中国の過大投資調整19と個人の弱さ4

昨年来のバブル処理のグランドビジョンは、主なシャドーバンキングや中堅企業の危機を何とかした後に、処理することだったように見えます。
売り逃げし損ねたいつくかのシャドーバンキングや不動産業者を潰して、本格的な値下がりが始まっても投機目的で買ってしまった庶民が困るだけで、中国経済に激震が走らないと言う計算だったようです。
業界の大方が売り逃げてから(マンションや株式の)値下がりを放置すれば、個々人が・・転売・・投機目的で高額で買ったマンションが徐々に値下がりして行くのを呆然と見ているだけですから、企業倒産続出のような激震が走らない・・外見上ソフトランディングしたことになるのでしょう。
先日トルコで開催されたG20で人民銀行総裁がバブル崩壊を3回も明言したと言うことは、この段階がきていることを表してます。
企業の場合、評価減=売却金での借入金返済が出来ない→予定価格で売れないとたちまち資金繰りに窮し、たちまち倒産→金融機関への連鎖など社会的影響が大きくなります。
個人の場合マンション評価が半減しても失業しない限りローン支払能力が従来と変わりませんからデフォルトしません。
日本バブル崩壊でも、私の周辺の人で、約6000万円で買ったマンションが数千万円に値下がりしたことがありましたが、元々転売目的でなく、そこに住んでいるだけでしたから、日常生活には何の関係もありませんでした。
サラリーマン場合給与収入はイキナリ変わりません・・。
業者の場合商品を売るしか資金繰りがつきませんが、マンション等エンドユーザーの場合(将来上がるから早めに買っておく人はいますが)転売・投機目的で買っている人の比率はそんなに多くありません。
少数かも知れませんが、支払能力以上の借金をして投機している人の場合で、値上がりしているときには買い替えや借り換え等で借金を返して回転出来るのですが、値上がりが止まったり逆回転すると大変です。
投機的購入者比率がどのくらいかによりますが、中国の場合・政府自体が2戸目購入を規制したり緩めたりしていることからみると、それだけの必要がある以上は、かなり多かったと推定されます。
一流企業に勤めるホワイトカラーが支払能力以上の借入で(例えば、2戸目を買って無駄にローンを払っていても)1年〜2年間は何とか先延ばししてやって行ける・・予定に反して値下がりしてもすぐに損切り処分しません。
デフォルト出来ないので生活費を切り詰めてでも払って行くしかない・・簡単に逃げも隠れも出来ないので、2〜3年くらいは・・支払を続けるしかありません・・業者のように数ヶ月程度で破綻するようなことはありません。
(ローン支払が月10万で、家賃8万で貸しているようなパターン・・将来の再値上がり期待・・一縷の望みに賭けて逆ざや状態で何年か頑張れます)
早めに損切り処分出来るのは、差額を自己資金で決済出来る資金余力のある人だけでしょう。
資金余力のない人は、担保割れマンションを売却すると、差額不足金の決済が出来ないので処分も出来ない・・デフォルト出来ないので生活費を切り詰めてでも払って行くしかない・・逆ざやでも支払を続けるしかありませんので・・(上記の例で言えば月2万円の持ち出しでしかないので、ちょっとした生活費の切り詰めで凌いで行けます)業者のように数ヶ月程度で破綻するようなことはありません。
中国では、底堅いと言われていた上海でもマンション価格が昨年秋頃には下がり始めたことに危機感を抱いていました。
マンション価格下落が全国的に進行している現状に打つ手がなくなってしまい、国有大手企業ばかりではなく中小企業も放置出来なくなって来たことと、ローン金利引き下げによって何とかしてマンション購入意欲引き上げに誘導したい意図が見え見えです。
この辺は昨年夏から秋に書いておいた原稿ですがその後の経過は、政府が先頭に立って株式購入に向けた露骨な宣伝に始まり、このシリーズで書いているように、今年5月までの短期間に3回も次々と金利引き下げ・・6月以降の株下落対応の各種緩和をするしかないほど追いつめられています。

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