輸出→現地進出→現地生産→利益還流2

(誰も支持しないかもしれませんが昨日書いた)私の考える独自の発展ステージ論によれば、貿易収支黒字に頼らなくなりつつある日本経済は発展ステージが上がっているので、めでたい事実ですが、これをいかにもマイナスイメージで報道するのが大手メデイアでした。
従来の報道では、まず貿易赤字になるとこれを大きなテーマで書いていて資金還流によって補填できる構造になっている事実を言い訳程度にちょこっと書いていることが多かったのですが、昨日引用記事ではいつの間にか、(私の20年来の意見同様に)主客逆転した書き方に変わってきました。
現地生産・消費地直近での生産は経済合理性がある上に、フードスタンプ配布のような貧困国援助よりも現地人も職につける・生活力向上メリットが大きいので、国内生産は国内消費に必要な限度に落ち着かせ、国内需要に必要な食料.資源等の輸入代金等は現地生産による収益で賄うのが国際正義上も合理的です。
その先に進むと、収益が外国に収奪される仕組みが不正義だという国際議論が起きてくるリスクを15年ほど前に国際平準化論シリーズで書いたことがありますが、ここでは省きます。
さらに海外生産が進むと日系企業の逆輸入が増えて、国内需要分も輸入に頼る・貿易赤字化進行となるのでしょう。
私の発展ステージ論によれば、輸出製品生産に必要なエルギーや完成品に組み込むための資源輸入が不要となり国内消費に必要な限度になって行きますから輸入額も減っていきます。
内需に必要な限度の国内生産になるので、GDPは輸出用国内生産が減るのでこの分だけGDPが縮小するし、労働力も生産用からサービス産業向けに変わっていきます。
女性の地位向上という理念や政治運動によるのではなく、業態変化が女性の地位向上に大きな影響を及ぼすでしょう。
個々人で見れば、衣食住の最低生活を満たすのに必死の時期には、まず空腹にならずに済む生活費を稼ぐのが最重要でこのお金を稼ぐ人の立場が強いでしょうが、一定水準を超えると室内のしつらえやおしゃれな生活を営む能力の必要性が高まります。
日本の場合、急激な国内生産縮小は国内雇用のミスマッチになるため輸出用生産を段階的に減らしていったので、所得収支と貿易黒字双方の巨額黒字蓄積・・年間約20兆円弱で約20年間推移してきました。
一方で上記の通り生活水準向上に向けて内需拡大にも努めてきた結果、GDPが減少するどころか、じわじわと上昇してきたのが現実です。
メデイアは日本のGDP前年比アップ率が諸外国より低率であることを大変なことのように喧伝し「失われた20年」とイメージ主張し、いかに中韓の成長力が高いか・・中国が日本を追い越したか韓国が追い上げているとかの報道に終始してきました。
私の発展ステージ論によれば、GDP競争の段階を日本は疾うに卒業しているのですから、こんな比較は意味がないことがわかるでしょう。
食事をするにも空腹を満たす目的9割と雰囲気を重視するのが9割では生産高では大きな違いがでてきます。
庭の草花の手入れに費やす時間は至福のときですが、GDP統計では大した貢献度がないのでしょう。
今でもガムシャラに働いて成功した人が成功者としてメデイアで賞賛されますが、国家全体としてはこういう人も必要ですが、その人の人生としての意味ではまた別でしょう。
カリスマ的経営者のいる会社では、創業者に畏敬の念を持ってみんな接するでしょうし、対面する人もすごいですね!と賞賛することはあっても「いい加減に家庭を大事にしたら!」と忠告する人はいなくなるのでしょう。
GE元会長が日経新聞に連載した「私の履歴書」ではGE会長としてカクカクたる成果をあげた彼が、その過程で成功にこだわる彼を見限って別れて行った元妻のことを切々と書いているくだりがあります。
原稿依頼した新聞社の方は、いかにして成功したかの履歴を書いて欲しくて執筆依頼しているのでこれを受けた以上、まさか仕事一筋で人生失敗したと書けないものの、老境に入った彼としては、暖かな家庭を失った悔悟の念・・自分の一生はなんであったのか?の気持ちが滲み出す文章です。
GE会長より小型ですが、家庭より仕事という考えで事業成功をした人が老境に入って孤独をかみしめるようになったのか?30年ほど前に別れた妻子に会いたいという人がいます。
妻子の方はそれぞれ現在落ち着いた生活をしているので、(昔流行した言葉ですが)プチブル的平和を楽しむ娘らにとっては、父親がどういう父親であったかが重要で現在事業で成功しているかどうかは関係ないようです。
父親の方は成功している姿を娘らに自慢したいし、娘らはそんなことに価値を置いていない・・このギャップをどうするかで悩むのが私の仕事です。
私も後期高齢者になったので、80歳前後で人生の整理・終活?をしたい人がこの数年私の周辺で増えてきました。
ある家庭で消費する量や品質がその家庭の豊かさであり、飲食店経営者が、飲食店で消費する食材の量を含めた消費量が近隣の一般家庭より多くとも自慢にならないでしょう。
25日に書いたステージ④ランクになった国は、輸出産業が大量仕入れ(輸入)大量輸出しているので見た目にはGDPが上昇しているのですが、外形的に大きく商品が動くだけで自家消費量は少ない・内実が乏しい状態です。
脱サラ.創業直後は睡眠を削り家庭をそっちのけで頑張る時期があってもいいでしょうが、ある程度成功すれば、家庭や文化面に時間をさくように物事にはライフサイクルがあります。
前年度比売り上げ増での競争・・GDP比でランク付けするのは同じステージ④にある国同士の将来性のランク付けとして機能するでしょうが、この段階を卒業して次のステージに移行している国と比較する指標ではありません。
大規模輸入して大量加工して大規模輸出する国は一見活気がありますが、物流センターのように物流がぐるぐる回っているだけで内実が貧しいステージにある・・中韓等の経済段階というべきでしょうか?
あるいはレストランに顧客用の立派なテーブルがいっぱいあって一般家庭のダイニングルームより立派でも、店主一家が裏手の薄くらい汚い部屋で食事している場合、どちらが豊かか?ということです。
生産業で言えば、工場兼自宅で千〜数千坪の大きな敷地内で生活している場合、一見大きな塀に囲まれた中の主人一家ですが、実際の居住空間が狭い上に工場内なので騒音振動臭気など環境が劣悪です。
工場の国外移転は、工場と自宅分離の国際版です。
ちょっと東京の地名を冠した企業名を思い出すだけでも、石川島播磨、東京電力、東芝、カネボウ(鐘ヶ淵紡績)など企業名でも分かるように東京都内に多くの工場が混在していました。
中央大学や教育大学その他大手大学の多くも学部別に郊外へ移転しましたが、いまでは逆に都心回帰を目指す方向になっています。
これらの工場や大学が各地に出て行くことによって、東京が衰退するどころか逆に発展する一方です。
東京と地方を比べて、東京には生産工場がほとんどない・もう東京はダメだと思う人は滅多にいないでしょう。
1000万の都市人口を養うにしても、国外収益等の送金で生活する先進国都会・特に東京は清潔です。
いわば、室内で石油等を燃やす暖房の代わりに、遠隔地の火力発電で都会はクリーンエネルギーによる冷暖房を満喫する関係です。
企業オーナーも主力工場を地方に移転させても、首脳部の自宅は高級住宅街のある東京や(元は船場・道修町発のオーナーの場合)芦屋等に移転するのが一般的歴史です。
本社の集中する丸の内などは工場騒音等もなく従業員もおしゃれな街で働けるので昔から人気エリアです。
英国は19世紀に世界の工場を引き受けて煙の都ロンドンになり、日本も一時高度成長期世界の工場化して公害に悩まされましたが、この数十年では輸出するよりは需要地・現地生産化して、先進国は内需分中心に国内生産するだけになりつつあります。
・・日本は資源を輸入に頼るしかないので、まだ自国内の必要物資を買うための代金捻出のために輸出していますが、(この数年では貿易収支はまだ原則的に黒字・たまに赤字になる程度)将来的には自国にない資源や食料等の国内消費に必要な資金は海外生産による利益配当や知財・技術料収入等で賄っていく方にシフトして行くのでしょう。
こういう時代に進んでいるのに国内生産量の増加率・GDP増減率で自慢しあっているのは、数十年遅れの価値基準で売り上げ自慢しているようなものです。
成金がいかに儲けたかを自慢し、下品な調度品を自慢し合っているような世界を、メデイアがいつまでも重視するのか不思議です。
企業は自国政府の保護(産業育成)を背景にして大きくなっている内弁慶ではなく、自国政府の後押しのない海外生産で利益を上げられてこそ世界でやっていける企業というべきです。
海外進出してうまくいかない企業しかない・・輸出で黒字を稼ぐしかない国って、実質競争力が弱くないですか?
韓国現代自動車は長年の自動車輸入規制によって、国内独占を利用して法外な?高価格で国民に売りその儲けを原資にして国外で安値販売しているパターンでした。
これは4〜5年前だったか?に米韓FTA協定によって米国製あれば高関税をかけられなくなったので、日系その他が米国生産車の投入が可能になりました。
米韓FTAによって現代自動車の国内利益が減少し、国外ダンピング輸出や現地進出原資がなくなるので、今後輸出や国外展開は苦しくなるだろうと当時言われていました。
ここ数年顕在化してきた現代自動車や韓国企業の苦境は、実はこの時に始まっているかもしれません。

輸出→現地進出→現地生産→利益還流

韓国の貿易依存率が高すぎると一般に言われる問題点は、韓国の産業構造が現地生産化に適していない・自前技術率が低いので海外進出すると国内空洞化が進みすぎる弱点を言うと見るべきかも知れません。
これが韓国や中国の失業率の異常な高さ(あるいは大卒就職率の低さ)になっているのでしょう。
韓国の貿易額の減少が国内生産高の減少を一定程度意味するとしても、上記の通り現地生産化進行による面もあるので、輸出減少の代わりに所得収支黒字等が増えたかどうか・・総合的に見るには貿易量縮小と所得収支等の黒字化=経常収支黒字化の関係を見ないと現地生産化の母国へ影響度を計れません。
現地生産化進めば輸出用国内生産が(輸出企業向け部品等納入する下請工場生産も)減少するのが当たり前ですから、輸出減少以上に知財や所得収支黒字が貿易縮小の穴埋めになっている国は、現地生産化が成功していると見るべきでしょう。
こう言う国は従来の輸出品は原則現地生産になるので内需率が高くなり輸出入の貿易総量が内需に必要な量に近くなるまで縮小します。
日本の例です
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41096450Y9A200C1EA4000/

海外投資、日本の稼ぎ頭に 経常収支の構図変化 2019/2/8 23:19
財務省が8日発表した18年の国際収支統計(速報)では、海外とのモノやサービスの取引を表す経常収支は19兆932億円の黒字だった。
黒字の額は2つの柱でほぼ説明できる。1つは海外子会社のもうけにあたる直投収益の10兆308億円。もう1つは外国債券の利子などにあたる証券投資収益の9兆8529億円だ。貿易黒字は1兆1877億円にすぎない。
企業が海外志向を強めていることが背景にある。かつての日本の製造業は日本で車や家電を作り、海外に輸出するのがモデルだった。だが現地のニーズに合わせ、生産効率を重視するために現地生産を増やした。家電では韓国や中国の台頭で、日本製品の競争力が弱まった面もある。
海外への直接投資の残高は9月末時点で185兆円。北米やアジアを中心にこの10年間で3倍近くに増えた。工場建設やM&A(合併・買収)に加え、小売りなど非製造業の拠点も増えている。ここ数年は海外景気も好調で、稼ぎも右肩上がりで上がってきた。
海外証券投資の残高も9月末時点で473兆円と増加が続く。

韓国の場合どうでしょうか?
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44509730Y9A500C1EAF000/

韓国の1~3月の経常収支、7年ぶり低水準 2019/5/8 10:15
ソウル=鈴木壮太郎】韓国銀行(中央銀行)が8日発表した1~3月の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引を表す経常収支は112億5000万ドル(1兆2400億円)の黒字だった。黒字は前年同期より3%減った。半導体の不振や中国景気の減速で輸出が振るわず、2012年4~6月期(109億4000万ドル)以来、ほぼ7年ぶりの低水準となった。
貿易収支は196億1000万ドルの黒字。黒字は同13%減った。輸出は1375億ドルで同8%の減少。半導体や石油化学など、主力製品の輸出が振るわなかった。輸入は同8%減の1178億9000万ドルだった。
3月の経常収支は48億2000万ドルの黒字だった。83カ月連続の黒字だが、前年同月比では6%減った。貿易収支は84億7000万ドルの黒字で、前年同月比10%減った。

上記によると韓国の1〜3月の貿易収支黒字が13%減り、経常収支黒字も3%減りました。
3月だけで見ると貿易収支黒字が10%減っているが、経常収支黒字も6%減っている
・・貿易黒字が減った分の穴埋めに国外収益が増えていないこと・現地生産増による貿易収支黒字減少でないことが分かります。
日本のように生産工場の海外展開による健全な!貿易収支黒字減ではないのかな?
産業構造の発展形態を見ると、①国産技術+海外技術導入→②国産化成功→③輸入減→④輸出産業化→⑤国外現地生産→⑥本国への技術指導料や知財や所得、利益(配当収入)等の形式での資金還流となるパターンが考えられます。
韓国中国は、民族資本育成のために生産品の100%あるいは何割以上を輸出する条件付きで外国企業の工場を丸ごと導入して現地進出を認めるなどして上記②を飛ばし一足飛びに輸出産業として貿易黒字化を進めました。
中韓にとっては外資系工場が黒字で外貨を稼いでくれるし国内インフラ資金に使える他、外資が工場用地等の取得資金等の資本が大量に入るメリットがあり、他方で外資企業で働く国民が身につけた技術等が国内民族企業レベルアップに良い影響を与えるだろうという目論見です。
日本企業が中国進出したサービス業等で現地人に店舗マナー等を教え込むとマナーを身につけたが中国人がすぐに中国系企業に引き抜かれる現象が常識化していました。
工場の生産技術も同じです。
これをメデイアは日本企業は現地人に権限を与えないからだという批判していましたが、相手は技術を盗む目的ですから問題のすり替えでした。
上記⑤の現地生産が軌道にのるまでは、内需を賄う資源等の輸入代金を賄うための輸出用国内生産が残りますが、⑤段階で成功してその成功益の還流で賄えるようになれば、輸出目的の国内生産をする必要がなくなる論理です。
いわば内需率100%内外が、原理的理想形です。
先進国で内需率が重視される所以です。
もちろん海外現地生産の場合、国内にないカントリーリスクがあるので、(11年に中国でいきなり反日暴動〜工場店舗等の焼き討ち〜不買運動が燃え熾りました)収支トントンではいざという時のリスクが大きいので、国内工場の国際競争力維持のために一定率輸出できる程度の実力維持・・貿易黒字が必要でしょう。
日本は2000年に入った頃からリーマンショック頃まで海外収益等の資金還流が年間約10兆円弱で推移して、貿易黒字も約10兆円内外合計約20兆円弱)で推移して来ました。
(この辺は、失われた20年論に対する批判として何回も書きその都度?データを紹介してきました・・ここで20年分以上のデータを引用すると大きくなりすぎるので気になる方は財務省統計に入ってみて下さい)
リーマンショック後貿易黒字が減少してきて最近では貿易収支トントンまたは赤字の年度も出てきていますが、これを輸出力低下=国力衰退と考えるレベルに対しては、いかにも日本の国力衰退イメージ拡散に役立つので単月でも赤字になる都度マスメデイアは大々的報道してきました。
今回のシリーズで引用してきた小塩氏の論説は従来型の貿易収支だけを見て韓国の対日依存度低下論もその軌道上にあるようです。

海外収益の還流持続性5(ギリシャ・フランスの選択)

この5月6日 (日本時間では7日報道)に行われたギリシャの選挙で経済危機対策として行われている緊縮政策に反対する政党が躍進し、フランスでもドイツと連携して緊縮政策を進めて来たサルコジ現職大統領が敗れ、公務員増加など緊縮よりも支出拡大を主張して来た社会党のオランド氏が勝利しました。
第1次世界大戦後巨額賠償金債務に参ってしまったドイツが、その反動としての開き直りの主張でナチスドイツが躍進したのを想起させる事態です。
フランスやギリシャではナチスのように、景気対策として軍需産業を拡大して隣国を侵略する力はないでしょうが、それでも債務を踏み倒す(「貧者の核兵器」みたいな権利です)ことは出来ます。
債権国の言いなりの緊縮生活は御免・お断り等の主張の結果は、どうなるでしょうか?
緊縮反対と言うことは「倹約して借金支払に努める約束をしたくない」ということですから、言わば開き直りです。
1国だけで支払い拒否すると国際社会から除け者になるので出来ませんが、南欧諸国やフランスその他がまとまって未払い同盟を結ぶと除け者にしておく訳に行かなくなります。
世界中では債務国の方が多いので、金融資本の横暴と言う大義名分を打ち立てて思想的裏付けを得れば、瞬く間に金融資本打倒・・未払いを主張する政治結社が出来てこの主張が世界中に広がるでしょう。
緑の党・環境運動などに比べれば実利があるので、多くの賛同を得易い筈です。
折しも金融資本の総本山でオキュパイウオールの運動が起きたばかりでもあり、金融資本の儲け過ぎ・・横暴批判の思想が広がり始めています。
一定時期・・例えば2020年1月1日午前零時を期してそのトキ現在の債権債務を全部帳消しにするという国際合意(国際的徳政令)が出来たらどうなるでしょう。
このような合意ではっきり損をするのは純債権国ドイツと日本くらいで、その他は収支トントンまたは得する国が殆どでしょうから、この合意(と言う協定成立は無理でもこうした風潮・・今の基準で言えばモラルハザード・・)が成立する可能性が高いのです。
貿易黒字で外貨準備が大きいと思われている中国でも、全部チャラに出来れば日本や諸外国からの投資(木の書いたようにこれらは金融債権・株式です)をすべて接収出来るので損がありません。
以前どこかに書きましたが、約千年も続いた今のイタリア・ベネチア共和国は、最後のころは金融資本で食っていて、スペインやイギリスに次々と踏みたされたことが衰亡の原因になりました。
日本は世界最大の債権国ですが、この蓄積のある内に高齢化時代を乗り切り、人口7〜8000万人程度の安定期を迎えられれば理想的ですが、中南米諸国の国有化の動きやギリシャやフランスの動きを見ていると予想外に早く資本収益の本国送金が許されなくなる時代が来そうな雰囲気です。
我が国が高齢者の方が多い頭でっかち状態の人口構成から脱しない状態で資本収益回収が出来ない時代が来ると大変です。
高齢者が過去の蓄積による資本収益の(年金資金の運用先の焦げ付きにより)回収が出来なくなり、他方で、ここ数十年では現役世代は自分の働きだけでは高齢化した親世代を養うことが出来ないことが明らかです。
そのときまでに、一日も早く少子化を徹底して人口5〜7千万くらいでの安定状態に持って行き、国民の多くが物造り従事しこれによる収入を基本として、これに付随した程度のサービスや商人・金融業者等の均衡のとれた社会になるべきです。
そうなれば、日本は所得再分配による格差是正の必要性が少ない社会になります。

海外収益の還流持続性4(外資の国有化)

生産基地としての中国の工場は、昨年来の人件費上昇政策の結果、立地する魅力が薄れベトナム等への工場移転もしくは、新規進出が盛んです。
これをもって、中国の高成長は終わりだという感想を持っている人が多いのですが、
世界最低賃金で勝負する時代から、もう少し中程度の賃金水準で輸出出来る国に引き上げて行きたいと言う中国自身の選択の結果と言えないこともありません。
中国は低賃金工場・熟練度の低い生産は民族資本で出来るようになったので、人件費アップ政策により、世界最低賃金を目的とした外資を事実上追い出しにかかっていると見ても良いでしょう。
「中国の人件費が上って来たからもっと安いところへ・・」とは言っても、すでに巨額投資しているので進出後数年で設備を叩き売りして移転していたのでは採算が取れません。
そこで、直ぐには撤退出来ずに中国国内でも出来るだけ機械化して高効率化、高度製品生産に日系企業は努力している・・中国国内企業レベルアップ化に協力している状態で、中国の思い通りの展開になっています。
こうした繰り返しで中国の国内人材はレベルアップして来て、中程度産業・・行く行くは高度産業でも日本の競争相手になって来るでしょう。
世界企業としては次々と次の新興国へ投資先を移動して行くしかないのでしょうが、どこへ行っても一定時間経過でその国への技術移転が進むしかないので、いつの日にか国際平準化が完成する時代が来れば、・・海外収益の国内還流方式も終わります。
タマタマ5月11日の日経新聞第6面を読んでいたら、アルゼンチンでは今年の4月に外資の国有化を宣言し、これにベネズエラが支持表明するなど国有化の動きが中南米で強まっているとのことです。
来日したペルーの大統領がペルー進出企業の国有化はしないと発言した(ので安心して投資して下さい?)と大きく出ていました。
中国のように進出企業で働いた従業員・・例えばコンビニ等で働いて接客サービスを身につけるなど実力を蓄えてから独立して、競合する日系企業を追い出すのは無理がありません。
これに比べて、中南米や過去のアフリカ諸国のように独立したときの勢い・強烈な民族意識だけで外資を国有化してしまうと外国人を追い出した後の運営がうまく行かず、経済が崩壊してしまうリスクがあります。
チュニジャやリビヤ、エジプトなどの民主化運動でも同じですが、現政権を倒した後に政権を担える人材が育っていないのに、感情に任せて現政権を倒すと混乱が続くばかりとなります。
国有化した国が混乱するか否かは別として、追い出された外資は大損害ですから、外国への直接投資の場合にはこのリスクを常に考慮していなければなりません。
ちなみに短期投資・債券や株式は外国の株を買っても、いつでも市場で売って逃げられるので工場進出のような大きなリスクがありません。
そこで、新興国では長期資金=企業進出の場合は、質に取ったようなものでかなり無理を言っても簡単に逃げられる心配がないし、国内技術水準の向上・雇用増加に繋がるので歓迎ですが、投機資金・短期資金の流出入に対しては厳しく規制しているのが普通です。
短期資金は逃げ足が速いので、(アジア通貨危機の原因になりました)アメリカの希望する金融自由化交渉においても新興国・後進国はその自由化には慎重です。

海外収益の還流持続性3(中国の場合)

中国政府は今のところ外資導入が必要なので黙っていますが、国内産業・人材が成長して外資と競合するようになれば、この主張が大きくなって・・政府がその気になれば直ぐに大規模デモになって・・現実化するでしょう。
当面最低賃金の引き上げや法人税率・社会保障その他の企業負担(事業所税や固定資産負担など)を引き上げて行けば良いので簡単です。
昨年から問題になっている短期滞在者に対する年金支払義務化もその一環です。
数年〜5〜6年しか駐在しない日本人は年金を払わされるだけで将来もらえないことが明らかですから、(どこの国でも年金受給資格としては一定期間以上の掛け金が必要です)社員は給与から天引きされる・この間の日本国内での年金受給期間が空白になると困るので2重に掛け金を支払わなければならないし、企業は半分負担させられるし・・「中国人を雇わないと損するぞ」という脅しです。
昨年来のギリシャ・欧州危機の結果、欧州からの投資が減って中国は今では資本不足に陥って、上海株式市場も人民元相場も大幅下落しています・・まだまだ自前の資金・技術が足りない国ですから、今のところまだ海外からの投資が欲しいので、年金加入強制実施が先延ばし(地方政府に一任する形式で)になっています。
技術は資本とともに入って来るので、技術を身につけるには企業進出=長期資本投資を求めざるを得ないのが今の中国であり新興国です。
サービス業を例にとれば、国民が接客態度その他を身につければ、将来的に外資が邪魔になってくるので、こうした形で、次々と日本企業を邪魔にし始めるのは目に見えています。
5月3日の日経朝刊では、中国の人件費が2割前後も上がって来て、生産基地としての魅力が薄れ、今後は消費地=市場対象国としての評価になって来ているという大きな見出しが出ています。
現に最近の中国アジア等への日本からの進出企業を見るとコンビニ系を中心に販売業種の進出が盛んです。
こうなると中国にとっては、輸出減・国内生産業が過剰になって来るので、製造系外資は邪魔になって来るのは目に見えています。
中国にとって外国資本は中国国内に投資してくれて輸出で稼いでくれる限り意味があります。
外国から進出した企業から技術を学んだ従業員が独立した国内民族資本で輸出出来るようになったり、外国資本の生産品の輸出が鈍化すれば製造系外資は邪魔なだけです。
デパート・コンビニなど内需型で稼ぐ産業の場合、日本的サービスが身に付きさえすれば何かと嫌がらせをして追い出しても、同レベルに達した国内企業・人材が入れ替わるだけで損がありません。
実際このような状態になって来ると競争激化で、収益率が低下するのが普通ですので海外からの投資収益の回収率自体が低下して行きます。
従業員のレベルが外資でも民族資本でも同じようになれば、外資は民族資本に太刀打ち出来ません。
外資がよその国に進出してやって行けるのは、技術レベルに格段の差がある場合に限られます。

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