量的資源に頼るアメリカ

西欧は産業革命→植民地支配によって自分の働き以上の何倍もの良い生活していた結果、収入源の植民地を失った後で本来の能力に応じた生活に戻る・・軟着陸するのに苦労しています。
日本による欧米の植民地支配批判を黙らせるために,ABCD包囲網・・更には植民地ごとのブロック経済化によって、日本を締め上げた結果、日本を戦争に引きずり込み叩き潰すのには成功しましたが、西欧は植民地をあっという間に日本に占領されて赤恥を掻いた(非支配民族が自身を取り戻した)結果、戦後植民地支配を復活出来ませんでした。
これに対する日本に対する西欧の恨みの深さが分ります。
アメリカは牧畜であれ、農業(綿花栽培も含めて)であれ、資源採掘であれ、広大な原野を切り開いた大規模運営が特徴ですが、当初これに対応する目に大規模な奴隷「仕入れ」」工業化後はドイツアイルランド等の移民に頼り、移民・・多くは未熟練者ですからこの適正に応じたベルトコンベアー式大量生産時代の幕を開けたものです。
ついでに書きますと,南北戦争は北部工業地帯の発達で奴隷労働では採算が取れなくなったことによるそうです。
奴隷とは、労働契約的に見れば、日本江戸時代の遊郭の前金制度みたいなものですから、一生分の代金前払いになり,途中でいらなくなったからと言って前金を返してもらえないし、今で言う終身雇用であるばかりか死ぬまで面倒見る義務があります。
綿花栽培労働と違って工場生産要員になると(生産して全部売れるとは限らないし)景気変動があるので、一種のリース・・働いて欲しいときだけ働いてくれる・・給金制の方が合理的です。
他方で工場労働的習慣性となるとアフリカ育ちの奴隷は(綿花摘みクライは適応しまししたが・・)そう言う習慣がないし5大湖周辺は寒くて気候的にあわないでしょうから、ドイツ系・アイルランド系の方がきちんと働けることから、この頃からドイツ系移民が急増しています。
奴隷解放の結果、奴隷の生活を見る義務がなくなった結果?巷に放り出されてしまうなど、元奴隷が解放前よりも悲惨な状態になったと言われています。
大量の人手に頼る生産方式に話を戻します。
農業や畜産に限らず資源採掘でも、この圧倒的大量生産方式と一体化して世界制覇の基礎を作りましたが、資源保有の有利さが領土拡張競争に拍車をかけて来たことをどこかに書いてきました。
アメリカの13州独立以来の領土拡張の勢いはすごいものでした。
ちなみにドイツの強国化は、産業革命の基礎となる鉄鉱石と石炭の双方を手に入れた・・領内にあったことが大きな要因でした。
鉄鉱石の出るアルザスロレーヌ地方をプロシャが普仏戦争で奪った経緯は、ドーデの「最後授業」で有名になっています。
その結果・・近くのルール地方炭田と一体化した独逸重工業化発展の基礎を得たのです。
この地域の鉄鉱石・石炭の資源争奪は普仏戦争〜第1次〜第2次世界大戦に続く独仏間の領土争いのテーマになっていましたが現在は最後に勝った?仏領になっていると思います。
EUは元々欧州石炭鉄鋼共同体で始まったことを7月2日に紹介しましたが、産業革命後必要となった資源を巡る怨恨の歴史経緯があるからです。
ロシアがアメリカにアラスカを売ったときには、まだ資源の重要性が認識されていなかった・あるいは極寒の地での採掘技術がなかったことによります。
以下はhttp://matome.naver.jp/odai/2139674489665795001からの引用です。
「1867年に帝政ロシアからアラスカを買ったときの値段はさらに安く、わずか720万ドルである」
豊富な資源力・広大な国土に見合った流れ作業方式・・大量生産時代を切り開いたアメリカは、労働者の実力以上の収入を得て来たのですが、今では先進国の収入源は汎用品から知財やソフト・文化力・・精巧な手作り品・工芸品などの重要性に移っています。
汎用品生産量で勝負する時代が終われば、人口の多さよりは資質が重要ですし、量産系資源力の相対化によってアメリカの優位性が失われて行くのは目に見えています。
物量を運び生産するには10人よりは100人(トラックや機械の量に比例)の方が有利ですが、デザインや知財や美術・金融取引等になると下手な人が百人いても優秀なデザイナーや絵描き一人に叶いません。
とりわけ大量生産系・汎用品組み立ては低賃金単純労働向けの新興国の産業となっていて、これに対応する石炭・鉄鉱石・原油等の量で勝負する資源力が国力そのものではなくなった・・相対化して来た事は明らかでしょう。
ある国単位で考えれば分りますが石炭石油・レアアース等の採掘現場が、大都会や首都あるいは高級住宅街にありますか?と言う比較です。
ロシアであれアメリカであれ、どこの国でも資源採掘現場は、人里離れた荒野あるいは禿げ山にあるものです。
国単位になると資源があると自慢しているようですが、過去佐渡の金採掘作業が囚人の仕事であったように近代の炭坑夫も過酷な労働でした。
最近コマツの重機が無人運転出来るようになっているようですが、資源採掘従事者は泥にまみれ汚い現場で、最低生活層が従事しています。
彼らが作業着のママ都会に出て来てホテルで食事しません。
採掘現場を走り回るような重機や巨大ダンプが住宅街や都会を走ることはありません。
国の果てにある資源を利用する遠くの資本家が良い思いをしているだけであって、資源そのものに従事するグループが良い思いを出来ません。
これがタマタマ同じ国内にあると言うだけであって、シベリアが別の国であってモスクワ経由で売りさばいている場合も結果は同じです。
この理を用いてアメリカは中東の石油利権の獲得に動き、いわゆる「メジャー」支配をして来たのです。
アメリカのシェールガスやサンドオイル回帰は、アラブの民族意識の高まりを背景に現地政府の力が強くなって来て、メジャー支配の旨味がなくなって来たところで、国内資源利用に変更したに過ぎません。
19末〜20世紀に成功したモデル・・量的資源(人的資源も量を求める)に頼る政策そのままです。

資源+生産力から消費力アップへ2

タックスヘイブン・マネーロンダリング禁遏策が世界的テーマになって来た背景は、徳川幕府財政が米中心課税で行き詰まった結果・・時々豪商に対して理不尽な冥加金取り立てや身代限り・・取りつぶし・没収に頼ったのと同じです。
アメリカが懲罰と称してフランスの(バリバだったか?)銀行に1兆円規模の罰金を取り、イギリスのライバー不正で巨額罰金を取り立てているのは同じ発想ですが、狙い撃ち的徴収は恨みを買います。
中国の場合、国民が困っていても「共産党政府赤字は大したことがないから・・」と豪語していますが・・・。
共産党政府は中国地域民族のための政府ではない・・共産党の個人経営・・(国民が苦しいかどうかは気にしない)民族を乗っ取ったギャング集団としては、懐にはまだ余裕があると言う開き直り(中国贔屓のエコノミストがそのように紹介しているだけ?)ですが、そうは言ってもギャング集団に対する抵抗を緩めるために治安警察強化ばかりではなく少しはお金を支配下民族に配って不満緩和を図るしかないのが現実です。
支配民族に金を配ってうまく行くならばもう少し餌を配るのも良いが、いくらつぎ込んでも駄目と分ればこれまで搾取して得た資金を持って海外逃亡した方が良いか!とギャング特有の気持ちの現れが(海外に巨額資金と家族を逃がす)裸官と言われる支配層の行動です。
M&Aで買収した企業で何年間でかなり儲けたが最近ジリ貧・・赤字傾向となった場合、親会社としては売り逃げるか、もう少し資本注入するかの判断基準と同じです。
日本の場合に当てはめると、徳川幕府の財政赤字は民間資本の発達に徴税システムが追いつかなかった結果、赤字になって行ったのと同様で、現在日本の場合も国民・社会が経済的に困窮しているのではなく、民間資本は健在です。
※ 日本の場合単年度金銭収支の国家財政が赤字になっているだけ・・取得した固定資産価値を乗せない変な計算です・・これを上回る巨額の経常収支黒字が何十年も続いているうえに、個人金融資産が増える一方です。
個人が豊かですからこの辺がアメリカや諸外国とは基本的に違う・・江戸時代に庶民が芸術を楽しみ豊かな生活をしていたのに武士だけが困窮していたのと同じです・・エコノミストは海外の議論を紹介するのがやっとで目の前の現実を見る能力がないのか現実無視した議論をしているようです。
熊本地震でも明らかになっていますが、大切な子供のいる場所の安全・・小中学校を耐震化工事していても役所の建物まで手が回らなかった・・これが日本と諸外国との基礎的違いです。
日本では、危機が来ると先ず自腹を切ってでも地元民の救済に動くのが有力者の本来的行動です。
アメリカは消費拡大のために双子の赤字が続いても、ドルの切り下げで対応すれば良いと言う基軸通貨国の地位を悪用して来たことになりますが、「大き過ぎて潰せない」と言う論理と同様でいつかは無理が来ることを大分前から書いてきました。
移民受け入れ政策は「労働力不足の穴埋め」と言うのは格好付けであって、本音は人口増による総購買力増→発言力強化です・・1昨日の夕刊にメルケル首相の本音・・難民が来た結果、消費が増えているメリットがあるという発言が紹介されています。
移民に対する教育・治安コストその他消費能力を誰が負担するかの議論・財政赤字の拡大が隠されています。
移民=人口増で国全体の消費が増えますが、移民=言語能力不足=未熟練労働力が普通ですから底辺増=格差社会になり治安も悪化します。
アメリカは大量消費市場を武器に競争する限り、中国、インドに負けないように?移民増加を図って人口増加して行くしか国力維持策がないようですが、その結果移民=非熟練化=低賃金化・・格差拡大が進みますので痛し痒しです。
格差・財政負担増がイヤならば日本のように移民増を防ぐしかありません。
人口増による発言力強化を求める政策の場合、移民禁止すれば人口増=消費・購買力拡大が止まる→国際的影響力が縮小します。
移民受入れ反対・・日韓等の海外駐留軍を廃止→その分発言力縮小を容認するならば、次期大統領候補トランプ氏の主張は一貫しています。
世の中は2項対立ばかりですっきり行かないのが現実ですから、余計な発言もしたいけれども費用負担はイヤとなるのが普通です。
結局は、「もっと費用負担しないならば言うことを聞け!」・・「移民受け入れる代わりに◯◯を聞け」と言う開き直りのスタンスになるのでしょうか?
トランプ氏はどーんと強烈なことを言って面食らった相手に妥協させる商売のやり方らしいですが、実は幕末ペリー提督以来の強引な砲艦外交そのままです。
トランプ氏は、国民のストレスに対する迎合から国際費用負担や移民問題を2択的に持ち出していますが、結局は元の議論・・中東、欧州その他アメリカ軍駐留地域のアメリカの負担に応じた発言力はどの程度であるべきかの地道な議論に戻るしかないでしょう。
鳩山政権がすっきり分りよく「少なくも県外へ・・」と言うスローガンの実現に政権獲得後困ってしまい、結局は地道な交渉に戻るしかなくなったのと同じです。

資源+生産力から消費力アップへ1

世界が無視出来ない購買力は人口×一人当たり消費力ですが、アメリカの一人当たり消費力がジリ貧になって来ると、アメリカの発言力が中国並みに人口数で勝負するしかなくなります・・そうなると中国、インドとどう違うかです。
コクミンのための政府であるならば、コクミン一人当たり購買力を増やす・・基礎的能力・所得アップが本来ですが、それが困難なので安直に出来る移民受入れ=逆に基礎的能力低下政策・人口増で対応して来たのが欧米諸国政府です。
日本はニッポン民族のためにあるのですから、移民・貧しいコクミンを増やして基礎的能力低下を見ないことにして購買力を武器に海外で威張る・・中国や欧米の真似をするのに私は一貫して批判してきました。
西欧諸国は移民受け入れによる消費人口を増やす政策→所得不足分を貸し付ける・金融政策でやってきましたが、その咎めが出て来たのが昨今のテロ増加現象ですし、アメリカの格差拡大現象もその根っこは共通です。
アメリカが資源+工業力ミックスの成果を享受出来たのは第二次世界大戦前後がピークで、その後は勢いだけで戦後70年も持ちこたえて来たのは、消費人人口増加政策=移民受入れ政策によるところが大きかったと思います。
私が世界情勢に関心を持った中学時代(1950年代初頭)の記憶ではアメリカの人口は約1億5000万人でしたから、約3億の最近の人口は約2倍です。
1980年以降しか出ていませんが、以下はhttp://ecodb.net/country/US/imf_persons.html世界経済ネタ帳からの引用です。

年 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989
    227.62 229.92 232.13 234.25 236.31 238.42 240.59 242.75 244.97 247.29
年 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
    250.05 253.39 256.78 260.15 263.33 266.46 269.58 272.82 276.02 279.20
年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
     282.30 285.22 288.02 290.73 293.39 296.12 298.93 301.90 304.72 307.37
年 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
     309.76 312.07 314.39 316.70 319.13 321.60 324.33
単位: 100万人
※数値はIMFによる2016年4月時点の推計

先進国に限らず韓国や中国上海でも、中所得以上になると出生率低下に悩むのが共通ですから、アメリカに限って人口が減るどころか増えているのは若者で且つ低所得層中心の移民によるものと考えられます。(いわゆるワスプの人口比率は急減している筈です)
この間、一人当たり国民所得がそれほど下がった訳ではありません・・国家全体では石油メジャーや金融資本家の所得が多いのですが、資本所得は一般コクミンに還元されないから中国など底賃金国との競争で、工場労働者等の賃金が下がる一方で多数を占める庶民の購買力が下がる一方になります。
一人当たり購買力が半分になっても人口倍増になれば合計が同じですから、アメリカは工業力の空洞化(中産層の没落)所得減→購買力減の穴埋めに貧乏人でも・・人口増で対応して来たことが分ります。
この場合格差拡大→庶民の購買力が下がり続けるので、福祉(失業保険やフードスタンプ等)社会保障関連の財政支出増+消費者金融による購買力下支えシステムが併用されます。
社会保障政策だけでは財政が持たないので、消費者金融による穴埋めが盛んになり・・この頂点が(我が国ではサラ金地獄が社会問題になりました)サブプライムローンでした。
サラ金問題最盛期の03/24/09「消費者信用と社会福祉1」以下でサラ金問題は社会保障不備の問題であると書いたことがあります。
他方財政赤字に関して言えば、クロヨンと言われるようにサラリーマンに対する徴税は簡単ですが、資本所得の徴税はタックスヘイブンなどがあって難しいので、財政支出増加に直面しているのに逆に主な徴税対象であった中間層の激減は国家財政には脅威です。
これが国家経済的にはアメリカでは1980年代以降長年、双子の赤字が議論されて来た基礎状況でしょう。

アメリカの国力源泉(資源→金融)

アメリカは自己の強みが資源にあることを良く知っていたので、中東の豊富な資源が分るとイギリスを押しのけてアメリカのメジャーが支配することによってなお資源支配していました。
後で西欧諸国のアメリカに対する怨みの深さを書きますが、営々と築き上げてきた中東の利権を奪われたイギリスの怨みは大きなものがあります。
スエズ運河国有化に対する英仏軍侵攻対するブルガーニンだったかによる、核攻撃の強迫に対して、アメリカが英仏防衛表明しなかったので、英仏軍は涙をのんで撤退しました・・この恨みの結果英仏が核独自保有戦略になった経緯を05/22/05「パックスアメリカーナ」1で紹介したことがあります。
戦後いろいろな確執を経て英仏の中東における伝統的影響力を駆逐して行き、アメリカが取って代わったことは事実です。
ところが、石油ショック・・アラブ主導の石油支配が確立されて来るとオペック・石油輸出国機構外(北海油田など)の資源開発が進み・・遂に世界各地で資源開発が進んで来て資源に関するアメリカの優位性が徐々に蝕まれて来ました。
中国のレアアース禁輸で分かるように、単価を上げる(その間の採掘技術の向上と相俟って)とあちこちで採算性が上がり採掘出来る国が多くなります。
資源支配力の相対化が、流れ作業的単純工業品製造レベルでも威張って来られたアメリカの発言力相対化・低下の主原因です。
「ベトナム戦争に始まってブッシュ政権以来のイラク・アフガン戦争では膨大な富みを使い果たしてしまい・・」とマスコミは言いますが、基礎的には資源+工業レベルミックスの優位性が減少して来たことによります。
アメリカの勃興は産業近代化進行レベルとちょうどマッチしていたアメリカ移民のレベルと資源事情・豊富な資源を強みに資源の近く(五大湖周辺)で近代産業立地の優位性が高かったので工業国化に成功したのですが、20世紀に入って大型船舶が普通になって石炭や鉄鉱石等重量物の長距離輸送の制約が減ると、資源輸入に頼る日独等の競争力が伸びてきました。
第1次大戦後石炭から石油に火力源が変わって来ると、石油を自給出来るアメリカの強みが強化されました。
日本では戦時中「石油の一滴血の一滴」と言われるほどの貴重品・・生命線だった・・ABGD封鎖ラインはこの「血の1滴を止めてしまう」もので日本は文字どおり「血路を切り開く」しかないところに追いつめられたのが日本開戦決意の直接の原因です。
石油ショック以降約40年経過で、北海油田やロシア、リビア、ベネズエラ、ナイジェリアなど世界各地で原油・石炭その他資源採掘出来るようになるとアメリカの資源大国+大量生産国+大量消費のミックス効果が相対化して来ました。
産業革命勃興期に適した豊富な資源・農地が地元にあるがほどほどの技術しかない点を補ったのが、当初南部の奴隷を使った綿花大量栽培であり・・ついで資源と結びついた北部工業基地→ベルトコンベアー方式による非熟練労働力の活用・・大量生産方式でした。
人海戦術〜非熟練者の大量利用・大量生産方式こそがアメリカ産業の特徴ですが、その成功は時間の経過で必然的に中国その他(アメリカレベルに達している)未熟練労働力の豊富な低賃金後進国への工場展開に結びつくので、アメリカの地位低下は予定されていた流れでした。
(日本やイタリアの場合元々資源不足のハンデイを高度な職人的技術力や文化力でカバーする国ですから、各種資源が世界中で取れるようになるのは却って有利です)
アメリカ製造業の復活をマスコミが騒いでいますが、要はシェールガス・オイル等の資源産業の再勃興と人件費の安さでは中国と肩を並べるようになったので「国内製造業が復活出来そう」と言う自慢話程度ですから,過去約1世紀のアメリカの強みが何であったかが分ります。
中東産油国を含めて後進国はこ資源を自分で利用出来る程度の労働力水準にさえ達していないので資源を売るしかないのが難点ですが、今では資源が安くいつでもいろんなルートから手に入るようになると国内である程度自給出来るかどうかは大したポイントではありません。
縫製工場で考えれば分りますが、動力源の電気等の値段差よりは中国→バングラディッシュのように低賃金地域で生産した方が競争力が高くなります。
輸送費の低廉化によって資源と大消費地の近接したアメリカで造る優位性がなくなりました。
この結果、自由貿易で日本に負け始めたニクソンショック以降アメリカの通商政策は、自由貿易の旗印に矛盾した(スーパ−301条など)強引な輸入規制(現地生産強制)日本叩きの連続でしたが、要は巨大消費地から閉め出すぞ!と言う脅しの連続でした。
4〜5日前に発表した為替操作国監視対象国基準を見れば分りますが、正義の基準ではなく結果(経常収支黒字比率)から見ると言う宣言です。
アメリカのヘゲモニー維持のためにする一方的規制は日本に対するだけではなく、アメリカの個別産業を脅かす限りドイツもフランスもミナ理不尽な懲罰?アメリカへの輸出閉め出しの脅しに応じざるを得ない結果を招いてた来た点は同じです。
この辺の西欧諸国のストレスは日本人が想像している以上に大きなものがあるようです。
(日本は戦争に負けた以上仕方ない・・と言う気持ちが心の底にありますが、西欧は元同根・同族意識があるから余計(「成金め!と言う反発意識があって)面白くないでしょう)
個別利害を乗り越えた経済共同体EU設立のエネルギーはアメリカの理不尽に対抗するには大きな市場を作るしかないと言う強迫観念・・ストレスと無縁ではなく、徐々に対中貿易比率を上げて行くなどアメリカに対する貿易比重を下げる努力して来たように見えます。
(韓国パク大統領の中国寄り政治活動によって韓国の対中・対米貿易比率を良く知っている人が多いでしょうが、フォルクスワーゲンの燃費偽装事件でドイツ車のアメリカでの販売比率の低さに驚いた日本人が多いでしょう・・西欧諸国も今やアメリカよりも対中国の方が貿易比重が上がっている国が多いのが現実です)
度重なるアメリカの強引な要求に対する不快感の表明が、アメリカの要請を蹴っ飛ばした西欧諸国によるAIIB設立参加でしょう。
これに対する意趣返しが,この数週間前から大騒ぎになっている「タックスヘイブン」パナマ文書暴露・・中国とロシア及び西洋諸国大物中心に発表されている不思議・・と巷間言われています。
イランに対する制裁もアメリカの軍事力によるのではなく、アメリカの制裁に従わないとアメリカでの巨大市場で銀行業務・・金融取引が出来ないと困るので、世界中の金融機関がイランとの金融取引を停止するしかなかったことによります。
サウジの怒りを知りながら何故いきなり制裁解除することになったかと言うと・シリア情勢などいろんな情勢が当然重なっていますが、その他に、イランとの取引が金での決裁などになって来た外、地下銀行システム(例えば韓国が原油を買った代金をイランへ送金出来ませんがその分を韓国内銀行に預金しておく・・イランが韓国から何か輸入すれば韓国内預金から差し引くなど)にシフトとして来たので・銀行決済システムやドル決裁秩序に穴があくのに耐えられなくなったからとも言われています。
アメリカの発言力・・無茶を通す力の源泉は、巨大消費地・・購買力によります。
今や国力・発言力は、生産力よりは消費力→ひいては短期的には金融支配力にかかっています。
消費を支える金融支配の関係を明日以降書いて行きます。

資源輸入資金と人口1

ちなみに最近流行の観光立国論は「立国」ではなく、貿易収支赤字を補う(海外からの収益送金にプラスする)ための時間稼ぎとしての意味はありますが「立国」などする力はありません。
企業城下町で工場が撤退した後で、その跡地を観光施設化しても養える人口はホンの僅かです。
夕張市の破綻・夕張炭坑の観光地化など見ても分りますが、観光による地域振興と言うマスコミに踊らされて却って傷を深くしてしまった例です。
富岡製糸工場跡が世界遺産に指定されて地元は観光資源として期待していますが、世界遺産指定で訪れる人がいくら多くなっても、元の工場操業時の従業員数に匹敵する人口を養える訳がありません。
エジプトは元々農業国ですから人口が多かったのですが、エンゲル係数の低下に伴い、車や電気製品等いろんな物を買うためには養える人口が減って行くしかないのですが、その差額を長年観光収入に頼っていますが、エジプトに限らずギリシャなど観光収入に頼っている国や地域は概ね悲惨な状態になっています。
その地域で養える人口が減れば、出稼ぎに出るか出産数を減らすかして地域で働く人口を減らす政策を取るのが王道です。
この適応は人口減を伴うので、これをいやがって無理な人口維持政策・観光宣伝やカジノ誘致などで誤摩化していると生活水準をドンドン落として行くしかなく、餓死者続出していた4〜50年前のインドやアフリカ同様になってしまいます。
貿易赤字化が始まるとつるべ落としのように急激ですが、人口減政策は次世代の出産抑制しか出来ないので効果が出るには数十年以上かかります。
この間の不足資金をどうするかですが、1つにはその前に蓄積しておいて徐々に吐き出す方式と、数十年先に起きて来る貿易赤字拡大の先手を打って海外進出しておいて、収益の本国送金システムを構築しておく、この2方式の併用があります。
人生で言えば高齢化してからの労働収入減に備えて、貯蓄と年金や有価証券保有併用の方式の国家版です。
年間約20兆円の国際収支黒字の蓄積と海外進出の実行の併用をして来た過去20年来の日本のやり方は、この意味で合理的でした。
今後企業の海外立地が進行する一方の場合、労働収入=貿易収支は赤字になって行くのは必然ですから、今後は海外収益送金に頼るしかなくなります。
ただし金融資本収益で維持する方式は長く続かないことは、ベネチア共和国の例など上げてこれまで書いてきました。
個人の場合、働けなくなる日に備えて老後資金を蓄えてその収益と元本取り崩しで人生設計しますが、このやり方が半永久的に続く前提ではなく、一定期間で死ぬから老後短期間の人生設計として成り立っているに過ぎません。
日本の国全体で考えると若い人とのバランスの崩れた高齢社会を早く卒業して、一定期間経過すれば現在の少子の若年層が高齢者層になって行く日が来るので、人口数千万〜5000万人程度で老壮少の均衡社会が実現するでしょうが、それまでの時間稼ぎとして・・一定期間のみ有効な進出企業からの収益に頼るべきだと言う意味です。
その点は兎も角として年金積み立てが分厚くなる前に高齢化が始まっている中韓では、これを早老社会と言って大変な事態が待っているようです。
中韓ではまだ海外進出が少なくて、海外からの収益送金システムがまだ殆ど稼働していません。
中韓でも一定数海外進出をしていますが、国全体で見れば所得収支は赤字傾向と思われます。
(日本など先進国から導入した外資への利益支払をしている段階で、海外からの収益送金の方が圧倒的に少ないでしょう)
今後グローバル化が完成=貿易収支黒字が減って行き、輸出代金で国民を養えなくなると大変なことになります。
中国の場合輸出代金で国民を豊かにしていると言うよりは、外資導入資金で国内が潤って来た状態ですから輸出減の始まりの心配をするよりは先に外資導入が止まるとその段階で大変な事態になります。

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