新興国市場(韓国ケミカル業界の現状)

韓国を含めた新興国市場(別名エマージング市場と言われる所以です)は成長が急激な代わりに政変を含めて危機も急激(ナセルによるスエズ運河接収など権力者の決断に左右されやすい傾向があり、他方大国に対して威勢の良いことを言うものの逆に大国の金融政策その他(米中対決など)の影響が増幅されて波及しやすい)ので、外資にとっては如何に速やかに進出撤退できるかが重要です。
結果的に韓国資本市場が「足の速い資金」流入が中心となっているとしても、新興国市場の特性であり止むを得ないところです。
韓国への資金流入が直接投資の場合定着性が高いのですが、足の早い資金中心の場合外貨準備が増えたと言ってもその分外資流入比率・リスク資金率が上がっただけの場合があります。
結局直接投資が増えているのか減ってるのかが韓国将来性を投資家どう見ているかの指標となります。
新興国市場とは新興→リスクも大きいが成長も激しいのが特徴です。
https://kotobank.jp/word/%E6%96%B0%E8%88%88%E5%9B%BD%E5%B8%82%E5%A0%B4-183672の用語解説は以下の通りです。

経済発展の初期にあって成長率が高いアジア、東欧、ラテン・アメリカなどの国々の証券市場を指す。代表的なものは、BRICsと呼ばれるブラジル、ロシア、インド、中国の市場。いずれも高い経済成長率を誇り、世界中から投資資金を集めた。しかし、規模や制度面などから見るとまだ全体的に未熟な段階の市場が多い。
また国内に十分な投資家層が育っておらず、規模が比較的小さい市場も多い。このため、海外からの資金の流入や流出で大きく株価が変動するリスクがあり、先進国の経済動向や金融情勢に影響を受けやすいという脆弱(ぜいじゃく)さが指摘されている。
(熊井泰明 証券アナリスト / 2007年)

韓国市場に関する約10年前の記事ですが
https://www.iima.or.jp/docs/gaibukikou/gk2009_07.pdfによれば以下の通りです。

資本市場月刊

アジア株式市場のいま
財団法人 国際通貨研究所開発経済調査部主任研究員糠谷 英輝
・・・月刊資本市場 2010.3(No. 295)66

存在感の大きな外国人投資家
投資家別の株式保有シェアを見ると、個人、事業会社、外国人がそれぞれおよそ30%を占めている(図表10)。また投資家別の株式売買シェアを見ると、ここでも個人が49%と圧倒的なシェアを持ち(注6)、これに外国人がシェア27%で続いている(図表11)。いずれにしても機関投資家の存在感は極めて薄く、株式市場は個人と外国人に大きく依存していると言えよう(注7)。■3.韓国株式市場の特徴韓国株式市場の特徴としては、外国人投資家の存在感が極めて大きく、国内機関投資家の育成が遅れていること、店頭市場であるKOSDAQが国際的にも大きな市場となっていること、ELW(Equity Linked Warrants)・ETF市場が急速に拡大していることなどが指摘できよう。
〈コラム〉「韓国は先進国か?」
・・・モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)の指数では、韓国は新興国(Emerging)とされている。MSCI指数における韓国の先進国への格上げは期待されているが、未だに実現には至っていない。MSCIは、韓国市場の障害として、通貨ウォンの交換性がないこと、外国人投資家がOTC取引を行えないことの2点を指摘している。

どこか別の説明では韓国はこの定義中、メキシコやインド等のネクスト11に入っているようです。
ここで個別銘柄・ハンファケミカルの企業情報を見ておきます。
https://korea-keizai.com/hanwha-chemical/

韓国経済・COM
ハンファケミカル【企業基本情報】
2019/01/07

図表省略しますが18年を15年に比べれば良いですが16、17年に比べると18年はかなりの売り上げと利益減です。
19年に入るとハンファに限らず化学業界全部が約半減状態らしいです。
https://korea-keizai.com/20190408petro-chemtech/

【業績速報】ハンファケミカル営業利益半分
2019/08/07
第2四半期の営業利益976億ウォン、 前年比47.1%減少
基礎素材の不振、太陽光の実績も期待に及ばず

1Qの当期純利益 LG化学53%↓、ロッテケミカル43%↓、ハンファケミカル56%↓
国内の石油化学業界が、市況がなかなか回復せず、第1四半期の業績が低迷する見通しだ。証券会社各社はLG化学、ロッテケミカル、ハンファケミカルなど石油化学企業の第1四半期の営業利益を前年比最大50%まで減少するだろうと見込んだ。

上記業界全体の業績推移を見るとハンファが日本での起債に失敗したのは、日韓関係悪化にのみ帰する訳にはいかないでしょう。
そうとすると米国での起債計画やり直しは、よほど金利を高くしないとまた失敗してしまうリスクが高まります。
国外資金調達に失敗して国内緊急融資に頼るとしても、業界全体が利益半減状態では、特定企業救済では済まない・業界全体で外債の借り換え債発行がスムースにいかない・救済問題になりかねないので韓国全体の金融能力にかかってくるリスク→為替相場への波及も視野に入れる必要が出てきます。
米中対決がどのようになるかによっても新興国市場に波乱が起きますが、韓国の場合最早新興国を卒業しつつあるのではないか?
停滞国へ逆進が始まっているかの疑問で書いています。

中韓外債発行の前途(米中対立と香港市場の機能麻痺)1

過剰債務の雄である中韓の動向に話題を戻します。
ファーウエイの国内債発行問題に戻します。
米国の厳しい批判・締め出し政策によって、ファーウエイが市場を選べる環境でなくなったので(香港でさえも騒動で危ういと思ったのか?)仕方なしに国内発行になったのではないでしょうか。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49731210S9A910C1FFE000/

ファーウェイ、中国本土初の社債を900億円発行
ファーウェイはこれまでもドル建てや元建ての社債を発行しており、現時点でドル建てで45億ドル(約4900億円)の残高がある。今回の社債発行について同社は「中国本土の債券市場を開拓し、資金調達の手段を最適化する」と狙いを示したうえで「経営は健全で、キャッシュフローには十分な余裕がある」としている。

ファーウエイが社債を国内発行するためにわざわざ「経営は健全で、キャッシュフローには十分な余裕がある」と言い訳すること自体異常でしょう。
香港騒動は、中国政府が国内専制支配の成功?浸透に味をしめて?香港にもその支配を強めようとしたことに危機感を抱いた市民の反発を受けて始まったものですが、中国政府の意を受けて動く香港政府の強硬姿勢がさらなる反発を呼び相互に過激化する一方です。
中国の急激な発展は膨大な資本導入があってのことですが、後進国として本土への外資導入には強固な防壁っを築き規制だらけ・・金融自由化ととは程遠い状態でしたが、一種の金融特区機能を果たす香港自由市場のおかげで香港で自由な資金取り入れを行い、それを香港資本に薄めて本土に資本移動させるという巧妙な手段を用いてきました。
中国企業が先進技術を直接導入しても直ぐに使いこなせないので外資工場設立させて中国人の現場作業や管理職の職務経験を積ませるのと同じことを本土の金融規制を残しながらうまくやってきたのです。
国有企業(鉄道系が有名です)中心に海外展開が進むようになりこれに随伴するようにファーウエイなど軍事色の強い企業も民間として、海外市場で積極的に資金を導入できるようになりました。
しかし外資が直接100資本の企業中国に進出できない(中国企業との合弁限定しかも共産党員常駐制度付き)企業を買収できるのではなく、砂粒のような個々人からの物言わぬ資本導入だけいいとこ取りする関係です。
米中対決が始まって海外市場で「いいとこ取り」の米国での起債が危ぶまれるようになって・・頼みの綱の外資受け入れ口として利用してきた香港の重要性が増してきた矢先でした。
今回7月1日以来始まって以来、エスカレートする一方の香港騒動で香港市民の中国政府に対する反感が強まる一方ですから、香港市場を利用するだけしたい本土企業の資本取り入れ装置としての社債上場が危なくなったのでやむなく中国での起債に踏み切ったように見られます。
中国にとって香港は資金導入の貴重な窓口ですから、いわば金の卵を産む鶏を絞め殺すようなことをしているイメージです。
米中対決月下の最中・・香港市場の重要性がいや増す時にあえて香港市民を締め上げる条例制定に動いたのか?政治センスが不思議ですので、ネット上では習近平の権力基盤が弱くて強硬派に押されてやむなく取っている行動だと言う、うがった見方が出ています。
対日強硬活動が起きるといつも政権中枢の統制が効かない・・末端の暴走でないかという対中融和的意見が流布される1種ですが、私そうは思っていません。
専制支配的発想・・韓国でも同じですが、ある主張を始めると、トコトンやったり最大限の罵倒や侮辱的言辞を吐き出し続けないと我慢できない国民性では共通です。
政争に勝てば相手を讃えるのではなく、敗軍の将を最大限侮辱し辱め貶める残虐行為の歴史の数々に気持ちが悪くなるのが日本人です。
後宮の争いも同様で、皇帝の寵を得た方が、それまでの寵姫を豚と称して手足を切り取り豚と称して厠につないで上から糞尿をかけるなどです。
韓国の対日侮辱行為も、日本が黙っていれば治るわけではあなく際限なく繰り出してくる状態で、これでは付き合いきれないとしてついに日本は縁を切る方向に舵を切りました。
日韓修復は韓国で反日教育や根拠ない日本批判(いうより陰口)が節度なく続く限り不可能でしょう。
民主化した?はずの韓国では今でも感情に任せて国民が走ってしまう状態に驚きますが、制度上なんの抑制システムもない専制支配体制のままですと、市民の反感があれば逆に強者の立場で「生意気だぶっ潰せ!」という方向の政治感覚しか働かないのでしょう。
香港の場合、純粋な中国国内問題ではなく1国2制度が国際条約によって縛られている関係ですので、資本取り入れ口の機能麻痺の怖さの他にこの弱みもあって中国は香港周辺まで軍を集結させているものの、その先に一歩踏み出せないままです。
この均衡がいつ破られるかの攻防・緊張が約3ヶ月も続いています。
この状態でファーウエイが香港での起債発行する勇気がなく国内起債に踏み切るしかなくなったことが中国国内経済への大きな重石になってきているでしょう。
ファーウエイでさえ香港上場が出来ないなら他企業の運命は推して知るべしとなりますので、香港の平和裡の収拾が中国 政府にとって喫緊の目標です。
軍で蹂躙すれば天安門事件後の国際孤立では済まないだけでなく香港の自由市場認定が国際金融システムから否定され香港の金融市場としての生命が終わります。
そうなれば中国が国際資本市場から資金導入の方法が閉ざされることになります。
今米国を敵に回し資金締め上げにあっている中国がそのリスクを冒し、難局突破の能力があるのでしょうか?
この辺りの文章はもともとファーウエイの本国起債のニュース直後に書いておいたものですが、その後日経新聞で中国系企業の米国株式や社債市場締め出しの動きが小出しに出て来るようになりました。

フェイクニュースと思想の自由市場論6

中国に世界支配されたくない日本人としては、今のところアメリカによる中国叩きの激化を喝采している雰囲気が多いようですが、これまで世界支配者であったアメリカ圧倒的優位を前提にした「思想の自由市場論」にのっかって、情報操作してきたのを中国もロシアも同じことをアメリカにしたことを怒っていることになります。
情報操作・・フェイク報道の破綻を見てきましたが、17年12月19日頃から23日頃まで紹介した「法曹実務にとっての近代立憲主義」という本でも思想自由市場論とヘイトスピーチ論の関係が論じられています。
同書59pからの論文では、思想の自由市場論を守るためにか?安易なヘイトスピーチ禁止論を取らない立場を堅持していますが・・。
2018年1月にトランプ氏がCNNなどを対象にしたフェイクニュース大賞を発表したことをFebruary 13, 2018,「表現の自由と思想の自由市場論2」 に引用紹介しましたが、トランプ政権と大手メデイアとのフェイク発信に対する非難報道が加速して来ました。
これに対する日本メデイアの報道は政権による報道圧迫として批判一色の印象ですが、以下の記述もあります。
https://news.infoseek.co.jp/article/japanindepth_38145/

日本にもフェイクニュース大賞を
Japan In-depth / 2018年1月22日 18時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
日本の主要新聞はフェイクニュース自体認めず、トランプ氏によるメディアの抑圧であるかのように扱っている。
・メディアの正誤のチェックは重要。日本でもフェイクニュース大賞を設けたらどうか。
主要メディアの報道や論評のなかで、最もひどい虚偽や誤断、さらには捏造とみなせる実例を指摘して、順位をつけ、「賞」の対象にするというこの行為は一見、ふざけた冗談のようにみえても、ちょっと考えると、実はきわめて重要な意味があることがわかる。
日ごろアメリカでも日本でも、新聞やテレビ、雑誌などニュースメディアが強大な影響力を発揮するなかで、虚報や誤報は明らかに多数、存在する。だがその誤りを制度的に認定し、訂正するメカニズムがないからだ。つまり報道される側の一般国民や組織、団体にとってメディアのミスにきちんと反撃する方法が訴訟という極端な方法以外にはないのである。メディア側のたれ流しともいえるのだ。
こんな背景のなかでは、報道され、論評される側がメディアのミスを定期的、制度的に正そうとすることは民主主義の基本ルールにも合致するだろう。それでなくてもメディアのおごりが目につく今日このごろである。
主要メディアの側はこのフェイクニュース大賞に対して、「トランプ大統領が自分を批判するメディアに対してただ攻撃しているだけだ」と、なお傲慢な反応をみせる。だが現実には同大統領側が指摘した報道や評論類はみなまちがっていたことが証明されているのだ。その点に触れず、ただ批判すること自体がけしからんと開き直るメディア側の態度はまさに傲慢と評するほかない。

なかなかの卓見です。
今回表面化しているトランプとクリントン候補のどちらがより多くフェイクニュースに関与したかで終わらず、中期的にはネットに限らず放送全般へのフェイク・変更の有無→その後の結果との合致率のチェック報道・チェック論・健全な思想競争の土俵作りが始まると見た方がいいでしょう。
アメリカ(日本のメデイア・思想界も同様)は自分が世界の言論市場を完全支配している時には「思想の自由市場に委ねるべき」などといってきたのですが、アラブがアルジャジーラの放送開始で自己発信力を入手し一方でネット発信が普及して発信者が草の根化してくるとスパイ等を利用したメデイア支配に無理が出てきました。
アメリカは自分のコントロールできている間は、「思想の自由市場を守れ」といってきたのに、アメリカのいうことを聞かなくなると取り締まりの必要を言い出したイメージですから自分勝手な印象です。
アルジャジーラに対するコントロールが効かないことに対するアメリカとその応援を受けるサウジの鬱憤が以下の事件を引き起こしました。
サウジのカタールに対する昨年5月の断交・包囲網作りは、アメリカ得意の思想の自由市場論ではどうにもならなくなって、(アメリカが背後で?)アルジャジーラの全面圧迫に動き出したことがわかります。
アルジャジーラに対するアメリカの露骨な圧迫があったでしょうが、アラブ社会の支持でしぶとく生き残り、いつの間にかサウジ王家の存続を脅かすまで育って来たようです。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/07/1-44.php

サウジアラビアなどによるカタール断交から1カ月以上が経過した。受け入れ困難な13項目の要求を前に、カタールは国家主権を盾に拒否している。衛星テレビ局アルジャジーラの閉鎖など、大半の要求は主権に関わる問題で受け入れ難く、長期化は必至の情勢だ。サウジ側は、カタールをバーレーンのような属国的な存在にすることで独自の外交政策の骨抜きを狙う。最終的にタミム首長体制の転換に至る可能性があるとの見方も浮上している。

https://www.newsweekjapan.jp/hosaka/2017/06/5_2.php

もともとサウジアラビアのメディアが英BBCのアラビア語放送を引き継ぐかたちでアラビア語のニュース・チャンネルをつくろうとしていたところ、カタルが横から入り込んで、ジャジーラを設立した経緯があり、しかも、そのジャジーラが周辺国にとって都合の悪い放送をすることで人気を得たため、サウジのみならず、同盟国のGCC(湾岸協力会議)諸国まで激怒させる結果となっていた(ちなみにアラビーヤはサウジがジャジーラに対抗するためにつくったニュース専門チャンネル)。
よくジャジーラを自由なメディアという人がいるが、もちろんそんなはずはなく、局員のなかには特定の政治的イデオロギー(有体にいえば、ムスリム同胞団)をもつものが少なくないし、何よりカタル現体制にとって都合の悪いことは一切いわない。

アメリカがメデイア支配によって言論界を支配しているときには、アメリカ発の「思想の自由市場論」のまやかしで、自国有利な情報だけ一方的に流す制度保障をしていたことになります。
これがネットの発達でマスメデイア支配だけでは統制支配できなくなった・大規模資本がなくとも個人が発信できるようになると、これをロシアや中国の影響を受け始めたことに対する反撃の必要性に目覚めたことが背景にあるのでしょう。
これまでは他国思想侵略するばかりだったのが、自分が攻撃支配される側に回ってしまったということです。
この辺は自分が核武装するのはいいが、北朝鮮が核武装することにイキリたっているのと構図が同じです。
日本にとっては中国や北朝鮮にのさばって欲しくない人がおおいでしょうが、それとは別にアメリカの自分勝手さをここでは書いています。

フェイクニュースと思想の自由市場論5

モンゴルが急速に支配地を増やしたのも同じ原理で、交換すべき産物のないモンゴル族は接触した異民族と交易交渉出来ないので、略奪しかない・武力勝負・・勝つか負けるか・・隷属させるしかなかったことによります。
蒙古襲来も世界帝国になると交換手段の金貨が必須・・日本の金や銀が欲しければ、交易交渉すれば良かったのですがそのノウハウがなかったので、海戦の経験もないのに武力勝負に出て失敗したことになります。
清朝皇帝がイギリスの使節に対して何も欲しい物はないと威張ったことが有名ですが、実際にイギリスが交換すべき特産品が何もない点は今も同じです。
イギリスは仕方なしにアヘンを売り込むしか出来なかったのは、むべなるかなと言うところです。
アヘンを売れなくなったので、今では金融でかすめ取ろうとするのが金融支配の問題です。
金融は血流同様に重要な機能ですが、それと関係者がどん欲過ぎて良いかは別問題です。
必須と言えば、飲料水も電機もガスも物流も電池も医師・法律家も政治家も清掃業も不動産業も皆重要です。
アメリカのペンス副大統領の10月4日の演説以降、中国のアメリカに対する情報操作スパイの浸透工作→「侵略」に対する関心が高まってきました。
February 15, 2018「思想の自由市場論4(中国の挑戦)」の続きです。
フェイクニュースが議論の表面に出てきたのは、トランプ氏の方ではメデイア支配に対する不満がその動機と思われますが、アメリカ全体で言えばアメリカによる思想の自由市場支配がネットの発達で変わりつつあることへの焦りが大統領選挙戦で表面化した結果と思われます。
トランプ氏と支配メデイアが攻防を繰り返しているうちに、実は真の敵はアメリカによる「世界情報支配の終わりが始まっていること」に双方が気がついて、アメリカあげての中国非難の大合唱になったと見るべきでしょう。
中東・・アルジャジーラの放送開始以来・・中東アラブ世界では徐々に英米系メデイアの支配力が落ちてきていた・・逆転してきた結果に対する焦りもあるでしょう。
世界各政府に対するアメリカの影響力の強さ→中央政府による電波割り当てによるアメリカの間接支配の及ばないロシア、中国(孔子学園による中華思想浸透への反発が米国でも強まっています)によって、ハッキング、サイバーテロその他の方法による思想浸透の逆襲を受けるようになっていました。
ついに我慢できなくなっていたところに国際的ネット網利用によるゲリラ的思想発信によって(それまでロシアその他でアメリカの「気に入らない政権があるとすかさずスキャンダルを撒き散らして反政府運動を煽ってきたアメリカが)逆に国内政治に介入されるに至りこれに対する規制必要論が盛り上がって来たと見るべきでしょう。
情報戦で圧倒的に優位な時にはやりたい放題でしたが、負け始めていることの自白ではないでしょうか?
この数週間では、中国による大学やメデイア企業その他隅々に至るまで中国の浸透工作に対する批判がペンス副大統領によって講演されて以来、規制どころか対中全面戦争すら辞さない強硬論で、世界中の話題になりました。
いわば全面戦争の宣告みたいな公開演説ですが、今までのように鷹揚に構えていらなくなった・・水面下でやり返せな良い状況でなくなった・・そこまで追い詰めれられているということでしょう。
情報機関で言えば、相手のスパイ批判しなくともスパイ同士の戦いで勝っていれば、相手のスパイを捕捉して闇から闇で処理できるので強い方は黙って処理すればたります。
「スパイを送り込むとはけしからん」という必要がありません。
映画で言えば、侵入してきた忍者を自分の忍者が撃退すればいいことで、自分の忍者が負けて相手忍者の屋敷への侵入を防げなかった結果、相手忍者が自分の屋敷に侵入したことを公式非難するのは忍者同士の戦いで勝てないことを表明しています。
この頃、ロシアによる西欧での傍若無人な「自国もと諜報機関員の殺傷や、中国政府による中国系アメリカ人のアメリカやオーストラリア国内での拉致誘拐の頻発・各種情報窃取のカラクリなど批判は、自分の方はやり返せないことの暴露でもあります。
ただし、要人警護の場合も不意打ち襲撃に備える方が不利ですが、双方暗殺拉致の打ち合いの場合、アメリカや先進国にはそういう無茶をやる仕組みがありませんし、知財盗み合いで言えば盗まれるべき先端知財や技術のない後進国の方が有利です。
「金持ち喧嘩せず」と言いますが、こういう泥仕合になると生活水準の低い方が強みを発揮します。
数年前に、ロシア空軍機をトルコが撃ち落としたときにトルコとロシアの禁輸の脅しあいでは生活水準の高い方が同じ不便に対する耐性が弱いことをちょっとコラムで書きかけてそのままになっている原稿があります。
以下は、10月4日ペンス副大統領の演説全文の紹介記事ですので関心のある方はお読みください。
https://www.newshonyaku.com/usa/20181009
・・・・しかし米国国民が知っておくべきことがあり、そのことをお伝えするために私はここに来ました。それは、中国政府が、政治、経済、軍事的手段とプロパガンダを用いて、米国に対する影響力を高め、米国国内での利益を得るために政府全体にアプローチをかけているということです。
中国はまた、かつてないほど積極的にこの権力を利用して影響力を及ぼし、我が国の国内政策や政治活動に干渉しています。
以下いろんなことを言っていますが、省略します。
これに便乗したのか?中国製半導体チップにチップの入り口を仕組んでいるというニュースも駆け巡りました。
これまでは、(ネット言論は別でしたが・・)トランプ氏と対立するメデイア界の報道姿勢からトランプ氏がアメリカ国内で孤立しているかのような印象操作されてきましたが、ペンス副大統領の演説以降、アメリカ国内では共和党だけではなく民主党支持者でも対中強硬論が多くなっている・・対中強硬論は国民的主張になっているという意見が増えてきました。
「アメリカがやる気になったのでもう中国は終わりだ」という期待論がネットで多いですが、負けすぎていて手が出ないのであれば、貿易等の不正や知財強制移転を今後やりません」という中国との合意程度・・抽象論で終わりで実効性のある対策をアメリカには打つ手がないことになります。
スパイをやめろといって相手が同意してもこちらに防諜能力がなければ、相手の違反阻止する方法がないことになります。
北朝鮮の核合意同様で口先約束だけで矛を収めるしかないとすれば、相手は守る気持ちにならないでしょう。

ヘイトスピーチ規制4と自由市場論

「中身のない・・耳を疑うようなことばが次々と出てくる」という意見がヘイト規制必要論の基礎になっているようですが、もともと野党やメデイアが内容のないスローガンを多用してきたのを聞き慣れていて、そう言うものかと自然に身について真似しているだけです。
民主党の「日本死ね」も在特会の「耳を疑う」発言もどちらも国民支持を求めてやっていることでしょうから、「日本シネ」が良くて「韓国死ね」がなぜ悪いかをメデイアが決めるのではなく国民がどちらに嫌悪感を持つかの言論の自由市場で決める問題でしょう。
どちらも意味のない言語での決めつけですから、意味のない意見を受け付けない民度レベルに引き上げて行くのが正道でしょう。
そういう根拠のない意見に踊ろされる国民かどうかによることですから、民度の向上努力をするのが先決であって、これをしないで安直な即効的効果を求めて法で禁止・・強制すると色んな問題が起きてきます。
道徳律というものは、法で強制しない・・文化力で解決しているうちが「花」でしょう。
いきなり法規制するのではなく、直接的攻撃言語を使うのは「人として問題がある」「下品だ」という道徳・・言語マナーの向上運動教育などするべきことが色々あると思われます。
私の記憶によるので時期がはっきりしませんが、いわゆる「街宣右翼」と称する組織が約40年間ほど「どぎつい言語でかつ恫喝するかのような恐ろしい声音」で街頭を走り回っていましたが、規制しなくともそんな運動を誰も支持しなかったので、10年ほど前からほとんど見かけなくなりました。
品がないか内容がないかは国民が選ぶべきことでしょう。
ロバートキャンベル氏の意見は在特会等の主張に対する批評として意味があるとしても、それを理由にして発言を規制しなくてはならないものとは思えません。
彼は規制根拠を述べたのではなく、単に在日批判演説の特徴を述べただけだと思いますが、「内容のない意見や耳を疑う意見」は全て「規制しなければならない」とすれば変な社会になります。
内容のないことしか言わなければ市民に対するに訴求力がなくなり、自然消滅して行きますからこれを規制する必要がない.規制理由にはなりません。
これこそが思想表現の自由市場論だったのではないでしょうか?
漫才やコントも吉本興行も、あるいは選挙時の代議士の街頭演説も内容がないと言えばないでしょうが、何を求めて聞くかは聴衆の自由です。
シンガポールでは20年以上前からタバコ吸い殻のポイ捨て処罰法を施行してニュースになっていましたが、自発的道徳心の向上を待てない社会では何でも為政者による強制が必要(後進国では独裁が効率良い所以)でしょうが、自発的道徳心の高い民度の高い社会では強制から入るのは愚策です
左翼系は反権力を標榜していますが、一方でなんでも自発的努力や市場淘汰に委ねずに規制強化・強制することが大好きです。
日本でもこの10年くらいで地方自治体レベルでポイ捨て禁止条例等が制定されるようになっています。
今回の禁煙規制でも自民党は徐々にしていこうとしますし、メデイアはこれでは骨抜きだと騒ぎます。
最低賃金も好景気を演出して自動的に賃金が上がるのを待つよりは、野党は引き上げ要求(好景気による自律的賃上げを待つよりは強制的引きあげ要求)し、働き方改革でも「自由化反対」一色です。
例えば、最低賃金引き上げを要求する各地弁護士会の声明がネットで出ていますし、労働形態のフレキシブル化を目指す働き方改革反対も同様です。
革新系が何故規制強化が好きなのか(もしかして国家による計画経済・思想・文芸何でも統制してきたソ連型政治を理想化するDNAによるのか?)不明ですが、何かあるつど規制不足していた→「もっと規制強化しろ」と政府批判する傾向があります。
話し合いや社会の自然な流れを利用しないで、なんでも規制強化で促成効果を狙うのは簡単なようでいて結果的に、社会の亀裂を深める低レベルな方法です。
何でも法で強制する風潮・特に政治意見対立関係について根気よく話し合わないで表現方法について法で強制するようになると、処罰規制される方に不満が溜まり、社会がギスギスし、長期的に相互不信社会に変容して行き、社会の安定感が壊れていきます。
一定の反応者・支持者がいる段階でヘイトだからと、強制的に発信手段を遮断されると支持者に不満が残りますが、強制手段によらずに道徳律が行き渡り粗野な言動に国民の多くが眉をひそめて迷惑に感じるようになれば、自然に粗野な言動が減っていきます。
民意が受け入れてくれない以上は、彼らは自己の発言がうけいれられるように紳士的発信になっていくでしょうし、自発的に修正を試みるので恨みが内向しません。
日本で過激派学生運動が下火になっていったのは、規制法が制定されたからではなく、国民が過激主張に賛同しなかった現実・・過激派支持がなくなったので、勢いを失ったのです。
内容のない演説ばかりであれば、放っておけば次第に過激発言支持が下がっていくべきなのに規制が先走りすると、「不公平ではないか」と感じる支持層の参入+感情論が勢いを持ち、却って過激派支持が長引くようになりカネません。
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3598/1.html引用の続きです。

龍谷大学教授 キム・サンギュンさん
「彼らのやってることは非常に突拍子もないと思いますけども、その背景にサイレントマジョリティーがいると思いましたね。
自分たちの生存権が侵害される。
もしかしたら何か大変なことに、被害遭うんちゃうかという、そういうふうな危機感なり不安感って非常に強いですね。」

上記記事を見ると在日批判論に対する反対派の意見でも「サイレントマジョリテイ」の支持が背景にあることも書かれていますが、支持者が多そう→「市場競争で在日擁護派が負けている」から「強権で発言を封じよう」という方向になって来たかのような記述です。
在日批判はメデイアのようにスマートな表現訓練を受けていないから、国民不満の表現力が足りずに過激表現になっているようにも見えます。
政治は溜まっている国民不満をすくい取る努力をすべきであって、表現力不足・稚拙さを奇貨として発言の場を取り上げるのは、不満を内向させ日本社会を亀裂社会に変容させるマイナス効果を生む可能性があります。
20日に書いたように「弱いものいじめ」は卑怯ですが、それは第一次的に表現のルール範囲を守るように道徳律で自制を促し、京都の朝鮮人学校への攻撃のように表現の自由の限界を超えれば、それぞれの法による制裁を課せば良いことです。
朝鮮人学校事件以来、さらに攻撃が激化している場合には、既存法の運用では間に合わない・特定表現に絞った新法制定の必要となりますが、私にはよくわかりませんが、その後朝鮮人学校事件以上の激しい事件は起きていないように思いますが、規制に向けた法制定が何故必要になったかの疑問です。
自宅の周りを各人が掃除して綺麗な街にすべきということと、法で強制→処罰する必要があるかは別問題です。
道徳である限り定義が曖昧・柔軟処理可能ですが、法で規制するとなると定義が曖昧では困ります。
ヘイトとは何か?ですが、色んな定義があるとしても当面現行法が制定された以上はその法律の規定・定義・その法でどの程度の規制をしようとしているのかがまずは重要です。

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