中国過大投資の調整16(資金不足18)

話題がそれましたので、過大投資調整のテーマに戻ります。
・・中国がバブル退治を早めにやれなかったのは、資本流出が怖くて出来なかった気の毒な面もあるでしょう何事もメンツにこだわって経済原理を無視して強権で押さえつけて来た程度に応じて、その咎め・・反作用が大きくなるのは仕方のないことです。
日本でも、大手企業の粉飾決算の先送り・拡大も株価下落が怖くて先送りすることが多いのですし、東芝の粉飾決算露見も先送りが長かった分に比例して傷が深くなっています。
中国の場合、過大投資が特定産業のバブルとは言えない程全ての分野に蔓延してしまったので、身体で言えば毒素が全体に回っているようなもので、引き締めて見たり緩めたり、どうして良いか分らないで右往左往していると見るのが正解のような気がします。
日本マスコミは中国は何かやると「したたかだ」と高評価するのが常ですが、何でも中国は偉大だと有り難がる報道には飽き飽きしている人から客観的に見れば(もしかして悪意で見ればかな?)ただ、訳が分らずに右往左往しているように見えます。
リーマンショック後4兆元だったかの大判振る舞いで何とかショックを持ちこたえたものの、その先が続かずここ3〜4年はさしあたり目先の消失した輸出需要の穴埋めに国内需要を作り出すしかないということで、・・オリンピックや万博を誘致しては無駄なインフラを作ってみたり、物流用の国内インフラ(港湾造成など一段落して)需要が落ち込んで来たので、需要無視の鉄道線施設に邁進したりしてきました。
アジア大会/オリンピック・万博施設など次々と誘致してきましたが、これら施設はその後無用になっても、元々そのようなものと言う暗黙の合意があるので大した問題になりませんし、売れないマンションは放置していれば良いのですが、鉄道など過剰投資を始めると、作った後が問題で客のいない列車を運行していると大赤字が累積してその内参ってしまいます。
鉄鋼や石化製品生産工場の場合には、やたらと作っては出血輸出をして世界に迷惑をかけていますが、(9月1日日経新聞朝刊9pに「中国発鉄冷え加速」の大見出しです)鉄道等の内需インフラ投資の場合、出血競争するにも客がいません。
AIIB投資の目玉である中央アジア貫徹の大動脈構想(一帯一路)がありますが、作る資金は何とかなるとしても完成後砂漠の真ん中を採算が取れる物流があり得るかの議論が前からあります。
IMFやAIDの資金援助は要件が厳し過ぎると言う中国から批判があって、新興国にとってもっと使い勝手の良い国際機関を作ると言うのがAIIBの宣伝です。
しかし、中国のように成金による資金バラマキのようにコネ・・親疎だけが基準で事業採算審査なしでお金を湯水のように使うやり方では、焦げ付き頻発で早晩行き詰まるのが必然です。
日本では資金がないのではなく、国立競技場建設計画の見直しでも分るように採算性・合理性のない投資をしないと言うだけですが、中国の場合、始めて大金を持ったので嬉しくて仕方なかった・・必要性を無視した無駄遣いしている貧乏人のニワカ贅沢みたいな印象です。
ニワカにお金を持つと、店のこの棚の端から端まで全部クレと注文したり、食べ切れない料理を注文して見せびらかすことがありますが、これを中国は国を挙げてやって来た・・田舎者と言うことです。
クルマであれ、鉄道延長であれ、日本を追い越すかどうかばかりが気になり、最近ではクルマの販売台数がアメリカを追い越すかどうかが基準であって、需要と関係なく投資してきました。
これが個人で言えばいわゆる「爆買い」ですし、企業も採算度外視で資源類も無茶に仕入れるし、と国内インフラ投資も出店競争もビル建設も見通し無視で無茶苦茶やるのが中国流でした。
無茶苦茶やっていても、中国ブームを煽った結果ひっきりなしに投資がはいって来たので、無茶な投資が成功に繋がっていたのですが、ねずみ講みたいでいつかは投資が減って来ると終わりが来ます。
中国の場合、一旦計画が出来れば、コストに見合う需要がない・・採算が取れないことが分っても国策である以上・・国有企業その他もメンツがあるので、修正したり中止することが出来ないしくみです。
・・何でも計画どおりに作ってしまうしかない硬直性・・強引さが土木・建設業者にとっては魅力ですが、その分無駄な投資が増えて長期的に見れば、経済が立ち行かなくなる宿命を持っています。
(資材納入・建設業者はその場で儲ければ良いのですから・・どんなバカな計画でも注文があれば仕事をすれば良いので、その先の責任はありません。

  中国強権政治と政権の脆弱性

習近平政権による激しい粛清劇や、日本とマトモに戦ったこともないのに抗日戦勝利の大々的な式典開催を(するしかないのを)見ると、権力基盤がかなり弱い・・その反作用と見るのが普通です。
世界の支持率のバロメータートしてみれば、出席者はロシアのプーチンと韓国大統領くらいで、欧米首脳その他マトモな国の参加がなく、世界大多数の国が日本に遠慮して?参加していません。
これでは普通の先進国的報道基準で言えば、却って習近平氏やって来た中国の国際的地位低下を満天下に曝したことになり、却って権威が大失墜・・大恥をかいた結果になります。
(報道規制があるので、中国人は何も言えませんが・・)
習近平の自信喪失状態丸見えの写真がニュースに出ていますが、報道規制下ですから政府公表写真でさえそんなものしか発表出来ないのですから大変な事態です。
世界で孤立している自信喪失を補うために軍事力を誇示する大々的パレードをするなんて、ナチス時代の再来のような印象・・時代錯誤もはなはだだしい発想です。
マスコミでは、こう言う評価が出て来ませんが普通に見ればナチスの閲兵式のような印象です。
このために3日前ころか北京中心街3km前後が交通禁止、道路に面した窓を開けることも禁止、商店も営業禁止、株式市場も閉鎖(経済活動停止)などですから、事実上戒厳令を布いているようです。
強大な軍事力や公安警察の威力を国民や諸外国に誇示すればするほど、それほどまでに国民が怖い・国民の支持を受けていないことの自認行為であり、諸外国に対しては、今後紳士的交渉・正義の基準に基づくよりは、武力で威嚇して行く方針を明示したことになります。
これでは株式下落の催促に対して市場開放・・透明な社会にして信任を得る努力よりは、市場経済化促進よりは規制強化・・対外不信に対しては武断政治の強化と言う意思表示になります。
自由な経済活動を認めない・・正義に基づく話し合い解決よりは武力による世界から孤立する覚悟・・開き直りを誇示したことになります。
ヤクザ組織じゃあるまいに、力を正面に出して行く意思表示が国益上マイナスになる・・いよいよ国際資本が逃げるでしょうから、冷静な判断が出来なくなっているか生まれが出たと言うべきでしょう。
国内経済も軍事パレードにかこつけて周辺工場や商店を操業停止させたり株式市場閉鎖していれば、当面株式相場の下落を防げるでしょうが・・式典が終わって再開したときどうなるのやら・・却って怖いでしょう。
経済活動の隅々まで剥き出しの規制強化せざるを得なくなったのは、経済面でも限界が来ていることを表しています。
これが尻抜け状態になると・・この面でも権威失墜です。
政府高官自体がいつ失脚するか知れないので、安全のために裏社会を利用して国外に資産を隠し、家族を逃がしている「裸官」と言われている社会です。
隅から隅までお互いを信頼せずにルールも国法よりも入り乱れたヤミの掟で動いている社会では、人間も相互に信頼する習慣が途絶えています。
中国では、愛国心などかけらもない・・一族のみが頼りと言われています。
猜疑心が渦巻く・・荒廃した人心関係で秦漢以来約2000年も経過しているので、これをマトモな心に戻すのは至難です。
表向きは誰でも簡単に改心出来ますが、心の底から癒し真人間に復元するには、心を傷つけられ続けた時間に比例した長期間を要するでしょう。
始皇帝以来の2000年以上にわたる専制支配下で生きて来た人民が、生き残るために法網をくぐることに精出して来た民族性のままで、世界進出するようになると世界秩序の撹乱要因になっていることを、2015/08/06「秩序破壊と社会の停滞・退化1」以下で書いてきました。

不透明=ヤミルート社会

中国では、秦帝国以来2000年間歴代王朝が毎回庶民の暴動・流民化によって崩壊して来ましたが、今は政府軍武力が巨大で民衆に不満が蓄積して立ち上がっても残酷な殲滅作戦には、庶民は歯が立たないことを大分前に書いたことがあります。
ウイグル族チベット族はどんなに反抗しても、近代兵器の前に屈服させられるばかりですから、政府は公安予算を増やしさえすればどうってことはないと多寡を括っていたのですが、漢民族?自体が経済流民化するようになると政府は持たないと思われます。
人民流民化・国家脱出・人民元売却と言う雪崩のような動きが、今にも政府を押しつぶそうとしているので、もはや格好などどつけていられなくなったと思われます。
株式相場・為替維持政策同様に、世論誘導も目に見えないやり方の場合相応の効果がありますが、言論規制や弾圧が目に見えるようになると政府報道や施策の信用がた落ちです。
国民にとっては規制の逆をやることが、合理的行動基準になって来るとおしまいです。
習近平政権は株の暴落・天津大爆発に端を発して狼狽したのか?なりふり構わない言論統制強化、経済統制強化(大手企業の株式売却禁止など)ですから、最後のあがきに入っていると見る人が増えてきました。
規制強化すればするほど世界市場からは、ついに最後が来たのか?と言う目で見られて売り浴びせが起きます。
人民はヤミルート・ヤミのル−ルに頼るし政府は政府で恣意的規制の濫発に頼ります。
政策が誤っているかどうか以前に、国民の信任を受けた正義の基準によるかどうかが政治の安定には重要です。
山口組等のヤミ組織も一定の内部規律を保つためには、相応の掟を持っていますので、ルールさえ制定すれば良いと言うものはありません・・これと国家ルールの違いが重要です。
ヤミルートにも相応のヤミのルールがあるのですが、それが力の強い者によって恣意的に作られ、あるときは力の強さに比例して相手によって運用が変わる・・恣意的に運用されるところが、民主国家の法(民選代議士によって制定される・・正義の衣をまとっています)との違いです。
民主国家の法の場合、適用が万人に平等です。(法の下の平等)
中国の政治は法治政治ではなく人治政治だと一般的に揶揄されていますが、政権が民主的に信認されていないことから、逆に言えば裸の強者によって作られた「法」であることから運用も強い者・党幹部にあってはいくらでもねじ曲げられてしまうことが普通に行なわれる社会です。
これでは、地下にあるべきヤミのルールが腕力によって国家の法のごとく表面に浮き上がって来ているに過ぎないことになります。
人民からすればヤミ支配者のヤミのルールが入り乱れているなかで、政府規制もそのときの都合によってどちらを選べば有利かの同列線上の選択肢(どこのヤクザの方が強いかどちらの組に頼った方が良いかの選択)程度でしかないのかも知れません。
ただヤミルールが幅を利かして入り乱れた社会では、よそ者が入り込み難いのは確かです。
ルールなきヤミルール社会を泳ぐにはルートが少ないと騙され易いので、地域の複雑ないくつの競合ルートに保険的に関係を持ちながら、良いように騙されないように人脈を駆使しサービスが悪ければあちらを頼むと言う立場を堅持しながら巧妙に生き延びる智恵が必要です。
ヤミの人間の言うままではなく、スカしたりしながら活用しなければなりませんが、5〜10年前に来たばかりの他所者には無理があります。
昨日あたりのニュースでは証券販売業者に対する広範な捜査が行なわれているとのニュースが出ていますが、中国での検挙基準は恣意的ですので、外国証券会社員にとっては人脈もなくどのようにも身を守って良いか分らずに戦々恐々のようです。
目立った売り方をすると容疑不明のママ(国家反逆罪?)早速しょっぴいて行くやり方らしいですから、株式売却を萎縮させる・・株価維持が目的のようですが、これこそギャングの世界そのままの恐怖政治です。
まだ外資は事業所閉鎖まで行かないで様子見状態らしいですが、外資による株や通貨売買を恐怖政治によって規制すると、外資流出スピードは鈍化させられるでしょうが、流入縮小傾向に歯止めがかからなくなります。
よそ者が入り込み難い社会はよそ者を排除出来て良いようですが、そのことが分って来ると、まともな外資が逃げ出す一方ではいって来なくなります。
反日暴動に対して資本引き揚げが出来ないように仕組まれていても、これをやった結果怖くなった日本から新規資本流入が縮小するようになったのと同じです。
次々と外資導入したくて(多分大金を使ってマスコミや政治家を買収して?)赫赫たる中国の将来性を長年宣伝してきたのに、今や目先の株価や通貨維持のためになりふり構っていられなくなったので、馬脚を表した・元はと言えば、共産党と言うよりは匪賊集団が成長したもの・違法集団であった本質を露呈し始めたように見えます。
集金に来た人を脅かせばその場は退散しますが、次の借金が出来なくなるので、これは最後の手段です。
中国政府がが如何に怖いかを宣伝すればするほど→歓楽街・・ヤクザの巣窟みたいなところには、普通の人が近づかなることを知らない筈がないですが、今や先のことを考える余裕がない・・目先の利益のためには昔取ってキネヅカで・・脅かすしか方法がなくなって来たのでしょう。
中国の現状は、格好つけられなくなった結果、山賊かヤクザの大親分が社会を占領していた本質が遂に表面化して来たと見るのが妥当でしょう。
良い社会にして環境破壊するよそ者がはいって来ないようにするのは、一理ありますが、ひどい公害が象徴するように住み難い・危ないことを宣伝してマトモな人が近づかない社会にしても意味がないと思いますが・・。

 資金不足16と人民元流出の攻防5

今朝の日経新聞朝刊1面にはトップ記事で中国政府が、人民元売りの為替予約規制を始めたと出ています。
銀行は為替予約残高の20%の準備金(無利子)積み立てが要求される仕組みですから、これを銀行が予約企業に転嫁すると、結果的に輸入企業にとってはコストアップですから、輸入関税をかけるような輸入規制・・外貨不足を補完する効果もあります。
中国政府はいつも書くように1石2鳥効果が大好きです。
8月11日の為替の切り下げも表向きIMFの要望に添って相場に合わせたと言う言い訳でした。
規制効果に戻しますと、例えば1億元の輸入代金決済が半年先にある場合、為替予約しようとすると半年前に輸入代金の2割を無利子で銀行が準備金として中央銀行に預けろ」というのが今回の規制骨子ですが、銀行は顧客企業に当然転嫁しますので、企業にとっては(2000万元の借入を増やすしかない・・)資金繰り上大変な負担です。
毎月同額輸入が平均してあるとすれば、6×0、2=12割資金を寝かせておくことになります。
20×市中金利負担がコストですから企業にとっては、それ以上に下がる見込みがないと為替予約出来なくなります。
イギリスのポンド防衛失敗の経験によれば、売りの為替予約を制限すれば、値下がりを(少しでも値下がりの勢いを緩和出来る?)止められると言うもくろみでしょう。
しかしこれは予約する輸入業者向けと投機家向け規制であって、庶民が元を今日の相場で良いからドルに替えたいと言う欲望には直接関係しません。
ただ中国では自由な為替取引自体が禁止されているので、輸入に名を借りた人民元の両替・外貨取得が多いので、予約さえ規制すれば人民元売りの加速を防げると言うことでしょうが、庶民の方は予約が駄目ならば、(本当の輸入ではないのですから契約書だけなら好きに書けるでしょう、)契約上の決済時期を半年先ではなく数週間先あるいは前金払い契約に早めれば良いことです。
そうすると契約内容まで政府が規制する・・現物到着前の代金の一部支払を認めないとなって来るのかな・・どちらにしてもイタチごっこです。
代金支払い方法まで規制するようになって行くと規制が広がる一方で、ドンドン市場経済から遠くなって行きます。
※ 追記です。9月日日経朝刊7pには、中国政府は1日に続き2日に為替スワップやオプションなど全てのデリバティヴ・金融派生商品にも上記措置を適用すると通知したそうです。
一旦規制を始めると際限がなくなる運命が待っています・・経済が窒息するまでやるのでしょうか?
東南アジア諸国等である程度人民元取引が広がっていましたが、こんな状態が続くとどこの国の企業でも元での代金決済をいやがるどころかドル取引であっても一々政府の許可がないと契約が発効しないのでは(一種の輸入規制ですから)いつ許可になるか分らない・・迅速性に反するので中国企業との取引自体を敬遠するようになって行きます。
同じ輸出条件ならばよその国に売った方が合理的です→中国側業者は競争相手国より不利な条件(保証金を積んでくれないと契約自体に応じないとか割高で買うとか)をのむしかなくなって行きます。
世界中で中国の存在が小さくなって行くばかりです・・私は中国の評価が実力相応になれば良いと前から思ってマスコミの過大評価を批判してきましたが、(中国を実力以下に見たいとは思っていません・・それはそれで危険です・・)マスコミが過大評価し過ぎていたメッキがはがれて来たに過ぎません。
実力と合致しない過大評価があると、中国政府が実力差に比例して却ってカラ威張り・・力み返りたくなるので、これが危険な軍事膨張や冒険主義を促しているのです。
今回の規制発表は、6月の暴落時に大株主・機関投資家?半年間の株売却禁止令を出し・大手企業の大半について株売買取引停止を命じたのと似ていますし、遡れば、歴代王朝末期の流民化阻止のために農民の移動禁止していたのと同じ発想です。
大手企業の株式売買禁止令は、自分で一部企業のデフォルト宣言している・・国際機関から不適格企業との烙印を押されて取引停止処分を受けたような結果にならないか?と書いたことがあります。
今回は為替取引について、事実上蛇口を狭めることになるので、国際取引縮小を目指す結果になってしまいますので、国際機関から制裁を受けたような効果を自分で率先して行なっているようなものです。
中国政府としては8月11日の為替切り下げ時には表向き実勢相場に合わせたと言い訳があり、早速IMF専務が歓迎表明し、日本の学者・マスコミはそう言う意見を紹介して立派なものだと言わんばかりの論説が目立ちました(曰く・統計的に見ると貿易黒字が増えているので輸出拡大を目指したものではない・・市場の反応が間違っていると言う意見が主流でした)が、今回は言い訳すらありません。
今更格好付けていられないほど切羽詰まっていることの公式表明ですし、(同紙面に中国の外貨準備・公表値?では、14年6月に比して7月までには約1割も減少していると書いています)・・今回の規制発表は、この1カ月では投機売りが拡大していて資金流出に我慢し切れなくなったと見るべきですから、この間にもっと大幅にドル資金が減っているのだな!と世界中が見られてしまうリスクを考える余裕がなくなったと見られます。
この点は兎も角として、驚いた外国人投資家が反応するので(外国人投資家はヤミルートがないので、政府発表に反応する傾向があります)一時持ち直すでしょうが、裏をかくのが得意な人民ですからこんな小手先のことでは株式相場のテコ入れ策同様に1週間もすればまた人民元相場が下がり始めるのではないでしょうか?
株式相場は26日ころのテコ入れで一時持ち直していましたが、先週末ころからまた下がり始めました。

資金不足15と人民元流出の攻防4

人民元買い支えを続けるとドル資金(外貨準備)が日々流出して行きます。
日本の円高阻止のためのドル買いは小泉政権のように円紙幣を無限に印刷すれば出来ることですが、自国通貨下落阻止のための介入は市場と本格的に戦うようになると買い支えにつぎ込むドル資金がみるみる減って行き、限度があるので論理的に無理があります。
しかも外国人が保有している売り浴びせるべき人民元紙幣には限度がありますが、(ソロスのように先物予約でその間に売り浴びせて下がったところで決済すれば大儲け出来ますが、政府がその決済期までに買い支え切ると為替予約した分の損が出ますから、大相場の場合読みが狂うと破産の危機があり、リスクが大きいのですが、)国民が人民元を売ってドルに替えようとすると売り方に回る人民元紙幣は無尽蔵です。
今の中国は、国内資金逼迫解消のために政府は金融緩和し潤沢にマネーサプライを増やすしかない状態ですから、人民の方には売り逃げるべき資金は無尽蔵に出て来ます。
ですから、介入していることが分らないように実勢相場を誘導している限り・市場を誤摩化せる限度での買い支えは有効ですが、露骨に相場維持していると見られて、実勢相場は違う・・「近いうちに支え切れずに下がって行くだろう」と言う憶測が広がれば売り逃げ・外貨預金しようとする人が無限大に増えるので最後には屈服するしかなくなります。
10年ほど前にこのコラムで紹介したポンド防衛は仕手筋との戦いでした・・勝敗はやってみなければ分らない・・勝負を仕掛ける方はリスクが高いので、仕掛けて勝ったソロス氏は有名になりましたが、今回は名もなき億単位の人民との戦いですから政府に勝ち目がありません。
中国では、秦帝国以来王朝が毎回庶民の暴動によって崩壊して来たのが、中国2000年間の歴史ですが、今回は政府軍武力が巨大でいくら民衆が立ち上がっても残酷な殲滅作戦には、庶民は歯が立たないのですが、その代わり、人民元売却と言う雪崩のような動きで政府を押しつぶそうとしていることになります。
国家の衰退が始まると、ロシアやギリシャの例を引いて外貨流出の主役は外資よりは自国民が中心であると28日に書きました。
世論誘導も同様で目に見えないやり方の場合相応の効果がありますが、言論弾圧が目に見えるようになると政府施策の信用がた落ちです。
習近平政権は株の暴落・天津大爆発に端を発して狼狽したのか?なりふり構わない言論統制強化、経済統制強化(大手企業の株式売却禁止など)ですから、最後のあがきに入っていると見る人が増えてきました。
規制強化すればするほど世界市場からは、ついに最後が来たのか?と言う目で見られて売り浴びせが起きます。
政府による裏での人民元買い支えが終わった・・力尽きた(外貨準備が本当はないのではないか?)と市場で見られると株式どころか、人民元自体の大暴落に繋がりかけています。
先週あたりに書いたように、中国人民と政府とは対立関係ですから、人民にとっては国益よりも自己保身第一ですから、将来の人民元値下がりを恐れて早めに売り逃・・外貨に換えておきたいのは当然の動きです。
中国では、政府も国民もお互い裏取引の動向を見て行動する変な社会・・要はルールなき社会になっています。
民主社会とは透明性の重視が本質ですが、透明性を担保する基礎インフラは誰の目にも明らかなルール化です。
中国では、知財剽窃を象徴として、サイバー攻撃による機密情報窃取その他全ての分野でルール無視を政府が先頭に立って行なっている状態です。
中国は法治主義ではなく人治主義と一般的に言われますが、法規制も国会等による決定ではなく幹部の腹づもりで決めて行く社会ですから、ヤミ社会のルール・山口組の掟と変わりません。
選挙制度の有無にかかわらず、為政者は都合の悪いことを国民に知られたくない・・透明性があれば、自然に身ぎれいにするしかなくなりますが、統計や資料を不透明にし、都合の悪いことを報道させなければ、やりたい放題になります。
独裁制と統計等の欺瞞性・これを暴く報道の自由がないことは(ソ連も同じでした)表裏の関係にあることが分ります。
中国では強権社会化=厳しいルール化については、韓非子の時代からの歴史がありますが、それが民意重視から出たものではなく支配意思貫徹のためのルールでしかなかったのが不幸な歴史になりました。
法の目的がそうですから、国民はこれを自発的に守る意識どころか、逆に如何に潜脱するかの智恵・・ヤミルートが発達してしまいました。
裏取引中心の社会では、透明性とは真逆の社会です。
中国政府も実態を反映しない虚偽統計発表し(企業で言えば税を免れるために虚偽帳簿を作るようなことを政府がやっているのです)、政府が率先してサイバーテロ・・先進技術情報窃取していて羞じるところがありませんし、何もかも法治国家以前の社会のママです。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC