中韓・・中進国の罠6(バブルの誘惑→債務膨張)

町金融関係のテーマになったところで、再び韓国の原状に戻ります。
韓国では現在個人債務の急膨張が危険ラインに達していると言われているので、国内景気維持のための内需拡大はこれ以上は無理そうなイメージです。
内需=消費拡大は消費者の経済力が限界を画します。
貿易黒字には「良い黒字と悪い黒字がある」と言われますが、この後で紹介するように韓国中国の場合、輸出額が減っているのに輸入がそれ上に減っために黒字になっている関係で、いわゆる悪い黒字です。
中国の出血輸出のカラクリを説明したことがありますが、原価割れ販売の出血輸出では、先ずその企業がその内仕入れ出来なくなる・・輸入が減って行きますが、蛸足配当のようなもので従業員に節約を求めているうちに、国民一般にも及ぶ・・国民の消費を節約して輸出に励んでいれば、国民窮乏化が進みます。
食堂で言えば従業員の食事分を削ってお客に出しているようなものです。
しかも韓国の場合、貿易収支の黒字分・・儲けが、外国資本の収益になって国外に出て行き国民福利とあまり関係がないと言われている国情ですからなおさらです。
サムスンで言えば、54%が外資と言われています。
ただしサムスンは税引き前利益に対する株主配当率が低いから、利益率が低いのに高率配当している日本企業よりも絶対額としての国外流出分は少ないと言う反論もあるようです。
その場面だけでは理屈があっていますが、内部留保されている結果将来吐き出すときには株主に行くしかない点・・いつ払うかの違いでしかないのですから、国民に行かない点は同じですから、国民に行くか外資に行くかの議論を誤摩化すための的外れな反論です。
外資率が高い・多額の負債があると言うことは、内弁慶でなく国際市場で評価されていると言う逆の意味もあるようですが・・。
サムスンに限定すればこの辺は当たっている面があるでしょうが、この種のメデイアの議論のおかしさは借金が多いのは信用されているからで、借金のないお金持ちは信用されてないなどと批判しているのに似てどこか倒錯しています。
日本国債の自国内保有が多い・・だから借金としても国内でのやり取りに過ぎず、次世代に借金だけが残る訳ではない・・国債保有者の債権も相続すると言う主張封じのためにか?外国人投資家に人気がないのはおかしいと言うイキナリ変な方向から矢が飛んで来ます。
借金したい・・資金繰りの苦しい者同士の比較で言えば、借金したいときに貸してもらえる企業や人の方が信用が上ですが、自己資金豊富で借りなくとも旅行したり家屋敷を買える・・あるいは店舗の模様替えを出来る人や企業を相手に・・「俺は50万まで直ぐに借りられる」と自慢してもそれは貧乏人同士の自慢でしかない・・恥ずかしいだけの関係であることに気が付かないおかしさです。
韓国では労働分配率が低い所為か?個人負債が急膨張して国際的指摘を受けるまでになっています。
韓国の家計負債の現状に関する以下の記事は約1年前のものですから、その後1年で家計債務が更に拡大しているのですが、原因の分析もあって分りよいので少し長いですが、紹介しておきます。
http://www.data-max.co.jp/280712_ry_02/
2016年07月11日 15:19国際
韓国経済ウォッチ~膨らみ続ける家計負債(前)韓国経済ウォッチ
日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
「・・・韓国経済にも低成長が定着し、わずか2%くらいの成長しか期待できなくなっている。また、造船などで一時期活況を呈していた蔚山(ウルサン)などは、深刻な不景気に悩まされている。
・・・韓国の家計負債は膨らみ続け、世界各国の主要機関も韓国の家計負債に警鐘を鳴らしている。」
「・・・負債を返済できる能力を評価するときに、よく使われている可処分所得に占める家計負債の比率というのがある。韓国の可処分所得に対する家計負債の比率は、去年すでに163%を超えている。負債の多いアメリカの113%と比較しても、もっと高いのが韓国の家計負債である。」
韓国政府が政府が如何にして不動産バブルを中国同様に誘導して来たかが、以下の記事で分ります。
「・・・韓国家計負債の74%を占めているのは、実は住宅ローンである。韓国の住宅ローンの特徴は、元金を払わず、利子だけを払うという点である。利子だけを払うことになっているので、まだ問題が顕在化していないが、満期が集中している2019年には元金をも払わないといけないので、大きな問題になるという指摘がある。
 住宅ローンのもう1つの特徴は、集団ローンと言う制度である。この集団ローンは、建設会社が金融機関と交渉をして入居者に用意するローンであり、個人への個別審査はない。」
「・・・もう1つの要因は、韓国の住宅制度そのものにある。
・・「全貰(ジョンセ)」という制度があるが、今、その全貰と言う制度が崩れつつある。大家は家を貸すときにテナントから保証金を預かり、その保証金を運用する。ところが、低金利時代が到来することにより、大家は資金を運用するところがなくなっている。運用先を失った大家は、これまでの全貰から、毎月家賃をもらうことができる「月貰(ウォルセ)」に切り替えている。
・・毎月家賃を払うことに負担を感じるようになった若い層は、これを機に少し無理をしてでも住宅を購入しようということになる。金融機関も住宅ローンは、担保があって一番安全だし、住宅ローンは良いビジネスになるので、積極的に住宅ローンを販売する。
 ・・・住宅を買う側も金利が安いので、この時期に住宅を購入しようという心理が働いて銀行の融資が増えていき、それによって家計負債は膨らみ続けている。」
もう1つの原因は、韓国の不景気である。韓国の40代、50代の平均資産額は3億4,000万ウォンくらいだという統計がある。資産と言っても、キャッシュは3万ウォン前後で、後は不動産などで所有している。だが、景気が低迷しているので、足りない収入を金融機関から借りたお金で賄っているのが現状であろう。」
「アメリカの金利上げ、不動産バブルの崩壊、さらなる景気悪化など、不安材料はいくらでもある。ある専門家のシミュレーションによると、不動産価格の下落より、金利上げのほうが家計負債への影響が大きいようだ。」
2%台の低成長に入った韓国が不景気対策としての金利下げ→マンション景気へ誘導→建設関連の裾野の広い内需拡大を目指したことが、マンションブームを引き起こしたことが、上記記事で分ります。
資産と言っても不動産に特化していて4〜50台の中堅世代が「キャッシュは3万ウオン前後」・日本円で僅か約3000円しか持っていないと言うのですから驚きです。
もしかしたら一けたか二けた(マルが二つくらい抜けてしまった)誤記かも知れませんが、それにしても不動産に資産構成が特化している様子が見えます。
中国のように転売目的比率が高くないとすれば、相場下落はそれほどの痛手にはならないとしても過大な借金による分・・金利動向が死命を制します。
借金だらけの実情を明日紹介しますが、本当に手持ち金ゼロ・・ギリギリその日の買い物に必要な限度でサラ金から借りて買い物をしているのかも知れません。
金利が少し上がれば、支払に窮するようになる・・住宅ローン支払に困って高利に手を出す段階です。

税の歴史6(商業税3)

安心・安全社会でありながら商人から税を取ろうとすると特許料的・・・特別なコネで独占権を買うような袖の下・不正なお金が動くような意識・理解が強くなります。
我が国には商人からお金をとるのは賄賂に近い・・不正と結びついた伝統的意識があるので、商人からお金をとる仕組みを切り捨てた楽市楽座制は画期的な制度として今でも賞賛されているのです。
他方田沼意次のように商業を活性化して、そこから金をとって財政資金にしようとすると賄賂政治として非難囂々となります。
本来「商人からも税を取るべき」という側面から見れば、楽市楽座制は徴税方法の萌芽を摘み取ってしまった政策だったとマイナス評価すべき面があります。
(こんなとんでもない意見を書いているのは私くらいでしょうが・・・素人のコラムは気楽です。)
徳川政権は、日宋貿易や日明貿易あるいは倭冦を通じて貿易は儲かると言う歴史認識が成立していた貿易からでさえ、関税を取っていたかどうかさえ分らないくらい・・金儲けには及び腰でした。
幕府に儲ける意識があればもっと貿易が活発化していたでしょうが、これを制限する方向・・鎖国に向かったのですから、・・・・・手数料をとっても実費程度でしかなかったのではないでしょうか。
何故か政府公的機関が金儲けに精出すのは、はしたないこととする風潮がこの頃に成立してしまったようです。
(だから日野富子の行状を如何にもサモシイように言いふらすのでしょう)
ソニーのトランジスタだったかを欧州で売り込んだ池田総理を、エコノミックアニマルとバカにし、総理ではなく商人のようだとバカにしたマスコミが多かったものです。
楽市楽座制以降商人からの徴税する意識がなくなったので、(国民は上記のとおりの我が国特有の安全な歴史から税を払う気がないので無理です・・)已むなく幕府が時おり豪商から召し上げて来た冥加金などの一時金に頼るしかありませんでした。
各大名家ではそんなことも出来ないので国債みたいな機能の藩札の発行・豪商からの借金などのいろんな名目の回収方法・・今の国債が発達したことになります。
鎌倉時代末期に発動された徳政令は、ご家人が借金に頼った結果でした。
政権側・領主・御家人が借金出来るということは、(当時は外国から借りることはなかったので)今の日本経済同様に領民の個人金融資産は豊富なのに、政権側で取る方法がなかったことの現れだったと言えるでしょう。
徳川時代の徳川家や諸大名や旗本ご家人も同じで豪商や町人からの借財で首が回らない状態でしたが、徴税方法がなかったに過ぎません。
明治の廃藩置県・・・版籍奉還政策は、当時の巨額債務切り捨て策でした。
最近で言えばGMが法的整理で過去に約束した年金債務等を切り捨てて立ち直ったのと同じやり方です。
各大名家では「これで借金の重圧から逃れられる」とホッとしていたので版籍奉還がスムースに行ったことについては、07/20/05「藩の消滅3(版籍奉還と知藩事)」で、大名は知事となり、収入の1割が保障されたことを紹介し、(オーナーからサラリーマンになったので藩の借金の責任を負いません)さらに08/15/09「武士の失業4と華族制の創設」のコラムで働かない無役武士を切り捨てるなどの大リストラに成功したことを紹介しました。
このやり方を真似たのが国鉄の清算事業団化で、新しいJRは働きの悪い従業員(労組員中心?)を切り捨てて(再雇用せずに)、借金のない新事業になったので身軽になれたのです。
この廃藩置県の結果、幕末動乱期に大名家の出費を支えた豪商からの借財が全部踏み倒されたので、(新しく出来た県は当然のことながら借金支払責任はありません)多くが没落し、明治以降新興の三菱などに入れ替わってしまいました。
徳政令に限らず政治に関係するといつもこうしたリスクがあるので「大名貸し」を絶対にしないという家訓を定めている商人もいましたが、幕末動乱期に、義に感じて「男気」から出してしまった商人が多くいたようです。
幕末には黒船来航以降、江戸湾の防備に駆り出されたり・・お台場建設その他の出費が嵩んだだけではなく、(これまで書いているように役務提供は大名の自腹で行うべきものでしたから・・持ち出しが増えます)各藩競争して洋風の軍備増強・新兵器購入に励まざるを得なかった外、京都などでの政治混乱に対応するための情報収集経費、その後の戊辰戦戦争への参加経費など経常収入ではとても賄えないほどの出費が続きました。
長岡藩でもガットリング砲をオランダから購入していますし、長州や薩摩ではもの凄い軍備増強ですから、従来の米の年貢その他の特産品販売による経常的収入だけ(・・元々大名家の財政は火の車でした)ではとても賄えません。
鳥羽伏見の役を制したのは薩長の最新式兵器であり、これを支えたのは、白石家などの領内豪商の存在でした。
会津の松平家は内陸であって豪商が育っていなかったことが、新兵器調達力に差がついてしまったのです。
この辺は長篠の合戦で信長の大量の鉄砲に対して武田家の少数の鉄砲・・火力差が勝敗の明暗を分けたのと同じです。
(世上騎馬軍団が鉄砲に負けたと言いますが、信玄も謙信も勿論新兵器導入に熱心だったのですが、経済力の差で信長ほど大量に買えなかったので、勝頼は騎馬軍団との併用しか出来なかったに過ぎません・・同じことは幕末の各大名家にも言えてそれぞれ財力に応じて新兵器調達に力を注いでいたのです。)
薩長ほどではないまでもどこの各大名家でも新兵器購入努力をしていましたので、これらの経費は危急存亡のときとして臨時に領内豪商(と言っても小さな藩では商人の経済規模が小さいのです)からの借金で賄っていました。
政府にとっては税でとらなくとも借金でとっても預金でとっても同じことです。
息子に生活費を入れさせるか毎月5〜10万ずつ借りたことにしておくかは、言葉の遊びででしかないと以前書きましたが、国内資金で賄っている限り親子の貸し借りと同じです。
息子は親にお金を貸したことになっていても将来親が払ってくれなければ、生活費(国でいえば税金)を入れていたと思うしかないのですが、国民の保有する国債とはそう言うものです。
1400兆円あまりの個人金融資産があって、1000兆円の国債があるということは現在個人金融資産が正味400兆あまりに減っていることになります。
個々人で見れば1400万の定期預金があっても国債がデフォルトすればその内1000万円が紙くずになって400万円しか残らないということです。
400万円残れば良いかと思いますが、この金融資産には生保や年金の積み立て分も含まれているので老後は大変です。
韓国や中国では年金制度が出来てから日が浅いので積み立てが貧弱で直ぐに高齢化社会に突入すると大変だが、日本は長期間経過しているので大丈夫と思っている方が多いと思いますが、実は日本も年金を含めた総預金が実質400万しかないとすれば、とても老後何十年も生きて行けません。
年金財政の赤字問題が喧しいですが、年金とは関係のない別建ての借金で食いつぶしてしまう方が早いかもしれないのです。
企業年金で言えば、新入社員が少なくて赤字になるとこぼしているうちに企業本体が借金だらけになったようなものです。
そこで国内個人金融資産だけが国債の担保になるのか・個人金融資産残高だけを国債発行残高が越えるかどうかだけが危機の基準かが問題です。
09/14/08「国債の無制限引き受けと紙幣発行権2」でも書きましたが、国債は円建てなので誰も買わなくなっても日銀が無制限に引き受ける限りデフォルトはおきません。
結局は日銀による無制限国債引き受けが可能かどうかになります。
(紙幣乱発とインフレや円安等の関係・・中央銀行独立の意味など現在社会の根幹に関わりますので、9/15/08「国債の無制限引き受けとインフレ1」February 22, 2012「為替相場と物価変動2(金融政策の限界2)」前後で少し書きましたが、この点は別に書きます)
通貨発行権のないギリシャとはこの点で本質的な違いがあります。

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