労働力流動化(職業訓練必要性)2

大きな変動を何でも拒否する超保守思想の権化みたいな教条的運動は困りものです。
こういう人たちも人権擁護で頑張っているのでしょうが、あまり反対ばかりが続くと外国から何かもらっているのじゃないか?という疑いを持つ人がふえてきました。
今後IT〜AI発達の過程で、雇用流動化・個人の方から見れば30代まではスポーツ選手では、監督コーチになれるのは一握りで残りの大多数は3〜40台では別の仕事につくのが普通(プログラマー等IT関連も同様)であるように、(タイピストのように職種自体がなくなっていくパターンが増えていきます)人生途中で変化していく人の方が多くなる時代が来るように思えます。
変化することにはなんでも反対にエネルギーを注ぐのではなく、IT化どころかAI化による急激な労働環境・社会変化が見込まれる時代には、変化に対する適応能力の再教育制度の再構築(職業教育は子供〜若者だけではなく中高年にも必要)や再就職の手助けに向けた社会構築にエネルギーを注ぐべきです。
高度成長期でさえ多くの労働者が終身雇用下になかったにも拘らず、今どき時代逆行の正規化…終身雇用拡大が必要か?の根本的な問いかけが必要です。
その結果、もし未だに正規非正規(私はその垣根をなくしていくべきという意見ですが)の峻別が必要としても、終身雇用を前提にした再チャレンジ・受け皿のない(大卒時に人生コースが決まってしまう・変化・コースから脱落した多くはは落ちこぼれしかない社会)固定した社会が有用か?の議論こそ重要です。
終身雇用でもいいが、後ろ向き・倒産しそうな時しか整理解雇を認めないのではなく、当該分野はまだもうかっているが、将来を見据えてこの分野を縮小していきたいという前向きな場合でも、金銭解決で解雇を認めるような柔軟運用が社会をしなやかにしていくように思えます。
金銭解決反対で前に進まないならば、正規・非正規の2択しかなくなり非正規が増える一方になると思われます。
希望の党の公約は民進党系の思想で作られているとしたら、正規=解雇柔軟運用という妥協能力がない旧社会党の系譜が色濃いために・金銭解決絶対反対意見になるのでしょうか?
そうなると企業は新卒新採用を最小に抑えるしかない・・非正規が増えるしかないでしょう。
希望の党(この原稿は17年秋から暮れにかけて書いたもので、当時の希望の党の主張を前提にしています)が「非正規を減らし正規社員を増やせ」と本気で主張しているならば、正規雇用者の解雇規制緩和でなければ矛盾です。
ここ(17年秋総選挙時の)で希望の党の公約を見直してみましたが「 〇〇に希望を」という抽象的スローガンの羅列しか目に入りません。
要は耳当たりの良さそうなことを羅列的スローガンにしただけで、正規を増やすために必要な金銭解決を認めるのかどうか、どうしたいのか道筋が見えません。
金銭解決で入れ替え可能ならば、企業は正規雇用にこだわる必要がなくなりますが、その代わり転職能力のない既得権利者にとっては脅威です。
17年12月16日に書きましたが、省力化による人手不足解消と職業教育はセットであるべきです。
韓国では労働貴族・・非正規の苦しみを無視して無茶な要求貫徹のためのストライキ打ち放題という現状(特に現代労組)が知られていますが、日本の大手労組はそこまでひどくないものの、(解雇規制=新規採用抑制)既得権にあぐらをかく姿勢では国民の支持を得られません。
そもそも日本社会が沈没するでしょう。
正規職人口の比率が下がれば下がる程自分の希少性が上がるので、そういう方向へ大手労組は動きがちです。
組織労組の大方を占める連合の勢力はウイキぺデイアによると以下の通りです。

1989年11月:78産別、 組合員数  約800万人(結成時)
2016年2月 :51産別、       689万0,619人

内訳に占める旧官公労を抜き出してみると以下のとおりです。

自治労     798,659         地方公務
日教組      241,331         教育
JP労組     240,579        日本郵政
国公連合    83,402         国家公務
JR連合       81,230         JR 全日本鉄道労働組合総連合会
JR総連      72,655         JR

JR東労組崩壊

連合の下部組織で、組織単体としては最大勢力を誇ったのが東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)であった。急進的かつ戦闘的な左派労組であり、組織率も2017年2月の時点では約80%と高く、雇用側に対して最も影響力がある労組と見られていた・・・・JR東日本という単体で非常に公共性の高い企業に対し意見ができることは、連合内部で大きなアドバンテージであった。実際、2017年2月に同組合の執行部は「スト権を確立した、いつでも戦える」と宣言している
ところが、
2018年2月に実際にJR東労組がスト権行使を会社に通告したところ、大量の組合員が「労使関係の崩壊」と言って脱退し始めた
この背景には、過激な組織運営に以前から組合員が不満をいだいていたことや、企業に対する労働組合として逸脱する主張が一部の過激な指導者によって実施されていることなどが上げられる。
執行部はスト中止を宣言するがその後も脱退は止まらず、結果的に46,500人のマンモス労組から約32,000人が脱退、かろうじて第一労組の面目は保ったものの、従来の戦闘的な労働運動が成立しない情勢であることを証明してしまう結果になった。

組合が民主的に運営されているというのが建前ですが、実際には組合員多数の本音を反映していなかったことが露呈したことになります。
日弁連の各種政治的意見を会員の何割が支持しているかについても、このように実際の行動で見たらわかり良いでしょう。

労働力流動化(職業訓練必要性)1

ところで検索前から日弁連意見はなんとなく解雇4法理維持・固守論であろうと想定し検索してみると、想定通りに「反対論」が出てくるところに日弁連の硬直性がわかります。
意見を聞く前から答えがわかっているような組織になると、社会は日弁連意見を重視しなくなる・・軽く見られるようになるのが残念です。
昨今各種分野で日弁連意見を求められていますが、日弁連意見を採用するために聞いているのではなく、どうせ反対意見だろうが、せいぜい反対論根拠を念のために聞いておこうという程度の意見聴取になっている可能性があります。
日弁連は(旧社会党同様に?)自分たちは専門家集団だから黙ってついてくればいいというエリート意識の立場でしょうが、17年12月13日紹介の日弁連意見の前提事実としている日本の「労働者が窮乏を極めて」いるかの認識能力については日弁連は専門家集団ではありません。
社民党あるいはその他野党の弱点は、実態無視の傾向・・観念に走りすぎていて、社会実態に対する謙虚な認識能力欠如にあるのではないでしょうか?
前提事実の認識が間違っている・これを自覚しているから、却って検証を許さないような決めつけ的表現に終始しているのでしょうか?
しかし、都合の良い情報を鵜呑みしていると情勢判断を誤るのと同様で、実態と違うのを承知の上で解決策を組み立ても、現実性がありません。
メデイアを通じていくら宣伝しても・・・評論家はメデイアに干されるのが怖くて「よいしょ」意見しか言いませんが・・裸の王様同様で、実態無視で組み立てた論理は表向き通用しても、秘密投票制度下では選挙においてサイレントマジョリティの反乱に直面します。
今回の総選挙結果による支持率と事前世論調査とほぼ一致していたのはニコ動だけで、既存大手メデイアに事前世論調査結果とは大きく乖離していたことを11月5日に紹介しました。
整理解雇4条件の修正必要性に戻ります。
個人事業の場合は別として大手企業のリストラ=事業再構築の場合、個人的好き嫌いで選別するとは滅多に想定できません。
企業にとって重要なのは、新事業に適性・使い回しのきく人材かどうかでしょう。
借地法の正当事由の要件として周辺社会状況を入れるかの議論があったことを12月7日に「大阪市立大学法学部生熊長幸」の論文を紹介しましたが、解雇も個人的な事情・不正行為などなくとも客観的経済環境を判断事情に入れることが可能かどうかこそが重要です。
17年12月13日に紹介した弁護士意見のように万に一つの例外的場合を原則にした議論をするのではなく、個人的怨恨を紛れ込ませた場合には乱用で個別救済する・・制度設計を逆にすべきはないでしょうか?
中高年で多く人の技術が陳腐化するとした場合、中途解雇の受け皿・中高年者に対する教育訓練等の受け皿等の工夫が必要です。
こうした議論こそが重要であって、個人の救済・・マイナーな場面の議論は、こうした中途解約制度で積み残される人の救済をどうするかという別の場面の議論ではないでしょうか・・議論がかみ合っていません。
予防接種の有用性議論している時にはワクチンの有効性や事故率等が重要であって、一人でも事故が起きたらどうするのか!という神学論争しても始まりません。
個人企業の場合、事業主やその家族とと日々喧嘩しながら仕事を続けるのは無理があるので、自分からやめて行くのが普通で、もともと労働法の解雇規制に関係がありません。
制度が硬直しているとその制度利用者がいなくなる・・「特に借地において顕著で、借地権の新たな利用は、目にみえて減少していることが、ひとつの裏書きとなっている」・・と借地法改正の論文でも紹介しましたが、解雇規制の厳し過ぎが正規雇用が急速に減少して行った原因でしょう。
終身雇用を残したいならば、過ぎたる保護をしないことが肝要・・保護が過ぎれば却って継続を美徳とする雇用慣習が崩壊するでしょう。
たまに非合理な解雇があればそれは裁判で救済する道を残せば良いことで、滅多にない事例を全部に及ぼすのは間違いです。
借地借家法では定期契約制度が25年以上も前から運用されていますが、今では受け皿になるべき賃貸マンション等が充実しているので、不都合な現象が起きていると聞いたことがありません。
定期借地を非正規契約という人はいません。
雇用も同様で人材流動化に合わせて受け皿を整備すれば良いことであって、経済のことは経済の動きに委ねる・・政府は不都合を監視しインフラ整備するだけで良いのであって、流動化自体を禁止するの行き過ぎです。
労働法分野では特に(超保守の)左翼系の政治抵抗が激しいために、30年近くも柔軟な企業環境変化を阻害してきために業界の工夫で期間工やパートなどの雇用形態が増殖して来たのです。
実態に応じた変化対応が、超保守の運動家によって労働分野で遅れていたにすぎません。
技術の陳腐化が激しい上に今後70歳以上まで働くようになると、若いころに身につけた技術で一生食っていく・4〜50年前の技術を磨いてきた先輩の方が若い人よりも能力が高いなど言えない時代です。
特定技術は身につけたばかりよりも、10数年程度は実地訓練による技術の磨き上げが有効ですが、(プロを見ればわかりますが、プログラマーでも相撲でも競馬でも将棋でも皆一定期間経過で能力下降していきます)それ以上になると新たな技術についていけない弊害の方が強くなりそうです。
この一定期間が短くなる一方で、他方で長寿化により就労が長期化する逆の傾向になっています。
こうなるとこのギャップをどうするか・・年功で(能力が下がっていくのに)給与賃金が上がっていく正社員の年功制がもたない・不合理な制度をどうするかの議論を避けて通れません。
サービス産業化が進むと、1日の中でも時間による繁閑差があり、業種によっては(スキー場付近のホテル飲食店など)季節要因でも変わります。
こうした場合、時間給や数ヶ月単位の雇用が合理的です。
柔軟性のない、雇用条件の「正社員」しか認めない社会構造を前提とするのでは無理があります。
正社員化を進めるには正社員の概念を非正規に近づける努力・・今とは変えていく必要があります。
企業の稼ぎ頭・事業部門が10数年もすればほぼ入れ替わって行くくらいでないと現在のスピード社会では企業が生き残れないように、個々人の技能も途中で新技術の再補給をしていかないと有用な人材として生き残れない時代に入っているので、終身雇用の前提が崩れています。
労働者の人権も必要ですが・・社会変化にどう対応するか・新たな環境に合わせた保護策を考えるべきで、この工夫を怠って「古い時代に適合していた権利を守れ」というばかりで社会変化を敵視するのでは日本経済はジリ貧になります。

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