日米安保条約2(アメリカの世界戦略1)

日米安保条約は実質占領政策の延長条約にも拘らず、建前上独立国として守ってやるのだから基地を無償で使わせろ、高度軍備の開発を必要がないと禁止した上で駐留経費を日本が持つべきだと言って巨額防衛分担金を徴収してきました。
家康の親の死亡後に今川が事実上三河の国を支配下において岡崎城を占領して城代をおき、その経費をとっていた故事を想起させるやり方です。
支配・隷属下におくが今川軍が守るのではなく,何かあると三河兵に先鋒を命じて一番危険な役割をさせる・・現在で言えば片務的な安保条約を相互条約に変えて自衛隊が米軍を防衛出来るように変更しようという動きと同じです。
日本軍が先鋒をやってみて、負けたら米軍が後ろ盾として出て行ってやるという建前ですが,航空母艦なしに500kも飛んで行って戦えば、自衛隊機はもの凄いハンデイですから,余程の戦力差がないと戦えば負けるに決まっているのですから,アメリカの真意が信用出来ない状態になってきます。
安保条約や関連条約は契約・条約とは言え、実質日本占領を誤摩化し日本独自の軍備増強を阻止し,あまつさえ費用を強取するためのシステムに過ぎません。
戦後否定された筈の欧米による植民地支配の形を変えた合法化を狙ったものでした。
昨日から書いているように、日米安保条約は、戦前の対等間の条約とは防衛条約の本質が変わっていることが明らかですが、識者は・・過去のことを良く知っていて目の前のことを見ないタイプのことですが・・眼前の事実・支配服従関係にある実態を無視して過去の幻影で物知り顔で論じていることになります。
アメリカは日本の反抗・・報復を恐れて軍備充実の邪魔をして来たばかりか、巨額の防衛分担金を戦後70年間近くもむしり取っていながら、イザとなれば日本防衛義務を果たす気持ちがない・・自分の国は自分で守るべきだと言うならば、何のための防衛条約だったかとなります。
(安保条約本質は米軍長期占領の合法化・口実に過ぎないのですから、日本を守る気持ちがないのは当然と言えば当然の結果です)
米軍は日本に対して兵器供給して来たと言うでしょうが,日本の場合自力開発が認められていないから,仕方なしに米軍からの供給に頼っていただけであって,自由に開発出来れば,中国などに負けるような装備状態に陥ることはあり得ません。
イザとなって協力しないのでは,保険に入っていたのに火事になったら自分で家を建て替えなさいよ!」と言って保険金を払わないようなものです。
詐欺だから過去の提供した資金を全部返せとの問題も起きてきますし、自分が約束を果たせないならば、少なくとも中国の脅威に備える限度での、日本の軍備充実・貿易に必要な限度での拡大を邪魔しないのがスジでしょう。
アメリカが経済力の衰退に伴って世界中の警察官役を果たせなくなって行くならば、地域ごとのパートナーを決めてパートナーの協力を得て行かない限りその地位を保てません。
このような単純なことすら決められないでアヤフヤな態度を示しているから、中共からまさに「鼎の軽重を問われる」事態になったのです。
習近平に西太平洋を中国に明け渡すのかの決断が迫られているのですが、オバマ政権は世界中から指摘されているようにかなり無能なので何も決められない状態が続いています。
この空白・無能さを衝いて中韓が同盟関係に向かい始めました。
日本の選択肢はただ1つ・・アメリカの衰退した分を順次穴埋めする方向(戦力の充実・・アメリカが西太平洋の安全を保障するための空母を維持出来なくなったならば、日本が代わりに建造・維持するとか)に進むしか自国を守る方法はありません。
日本が最近ヘリ数機の発着可能な巡視艇を進水させたことを、中国が大きく取り上げているのはこうした事情によります。
中国の場合爆撃機や攻撃機の発着可能な航空母艦を就航させたと自慢しているのに対し、我が国は警察分野の保安庁の巡視艦に過ぎない・・登載出来るのも対航空機戦闘を想定したものではなく、監視機能中心のヘリコプターに過ぎません。
それでも大騒ぎしている中国を見ると、(イザとなれば日本は直ぐにも中規模の航空母艦製造能力があることを知って)自身の本音が垣間見えます。

日米安保条約1(航空母艦の役割3)

航空母艦がないままですと仮に現地遭遇戦をやろうとして出掛けて行っても、相手が一旦逃げてしまうと、4〜500km余計飛んで来ている日本の飛行機は現地に長くとどまれないので、少し追いかけ回したり探すくらいが関の山で直ぐに那覇基地に引き返すしかありません。
引き返すときに1昨日書いたように、追撃されたら大変ですし、仮に追撃されないまでもその間にまた占領されればイタチごっここですから、こんな消耗戦を続けられません。
これを5〜6回も繰り返していて「また逃げるのだろう」とうんざり気分になったところで突如反転して来て戦闘を仕掛けられると気が緩んでいる僅かな差が不利な結果になります。
戦闘開始をするか否か,どこで始めるかの場所すらも相手のイニシアチブにかかる・・ゲリラ戦になると、10倍の兵力があっても不利な戦いを強いられます。
占領された離島を奪回するには、日本自体が航空母艦を持って現地常駐して対峙するか、米軍の航空母艦が参戦しないと不可能なことになります。
現在の日米奪還作戦の訓練は、米軍が本当に共同参戦してくれるのか不明のママ、もしかしたら実際には機能しない訓練を気休めのためにやっている可能性があります。
米国は同盟国の義務を果たすかのようにお茶を濁しているだけで、米軍は実際には何もする気はないし、自衛隊は何も出来ないで終わる可能性があると想定しておく必要があります。
何もしないということは、中国軍が沖縄本島周辺を除く離島を総嘗めにして占領してしまってもただ見ているだけ・・韓国に占領されたままになっている竹島のようになることを意味します。
例によって、アメリカはアジアでの紛争拡大を望まない・平和を望んでいると言って「話し合い解決しなさい、もめ事を大きくしないで・・」というのがアメリカのスタンスでしょう。
日本政府は「いつでも話し合いの門戸は開かれている」と逆に言い訳しなければならない変な立場に追い込まれ現状固定して行きます。
これでは、日本は世界の笑い者・・惨めな結果になります。
アメリカが日米同盟による同盟国の義務を果たすには、占領自体を阻止する共同作戦を実行すべきですし、これが出来ないならば日本軍の・装備(航空母艦)充実の(協力しないまでも)邪魔しないことではないでしょうか?
アメリカの真意は必ずしも明らかではありませんが,第二世辞世界大戦時同様に真意は米中結託があって日本を中国に蹂躙させる密約がないとは言い切れません。
日本の軍備増強を阻止して弱体化したままにしておいて,あるときイキナリ撤退してしまい戦備の整わない日本が大負けするパターンを狙っていないとは限りませんので注意が必要です。
相互防衛条約とは紛争当事国がまず率先して戦い、不足を補うのが原則であるから日本がまず負けても戦う気概を示すべきだというもっともらしい意見がときどき聞かれます。
負けてから、助けてもらえるという意見です。
しかし、日米同盟の場合は日本の再軍備を事実上禁止して来た歴史がある上に、米軍が日本全土を我が物顔に基地として優先使用している現状から見て、その代わり、アメリカが守ってくれるものだと日本人多くが信じて来たのは誤りではありません。
いわゆる識者が訳知り顔で言うところの過去の伝統的条約の場合,確かに同盟国が諸種の援助をするだけで必ずしも一緒に戦う訳ではありませんが、その代わり日英同盟の例でも分るように防衛分担金を負担することはありませんし、日本の軍備増強に協力することがあっても阻止したこともありません。
ましてや日本国内に好きなように基地をおかせることもありません。
戦後普通になった基地を提供する方式・新たな武器開発を禁止されている場合は、同盟国とは言っても実質は支配服従の関係ですから、その代わりに自国を守ってくれることを前提にしています。
昔から,同盟条約がなくとも、占領軍が占領してる以上は領民を守れないと支配者が権威喪失してしまいました。
動物の世界でもリーダーがリーダーたる能力を発揮出来ないと直ちにその地位を追われる仕組みです。

日米同盟強化

Dec 28, 2012「観光立国と生活レベルの低下4」で、尖閣諸島に半端な戦力(数十人規模)を駐屯していても肝腎の本格戦争に入れば日本本土防衛には無意味・・放棄するしかないだろうと書きましたが、(平時のシーレーン防衛には大きな意味があります)防衛ラインを広大な太平洋のどこに引いてもアメリカ本土の防衛にとって、(日本の沖縄防衛と尖閣諸島防衛の関係よりもなお)大した違いはありません。
(アメリカ本土向けロケット発射を何秒か早く知ることが出来るくらいでしょうか?)
仮に日本列島が全部中国支配下になって日本から攻撃機あるいは大陸間弾道弾が飛び立っても中国本土から直接飛んでも距離の比率から言ってアメリカの防衛にとっては50歩100歩以下でしかないでしょう。
日本を韓国のように経済植民地化しておけるならば、アメリカにとって第1列島線が(守ってやるぞという意味で)重要になります。
日本が経済支配下に入らない・もしかして中国経済圏に入るのを選択するなら、何のためにシーレーンなど中国から防衛してやる必要があるか・・子供でも分る道理です。
ですから「防衛分野だけ同盟しましょう」と言っても、アメリカが実質メリットを求めて来るのは当然です。
TPPや沖縄基地問題等アメリカに利害のある問題で具体的に安倍政権がどう対応(譲れる)出来るか、アメリカにじっと見られている状態です。
ヤクザにミカジメ料の支払を渋ったら、・・「じゃあ他所のヤクザが店に来て嫌がらせされても知らないぞ・・」というのがアメリカのやり方でしょう。
もしも参議院選挙までアメリカの思惑どおりに動けない・・野田政権同様に国民を騙すために選挙までは意思表示出来ないと言うなら、(アメリカにとっては国民に言えないほどの大規模譲歩引き出すには選挙後の方が有利ですから)そこまでは我慢するでしょう。
あまりにも大きな譲歩を迫られる場合、アメリカ離れを画策した方が良いかについては、中国の出方を考えてシビアーな検討が必要です。
戦後60年以上に及ぶアメリカの横暴?に反感を持っていた民主党政権は、今後中国と仲良くすれば良い・・これまで大分援助して来たし・・アメリカを袖にして近寄れば中国が喜んで大切にしてくれると思っていました。
民主党はもともとソ連圏との友好を模索して来た社会党・民社党出身議員を多く抱えているので反米基調になっていたのは当然ですが・・国民の多くもアメリカの勝手な行為の数々に不満を持っているところへ中国の台頭もあって、民主党政権誕生=親中国路線傾斜が当然の雰囲気でした。
ところが、日本には予想外の中国の対応が待っていました。
アメリカから離れたならば立場が弱いだろうと足下を見られてしまい、逆に尖閣諸島に対する領土要求を誘発させてしまいました。
日本的理解ではこれまで対立して来た相手でも、相手が弱って頼ってくれば優しくいたわるのが普通ですが、中国や韓国では相手が弱っているならこれを好機と見て、徹底的に叩く・・しゃぶり尽くす価値観の国だと知らなかったのです。
低姿勢に出れば、大切に対応するのが日本の礼儀ですが、中韓(もしかしたら世界中が)では相手が下手に出れば相手が弱っているのだから、この機会になお強く要求すれば良いという価値観の国です。
慰安婦問題・南京虐殺等々、事実無根でも相手が主張するなら、反論して揉めていないでそのとおり認めて謝れば和解出来るという発想が日本の(甘い?)価値観ですが、(ヤクザでも言いがかりをつけたことについて被害者が謝るなら、それ以上追及しない国民性です)相手の方は、事実無根でも認めてくるほど相手が弱いならば、もっと新たな要求が出来ると考える価値観の民族です。
今回はアメリカの要求がきつすぎるからと言って、簡単に中国寄りに舵を切り替えられないことも(交渉相手のアメリカには)分っています。
ところで安倍政権の対米手みやげ論ですが、ただ低姿勢で譲歩すれば上記のとおり却って悪い結果になり兼ねません。
こちらもしたたかに交渉して行く心構えが必要です。
ベトナム戦争当時、ドミノ理論が一世を風靡したことがありますが、尖閣諸島をアメリカが守れずここに中国軍基地が築かれると(日本本土防衛にとってはあまり意味のない場所としても・・・)台湾(国府軍)防衛に重大な影響が生じます。
(※ 尖閣諸島問題で日本が引けば、その内沖縄諸島まで中国が領有主張を始める可能性が高く、さしあたり石垣島など離島から占領が始まるでしょうが、順次日本がこれらの占領を黙認して行くことになると、台湾本島が中国軍基地に包囲されることになります。
こうなると台湾武力侵略(開放)が現実化して来るので、武力行使がなくとも台湾が屈服するしかなくなるでしょう。)
遠隔先端基地は攻撃側には出撃の足がかりになるので有用ですが、守勢のときには守備隊が拡大分散している方が不利になります。
(沖縄占領に後ここから出撃する爆撃機によって東京空襲が常態化したことを想起すれば良いでしょう)
我が国は専守防衛なのであまり遠くまで出っ張って戦力分散している方が不利になりますが、攻撃側の中国にとってはここに基地を築ければ台湾と日本を分断出来るし、そこから航空機が出撃出来れば有利になります。
沖縄まで要求して来るのは大分先のことであるとしても、台湾に至近距離の尖閣諸島に中国軍基地を設定するだけでも台湾を脅迫するのに充分です。
沖縄米軍による台湾応援をここで分断・妨害出来ます。
この視点から言えば、台湾政権が中国共産党政権と一緒になって尖閣諸島領有を主張していたのは不可解・・よく考えていなかったのでしょう。
台湾当局(国府軍)にとっては、日本の尖閣諸島実行支配を揺るがすのは得策どころか、自分の首を絞める行為です。
直ぐに台湾当局が静かになったのはこう言う視点が働いているからでしょう。  
アメリカの要求がきつ過ぎて、交渉決裂となってアメリカが守ってくれないなら・・・と言うことで、「尖閣諸島は要りません・諦めました」となればアメリカも大変です。
台湾防衛だけではなく、「たった1つの離島さえ守ってくれない同盟なんか意味ない」という声がわき上がるのは当然で、将来的には日米同盟が空洞化して行くのは必至です。
日本は手みやげばかり気にしないで、この辺を(直接言うのは、はしたないですが、)交渉材料にして行くべきでしょう。

政権担当能力2(マスコミ支配)

昨年末から書いているように、マスコミは戦後ずっと米英支配下にあるので、政権が中国寄りになること自体不快に思っている外に、韓国のようにアメリカ・IMF官僚の言うとおり・・経済植民地化に応じない・しぶとい自民党(ひいては日本国民)を追い込むために、マスコミ操作して来た可能性があります。
韓国のように欧米資本が全面的に牛耳って植民地化すれば、その資本・企業が中国といくら取引しようと構わないのが欧米の戦略です。
日産のように外資が過半を占めれば、最早日系企業ではありません。
韓国の大企業がぐんぐん欧米で伸びているのは欧米資本になっているから・・韓国の無茶なウオン安・・いきなり約半値になりました・・政策を欧米はまるで批判しません。
むしろ日本民族資本のトヤタやパナソニック等を追い上げるのを喜んでいる・・応援していると思われます。
サムソンとアップルの争いと言っても、韓国とアメリカ企業の争いのよう日本からは見えていますが、実質はアメリカ資本同士の争いです。
(だからサムソンは遠慮なく戦える面があります・・日本企業だとこんな全面戦争はとても無理でしょう・・)
トヨタはインチキクレームで巨額損失を出したので、本来損害賠償請求すべき立場でしたが、逆に訴えられていた事件で何百億もの和解金を払うことになったとつい最近報道されています。
・・アメリカで長期訴訟に巻き込まれているマイナスの方が大きいという変な判断ですが、民族資本のママだとこのような不当な結果ばかりが待っています。
中国リスク報道ばかり目につきますが、アメリカの方が実は不当な恐喝的行為の多いカントリーリスクの大きい国ですが、巨額でない限りアメリカに支配されているマスコミは滅多に報道しません。
中国批判・対立しながらも中国へのアメリカ企業の進出自体をアメリカは奨励しています。
しかし、欧米企業のママの進出競争では日韓や台湾にとてもかなわないので、日韓、台湾企業の資本を抑えて間接進出すればアメリカ企業の進出と経済効果は変わりません。
マスコミは日本の株式市場や債券市場が外資に魅力がないとしきりに・・ことあるごとに騒ぎますが、(今朝の日経朝刊にもこうした記事が出ています)私がこれまた毎回書いているように国債やトヨタ等の株式の大半を外資に引き受けて貰うことに反対です。
国内でほぼ全量賄っているからこそ、いくら国債が膨らもうと外国からとやかく言われなくても済む・・独立性が保てるし、円高になったくらいで安易に海外に逃げないで歯を食いしばっても国内にとどまる努力をしてくれる・そこから新たな円高水準でも海外で戦える新規事業が生まれる芽が残ります。
欧米は日本の国債・企業等の資本支配をして、そこからアジア進出をしたいのが本音でしょう。
(資本受入れに応じない・・企業買収に簡単に応じない日本企業の中国進出に対しては、戦前の機会均等要求同様に日本の突出した中国大量進出にアメリカは不満を持っていますが、戦前と違って機会は均等なので表向き仕方がない状態です。
(・・中国でのデモ・暴動等を背後でけしかけて日本の進出意欲を殺ぐくらいでしょう)
小泉政権を継いだ自民党3代政権・構造改革路線に反する政権に対するマスコミの揚げ足取り的集中砲火は異常でした。
このころから韓流の大量報道に始まり、マスコミの自制(表向きの政治的中立)がなくなり始めた時代と言えるでしょうか?
マスコミは政権批判の材料として安倍→福田→麻生とどれも世襲でひ弱で政権担当能力がないという集中砲火を浴びせて次々と総理を代わらせて最後に下野させるのに成功しました。
そもそも政権担当・実務能力などと言い出したら、マスコミの標的次第でいつでも集中砲火が可能ですから、マスコミの狙い撃ち次第になります。
実務能力を基準にすると政権担当経験のない野党に政権交代する選挙制度・民主主義制度自体論理矛盾になります。
政権担当実務能力という基準で攻撃出来れば、どんな政権になっても気に入らない政権の場合いつでもマスコミを使って倒すことが可能になります。
ひいては「意に反すればいつでも倒せるのだぞ」という脅しにマスコミを使えることを意味していますが、もともと中立を装ったマスコミの威力は巨大でしたが、この4〜5年のマスコミの動きは露骨過ぎたように思います。

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