資金不足15と人民元流出の攻防4

人民元買い支えを続けるとドル資金(外貨準備)が日々流出して行きます。
日本の小泉政権のように円高阻止のためのドル買いは円紙幣を無限に印刷すれば出来ることですが、自国通貨下落阻止のための介入は買い支えにつぎ込むドル資金がみるみる減って行き、限度があるので、無理があります。
政府による裏での人民元買い支えが終わった・・力尽きた(外貨準備が本当はないのではないか?)と市場で見られると株式どころか、人民元自体の大暴落に繋がります。
中国人民はこれを恐れて早めに売り逃げていると見るべきでしょう。
中国では、政府も国民もお互い裏取引の動向を見て行動する変な社会・・要はルールなき社会になっています。
民主社会とは透明性の重視ですが、透明性の基礎インフラは誰の目にも明らかなルール化です。
選挙制度の有無にかかわらず、為政者は都合の悪いことを国民に知られたくない・・透明性があれば、自然に身ぎれいにするしかなくなりますが、統計や資料を不透明にし、都合の悪いことを報道させなければ、やりたい放題になります。
独裁制と統計等の欺瞞性・これを暴く報道の自由がないことは(ソ連も同じでした)表裏の関係にあることが分ります。
中国では強権社会化=厳しいルール化については、韓非子の時代からの歴史がありますが、それが民意から出たものではなく支配意思貫徹のためのルールでしかなかったのが不幸な歴史になりました。
法の目的がそうですから、国民はこれを自発的に守る意識どころか、逆に如何に潜脱するかの智恵・・ヤミルートが発達してしまいました。
裏取引中心の社会では、透明性とは真逆の社会です。
政府も実態を反映しない虚偽統計発表で羞じるところがありませんし、(企業で言えば税を免れるために虚偽帳簿を作るようなことを政府がやっているのです)何もかも法治国家以前の社会のママです。
国家の衰退が始まると、ロシアやギリシャの例を引いて外貨流出の主役は外資よりは自国民が中心であると28日に書きました。
外資は地元情勢にうといことから対応が遅れることと、違法なことには手を出し難いしこれを目こぼしてくれる人脈もないのですが、地元で生きている人民は経済危機感を肌で知っているし裏社会やお目こぼししてくれる幹部の人脈が豊富です。
今や中国政府は自国民の資金脱出に対するお上の規制と命がけで裏をかく人民との攻防に移っているようです。
日本では危機に際して最後まで組織や砦を死守する人が殆どですが、これは日頃から従業員や構成員を第一にして来た上下の信頼関係によります。
国民と政府、企業と従業員それぞれが裏技を使って騙し合いして来た社会では、相手に利用価値がない・・イザとなれば真っ先に逃げ出すのは当然です。
戦争になれば敵に銃を向けずに前で戦うべき自軍兵士が逃げたら射つように見張っている中国との違いです。
こういう国では、前にいる敵の動きよりも、後ろの上官が逃げるかどうかをいつも見ていて、上官の動き次第で1秒でも早く自分も逃げるチャンスをうかがうのが真っ先にやるべきことですから大変です。
負けそうになれば真っ先に逃げ出す兵士と日本では最後の一兵まで死守して戦う兵士・・何かあれば従業員が先に逃げ出す社会との違いです。
半年ほど前に起きた長江のフェリー事故、1年前の韓国のセウオール号事故、あるいはイタリアの客船事故でも同じですが、真っ先に従業員が逃げる国・・精神の基礎は、こうした歴史の違いによります。
(イタリアも民族国家意識の低いヤミ経済国として有名です)
外貨資金流出攻防劇は、兵士の敵前逃亡防止策とこれに対するすり抜け策の現在版と言うべきでしょう。
ギリシャやロシアでは外貨の動きは自由ですが、中国は2000年の歴史上専制支配しか経験がない・・1回も自由がなかった・規制している分、自衛のためにヤミルートが歴史的・日常的に発達しているし活発です。

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