中朝の反抗2

北朝鮮は将軍支配をやめることになる民主化要求だけはどんなマイナスがあっても飲めない・・国益よりは将軍支配維持の方が優先する国ですから、制裁強化によって経済的困窮にいくら追い込んでも、中国から引きはがせません。
等しく貧しい場合、それでも李氏朝鮮時代に比べれば良い方でしょうから、政権転覆にはなりません。
イランの場合も、制裁によって経済困窮が進めば進むほど国民大衆の反米意識が高まる関係ですから、経済制裁によって親米政権に代わることはあり得ないと思われます。
この点はリビヤ、エジプト等の政変によって生まれた政権が反米になっても同じ関係です。
彼ら民衆による政権は、アメリカと対立して経済が苦しくなってもその理由で自分たちの立ち上げた政権を非難しないでしょう。
石油利権の恩恵の分配によって何とか独裁を保って来た国々が、ここ何年かの石油価格の下落によっておこぼれを配れなくなったことがアラブの春を引き起こした経済原因ですが、中国も成長停滞が始まったことによるおこぼれ分配縮小による不満のはけ口に困っています。
独裁国家を経済的に見れば、巨額収入を得る特権階層とそれ以外に分かれる社会ということですから、この点はアラブの王族と共産党幹部とは名称が違うだけです。
中国に政権崩壊が起きるとすればネットの発達による民主化要求によるのではなく、成長が停滞して分配資金が縮小して来たときに、食えなくなったことによる命がけの暴動・巨額利権を独占して私腹を肥やしている指導層に対する怨嗟の声によることになります。
食えなくなったら数日から1週間後にはどうせ死ぬのですから、そうなった民衆ほど怖いものはありません。
そのときには中国の存在するこの地域で、古代から繰り返して来た流民発生による王朝崩壊図式の繰り返しになるのでしょう。
昨日から書き始めたアジアにおける米中角逐に話題を戻しますと、今回の尖閣諸島問題が大きくなればなるほど、日中間の政治・経済・文化関係が縮小することになるので、これも日本と中国の密接な関係の冷却化・引き剥がしの(ミャンマーに次ぐ)成功例になります。
アメリカの民主化要求は全世界規模で行なわれていて、中国に対しても本来例外ではあり得ません。
中国では反日教育をしてきましたが、反米教育は殆どしていませんので民衆には反米意識は伝統的にありませんから、権力側が対アメリカ協力姿勢をとってもアラブ諸国と違って国民の反発はなく、直ちに政権が瓦解する訳ではありません。
しかし、民主化要求だけは、これに応じると共産党独裁政権を維持出来ないのと、成長停滞開始による社会矛盾の激化が始まりつつあるこのときには、アメリカのご機嫌を取るために微温的にでも民主化を進め広げるどころではありません。
むしろこれまでなかったネット検閲まで新たに始めて、今まで以上に民意を封じ込めたくなったのが中国政権です。
(これの協力命令に応じないグーグルが2010年3月に撤退になりましたので、アメリカの民主化要求は他国に対する高見からの問題ではなく、アメリカ企業自身が踏み絵を突きつけられ・・アメリカは敢然と拒否してグーグル全面撤退となりました)
正面から反民主化行為・検閲協力を挑発されてアメリカを代表する大企業が全面撤退に追い込まれたとなれば、アメリカは黙ってられない筈です。
イランの場合、既に民主化されていて政権関係者が私腹を肥やしていると言う不満が民衆にはありませんので、アメリカとの対決によって国民が困窮しても政権に向かって牙を剥くことはありません。
中国の場合、ここでアメリカと対決して経済がもっと激しく停滞したら、私腹を肥やしてる政権幹部に対する国民の不満が爆発してしまいます。
中国は核兵器を持っているのでイラクのように軍事攻撃される心配はないものの、アメリカと正面から事を構えて経済成長が止まるリスクを取れません。
そこが民主化を果たしているイランやアラブ諸国との違いであり弱みです。
中国は民主化要求だけはのめない・・言論の自由に関するネット検閲要求・・グーグル問題では米中共に国是にかかかわるので双方妥協出来ないが、それ以外の経済進出は歓迎するので「穏便に・・大目に見てくれないか」と言う取引(この種では口頭約束も文書もあり得ませんが、相手の軟化を期待して静々とやるものです)になってもおかしくありません。
アメリカも中国に対する経済制裁による中国国内の大騒乱は世界経済への影響が大き過ぎて困るので、妥協するしかない面があります。
グーグルが中国の検閲を受入れないで撤退する代わりに、アメリカの別の企業をその何倍も受入れてお茶を濁すのであれば、経済的利益のためにアメリカが民主化要求を引っ込めたのと結果は同じです。
日本は約3年前に民主党政権成立によって軍事的にもアメリカ離れが起き始めていたのですが、2010年9月7日狙い済ましたかのように中国政府の後押しで漁民と称する者達による尖閣諸島への領海侵犯行為と漁船による体当たり事件が行われました。
中国との緊張勃発によって日本民主党政権は、アメリカ依存を強めるしかなくなるし、日本の各種商品・車は売れなくなるし、その隙を衝いてGMやフォードは売上を伸ばすなどの経済メリットの外に、中国はアジアで孤立して行くので、中国との覇権争いになりつつあるアメリカにとっては尖閣諸島問題の勃発は良いこと尽くめです。
こんなにアメリカにとって絵に描いたようなうま過ぎる話・・中国の政策ミスは本当にあり得るのか?
と言う疑問が湧いてきます。
この段階では欧米や韓国企業等が得して日本だけが損をしているように見えますが、実は中国政権幹部の利益維持のための民主化拒絶と引き換えに人民が割高な商品を買うしかなくなっている・・損をしていることになります。
日中紛争の結果トヨタのシェアが20%から7%に減ったということは、中国人が自由に選択出来ないために、性能と値段の関係で有利な車を買えなくなって、割高な車を買わされていることになります。
同じことは、その他の商品・部品でも言えます。
今年の年末旅行商戦では日本から中国への旅行者が5〜8割減と報道されていますが、その分何倍もする欧州旅行が何割も増えていると報道されています。
日本人も経済的に不合理な選択をしているのです。
日本人はお金持ちが多いとは言え、中国韓国等安い所へしか行けない人は我慢しているということでしょうか?

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