日米安保条約1(航空母艦の役割3)

航空母艦がないままですと仮に現地遭遇戦をやろうとして出掛けて行っても、相手が一旦逃げてしまうと、4〜500km余計飛んで来ている日本の飛行機は現地に長くとどまれないので、少し追いかけ回したり探すくらいが関の山で直ぐに那覇基地に引き返すしかありません。
引き返すときに1昨日書いたように、追撃されたら大変ですし、仮に追撃されないまでもその間にまた占領されればイタチごっここですから、こんな消耗戦を続けられません。
これを5〜6回も繰り返していて「また逃げるのだろう」とうんざり気分になったところで突如反転して来て戦闘を仕掛けられると気が緩んでいる僅かな差が不利な結果になります。
戦闘開始をするか否か,どこで始めるかの場所すらも相手のイニシアチブにかかる・・ゲリラ戦になると、10倍の兵力があっても不利な戦いを強いられます。
占領された離島を奪回するには、日本自体が航空母艦を持って現地常駐して対峙するか、米軍の航空母艦が参戦しないと不可能なことになります。
現在の日米奪還作戦の訓練は、米軍が本当に共同参戦してくれるのか不明のママ、もしかしたら実際には機能しない訓練を気休めのためにやっている可能性があります。
米国は同盟国の義務を果たすかのようにお茶を濁しているだけで、米軍は実際には何もする気はないし、自衛隊は何も出来ないで終わる可能性があると想定しておく必要があります。
何もしないということは、中国軍が沖縄本島周辺を除く離島を総嘗めにして占領してしまってもただ見ているだけ・・韓国に占領されたままになっている竹島のようになることを意味します。
例によって、アメリカはアジアでの紛争拡大を望まない・平和を望んでいると言って「話し合い解決しなさい、もめ事を大きくしないで・・」というのがアメリカのスタンスでしょう。
日本政府は「いつでも話し合いの門戸は開かれている」と逆に言い訳しなければならない変な立場に追い込まれ現状固定して行きます。
これでは、日本は世界の笑い者・・惨めな結果になります。
アメリカが日米同盟による同盟国の義務を果たすには、占領自体を阻止する共同作戦を実行すべきですし、これが出来ないならば日本軍の・装備(航空母艦)充実の(協力しないまでも)邪魔しないことではないでしょうか?
アメリカの真意は必ずしも明らかではありませんが,第二世辞世界大戦時同様に真意は米中結託があって日本を中国に蹂躙させる密約がないとは言い切れません。
日本の軍備増強を阻止して弱体化したままにしておいて,あるときイキナリ撤退してしまい戦備の整わない日本が大負けするパターンを狙っていないとは限りませんので注意が必要です。
相互防衛条約とは紛争当事国がまず率先して戦い、不足を補うのが原則であるから日本がまず負けても戦う気概を示すべきだというもっともらしい意見がときどき聞かれます。
負けてから、助けてもらえるという意見です。
しかし、日米同盟の場合は日本の再軍備を事実上禁止して来た歴史がある上に、米軍が日本全土を我が物顔に基地として優先使用している現状から見て、その代わり、アメリカが守ってくれるものだと日本人多くが信じて来たのは誤りではありません。
いわゆる識者が訳知り顔で言うところの過去の伝統的条約の場合,確かに同盟国が諸種の援助をするだけで必ずしも一緒に戦う訳ではありませんが、その代わり日英同盟の例でも分るように防衛分担金を負担することはありませんし、日本の軍備増強に協力することがあっても阻止したこともありません。
ましてや日本国内に好きなように基地をおかせることもありません。
戦後普通になった基地を提供する方式・新たな武器開発を禁止されている場合は、同盟国とは言っても実質は支配服従の関係ですから、その代わりに自国を守ってくれることを前提にしています。
昔から,同盟条約がなくとも、占領軍が占領してる以上は領民を守れないと支配者が権威喪失してしまいました。
動物の世界でもリーダーがリーダーたる能力を発揮出来ないと直ちにその地位を追われる仕組みです。

通常戦力増強4(航空母艦の役割2)

仮に日本の自衛艦隊が尖閣諸島現場海域で常駐体制をとっていても、イキナリ戦闘が始まると航空機の援護がなければどうにもなりません。
イキナリ中国軍の海空からの一斉攻撃が始まった場合、日本側からの飛行機来援は4〜5百kmも離れた那覇からしか飛んで行けないのでは、那覇からの戦闘機が飛んで来る前に現場にいる自衛艦は殆ど全部撃沈されてしまうか、ひん死の状態・大被害を受けてしまいます。
日本の戦闘機が遠くから飛んで来て漸く現地に近づいても燃料が残り数十分しか持たない状態で格闘戦に入るのは時間制約があってかなり不利です。
相手は本格戦闘に入るのを時間を掛けて引き延ばしていれば、日本の飛行機は遠くから来た分早く燃料切れになるので、退却するしかないので、そのときを待ってその後を追えば有利な戦いになります。
昨日書いたように追撃戦はすごく日本にとって不利になります。
日本に空母がない限り自衛艦は航空機の応援をすぐに期待出来る程度のかなり後方に控えているしかない・・尖閣諸島に限らず、石垣島その他どこであっても那覇基地近くの島以外は全て占領されるに任せるしかない・・中国軍の上陸実行を阻止出来ない・・現場を守ることは不可能になります。
最近の日米共同訓練では、離島奪還作戦中心になっているのは、緒戦では占領を阻止出来ないことを前提にしていることになります。
ところで一旦占領された島の奪回作戦は可能でしょうか?
仮に同数同能力の空軍力の場合、4〜5百kmの遠くから飛んで来てそれから戦闘態勢に入るのと、これを待ち構えて飛び立って戦闘態勢にはいるのとでは、待ち構えている方が格段に有利です。
日本軍はわざわざ迂回するにしても程度が知れているので、コースも一直線・・大方相手としては予定が立ちますが、日本からすれば相手がどの辺で待ち構えているつもりか皆目見当がつかないまま緊急に向かうしかないので、言わば盲滅法の戦い方です。
日本海海戦の例によるとバルチック艦隊は戦闘隊形になく単純に1列縦隊で進行中のところを、横長の隊列で待ち構えていた日本海軍に先頭の船から順に正面・左右からの集中砲火を浴びて,殆ど有効な反撃を出来ずに次々と撃沈されてしまったのです。
バルチック艦隊の方も日本海軍が待ち構えていることくらい知っていた筈ですから陣形を作る時間がなかったとは思えませんが、(戦略ミスでしょうが・・・)遠くから来る方は陣形を作る準備時間が最低必要です。
自衛隊機が緊急発進して現場に向かう途中のどの辺で相手が待ち構えているのかすら、こちらには分りません。
戦闘場所は待ち構えている相手が決めることになりますから、相手方は作戦を立て易いし心理的に有利です。
人間が遠距離を走って来るのと違い機械の場合それほどの疲れは出ないとしても、やはり4〜5百km飛んで来てから数秒の休みもなくそのまま戦うのと数分前に空母から飛び上がって待ち構えているのとでは敏捷性で優る筈です。
スポーツでも数日前に現地入りして軽く練習してからの本番参加が普通です。
到着した足で試合会場への直行するようなことは滅多にしないでしょう。
漸く現地付近に到達しても上記のように、遠くから行った方は早く燃料切れになるので、相手はのらりくらりと時間を稼げばいいし、こちらは即決戦を望み焦る傾向があります。
遠隔地の戦闘では航空母艦があるのとないのでは、同じ能力の戦闘機があっても、機動性を含めて数十倍以上の戦力差になります。
相手が航空母艦を持った場合専守防衛宣のためにも日本も航空母艦を持たないと、一旦占領されると少しくらい(比喩的に言って2〜3割戦力が上回っていても)日本軍の方が優秀という程度では、却って返り討ちになあってしまうリスクが高く、奪還作戦の実行すら出来ないことになります。
航空母艦の参戦がないまま、アメリカの制止(アジアの紛争拡大を好まないといういつものセリフ)を振り切って自衛隊が奪回作戦を実行しても遠距離による不利があって惨めな敗退が待っているだけでしょう。

通常戦力増強3(航空母艦の役割1)

中国のココ5年程度の動きを単純化すれば、世界の海賊の親玉になればもっと発言力が高まるし係争地の解決には空母で接近すれば有利になるという意味でしょうか?
暴力団の経営するフロント企業の売上が伸びたので、その資金力を利用して戦闘要員を増やして縄張りをもっと広げたいという程度の倫理観で暴走し始めたのではないでしょうか?
例えば尖閣諸島をどちらが実効支配するかと言う点で見れば、実効支配=占領作戦実行のためには、海軍力だけよりは制空権を握った方が有利に決まっています。
尖閣諸島まで那覇基地からは4〜5百kmもあって、(最寄りの石垣島からでも160km)日本の戦闘機が出撃しても航続時間の関係で十km近辺の航空母艦から出撃する中国空軍に比較して、機動性や戦力が何十分の1以下に減退します。
昔から長距離遠征は兵糧その他で負担が大きいのですが、数十分〜1時間足らずの戦闘で決着のついてしまう現在の航空戦ではなおさら距離・駆けつける時間に反比例する関係です。
どちらも4〜5百kmの距離にある空軍基地からの発進であれば、相手の戦闘機が大量に発進するのにあわせてこちらが数分遅れで発進すれば、現場海域に似たような時間に到着出来て互角の戦闘態勢が組めます。
グーグル地図で比較すると偶然ですが、尖閣諸島は中国大陸の福州あたりからの距離と那覇からの距離はほぼ同距離に見えます。
これに対して、空母があると戦闘機の発着場所が至近距離に位置出来るので、本国の基地からの距離・時間を克服出来ます。
航空母艦のある方は現地付近に常駐出来て戦闘機離陸とほぼ同時に攻撃に入れるので、日本は相手が具体的に領海侵犯→上陸開始・戦闘開始し始めてから4〜500kmの彼方から駆けつけるのでは間に合いません。
どんなに緊張激化していても日本が先に仕掛けられない・・相手が戦闘開始のイニシアチブを持っている状態では・・日本はせいぜい偵察機を遠くの那覇基地から時々飛ばして様子を見ているしか出来ないので、イザ開戦となっても現地には戦闘機1機もいないとなれば、互角の戦争になりません。
尖閣諸島は無人なのであっという間に上陸作戦は成功してしまうでしょう。
仮に日本が基地を建設していても一方的な艦砲射撃や空爆を受けると無駄に人的資源を失うだけです。
やるならば、中国の空母艦載機を上回る空軍機の駐留出来る飛行場の建設とセットでないと意味がありません。
基地がないまま遠路戦闘機を派遣して上空旋回で様子を見ていても、滞空時間の切れる頃にイキナリ戦闘を挑んで来られれば、戦うヒマもなく引き返す・・逃げる形になるしかありません。
歩兵でさえ後ろ向きになって後ろから攻撃されるのは弱い立場ですが、飛行機も後ろ向きになると射たれるばかりで自分から後ろ向きに射撃出来ません。
誘導弾・ミサイルと言っても、敵機の吐き出す熱線等を捕捉して追尾する仕組みですから、背後につけば有効ですが敵機の前を逃げて飛んでいるのではやられっパナシになります。
これがいやならば、切れ目なく交代機を飛ばすしかないので那覇基地に帰ってからの燃料補給時間を含めて往復1時間以上かかるところを数分おきに飛ばすには、現場戦力は2〜30分の1に減ってしまいます。
仮にせっかく相手と同数の100機持っていても、遠くから交代発進しているのでは、実際戦えるのは5〜10機程度となってしまいます。
これではマトモな喧嘩になりません。
交代発進・逐次投入はコチラの戦力が敵の数倍〜10倍になっているときに可能な戦法であって、互角の場合には、戦力を集中した方が有利に決まっていますから、(これが東郷平八郎がバルチック艦隊を日本海海戦で破った戦法でした)交代投入戦は想定外・・不可能な戦法です。

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