同じになるという面を利用した住宅価格維持政策です。
厳密には元金返済分増額になりますが、バブル崩壊後返済開始後5年間は利息のみ支払い可のローンが一般化していた記憶です。
固定資産評価では基本的スタンスは収益還元を基本に取引価格等を副次的に見るべきという個人的意見です。
この観点から言えば、バブル的取引事例による固定資産評価をするのは高過ぎないか?という基本的スタンスでしたが、もちろん実務はいろんな価値観や過去の経緯等総合的落ち着き等の総合ですので、結果的にいろんな要素の複合結果・・不動産鑑定理論に収束して行く運用になっています・・・ご安心ください。
日本では借地借家契約は契約期間満了しても原則更新して続いていく仕組み(正当自由がないと解約申し入れが無効)ですから、アメリカのように数年置きの契約期限がきたら「契約終了しました。住み続けたいならば5万円アップの新契約しなさい・応じないなら新契約に応じないなら出て行け」という追い出し策が不可能です。
日本では契約中の地代家賃値上げは一方的に出来ない・・・借家人等が応じなければ追い出せるのではなく、(借家人は自分が正しいと思う金額を供託すれば家賃を払ったことにしてくれるので未払いになりません)訴訟手続きが必要なので多くの場合家主の方が諦めます。

借地借家法
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
(借賃増減請求権)
第三十二条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

この手続きでは経済理論通りではなく過去の経緯や居住者の収入状況等を重視して土地価格が仮に2倍になっていても金利保証論だけで家賃や地代を2倍にするのではなくほんの微々たる値上げしか認めないのが原則的運用です。
こうした運用から一旦貸すと長期に渡って賃料が事実上固定される社会が出来上がっています。
地代家賃値上げに関する運用同様に、固定資産税の課税では激変緩和措置といって、評価が仮に2倍になってもすぐに税額も2倍にならない制度が用意されています。
雇用も事実上終身制になっている(よほどのことがないと解雇を認めない判例定着)のもこの一環です。
このように、日本社会は持続性を基本として運営されている・・その時々の経済成長などの勢いで全てやってしまわない・・支配者(権力)意見・理論や思想どおりに直ぐに決めつけていかない・・改革には時間のかかる社会ですが、その分手堅いしゴリ押しのない「納得」を前提として動く社会でやってきました。
社会制度を見ても律令制は日本社会に合わないと思っても直ぐに廃止するのではなく時間をかけて徐々になし崩しにして行ったし、武士の時代が来たからと言ってイキナリ貴族の荘園を取り上げるのではなく、なし崩し的に荘園管理に武士が浸透して行っただけで制度大変革をしてきませんでした。
神仏習合その他こういうやり方は、国内矛盾を温存する融通むげな社会です。
後白河院のよって立つ経済基盤であった八条院領が鎌倉時代が終わった建武の新政を始めた後醍醐天皇の経済基盤になっていたことを、皇室経費問題テーマで1月下旬頃紹介したばかりです。
日本人は懐が深いというか?幕府と朝廷の二重権力並存など矛盾関係でそのままやって行ける社会です。
この矛盾を主張したのが「隅々まで皇帝の威令を貫徹しないと気が済まない」・・専制支配を勉強した水戸学であり、明治維新の王政復古の号令であり廃仏毀釈でしょう。
そもそも専制支配は秦の始皇帝の始めたものですが、そのよって立つ支配原理は法家の思想でした。
法家の思想はいわゆる性悪説にたつ荀子等の思想を純化して行って、韓非子によって完成され秦の専制国家体制の支配理念を作ったものでした。
皇帝がうたた寝したので侍っていたものが、布団(漢文では御衣(おんぞ)と書いていますが・・私の日本語翻訳です)をかけたところ「役割外のことをした」という形式論で処罰されたという故事で有名です。
今の議論はこれに似ていないかの疑問です。
現在毎月勤労統計が(平均賃金データ)「不正問題」と銘打って政争テーマになっていますが、これは形式「論理を一貫しないと許せない」という偏狭な議論が基礎にあるように思われます。
報道によれば昔は五百人以上の大企業の全数調査が決まっていたのに、東京都は04年以来サンプル調査しかしていなかったという「不正」追求です。
「全数調査を続けるべきだったどうか」の本質的議論が全くなく、必要な変更手続きをしていなかったという「不正」追求です。
野党・メデイアと組んだ「不正」追求論は、法改正か規則改正で変更すべきだったという教条論のようですが、こういう形式論で国民の多く(庶民は知恵があるのです)が国会審議を止めて現在の内閣の政治責任を追求するべきと思っているかの疑問があります。

超格差社会・韓国5(住宅建設と個人債務膨張2)

以下は」16年までのデータで約2年遅れですが、韓国の家計債務のリスクに関する意見が見つかりましたので引用します。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/as180126.pdf

No.9, 29 SEPTEMBER 2017
韓国の 2016 年住宅着工実績
○韓国の家計債務は近年拡大基調にあるなか、特にノンバンクにおいて家計向けを中心に貸出の伸びが高い点がリスク。ただし要注意先債権比率は銀行・ノンバンクともに低下傾向 ○過去の債務拡大局面とは異なり、近年は消費を目的とした家計の借り入れは限定的で住宅関連の債務の割合が大きく、家計債務の拡大が抑制されても個人消費の大きな下押し要因とはなりにくい ○アジア通貨危機時のような大幅な住宅価格下落・金利上昇が起これば、低所得層を中心に家計のデフォルトリスクが大きく拡大するが、リーマンショック時程度のレベルであれば影響は限定的
1.はじめに 韓国の家計債務は近年急速に拡大している。IMFのレポートによると、家計債務がGDP比で36~70%の水準にある間は、長期的な1人当たりGDP成長率に対してプラスの影響をもたらすが、それ以上高くなるとプラスの影響が弱まり、徐々にマイナスの影響に転じていくとの分析がなされている1。韓国の家計債務は名目GDP比90%以上に達しており(図表1)、経済にマイナスの影響をもたらしうる水準に近付いているとみられる。また同レポートでは、家計債務の増加がどのようにマイナスの影響をもたらすかのメカニズムが示されている

ところで上記論文は重要な点を書いています。
リーマンショック級の危機が来なければ良いのではなく、(昨年の米国金利上げの影響をこのシリーズで書いている・・ちょっと金利が上がっても払えるの?問題の他に)住宅供給が際限なく増え続けることはないのでいつか需要の面からも限界が別に来るはずです。
ピアノも車も空調設備も一定の普及段階が終われば、(アップルの変調はまさにこれによります)更新需要しか無くなるのが基本原理です。
韓国の住宅着工数の推移の表が上記論文に出ています。
韓国の 2016 年住宅着工実績
1.構造別の建築着工実績
韓国の 2016 年国内総生産(GDP、実質基準)は建設投資を中心に固定投資が好調を示したが、輸出不振のため、2015 年と同様に 2.8%の成長にとどまっている。 好調な建設投資により、同年の建築着工数は 231,971 棟にのぼり、前年と比べて 6,031棟が増加した。
年別着工数数の表を見ると、2005年 114,55が2016年 231,972棟で11年間で約2倍になっています。
2007年 179,01〜2013年が187,54まではほぼ安定的ですが、13年から16年までの3年間でいきなり23万棟ですから政策誘導的急増だったのは確かでしょう。
内需といっても国民に消費する資力がないので、住宅建設(借金してでも消費するので)による中国同様の不況先送りを兼ねた内需振興策でした。
建築物の用途別の表で見ると
2005の合計が 114,554 棟で内、住宅用が32,710で3割弱、工場や商業用あるいは教育用などその他合計が約8万棟で約7割あまりでしたが、2016年には合計 231,972で、住居用が約5倍の155,16ですから、住居用が約7割を占めていて工場や商業用等その他は2005年とほぼ同様の約8万棟のままです。
サムスンの国外展開の例を見たように企業等は内需振興策と言われても無用な商業ビルや工場を国内に建てなかった・・この間国内生産が空洞化した穴埋めに日本のような財政出動・・政府債務を増やさずに、家計に負債増加を求めた結果でしょう。
このシリーズでは、2月4日の「債務膨張と債務負担部門・中韓」以来、「債務を社会内のどの部門に付け回しているかが重要」という視点で書いてきましたが、韓国では最も弱い庶民に「自宅を持てる」という夢を煽って、巧妙に債務負担をせて内需振興・経済破綻を防いできたことがわかります。
中国の場合もこの点は似ていますが、いじましい夢を売るのではなく投機熱で2戸目3戸目を買い求める文字通りのバブル現象ですが、韓国庶民の場合は日常消費を切り詰めても住宅が欲しいという購入ですから、堅実といえば堅実ですが、目一杯借りている以上金利が上がり始めれば持たない点は同じです。
上記表によれば、この3年間で需要の先食いが起きているので、金利優遇等の政策がなくなれば需要が急減するでしょうし、逆に国際的金利上昇の流れに引きずられると耐えられなくなるリスクです。
上記論文は専門家の意見ですので「素人が異論をいうのはおこがましい」ですが、リーマンショック級の外部環境によるのではなく、需要先食いによる反動減と借金過多による消費減→国内不況による自律的問題を論じるべきです。
ただし、以下の論文では中国、韓国の住宅価格は家賃収益還元内に収まっているのでバブルではなく外部要因による急激な利上げ(少しの追随利上げ程度は景気循環の範囲?)等がなければ価格調整が起きないのではないかという意見?データを示しています。
https://www.smtb.jp/others/report/economy/64_1.pdf
三井住友信託銀行 調査月報 2017年8月号
経済の動き ~ 低金利下の各国住宅価格と家計債務

https://screenshotscdn.firefoxusercontent.com/images/e28350b0-e6e8-4ae0-939e-8e9963e451e0.png

リーマンショック等外部危機場合、逆に金利下げその他の内需振興策を取るので、却って一息つける方向になるのではないでしょうか?
素人目には中国はバブルが弾けそうになると混乱を恐れた救済の繰り返しで現在になったように見えます。
まさに卵を積み上げすぎて「累卵の危機にある」状態で米国と経済戦争を戦えるのかが素人世界の関心でした。
上記論文によれば、賃料相場の範囲内にあるので中韓の住宅建設ラッシュは「社会の発展に遅れていた分を取り戻しただけ」(数年事業拡大に忙しく自宅新築の暇がなかったのがようやく落ち着いて自宅も立派にできるようになった状態?)という解釈になるのでしょうか?
そういう目で見れば遅れて海外旅行を楽しむような遅行指数と言えなくもありません。

超格差社会・韓国4(個人債務膨張1)

ここまで素人判断で韓国家計債務の大きさを強調してきましたが、個人金融資産とのプラスマイナスで見るべきという意見もあるでしょう。
同じ人間が個人金融資産を持ち債務もある場合・・バランス次第ですが、この関係は非対称が原則でしょう。
アメリカの格差報道で上位何%が全体の何割を占めていると報道されますが、金融資産保有者の分布が必要です。
金融資産の大方が財閥系一族に集中していて、一般国民が例えば数%しか保有していないとすればバランスシート的に検討する意味がありません。
サラ金に限らず銀行ローンであれ、自己資金があるのに金利を払ってまで大金を借りる人は稀(アングラマネーを表に出せないど?)ですから、家計債務者の多くは日常的決済に必要以上の金融資産を保有していないと推定されるべきでしょう。
https://japanese.joins.com/article/948/245948.html

韓国家計負債保有者1903万人…1人当り平均8034万ウォン
2018年10月11日10時12分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
金融会社からお金を借りた家計負債保有者が1903万人に達することが明らかになった。負債の平均額は、1人当り平均8034万ウォン(約790万6000円)だった。
住宅担保貸出の総額は978兆ウォンで、全体の家計負債の63.9%を占めた。ここ1年間増加した家計負債(77兆ウォン)のうち、32兆ウォン(41.6%)が住宅担保貸出だった。
住宅担保貸出の借り主の5人の1人は、住宅担保貸出のみならず信用貸出やノンバンクからもお金を借りている多重債務者だった。

人口(赤ちゃんまで含めて)5000万人あまりの国で2000万人近くも債務者になっている異常さです。
少なくとも多重債務者は統計上一回も延滞がない優良債務者であっても金融資産など保有していないグループといえます。
https://ameblo.jp/hagure1945/entry-12394064451.html

2018/7/28 東亜日報
高まったローンの敷居に「雪だるま」のカードローンが経済時限爆弾になるか
カードローンの膨らみが尋常ではない。今年3月末現在のカードローンの融資残高は26兆3381億ウォンで、昨年末の24兆9562億ウォンより1兆4000億ウォン近くも膨らんだ。ローン残高基準としては史上最高だ。主に庶民と零細自営業者などの脆弱階層が利用する高金利ローンという点で、景気低迷期を迎えて、懸念が高まる。
カードローンの急増は、政府が家計負債や不動産市場の安定対策として取り出した「ローン締め付け」の影響のためだ。
銀行や相互金融、貯蓄銀行までが融資の敷居を引き上げたことで、融資をぎりぎりまで使ったり、格付けが低く、お金を借りるのが難しくなった庶民が、カードローンに殺到したのだ。家計負債の増加が落ち着きを見せ始めている状況の中、クレジットカード会社やキャピタル会社のローンだけが増えている。

これが4ヶ月後の11月になると7〜9月の統計が出たのを踏まえて以下のような意見が出ています。
https://www.recordchina.co.jp/b661868-s0-c20-d0127.html

2018年11月22日、韓国・国民日報は、韓国の家計負債が1500兆ウォン(約150兆円)を突破したと報じた。これは過去最大規模という。
韓国銀行(韓銀)が21日発表した暫定集計で、今年の第3四半期(7~9月)の家計負債(融資+クレジットカード使用額)は1514兆ウォンだった。第2四半期末と比べると22兆ウォン(1.5%)、1年前と比べると95兆ウォン(6.7%)増えたという。
記事は「問題は家計負債の質が悪化していること」と伝えている。金融当局によると、今年初めから先月末までの信用融資は16兆ウォンで昨年の14兆8000億ウォンを上回り、マイナス通帳などその他の融資も34兆ウォン増加。金融関係者は「政府の家計融資管理で低信用者が(信金や郵便貯金、保険・証券・投信会社などの)第2金融圏や貸付業者の高金利融資に移る副作用が懸念される」と指摘している。

当局の貸出抑制が始まって債務伸び率が下がったものの、絶対額が増え続けている現状をどう見るかです。
韓国はこの数年以上景気低迷→GDP低下を防ぐために内需盛り上げ・中国同様に不動産投資(誘導?)を続けてきたのですが、(その方法として国民を債務漬けにして国民に買わせていた)が、借金させる限界が世界的に指摘されていることから金融行政として抑制気味になってきたようです。
この結果8年の家計債務増加率が下がっているようですが、(絶対額が増えて18年9月頃には1500兆ウオンに到達)その変わり銀行が貸してくれなくなった人が高利金融に頼るしかない怨嗟の声が出ています。
https://ameblo.jp/hagure1945/entry-12394064451.htmlによれば韓国その他の資産構成は以下の通りらしいです。

https://stat.ameba.jp/user_images/20150515/21/nobody0728/db/21/j/o0500064213307924679.jpg?caw=800


上記比率は財閥系の一握りの資産家を含めたグラフでしょう・・債務者1900万人が25%も金融資産を持っているとは考えられません。 各人の資産構成が金融資産とのバランスが取れていれば、金利上げには金融資産面で(株価にはマイナスですが日本のように預金偏重社会では)有利に働くので悪影響が緩和されますが、非金融資産・不動産等に偏っているとインフレには強いですが、逆方向・・デフレに弱いばかりか金利アップには耐性が弱くなります。

超格差社会・韓国3

昨日サムスンの国外移転の実態を見ましたが、日本代表的企業トヨタで見ると、今なお国内生産比率が、約3割台を維持しているのとは大違いです。
(民族資本か否か・・・目先の利ばかりではなく、国内生産をなんとか維持しようとする「根性」の違いでしょう)
https://www.toyota.co.jp/jpn/company/about_toyota/data/monthly_data/j001_18.html

2018年 トヨタの自動車生産台数(単位:台)

上記によると、1〜11月までのデータで世界生産9,775,324台で国内生産約390万台(関連企業別データになっているので国内合計は私が概略計算したものです)ですから、18年でもまだ国内生産を3割以上を維持しています。
日本の方が韓国や台湾等へ早くから国外進出してきたのですが、それでもこれだけの国内生産を維持しているのです。
韓国は諸外国と比較して内需が振るわない理由は、国内生産比率を維持する政策採用の差にもよるでしょう。
http://japan.hani.co.kr/arti/economy/29282.html

登録:2017-12-19 06:55 修正:2017-12-19 21:51
韓国の内需比重はOECDで下位圏
・・・韓国の内需の割合は下落傾向を見せた。1996年には78.4%だったが、2015年には53.4%で、20年間で25.1%pも下がった。10年単位で分析してみると、1996~2005年の平均は70.1%だったが、2006~2015年には56.0%と、やはり14.1%p下落した。
18日、国会予算政策処が発行した「内需活性化の決定要因分析」報告書によると・・・消費支出成長率を引き下げたのは、国内家計消費支出だった。この10年間、家計消費成長率(1.91%)は非営利団体消費成長率(7.21%)、政府の消費成長率(3.70%)より低かった。家計消費の成長を妨げる障害物は、相対的に低い可処分所得と消費性向、高い物価水準だった。

金融危機以降内需が縮小する一方・・その原因は家計の消費率が過去10年間で1、9%しか上がっていないことによると言うのです。
この間の韓国名目GDPは下記引用グラフの通り、1直線で(目見当で約1、8倍)上がっているのに家計消費が10年間累積で1、9%しか上がらないのはGDPアップの恩恵が一般家計に行き渡らない仕組みになっていることを表しています。

この10年間で韓国GDPがどれだけアップしたか?(1、9%なら整合します)


世界経済ネタ帳です。
https://ecodb.net/country/KR/imf_gdp.html

上記は「名目」GDPですから、極端な例で仮に物価が1、8倍になっているとして、この間家計手取り・「借金等支払い後自由に使えるお金」が1、9%しか増えていないと極貧化が進んでいることになります。
この間の物価上昇率がゼロとしてもGDP伸びの1割しか生活水準がアップしていない点は同じです。
企業の儲けを外資が国外に吸い上げ、その残りでもらった給与を更に町金融や銀行あるいは教育費に持っていかれる社会です。
韓国の場合、進学率が異常(産業構造に合わない・・卒業しても就職先がないい)に高い上に、サムスン等の大手企業や国家公務員等への就職予備校に通わせる(合宿形式が多い)ために親は莫大な教育費を負担しています。
売春稼ぎが一般化しているのはこの教育関連債務返済のためとも言われています。
2月4日に紹介した通り家計債務が多いので、「教育費負担➕借金支払い後自由に使えるお金が名目?1、9%しか増えていない」ということでしょう。
高利貸しへの返済のために売春して1日10万稼いでも、9万5000円が高利支払いになっていれば食うや食わずですから、給与統計やエコノミストのいう可処分所得だけ見ても本当の生活水準はわかりません。
実際の消費水準が国民の本当の生活水準でしょう。
http://blog.livedoor.jp/rakukan/archives/4797491.html

にピーナッツ事件の背景(一生懸命勉強して大企業に入ってもちょっとしたミスがあれば生まれつきのオーナー一族に土下座させられるどうにもならない格差)と教育費負担による老後資金枯渇・家庭崩壊を活写した朝鮮日報の引用記事が出ています。

企業利益は金融利益として株主や社債の保有者に還元されるのですが、韓国の場合多くが外資支配ですので国外流出・・財閥系等特定階層以外で金融資本を持たない国民に恩恵が行き渡りません。

超格差社会・韓国2

韓国では財閥に就職し損ねた人材は、行き場をなくし日本へ押し寄せたり海外脱出や国外売春に走るのでしょうか?
・・超格差拡大の結果、現在大卒の日本への大量就職運動や売春婦輸出に見られる激しい格差社会を生み出していると思われます。
https://www.sankei.com/world/news/180907/wor1809070001-n1.html

韓国人の日本就職急増…2万人突破 雇用環境悪化で韓国政府も後押し、目標は「今後5年で1万人」
2018.9.7 07:00

反日感情を率先して煽っている政府が、日本への就職活動を後押しすると言うのですから異常です。
格差拡大で栄耀栄華を尽くしている支配層(主として財閥)に対する格差社会化に対する国民不満が積もる一方・・ピーナッツ事件やセウオール号沈没事件その他何かあるとすぐ大規模騒動に発展する下地です。
経済が拡大基調の時には庶民の懐も潤っていたのでそれほどの不満がなかったでしょうが、アジア通貨危機以降庶民への分配が減ってきたことが大きな違いです。
特にサムスンその他財閥も生産基地を中国や東南アジアに移転しつつるあるので、サムスン等財閥企業の成長がそのまま国内労働者の所得向上に反映しなくなっている点も無視できません。
アメリカの例で言えば、アップルの儲けは以下の通り巨額です。
https://www.apple.com/jp/newsroom/2018/05/apple-reports-second-quarter-results/

2018年5月1日、カリフォルニア州クパティーノ、Appleは本日、2018年3月31日を末日とする2018年度第2四半期の業績を発表しました。当四半期の売上高は611億ドル・・

4半期の売り上げが611億ドル=年間2450億ドル・・円でいえば約30兆円と巨額であっても、その生産基地が中国にあるし、部品供給も多くは日本企業が担っていますので、米国民への売り上げ増や利益の恩恵は金融資産保有者にしか還元されません。
生産工場の国外移転が進み国内工場が減っていく一方では、労働者にとっては逆に職場が狭まる一方です。
この結果、工場系労働よりも低賃金のサービス業への移動が起きているので、失業率が上がらなくとも低賃金化が進みます。
(数年前にウオールマートの正社員が、フードスタンプを持って並んでいる状態が報道されていました)
欧米や日本の場合、世界の生産工場として長年蓄積がある・・国外生産移転が始まるまでの期間が長かったので(年金資金を含めて)中間層の蓄積が厚く、元中間層の多くが金融資産を手厚く保有しているので、老後資金の蓄積なく定年を迎えるのは少数派でした。
旧先進国では低賃金化の嵐にあっても国外の儲けを金融利益として補填ができる人が比較的多いのですが、(日本人の個人金融資産は1800兆円です)韓国等元新興国等では輸出基地としてゴツく稼げる期間が短かった上に、せっかくわずかに蓄積した金融資産をアジア通貨危機による金融資産の暴落を安く買い叩くチャンスと見た国際金融資本家の駆け引きの翻弄された結果「すっからかん」にされてしまったのが韓国です。
マレーシア等東南アジア諸国は過酷な植民地支配経験があるので、IMFによる巧妙な金融支配・第二次植民地支配を免れるための知恵を絞り、韓国のようにストレートな受け入れをしなかったと言われます。
この違いは、韓国が実は日本支配が緩かったので、東南アジア諸国のような植民地支配に対する警戒感がなかったことによるようです。
中国の場合、韓国香港台湾等の第一陣〜タイ等の第2陣に遅れて参入した第3陣で当時金融市場を解放していなかった(今も不完全です)ので、その痛手(売り浴びせ)からはまぬがれましたが、次々と輸出基地としての役割が移転していくローテーションからは逃れられません。
この結果国内生産工場が減っていく・・参入が遅れた分移動期間が短くなるので蓄積期間が短い点は同じです。
新興国は、低賃金を売り物にして輸出基地として一時期繁栄しますが、賃金上昇に合わせて次々と次の新興国へ生産拠点が移動していく(までの期間が短くなる一方)ので、中間層が十分に広がる期間が短く少ない上に金融資産保有率が少ない(国家的に見れば高齢化進行が早く年金の積立てが進まないうちに高齢化社会に突入してしまうのと同じ原理・・先老未富)のが難点です。
新興国で輸出基地が次の新興国に移り始めると、資本蓄積がない結果緩和要素が少ないので結果的にアメリカ国民不満がもっと極端に出てくる傾向があり、これがまっ先に出てきたのが韓国の現状です。
まずは韓国生産基地の国外移転の様相を見ておきます。
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/rim/pdf/9497.pdfの論文の一部引用です。

サムスン電子のベトナム生産拡大が変える貿易関係―韓国の「過度な」中国依存是正につながるか―要 旨調査部上席主任研究員 向山 英彦
環太平洋ビジネス情報 RIM 2016 Vol.16 No.611
サムスン電子に供給している部品メーカーによれば、10年のサムスン電子の工場別計画生産台数は、 天津( 中国)が約8,272万台、 恵州(中国)7,326万台、 亀尾( 韓国)4,836万台、ベトナム3,415万台、 ブラジル1,395万台、 深セン(中国)897万台、インド827万台であった。
海外での生産拡大に伴い国内生産比率は2005年の約75%から07年に約52%、08年に約35%、09年には20%台に低下した。15年1月時点ではベトナムの生産比率が50%、亀尾が8%と報道されている。
ベトナム(2工場)、中国(現在は2工場)以外にインド、ブラジル、インドネシアで生産を行っている。亀尾工場のマザー工場としての役割は現在も維持されているが( 注14) 、プレミアム機種の生産はベトナムに移管されている。

詳細は上記論文に詳しいので上記に入ってみていただきたいですが、16年の論文・データはもっと古いかな?国内マザー工場の比率が8%しか残っていないとは驚きです。
サムスン電子の移転にともない関連工場もほぼ同比率で国外移転しているようですから、これが国家全体の傾向でしょう。
サムスンが世界的大企業として発展したのは、アジア通貨危機後に政府のテコ入れ・・半官半民化以降です。
本日現在のサムスンのウイキペデイアの記事です。

2000年代から現在まで
サムスン Samsung Galaxy
1990年代までの韓国国内におけるサムスン電子の位置づけは、主要企業の中の一社に過ぎなかったが、上述の半導体事業での躍進などもあって2000年代以降は韓国国内の事業規模や韓国経済に与える影響面などは圧倒的なものを持つようになり、また、世界の電機メーカーの中でも有数の大企業に成長した。

この短期間に、あっという間の国外生産基地移転では、国内で中間層が厚く育つ暇もなかったでしょう。

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