金融政策の限界5(韓国のミニバブル1)

まだ中国韓国人には、近代的モラル・ルールが国民の心の芯に定着し切れていないことを7月28日に書きましたが、人民の価値観にとっては金利が安いならば今のうちに借りられるだけ借りてしまおう・・最後に払い切れなくなれば、踏み倒せば良いと言う魂胆でしょうか。
7月28日に書いたように中国や韓国では、借りたら返す必要があると言う近代法意識が未成熟(・・韓国では何回も借金棒引き令が行なわれて来たと言われています)だから1昨日紹介したような野放図な金融緩和政策が大手を振っていられると思われます。
現在中国の野放図な借金拡大傾向については、ちょっと日付が遡りますが勝又氏経済時評5月9日からの引用です。
「「フィナンシャル・タイムズ』(4月28日付)は、社説で「経済改革に苦闘」と題して、次のように論じた。・・・
(2)「巨額の債務がもたらすリスクは明らかだ。負債総額は国内総生産(GDP)の約240%に相当し、大半の新興国の比率をはるかに上回る。赤字の国有企業がかなりの債務を抱えているため、この数字が長期的に持続可能であるはずがない。さらに懸念されるのは債務増加の速度である。もっとも、現在では深刻な金融危機のリスクは限定的だろう。閉ざされた資本市場、高い家計貯蓄率、潜在的経済成長力を考えると、中国の全体的な負債水準は警戒レベルを下回るだろう。また、政府には企業債務(実際には国有企業や地方政府関連が多い)を国庫のバランスシートに移し替える余裕がある。政府の財務内容は依然、巨額の公的準備に裏付けられ、健全である」。
以下は勝又氏の意見です。
「中国の抱える債務総額は、この記事では対GDP比で240%としている。だが、マッキンゼー国際研究所の調べでは、282%(昨年4~6月現在)である。その後の債務増加を勘案すれば、300%超えも間近であろう。決して、安心できる水準ではない。「政府には企業債務(実際には国有企業や地方政府関連が多い)を国庫のバランスシートに移し替える余裕がある」と指摘しているが本当だろうか。」
(3)「不良債権処理の包括計画をまとめないうちは、問題の先送りにすぎない。国際通貨基金(IMF)が警告したように、政治的に微妙な分野を含めて産業の再編に取り組まなければ、(債務の株式化や証券化を通じて処理する)現政府案は逆効果ともなりかねない。中国経済のリバランス(消費主導型への再均衡化)は極めて難題で、当局は予見しうる将来、刺激策を続けなければなるまい。これまではゾンビ企業にあまりにも肩入れしてきた。重要なことは保健、教育、都市の住宅、輸送、大規模な環境浄化など、より社会的に有益な分野に支出することだ。最も衝撃の小さいシナリオでも、債務負担の軽減にまだ10年近くはかかるだろう。その間、世界各国は中国の改革の遅れのあおりを覚悟することになる」。
この勝又氏の引用するリポートによって債務の合理的再編に取り組んでも(先送りをしていればもっとかかります・・)今では、中国の病人状態脱出には、10年以上かかると言うのが常識になっているようです。
まして中国の場合、統計さえ正確な発表が出来ない・・不正確な状態ですから文字どおり合理的対応出来る筈がない・・その場しのぎになるのは目に見えています。
今年2月26日のG20で鉄鋼石炭などの過剰生産を整理すると発言したのに、その直ぐに金融緩和した結果、休止したばかりの設備が再稼働始めたりマンションバブルが再発生している状態です。
上記記事では、「債務の株式化を図る」となっていますが、要は(株式化すれば返済義務がないから)返済を免れようとする方向へすり替えて行く魂胆であることが明らかです。
その後の経過はを見れば合理的再編・起業淘汰を計るどころか1昨日紹介したとおり、ゾンビ企業延命のために社会融資総量の激増になっているのですから大変です。
韓国も、ここ数年の成長率鈍化打開のための金融緩和が模索され少しずつ実行されていますが、金融緩和すると国民の反応が良過ぎて?債務が増え過ぎる・将来へのリスク拡大が心配される状態・・日本の国民のように金融緩和しても返す当てもないのにお金を借りない自律性が低い点が懸念されています・・中国同様に借りられるなら借りておこうとする点では同じ体質でしょう。
以下は、http://www.data-max.co.jp/280218_ry02からの引用です。
  日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
「日本のようにローンを組むことによって金融機関の審査を通るのではなく、契約金だけを用意できれば、まず住宅購入ができるようになっているため、これが後で負債として負担になるケースも多い。現代は、昔のように一斉に不動産が上がるような時代ではなくなったので、値上がりを見込んで無理して購入した住宅が値下がりし、融資残額にも満たないことでハウスプアになったりしている。
 とくに現在の朴謹恵大統領時代になって、不動産を活性化させて、内需活性化の呼び水にしようという狙いで金利を下げ、不動産の規制を緩和したところ、政府の予想を上回る急激な不動産過熱が発生し、その期間中に家計負債は急増してしまった。政府では「お金を借りてでも住宅を買いなさい」と奨励した覚えはないと否定しているが、いずれにせよ、家計負債が膨大に膨らんだことは紛れもない事実である。」
政府が煽ったかどうかは別として国民が簡単に借金に飛びつく体質である点では日本との大違いです。
国民をたぶらかして大儲けする中韓の企業や政府と国民の方がしたたかな日本社会との違いでしょうか?
日本のバブル崩壊を大騒ぎしていますが、急上昇した高値で売り抜けた農民や旧地主が不動産屋等が大幅値下がりで損をしたのと同額を儲けている・・国内での資金移動に過ぎないとう意見を連載したことがあります。
中国の場合企業家(日本からの投資家を含めて)から地方政府(共産党幹部)に所得移転したことになります。

金融政策の限界4

買い替え需要循環に入ると、たまに同一商品(・・例えばクルマやクーラー掃除機)についてちょっとした工夫商品が出て多く売れても他社製品の交換需要を食うだけであって、トータルでは同じ(一家に洗濯機や掃除機は1台しかいりません)です。
タマタマある商品が(画期的な省エネタイプの冷蔵庫が開発された場合)ヒットして多く売れても2〜3年分の買い替え需要の先食いでしかなく、その後却って低迷期に入ります。
冷蔵庫の改良程度と違い新機軸の例・・アップルの大成功がありましたが、その分従来型パソコンやガラケーの売れ行きが減ってしまいました。
消費税増税前の駆け込み需要、タバコ値上げ前の需要あるいはオリンピック景気後の低迷など皆同じです。
ヒット商品を開発すれば国内だけではなく海外にも売れるのでヒット商品開発力の有無は国際収支上有用ですが、国内トータル需要は変わりません。
一時輸出が伸びますがその内現地生産に移るので、(ユニクロで言えば、中国の工場〜東南アジアで生産していますし、アップルで言えば、その殆どが中国での生産と言われています)ホンのちょっとの期間しか輸出が増えないので、輸出用に増産投資すると1〜2年後には国内設備・従業員過剰に苦しむようになります。
ユニクロやアップルの例で言えば、ユニクロのフリース製品ヒットの最初から中国での生産だったように記憶していますが、これでは、始めっから国内生産が1つも増えません。
アップルの大成功もアメリカこの国内生産が増えなかった点は同じです。
金融緩和しても、例えば当時のユニクロの中国への工場新設資金融資に使われただけだったのではないでしょうか?
富士重工のクルマが世界で大人気になっているときに円安になったのですが、国内増産投資しないでアメリカでの現地生産を増やすと言うニュースを見たことがあります。
ホンダもその前から国内増産投資しないで、海外で売れる分は海外投資する方針と言う基本方針が知られています。
私は海外投資が良くないと思っていませんので、その点誤解されると困りますので繰り返し書いておくと、要は(世界の工場の地位は無理・・)どんなヒット商品を開発しても国内需要を越えた投資は成り立たない時代が来ていると言うことです。
買い替え需要循環に入ると普及期の生産力そのままでは、供給過剰になりますから企業はいくら内部留保があるからと言っても、増産投資は出来ません。
企業内の余剰資金はインフラの整わない・・あるいはクルマやクーラーの工場を造ればもっと売れそうな資金需要のある海外に投資するしかないのであって紙幣大量発行しても国内需要が伸びるワケがありません。
ヒット商品を仮に開発しても国内で売れる限度の設備投資しか出来ません。
借金までして国内で売れる以上の国内投資する訳がない・・借りたい人・企業もいないのに、じゃぶじゃぶと供給すると・・貸し手の地位が下がります・・マイナス金利になって来ると既存金融機関の役割が大幅に低下して来る・・紙幣自体の意味がなくなって来る可能性が目の前に迫っています。
紙幣も商品の一種であって供給不足状態であったから金利を払ってでも借りる人が出るのです。
紙幣大量発行してインフレになったらどうする?と言う議論を直ぐにしますが、これはモノ不足時代を現在に当てはめる時代遅れの議論です。
IPhoneでもポレモンCOが飛ぶように売れれば増産すればいいだけで、インフレになることははありません。
供給過剰になれば供給者・・紙幣発行者の地位が低下する・・紙幣発行量の調節や金利調節などの金融政策に意味があるのかと言う事態になります。
規制強化するべきは新たに浮上して来るビットコイン等の別の決裁手段ではないかと言う関心です。
新たに登場して来るフィンテックなど新システムは既存規制がないので、技術や利用方法の進展に合わせて順次後追い的に規制を作って行くしかないのが普通です。
紙幣の方は、(紙幣の足りない貧困国ではまだ有用ですが)資金豊富な日本経済に与える機能を失いつつあるのですから、これを今更がんじがらめにしたって?「羹に懲りてナマスを吹く」ような滑稽な事態になりませんか?
クルマの時代になっているのに、荷馬車の構造が危険かどうかを熱心にしかも国家の大事のように議論しているような印象です。
日本ではいくら金融緩和しても借りる人がいないで困っている報道ですが、他方中国・韓国の経済危機リスクに関して対GDP比の債務率拡大が議論されています。
見方を変えればまだ量的不足国・・あるいは法の支配・道徳律が定着していない中国や韓国が「野放図に」(バイキング料理で食べもしないのにお皿にとるように)利用しているに過ぎません。

金融政策の限界3

資金あまり・・内部留保が多過ぎると思った企業は株主還元と称して自社株買いをしています・・配当出来るような有望投資先がないと言う意味でしょう。
株式会社は、資金を集めてその資金で何かの事業をした儲けを配当するのが本業ですが、折角手元に集まっている資金を新規事業に使わずに、株主に還元・・返した方が良い・→持っている資金の使い道がない状態です。
国内に有望な投資先がなくともよその国に投資して儲ける可能性があるならば株主還元・自社株買いをしないで海外投資すべきです。
世界中どこにも有望投資先がない・・世界中どこにも投資する勇気がないならば、経営者をやめるべきでしょう。
(日本の場合内部留保があっても投資先がない(・・本当かどうか信用していませんが・・そのとおりとすればの話です)ので投資出来ないのですが)中国の金融緩和はもっと深刻化した状態で、ゾンビ企業の借金支払に利用するための資金需要があるだけで新規投資には向かいません。
こういうやり方では、いつまでたっても供給過剰が解消しないばかりか、不良債権が膨張する一方ですから最後には貸し手(金融機関その他)が参ってしまいます。
http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/day-20160726.html勝又氏の記事からの引用です。
「債務で支えたGDP
『ブルームバーグ』(7月16日付)は、次のように伝えた。

(1)「中国人民銀行(中央銀行)が発表した、6月の経済全体のファイナンス規模(社会的融資総量)は1兆6300億元(約25兆7866億円)で、ブルームバーグ調査の市場予想(1兆1000億元)を上回った。6月の人民元建て新規融資は1兆3800億元で市場予想は1兆元だった。今回の統計では、政策当局が債務リスク拡大という代償を払っても、従来の成長の原動力を維持する決意を変えていないことが浮き彫りになった。今年1~3月期(第1四半期)の与信の急増後、指導部は金融リスクを阻止するため与信の伸び抑制に動く意向を示唆していた」。
「社会的融資総量とは、マネーサプライよりも幅広い概念である。元建ておよび外貨融資、トラストローン、銀行引受手形、社債、非金融会社の株式発行を含み、さまざまな手段を通じて市中にどの程度の流動性があるか、より良く把握できる。特に流動性供給源としての国有銀行融資の重要性が低下するなか、このデータの重要性が増している。
6月の社会的融資総量は1兆6300億元(約25兆7866億円)で、ブルームバーグ調査の市場予想(1兆1000億元)を上回った。実に、予想を48%も上回る資金が実態経済に流れ込んだ計算である。この増加ぶりは異常な伸び率であり、中国政府が大慌てでGDPの低下を食い止めるべく、緊急事態で「土嚢」(社会的融資総量)を積み上げた感じである」
勝又氏の意見に多いに賛同です。
日本では資金余裕のある企業が多いものの、需要以上の増産投資しないと言う結果で見れば過剰生産能力・過剰供給・在庫の山で苦しんでいる中国と同じです。
赤字になるような立地店舗の場合、家賃タダでも出店しませんし、金利が安いくらいで何故国内投資するの?と投資すれば収益の上がりそうな海外に資金が逃げて行くばかりです。
デイズニーランドの近くに似たような施設を作る計画で言えば、いくら投資資金があっても既存設備との競争で勝ち目もないのが分っていれば、競合するレジャーランドを直ぐ隣接地に作る人・企業はいないでしょう。
採算取れる見込みがあってこそ、事業を買収したり新規投資するのであって、企業内にいくら蓄積があっても将来性のない投資をしません・・まして借りてまで投資する企業はありません。
需要を増やすには、金利上下や紙幣の供給量によるのはなく、面白いモノや持っていない珍しいモノがあってこそ気持ちが動くのです。
江戸時代には、変わった斑入り植物や鯉や金魚・・面白いものがもてはやされ、いろんな文芸が発達しました。
エコノミスト・マスコミは資金余力・・内部留保の大きい企業に吐き出させようと躍起ですし、今朝も日銀の判断動向が大きく報道されています。
時あたかもポケモンCOが大人気ですが、これは金融政策効果、金融緩和によるものではありません。
金融政策よりは需要を増やす・紙幣を配るのではなく、面白いもの珍しいものの文化発進力の向上こそが重要です。
クルマで言えば、これ以上増産投資しても紙幣を配っても国内でこれ以上売れ行きが伸びる訳がない・・となれば国内増産投資を誰もしません。
家電やクーラー、ピアノでも何でもみんな行き渡った社会では、金融政策や一定期間の補助金政策(太陽光発電)は需要の先食いでしかありません。
・・一旦普及すると紙幣を配っても(洗濯機を2個もいりません・・精々需要の先食い・・半年〜1年早めに買うくらいでしょう)買い替え需要以外にありません。

金融政策の限界2

金融・資本支配が重要になって来ると回収の他に金融・資本政策をどうするかが、世界経済の基本的枠組みとなります。
野放図に与信が膨らむとサブプライムローン〜リーマンショックみたいな事件が起きて世界の実体経済に大影響を及ぼすので、その歯止めをどうするかの議論がリーマンショック後の金融規制強化論でしょう。
一方でリーマンショック以降需要蒸発に対応するためにアメリカ発信で異次元の金融緩和・・・金利低下+紙幣大量発行競争?が盛んになっている・・これは結果的に信用供与拡大競争をしていることになります。
信用拡大の後押しをして応援する代わりに、金融関係者の暴走を防ぐために規制強化しようと言うことで金融資本に対する批判が高まっている世論と折り合いを付けるつもりでしょう。
この辺は急速に高まって来たタックスヘイブン批判も(ガス抜きを図っている印象がある点では)根っこは同じです。紙幣大量発行・・マイナス金利まで進んで来るとパラドックス的ですが、逆に金融業者・・金融政策の機能低下が進みます。
どこかで書いたことがありますが、紙幣が足りないから金利を払ってでも借りるのであって膨大な貨幣発行し、必要以上に紙幣が供給されればその他商品同様にダブつけばリース料が下がるのは当然です。
紙幣も商品である以上・・供給過剰になれば、金利・リース料が下がり最後は金利を払ってまで借りる必要がなくなる・・日銀が決めなくとも実勢相場が下がる(日銀は現状追認機能に下がる)のは、当然の原理です。
アシカのショーでも京都大学の類人猿の研究でも餌(果物)を与えながら知能の動きを探り、訓練していますが餌をふんだんにおいて置けば餌で釣るテストや訓練は不可能になります。
借りたい人が少ないから2%から1%に下げても借り手が少ないので、更にゼロ→マイナスに下げても量的緩和しても理屈は同じです。
いろんな商売を見ていると分りますが、(技術・品質・提案力の進歩が止まって)価格(値下げ)競争に入るとその業界は終わりです。
資金余裕のある企業は、・・供給不足している国相手ならば投資出来るが、供給過剰の国内で設備増強することはありません。
まして金利が安いくらいで何故国内投資するの?と海外投資に資金が逃げて行くばかりです。
デイズニーランドの例で言えば、いくらお金があっても勝ち目もないのに競合するレジャーランドを直ぐ隣接地に作る人・企業はいないでしょう。
採算取れるからこそ、事業を買収したりするものであって、企業内にいくら蓄積があっても儲けられそうもない企業の株を買わないのと同じです。
腹一杯になった人に食事を勧めても半値でも要らない→9割引きでも要らない→更に満腹になるとこれ以上はお金をもらっても要らないと言います。
もっと要求すると棄て賃(マイナス金利)をもらわないと受け取れないと言うでしょう。
ゲップ状態(有り余っている)だからこそ、マイナス金利になっているのですから金利をいくら下げても「需要がなければ需要は増えません」
金利が需要を作るのではなく、需要があって供給が足りないときに金利が安ければ借りてでも設備投資するのですが、需要がない・・供給過剰で設備廃棄しなければならないときに、金を持っていても国内投資する企業はありません。
経済専門家は、過去の供給不足・資金不足時に有効だった政策を今でも有効であると誤解しているのです。
この辺は紙幣大量発行とインフレ可能性のテーマで、モノ不足のときに紙幣を2倍発行すれば、物価も2倍になりますが、モノが余っているときに紙幣が2倍供給されても2倍の量を買わない・・紙幣(預貯金)が滞留するだけであると書いたことがあります。
何千万の月収のある人あるいは億単位の預金のある人が、あるトキ月収が10万円増えたからと行ってその分そっくりどころかその何%も消費を増やすことはありません。
豊かな社会に於いては金利の上下や紙幣発行量の重要性はとっくに終わっているのに、未だに国を挙げて金利の上下や量的緩和のレベルを議論していること自体が滑稽なことです。

金融支配→法の支配の重要性2

明治維新当時の治外法権制度は西欧が自分のルールを押し通すための条約であり、その延長で砲艦外交が花開いたのですが、(アヘン戦争もイギリスの論理で言えば商品を(欽差大臣林則徐が)勝手に没収・廃棄するのは、違法と言う論理・・アヘンを売る事自体が許されないと言う大きな倫理違反があるので今ではイギリスの方が悪いとなっています・・これは戦後ナセル中佐によるスエズ運河接収・国有化に対して(有名なレセップスが民間資金で投資で作ったものですから、正当な保障を求めて)英仏が軍を動かしたのと論理が同じです)歴史的に貸金や投資中心になると武力ではうまく行きません。
このように強制力に頼るのは弱いので、内心道徳律の育成・・如何にルールを守る持ちにさせるかが関心の中心になります。
商取引の場合は継続性が基本ですので、一度でもルール違反すると次の商売(仕入れ先が限定されている上に支払停止すると同業組合一斉に納品拒否する仕組み・・これの一般化が手形不渡り→各種取引停止制度)が出来ない・・自分自身が業界から抹殺されてしまうリスク(自分のみならず従業員全が路頭に迷う)があるので余程のことがないとルール違反で来ない仕組みが出来上がっています・・法の世界では商慣習が重視されている所以です。
権力による強制=法がなくとも商人は商道徳・(慣習法・・デファクトスタンダード)ルールを必死に守りますので強制的「法」の必要性が乏しかったのです。
戦後相次いだ独立国による国有化宣言は、民間商取引と違ってすぐに国単位での取引停止にはなりませんが、投資危険国として警戒されるので長期的にはその国の経済活動が停滞して行きます。
アフリカのやソ連の長期停滞の原因は、独立や革命と同時に旧政権時の債務支払拒否や旧宗主国出身技術者の追放あるいは重要施設接収のトガメであると言われています。
ソ連解体後ロシアがソ連成立時に支払拒否していた旧帝政ロシアの債務支払を始めたのは、こうした長期的マイナス(取引すると危ないと言う評判)除去にあります。
消費者がお金を借りたり買ったりする当事者に浮上すると同じ人から1買い切りの取引が多いのでもう一度借りなくとも踏み倒していることを知らない別の人から借りることが可能です。
1万円札は誰から借りても同じ・・この辺が個性のある商品仕入れとの違いですが、(コンピューター化の進展で個人も信用情報が整備されましたがそれまでは)貸す側にとって借りに来た人がどこかで借金を踏み倒しているかの情報がありませんから借りる方や分割払い約束する人の内心のモラルだけが頼りなってきます。
江戸時代に三井高利が始めた「現金掛け値なし」の商法は、ムラ社会で知り合いばかりの時代から大都会化して来て(匿名の)消費者の信用情報がない時代に消費者層を広げる近代的方法でした。
現代では遠隔地の取引や現金を持たない階層・・最貧国まで対象にする時代ですから、現金取引に限定すると顧客が限定されてしまうので、再び信用重視になってきます。
こうなって来ると相手の資産状況不明ですから、相手のルールを守る気持ち・・法教育・・約束・ルールを守る可シと言う強制力の整備や道徳教育やその精神の浸透が重要になってきます。
道徳教育だけでは限界があるので、これを意図的に破る悪質な場合には刑事処罰する必要性も出て来ます。
他所で借りていて既に返せなくなっていて、返したり払う当てもないのにこれを隠して借りたり商品を買ったり契約して財産上の利益を得た場合(以下に紹介する刑法の2項サギの)場合、詐欺罪で処罰する法律が整備されてきましたし、守らせるための民事法や民事執行法も年々着実に整備が進んでいます。
武力・腕力支配がいけないとなれば、民意に裏打ちされた「法による支配]」強制しかないのは当然です。
古代からの10戒では財産犯に関して盗みを禁じるだけですが、近代法では詐欺(これも人を騙すだけでは罪にならず財物騙取・財産上の損害を与えた場合だけ)罪が重視されるようになった所以です。
刑法
(詐欺)
第二百四十六条  人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
国際関係も世界支配の源泉が武力から金融力に変わって来ると武力による強迫から道徳・・法を守る意識の植え付けが必須になります。
欧米が何かと言えば、(自分たちの作った)法の支配を強調するようになった所以です。
韓国の場合まだ近代法意識が根付かない・・待ってるだけでは貸金を返してくれないので過酷な取り立てが横行する社会になっているのか?・・借金地獄解消のために時々借金棒引き令を出したり、若い女性が海外売春に出掛けているのが知られています。
中国ではまだ政府自体が公式に法の支配を行なっていない・法的手続外で共産党批判者を拘束したり、政府発表自体虚偽に満ちている社会ですから、国民に法を守れと言うのは背理です・・国民意識がその程度ですから対外的に窃盗団や知財剽窃やサイバーテロやり放題ですし、その意識のママ海外旅行に行くとマナーの悪さ(結局はルール違反・分らない)が評判になります。
政府は私兵(人民軍は国軍ではなく共産党の私兵です)を擁している強みで、国内ルールに従わず違法なことをしているだけではなくこの延長で海外でも臆面もなく行なっているのが、領海侵犯(小笠原でのサンゴ乱獲など)などですが、これは自発的なルール遵守意識が育っていないことの現れです。
国際司法裁判所の判決が出てもそんなのは関係がないと臆面もなく言い切るのは、中国政府自身が国内同様に・・国際社会でもルールを守らないと言う宣言です。
国際ルールを守らない民族と取引するとカネや商品を受け取るまで安心できません。
資本自由化に応じないという意味は、中国国内に投資しても回収金を簡単に日本への送金をさせないことがあるという意味です。
中国では法の支配がないとすれば、リスクに応じた投資抑制しかありません。
先進国内では、過酷な取り立てが出来ないし武力で取り立てるのでは採算が合わないので、借りたものは返す・・法を守れと言う法教育が必須です。
対日戦争の結果植民地を失って結果的に旧植民地人を武力・警察力で支配出来なくなった欧米は、法を守れと言いだしたのですが、そうなると人種によって法適用が違うと矛盾しますので、植民地支配に対する反抗者を監獄島などに幽閉していたのをすっかり忘れたフリをして?方向転換して西欧諸国がイキナリ法の下の平等..人道主義を言い出したのです。
自分がクジラを好きなだけ捕っておいて、不都合になるとイキナリ捕鯨反対に切り替えるのと同じです。

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