資金不足15と人民元流出の攻防4

人民元買い支えを続けるとドル資金(外貨準備)が日々流出して行きます。
日本の円高阻止のためのドル買いは小泉政権のように円紙幣を無限に印刷すれば出来ることですが、自国通貨下落阻止のための介入は市場と本格的に戦うようになると買い支えにつぎ込むドル資金がみるみる減って行き、限度があるので論理的に無理があります。
しかも外国人が保有している売り浴びせるべき人民元紙幣には限度がありますが、(ソロスのように先物予約でその間に売り浴びせて下がったところで決済すれば大儲け出来ますが、政府がその決済期までに買い支え切ると為替予約した分の損が出ますから、大相場の場合読みが狂うと破産の危機があり、リスクが大きいのですが、)国民が人民元を売ってドルに替えようとすると売り方に回る人民元紙幣は無尽蔵です。
今の中国は、国内資金逼迫解消のために政府は金融緩和し潤沢にマネーサプライを増やすしかない状態ですから、人民の方には売り逃げるべき資金は無尽蔵に出て来ます。
ですから、介入していることが分らないように実勢相場を誘導している限り・市場を誤摩化せる限度での買い支えは有効ですが、露骨に相場維持していると見られて、実勢相場は違う・・「近いうちに支え切れずに下がって行くだろう」と言う憶測が広がれば売り逃げ・外貨預金しようとする人が無限大に増えるので最後には屈服するしかなくなります。
10年ほど前にこのコラムで紹介したポンド防衛は仕手筋との戦いでした・・勝敗はやってみなければ分らない・・勝負を仕掛ける方はリスクが高いので、仕掛けて勝ったソロス氏は有名になりましたが、今回は名もなき億単位の人民との戦いですから政府に勝ち目がありません。
中国では、秦帝国以来王朝が毎回庶民の暴動によって崩壊して来たのが、中国2000年間の歴史ですが、今回は政府軍武力が巨大でいくら民衆が立ち上がっても残酷な殲滅作戦には、庶民は歯が立たないのですが、その代わり、人民元売却と言う雪崩のような動きで政府を押しつぶそうとしていることになります。
国家の衰退が始まると、ロシアやギリシャの例を引いて外貨流出の主役は外資よりは自国民が中心であると28日に書きました。
世論誘導も同様で目に見えないやり方の場合相応の効果がありますが、言論弾圧が目に見えるようになると政府施策の信用がた落ちです。
習近平政権は株の暴落・天津大爆発に端を発して狼狽したのか?なりふり構わない言論統制強化、経済統制強化(大手企業の株式売却禁止など)ですから、最後のあがきに入っていると見る人が増えてきました。
規制強化すればするほど世界市場からは、ついに最後が来たのか?と言う目で見られて売り浴びせが起きます。
政府による裏での人民元買い支えが終わった・・力尽きた(外貨準備が本当はないのではないか?)と市場で見られると株式どころか、人民元自体の大暴落に繋がりかけています。
先週あたりに書いたように、中国人民と政府とは対立関係ですから、人民にとっては国益よりも自己保身第一ですから、将来の人民元値下がりを恐れて早めに売り逃・・外貨に換えておきたいのは当然の動きです。
中国では、政府も国民もお互い裏取引の動向を見て行動する変な社会・・要はルールなき社会になっています。
民主社会とは透明性の重視が本質ですが、透明性を担保する基礎インフラは誰の目にも明らかなルール化です。
中国では、知財剽窃を象徴として、サイバー攻撃による機密情報窃取その他全ての分野でルール無視を政府が先頭に立って行なっている状態です。
中国は法治主義ではなく人治主義と一般的に言われますが、法規制も国会等による決定ではなく幹部の腹づもりで決めて行く社会ですから、ヤミ社会のルール・山口組の掟と変わりません。
選挙制度の有無にかかわらず、為政者は都合の悪いことを国民に知られたくない・・透明性があれば、自然に身ぎれいにするしかなくなりますが、統計や資料を不透明にし、都合の悪いことを報道させなければ、やりたい放題になります。
独裁制と統計等の欺瞞性・これを暴く報道の自由がないことは(ソ連も同じでした)表裏の関係にあることが分ります。
中国では強権社会化=厳しいルール化については、韓非子の時代からの歴史がありますが、それが民意重視から出たものではなく支配意思貫徹のためのルールでしかなかったのが不幸な歴史になりました。
法の目的がそうですから、国民はこれを自発的に守る意識どころか、逆に如何に潜脱するかの智恵・・ヤミルートが発達してしまいました。
裏取引中心の社会では、透明性とは真逆の社会です。
中国政府も実態を反映しない虚偽統計発表し(企業で言えば税を免れるために虚偽帳簿を作るようなことを政府がやっているのです)、政府が率先してサイバーテロ・・先進技術情報窃取していて羞じるところがありませんし、何もかも法治国家以前の社会のママです。

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