労働力流動化(職業訓練必要性)1

ところで検索前から日弁連意見はなんとなく解雇4法理維持・固守論であろうと想定し検索してみると、想定通りに「反対論」が出てくるところに日弁連の硬直性がわかります。
意見を聞く前から答えがわかっているような組織になると、社会は日弁連意見を重視しなくなる・・軽く見られるようになるのが残念です。
昨今各種分野で日弁連意見を求められていますが、日弁連意見を採用するために聞いているのではなく、どうせ反対意見だろうが、せいぜい反対論根拠を念のために聞いておこうという程度の意見聴取になっている可能性があります。
日弁連は(旧社会党同様に?)自分たちは専門家集団だから黙ってついてくればいいというエリート意識の立場でしょうが、17年12月13日紹介の日弁連意見の前提事実としている日本の「労働者が窮乏を極めて」いるかの認識能力については日弁連は専門家集団ではありません。
社民党あるいはその他野党の弱点は、実態無視の傾向・・観念に走りすぎていて、社会実態に対する謙虚な認識能力欠如にあるのではないでしょうか?
前提事実の認識が間違っている・これを自覚しているから、却って検証を許さないような決めつけ的表現に終始しているのでしょうか?
しかし、都合の良い情報を鵜呑みしていると情勢判断を誤るのと同様で、実態と違うのを承知の上で解決策を組み立ても、現実性がありません。
メデイアを通じていくら宣伝しても・・・評論家はメデイアに干されるのが怖くて「よいしょ」意見しか言いませんが・・裸の王様同様で、実態無視で組み立てた論理は表向き通用しても、秘密投票制度下では選挙においてサイレントマジョリティの反乱に直面します。
今回の総選挙結果による支持率と事前世論調査とほぼ一致していたのはニコ動だけで、既存大手メデイアに事前世論調査結果とは大きく乖離していたことを11月5日に紹介しました。
整理解雇4条件の修正必要性に戻ります。
個人事業の場合は別として大手企業のリストラ=事業再構築の場合、個人的好き嫌いで選別するとは滅多に想定できません。
企業にとって重要なのは、新事業に適性・使い回しのきく人材かどうかでしょう。
借地法の正当事由の要件として周辺社会状況を入れるかの議論があったことを12月7日に「大阪市立大学法学部生熊長幸」の論文を紹介しましたが、解雇も個人的な事情・不正行為などなくとも客観的経済環境を判断事情に入れることが可能かどうかこそが重要です。
17年12月13日に紹介した弁護士意見のように万に一つの例外的場合を原則にした議論をするのではなく、個人的怨恨を紛れ込ませた場合には乱用で個別救済する・・制度設計を逆にすべきはないでしょうか?
中高年で多く人の技術が陳腐化するとした場合、中途解雇の受け皿・中高年者に対する教育訓練等の受け皿等の工夫が必要です。
こうした議論こそが重要であって、個人の救済・・マイナーな場面の議論は、こうした中途解約制度で積み残される人の救済をどうするかという別の場面の議論ではないでしょうか・・議論がかみ合っていません。
予防接種の有用性議論している時にはワクチンの有効性や事故率等が重要であって、一人でも事故が起きたらどうするのか!という神学論争しても始まりません。
個人企業の場合、事業主やその家族とと日々喧嘩しながら仕事を続けるのは無理があるので、自分からやめて行くのが普通で、もともと労働法の解雇規制に関係がありません。
制度が硬直しているとその制度利用者がいなくなる・・「特に借地において顕著で、借地権の新たな利用は、目にみえて減少していることが、ひとつの裏書きとなっている」・・と借地法改正の論文でも紹介しましたが、解雇規制の厳し過ぎが正規雇用が急速に減少して行った原因でしょう。
終身雇用を残したいならば、過ぎたる保護をしないことが肝要・・保護が過ぎれば却って継続を美徳とする雇用慣習が崩壊するでしょう。
たまに非合理な解雇があればそれは裁判で救済する道を残せば良いことで、滅多にない事例を全部に及ぼすのは間違いです。
借地借家法では定期契約制度が25年以上も前から運用されていますが、今では受け皿になるべき賃貸マンション等が充実しているので、不都合な現象が起きていると聞いたことがありません。
定期借地を非正規契約という人はいません。
雇用も同様で人材流動化に合わせて受け皿を整備すれば良いことであって、経済のことは経済の動きに委ねる・・政府は不都合を監視しインフラ整備するだけで良いのであって、流動化自体を禁止するの行き過ぎです。
労働法分野では特に(超保守の)左翼系の政治抵抗が激しいために、30年近くも柔軟な企業環境変化を阻害してきために業界の工夫で期間工やパートなどの雇用形態が増殖して来たのです。
実態に応じた変化対応が、超保守の運動家によって労働分野で遅れていたにすぎません。
技術の陳腐化が激しい上に今後70歳以上まで働くようになると、若いころに身につけた技術で一生食っていく・4〜50年前の技術を磨いてきた先輩の方が若い人よりも能力が高いなど言えない時代です。
特定技術は身につけたばかりよりも、10数年程度は実地訓練による技術の磨き上げが有効ですが、(プロを見ればわかりますが、プログラマーでも相撲でも競馬でも将棋でも皆一定期間経過で能力下降していきます)それ以上になると新たな技術についていけない弊害の方が強くなりそうです。
この一定期間が短くなる一方で、他方で長寿化により就労が長期化する逆の傾向になっています。
こうなるとこのギャップをどうするか・・年功で(能力が下がっていくのに)給与賃金が上がっていく正社員の年功制がもたない・不合理な制度をどうするかの議論を避けて通れません。
サービス産業化が進むと、1日の中でも時間による繁閑差があり、業種によっては(スキー場付近のホテル飲食店など)季節要因でも変わります。
こうした場合、時間給や数ヶ月単位の雇用が合理的です。
柔軟性のない、雇用条件の「正社員」しか認めない社会構造を前提とするのでは無理があります。
正社員化を進めるには正社員の概念を非正規に近づける努力・・今とは変えていく必要があります。
企業の稼ぎ頭・事業部門が10数年もすればほぼ入れ替わって行くくらいでないと現在のスピード社会では企業が生き残れないように、個々人の技能も途中で新技術の再補給をしていかないと有用な人材として生き残れない時代に入っているので、終身雇用の前提が崩れています。
労働者の人権も必要ですが・・社会変化にどう対応するか・新たな環境に合わせた保護策を考えるべきで、この工夫を怠って「古い時代に適合していた権利を守れ」というばかりで社会変化を敵視するのでは日本経済はジリ貧になります。

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