社会保障とその限界1

コスト負担したくない国民のために、需要全部賄えるように補助金を無制限に増やせば良いのでしょうか?
その負担が国家予算に占める比率が微々たる場合・・大川や海に捨てるゴミが少しのときには気になりませんが大規模になると公害になったように、負担額が国家予算の半分を超えて来ると可哀相だけの基準では済まなくなってきます。
個別分野の積み上げではなく、個人負担の分野をどこまで政府が面倒見るべきかの総予算に対する比率・・総枠に関する議論が必要です。
そう言う意識的な議論がないまでも事実上予算総枠の縛りが起きて需要・要望を満たせないのは仕方のないことです。
予算の制約上需要に応じた施設全部作れない・・需要の10分の1〜2しか作れないと待機が生じるのは当然ですし、待機比率が高いときには、理想的設備ではなくともある程度レベル落としても数を多くした方が良いかも政策判断の範囲です。
市場原理に基づく代金を払う有料ホームの場合、必然的に設備やサービス内容が高度化するし、これに比例して従事者のレベルアップが要求される→給与アップするので、人手不足になりません。
量を供給するためにレベルを落とせば、介護関係者の待遇が下がる→応募者が減って不足する関係です。
予算上総枠としていろんな要求に対する優先順位がいるように人材配分としての優先順位も必要です。
介護士の給与を大学教授や宇宙飛行士よりも高くすればドット集まるでしょうが、上記は極端な例としても、現実世界には微妙な待遇差で無数の職種が存在していて市場原理で微妙に決まっているのですが、計画経済的にどの職種より介護士や保育士が時給10円高くても良いかなど決めて行くのは無理があります。
利用者がコストを負担出来ない以上市場原理で決められないのは仕方がないことですが、中央が決めた点数で決める制度設計である限り人材供給がスムースに行かないのは仕方のないことです。
ソ連は経済原理無視の結果遂に崩壊しましたが・・中国の経済原理に反した国家介入の限界が来ていて近日中に大破綻するだろうと意見が普通ですが、「お金に色がない」といいますが、赤字の原因が社会保障分野ならば経済原理に反した支出しても構わない・・永続出来るものではありません。
使い道が何で(高邁な理想に基づくからと言って)あれ、収入以上の支払が永続することはありません。
日本でも国鉄の赤字拡大その他幾多の事例を見れば、市場原理を無視した国家運営にはいつかは無理が出ることが明らかです。
日本の財政赤字の元凶は歯止めのない社会保障負担拡大ですが、社会保障は赤字に決まっているからコストを無視しても良いという発想に安住しているといつか国家=民族が破綻してしまいます。
生活保護で以前書いたことがありますが、増額しろ、可哀相だと言う感情論の合唱ばかりではなく平均的生活水準の何割まで保障するかと言う国民合意が先決・必要です。
この議論がなくて生活保護基準を上げて行くばかりで最低賃金よりも高くなって来たら今度は最低賃金の方が低いのはおかしいと言う主張ですが、お互い引き上げ競争ばかりしていると国際競争が成り立ちません。
生活保護・社会保障は実働している国家総収入の限界があり、実働者の賃金は国際競争可能な範囲に決まっている・・一時的に引き上げても中期的に輸出産業がやって行けなくなり,輸入が増えて失業が増えます・・のを無視した議論です。
日本に限らずアメリカでも世界中の民主党系政党の主張は「社会保障は手厚い方が良いに決まっている」と言う姿勢・・総枠無視ですが、これではいくら消費税を上げても歯止めのないことになります。
最近奨学金の返還義務をなくせと言う主張が多くなっていますが、これは前途有為の人材が教育を受けられない弊害除去・・救済を予定せずに「授業についていけない子供でも」人並みに進学出来ないと「可哀想」と言う発想によっていることが分かります。
(育英資金・・普通の能力のある子供=普通に就職出来る子の場合、普通払って行ける返済額ですが・・免除原則にしろと言うことは、払えない前提→授業について行けない子にも奨学金を要求ししかも返済免除しろと言うの?)
学校に行くのをいやがっている子供をせめて高校・大学くらいは・・と言うオヤの願望・・自分のお金を出すのは勝手ですが、税で負担する必要があるかは別の議論であるべきです。
可哀想論になって来ると返済能力のない人に貸す・・「借りたら返す」と言う経済、道徳原理無視の主張になり易く、結果的に対価を負担しないことがあたかも当然の権利…いろんな分野でコスト負担忌避の風潮を煽るようになると税収をいくら上げても追い付きません。
コスト負担しない人が増える一方になるとまじめに働いて税を納める人の意欲を殺ぐマイナス・・(まじめに税を納める気持ちが失せる・・海外資金逃避増加)モラルハザードを誘発します。
商人が代金を払う客の望むものを売るのが結果的に正しい・・お金を出す人の意見が重要です。
お金を出さない評論家がこの商品が良いと言っても、飽くまで予測でしかなく実際の売れるかを決めるのは顧客です。
税の使い道を決めるのは原則として納税者の意見によるべきであって、・・納税者も人権・環境その他いろんな正論に耳を傾けるべきですが、これをどの程度重視するかを最後に決めるのはお金を出す人の意見であるべきです。
コスト負担しない・・お金を出さない人の意見が幅を利かして・・納税者の意見を無視し過ぎるのは邪道です。
財政赤字の問題点は消費税率の問題ではなく、社会保障負担・・個人が負担すべき対価をどこまで社会が負担すべきかの総枠設定こそが重要です。
この議論抜きで際限なく補助を増やして行くべきと言う意見・・「保育所落ちた日本死ね!と言う民進党のアッピールは、保育所予算と他予算とのバランス調整の必要性を無視した無責任政党の極み・・違和感を感じた人が多いのではないでしょうか?

アメリカ優位性喪失1(移民モデルの将来性)

19世紀末から20世紀に入ってからのアメリカ優位性・・大量生産モデルの基礎になっていた鉄鉱石や石炭、石油あるいは畜産、食糧生産などの資源は主として量産系(牛肉やトウモロコシ、小麦など食料品もうまいものではなく量で勝負する系統)対応資源です。
唯一足りなかったのが人口でしたから奴隷を入れたり移民を入れたりして補って来たのがアメリカモデル・・人口的にも量で勝負する発想です。
モノ不足時代・・上記資源の価値は飢餓に直面する最低生活品としての価値がありますが、豊かな社会になると量に頼る経済は先がありません。
衣類でも食糧でも家具、アクセサリーや居住空間・楽器でも普及すればより良い物が欲しくなります。
アメリカでは、やっとシェ−ルガス,サンドオイル採掘が軌道に乗って、サウジに頼らなくても良いと安心していますが、これは植民地を失って戦後耐乏生活を強いられたイギリスが北海油田で一時期息をついて喜んだのと同じ・・従来モデルの補充でしかありません。
大量系資源である原油・ガスの国内採掘活発化でサウジと張り合おうとしているのは、中国と張り合うために移民を入れて人海戦術・低賃金化競争して来た延長です。
日本のように国民を大切にして資質を高めて商品を高度化するなど別の視点がないと将来がないと言うか、これに気が付かないうちに差を付けてしまうチャンスです。
製品高度化には底辺層の底上げが必須ですが、(中学3年になっても掛け算の分らない子を分るようにするのは、出来る子に高校レベルの因数分解を理解させるより難しい)それには膨大なコストがかかります。
現住国民の少数精鋭化・・コストをかけてレベルアップ努力が必要なときに底辺層導入によるお荷物(出来ない問題児をクラスに抱え込むのは独りでも少ない方が良い・・先生の大きな負担です)を抱え込む必要がありません。
まして補助金をつけて(現地での事前教育資金を補助するなど)まで介護人材など呼び込む必要がありません。
日本で保育士や介護要員が不足しているかのようにマスコミが宣伝しますが、実際には人間の不足ではない・・不足しているように見えるのは予算配分し切れない資金不足に過ぎません。
予算さえ付ければ、いくらでも施設は作れるでしょうし、介護士の待遇改善(仮に給与60万円と)すればいくらでも人が集まるでしょう。
介護士や保育所不足は全てに優先して全国家予算をもってしても人件費に足りない絶対的不足でなく、大学や高校〜医療費・・図書館、公園維持,道路・警察などなど税の使い道はいろいろある中で保育所・介護関係にはこれだけしか配分出来ないと言う政策選択の結果です。
サービスを受けるには、必要な対価を払うのが経済原理と言うか,何事もギブアンドテイクが人の道です。
ペイする商売であれば需要に応じてすぐに供給が増えます・・・・ラーメン屋・居酒屋でも牛丼屋でもスーパーも民間パートも顧客が何ヶ月も前から予約しないと買えない・サービスを得られないようなことはありません。
国民がもしも介護や保育サ−ビスを受けるに必要なコスト負担するならば、需要に応じた供給があって待機問題が起きません。
介護士も市場原理に負けない給与を払えば他産業に行かないで介護士になる人がいくらでも出て来ます。
こんなに不足しているのに何故給与が上がらないか・・施設が増えないかと言えば、介護や保育所設置に市場原理が働いていないからです。
巨大補助金がないと運営が成り立っていない・・新増設や給与資金が補助金次第となれば、予算の限界で供給が決まり需要で決まるものではありません。
100の需要があっても30の予算しかなければ30しか供給されないし、市場給与水準が100であっても支給基準・・保険点数が70に決まっていれば、業者はそれ以上貰えない・・ひいては介護士にそれ以上払えません。
保育所待機児童や、特養の何年待ちが生じるのは、利用者がラーメン屋に払うようなコストに応じた支払をしていない・・不足分を政府予算に頼っているからです。
公営住宅が抽選になるのは、コストより安いアパートに入りたいからです。
従来手厚い介護を他人に頼めるのは、松下幸之助のような成功者だけでしたが、これを適正コスト負担できない全国民に及ぼそうとしていることに経済論理上無理があります。
・・かと言ってお金のない人は我慢して下さい、家族だけで見て下さいと放っておけない・・要は国民が対価支払以上のサービスを求めていることが介護士不足の元凶です。
1000円が妥当な昼食を500円で食べさせろ・・差額は政府補助でやれとなれば、補助金が出る限度に供給が制限され、需要に応じた供給が成立しません。
需要全部賄えるように補助金を増やせば良いかと言う議論ですが、その負担が国家予算に占める比率が微々たる場合・・大川や海に捨てるゴミが少しのときには気になりませんが大規模になると公害になったように、負担額が国家予算の半分を超えて来ると可哀相だけの基準では済まなくなってきます。
経済原理に反するサービス・・自己負担以上のサービス・社会保障を求めるところに、介護士不足や待機児童等の過熱化・・特養の何年待ちが起きることが分ります。
人手不足の問題ではありません。

量的資源に頼るアメリカ

西欧は産業革命→植民地支配によって自分の働き以上の何倍もの良い生活していた結果、収入源の植民地を失った後で本来の能力に応じた生活に戻る・・軟着陸するのに苦労しています。
日本による欧米の植民地支配批判を黙らせるために,ABCD包囲網・・更には植民地ごとのブロック経済化によって、日本を締め上げた結果、日本を戦争に引きずり込み叩き潰すのには成功しましたが、西欧は植民地をあっという間に日本に占領されて赤恥を掻いた(非支配民族が自身を取り戻した)結果、戦後植民地支配を復活出来ませんでした。
これに対する日本に対する西欧の恨みの深さが分ります。
アメリカは牧畜であれ、農業(綿花栽培も含めて)であれ、資源採掘であれ、広大な原野を切り開いた大規模運営が特徴ですが、当初これに対応する目に大規模な奴隷「仕入れ」」工業化後はドイツアイルランド等の移民に頼り、移民・・多くは未熟練者ですからこの適正に応じたベルトコンベアー式大量生産時代の幕を開けたものです。
ついでに書きますと,南北戦争は北部工業地帯の発達で奴隷労働では採算が取れなくなったことによるそうです。
奴隷とは、労働契約的に見れば、日本江戸時代の遊郭の前金制度みたいなものですから、一生分の代金前払いになり,途中でいらなくなったからと言って前金を返してもらえないし、今で言う終身雇用であるばかりか死ぬまで面倒見る義務があります。
綿花栽培労働と違って工場生産要員になると(生産して全部売れるとは限らないし)景気変動があるので、一種のリース・・働いて欲しいときだけ働いてくれる・・給金制の方が合理的です。
他方で工場労働的習慣性となるとアフリカ育ちの奴隷は(綿花摘みクライは適応しまししたが・・)そう言う習慣がないし5大湖周辺は寒くて気候的にあわないでしょうから、ドイツ系・アイルランド系の方がきちんと働けることから、この頃からドイツ系移民が急増しています。
奴隷解放の結果、奴隷の生活を見る義務がなくなった結果?巷に放り出されてしまうなど、元奴隷が解放前よりも悲惨な状態になったと言われています。
大量の人手に頼る生産方式に話を戻します。
農業や畜産に限らず資源採掘でも、この圧倒的大量生産方式と一体化して世界制覇の基礎を作りましたが、資源保有の有利さが領土拡張競争に拍車をかけて来たことをどこかに書いてきました。
アメリカの13州独立以来の領土拡張の勢いはすごいものでした。
ちなみにドイツの強国化は、産業革命の基礎となる鉄鉱石と石炭の双方を手に入れた・・領内にあったことが大きな要因でした。
鉄鉱石の出るアルザスロレーヌ地方をプロシャが普仏戦争で奪った経緯は、ドーデの「最後授業」で有名になっています。
その結果・・近くのルール地方炭田と一体化した独逸重工業化発展の基礎を得たのです。
この地域の鉄鉱石・石炭の資源争奪は普仏戦争〜第1次〜第2次世界大戦に続く独仏間の領土争いのテーマになっていましたが現在は最後に勝った?仏領になっていると思います。
EUは元々欧州石炭鉄鋼共同体で始まったことを7月2日に紹介しましたが、産業革命後必要となった資源を巡る怨恨の歴史経緯があるからです。
ロシアがアメリカにアラスカを売ったときには、まだ資源の重要性が認識されていなかった・あるいは極寒の地での採掘技術がなかったことによります。
以下はhttp://matome.naver.jp/odai/2139674489665795001からの引用です。
「1867年に帝政ロシアからアラスカを買ったときの値段はさらに安く、わずか720万ドルである」
豊富な資源力・広大な国土に見合った流れ作業方式・・大量生産時代を切り開いたアメリカは、労働者の実力以上の収入を得て来たのですが、今では先進国の収入源は汎用品から知財やソフト・文化力・・精巧な手作り品・工芸品などの重要性に移っています。
汎用品生産量で勝負する時代が終われば、人口の多さよりは資質が重要ですし、量産系資源力の相対化によってアメリカの優位性が失われて行くのは目に見えています。
物量を運び生産するには10人よりは100人(トラックや機械の量に比例)の方が有利ですが、デザインや知財や美術・金融取引等になると下手な人が百人いても優秀なデザイナーや絵描き一人に叶いません。
とりわけ大量生産系・汎用品組み立ては低賃金単純労働向けの新興国の産業となっていて、これに対応する石炭・鉄鉱石・原油等の量で勝負する資源力が国力そのものではなくなった・・相対化して来た事は明らかでしょう。
ある国単位で考えれば分りますが石炭石油・レアアース等の採掘現場が、大都会や首都あるいは高級住宅街にありますか?と言う比較です。
ロシアであれアメリカであれ、どこの国でも資源採掘現場は、人里離れた荒野あるいは禿げ山にあるものです。
国単位になると資源があると自慢しているようですが、過去佐渡の金採掘作業が囚人の仕事であったように近代の炭坑夫も過酷な労働でした。
最近コマツの重機が無人運転出来るようになっているようですが、資源採掘従事者は泥にまみれ汚い現場で、最低生活層が従事しています。
彼らが作業着のママ都会に出て来てホテルで食事しません。
採掘現場を走り回るような重機や巨大ダンプが住宅街や都会を走ることはありません。
国の果てにある資源を利用する遠くの資本家が良い思いをしているだけであって、資源そのものに従事するグループが良い思いを出来ません。
これがタマタマ同じ国内にあると言うだけであって、シベリアが別の国であってモスクワ経由で売りさばいている場合も結果は同じです。
この理を用いてアメリカは中東の石油利権の獲得に動き、いわゆる「メジャー」支配をして来たのです。
アメリカのシェールガスやサンドオイル回帰は、アラブの民族意識の高まりを背景に現地政府の力が強くなって来て、メジャー支配の旨味がなくなって来たところで、国内資源利用に変更したに過ぎません。
19末〜20世紀に成功したモデル・・量的資源(人的資源も量を求める)に頼る政策そのままです。

アメリカの格差社会(フードスタンプ配給)

6月24日以来の格差社会論に戻りますと、鄧小平の言った有名な、格差容認論・・「◯◯の猫でも稼ぐ猫は良い猫だ」と言う・・金持ちになれる人から豊かになって行くと言う格差容認論は前向きですから、儲けに遅れた人の夢・・励みになります。
アメリカで昔言われたアメリカンドリームもこれに似たものでした。
現在欧米の格差論は、新興国の挑戦を受けて単純労働に高額賃金を払えなくなって来た・・負け始めた以上は、等しく貧しくなるべきところをアップルやユニクロみたいにタマタマ成功した経営者や金融のプロあるいは資源利権により特定一握りの階層だけが逆に金持ちになって焼け太りになっている点が大違いです。
アメリカの格差不満を背景にするトランプ旋風の張本人自身が、大金持ちであることを自慢する歪んだ社会です。
西欧を追い越す途中の新興国だったアメリカや・・中国や新興国の格差は、先に儲けた人ですから、こう言う社会では後に続く予定の多くの国民には「アメリカンドリーム」であり、賄賂であろうと何であろうと、「中国の超金持ち」は(自分もその仲間に入れば良いと言う希望で)まだ儲けていない人に夢を与えて来ました。
現在の先進国の場合には水位がずるずる下がって行く中で、特定の成功者だけが天文学的利益を独り占めしているのですから,ビルゲイツやジョブズ氏のように仮に特別な才能のあって不公平ではないとしても一般人には夢がありません。
中国や新興国の明日への夢がしぼんで行くと共産党幹部(の場合能力差ですらないのですから)だけが良い思いをしていることに対して国民の不満が高まります。
先進国で新興国労働者と同じレベルの仕事しか出来ない人は、本来新興国労働者と同じ収入でいい筈ですが、先進国の場合上記の特定巨額収入者の納めた税金や過去の利権収入(海外進出企業からの送金など)でインフラや社会保障コストが補填されているので、なお新興国労働者の何倍もの生活が出来ています。
生活保護その他何らの給付も受けていないつもりでも、非課税者は言うに及ばず納付税額の少ない人は、納付額以上にインフラを利用出来る恩恵を受けている人が一杯います。
月10万円前後の収入で税を払っていない人が保育所利用している場合、その維持費として税で膨大なコスト負担しています。
保険制度に至っては納付保険料の何十倍も使っている人はざらでしょう。
このように格差と言っても直接収入格差は、インフラ次第で大幅に緩和される結果、本当の格差感は社会のインフラ充実度によります。
アメリカの一人当たりGDPが高いと言っても資源や石油利権収入、金融取引、知財収入等の平均ですから、平均収入の議論しても工場労働者やサービス業の平均賃金など詳細は)何も分りません。
アメリカは昨年あたりから末端労働者の賃金水準は中国の人件費に負けないと豪語しているくらいですから、工場労働者やストアー店員の個々人の給与は高くありません。
ですから金融資本や知財等海外からの収益による高額所得者がいる結果却って格差が激しくなるし、成功者の収入が下がって行くと格差は縮小するでしょうが、そうなると将来的に(社会保障を含めた)収入が下がって、本来の働きレベルに下がって行く不安があります。
知財収入や過去の遺産(利権収入)等の分配に頼るようになると受益者が少ない方が有利・・高齢者が退職金等の預貯金を90歳まで残せるか心配になるのと同じでいつまで続くかに関心が移って行きます。
この不安がイギリスの移民増加反対論・・分配対象を減らせと言う運動が盛り上がった現実です。
金融や知財のぼろ儲けや資源・石油利権等で、一人で何十億と言う収入のある人の払った税金や寄付で多くの国民がフードスタンプを配給されていると、国民は不満と言うよりも将来が不安でしょう。
非正規雇用の多いアメリカ最大の大企業のウオールマートの店員の多くが,生活困窮者向けの1、25ドル分のフードスタンプを貰う列に並んでいることが問題になって日本でも報道されましたが、漫画みたいな社会です。
アメリカではフードスタンプ受給者が増え過ぎていて、この数年支給を絞り始めています。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/01/09/food-stamp-enrollment_n_6441040.html
「ボーレン氏「2016年にはさらに多くの人びとが給付を失うことになるでしょう。たとえ、登録申請者数の動向が、これまで通りであっても」と述べた。
政府の最新データによると、2014年9月の登録者数は4650万人で、前年の4730万人から減少した」
ちょっとデータが古いですが別の解説によると以下のとおりです。
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=279619
13/07/27 PM10
「四人家族で年収2万3314ドル(約230万円)という、国の定める貧困ライン以下で暮らす国民は現在4600万人、うち1600万人が子どもだ。失業率 は9.6%(2010年)だが、職探しをあきらめた潜在的失業者も加算すると実質20%という驚異的な数字となる。16歳から29歳までの若者の失業率を 見ると、2000年の33%から45%に上昇、経済的に自立できず親と同居している若者は600万人だ。」

フードスタンプは所帯単位で配給するので、約3億あまりの人口を割ると受給率は労働者3人に1人とも言われていますので大変な事態です。
たったの1、25ドルの食品購入券(1ヶ月分で所帯全員分とすると結構な額ですが・・)を貰うために夜中の12時に(何故か深夜に配布する仕組みらしい)並んでいる映像を見ると・・それが全米労働者の3人に1人と言うのでは、如何に格差が進んでいるかが分ります。
こんな夢のない生活で何年もよく我慢しているものだ・・中国よりも先に暴動が起きてもおかしくないような気がしますが・・。
トランプ氏の煽動に乗りたくなる人が増えているのは当然でしょう。

アメリカの軍事費分担要求

軍事費分担問題に戻りますと、トランプ氏の要求は選挙用に単純化して基地維持費の負担増を主張しているだけであって、問題は日本駐留の軍事基地コスト分担だけの問題ではありません。
仮に沖縄からグアムに移転しても南シナ海等のシーレーンを守って欲しいならば、シーレーン防衛分担金を払う必要がある点は変わりません。
(ソマリア沖の海賊対策に、日本も既に自衛隊を出しています)
自分のムラでの犯罪ではなくとも隣村の捜査に協力するように、世界の安全は相互作用で成り立っています。
日常経費である基地維持費の分担金比率上げの外に、有事の出動費はその地域で全額持てと言う時代が来るのでしょう。
西太平洋全域の防衛能力をグアムが持つようになると、当然グアム島だけを守るのに必要な防衛力の何十倍もの軍事力になります。
警察署は自分の建物に対する泥棒除け以上の防衛力を持っているので警察署への強盗がはいらないのと同じです。
沖縄基地が、周辺海域全部の防衛を兼ねている以上は、沖縄(あるいは日本列島全域)防衛に必要以上の軍事力ですから沖縄を攻撃するのには、周辺海域全部と戦う以上の攻撃力が必要になります。
沖縄を狙う勢力にとっては沖縄駐留米軍を一日も早くグアムへ移転させたいのは当然です。
ある家に強盗に入ろうとする場合,隣近所にある警察署がなくなる方が便利です。
米軍がグアムへ行ってもイザとなれば応援に来れれば同じことですが、その場にいるのとワザワザ遠くから出て来るには相応の決断がいるので、実戦的には大きな違いです。
国や地域全体では守備隊がいた方が安心ですが、基地や警察を狙うテロが頻発すると近くに基地があると逆に危険感が増しますし、テロ被害がなくともジェット機の発達で騒音被害などが生じます。
このように経費負担しても良いから来て欲しい・・警察署や軍事基地が近い方が良いのか遠い方が良いのかは、国民の価値観によりますし、時代状況にもよるでしょう。
アメリカは世界の警察官役(軍事的睨み)をやっている結果,(日本など基地所在国に相応の分担をさせて)自国防衛に必要以上の巨大軍事力を維持出来ている・・世界先端兵器の開発や維持が出来ているのですから、世界の警察官(軍事解決)役を単純放棄すると、自国だけの防衛能力維持すらも怪しくなって行きます。
ですから、トランプ氏が大統領になっても誰がなってもアメリカ自身の国際競争力の低下→経済力縮小に応じて徐々に軍事力削減して行く方向は変わらないと思われますが、強大な軍事力を背景とするいろんな利権(軍需産業だけではなく派生する波及効果)と結びついているので軍事力削減は単純ではありません。
そこで守って欲しいならば、分担金を払えと行って、よその国の経費で一定の軍事力維持を図っていく方向になります。
アメリカは日本や独逸に物造りでは負け始めて久しいですが、今残っているアメリカの強みはユダヤ系の得意な金融の外、知財関係ですが知財は高度な軍需産業の存在と密接に関連しています。
軍需産業を縮小すると知財の足腰が弱ってきます。
経済活動の大方が物造りに関連しているので、金融や軍需産業とその関連で派生する知財産業の優位性だけでアメリカの巨大な人口を養うには無理がありますし、多くの人に職場提供することも出来ませんので知財や金融に特化すればするほど大きな人口は無駄=マイナス要因になります。
世上人口ボーナス、オーナス論が盛んで(私はこれに基本的反対であることはあちこちに書いてきました)これにそってアメリカもEUも移民を増やして来ました。
移民の大多数は底辺労働者=平均賃金以下ですから、アメリカや欧州が移民を入れれば入れるほど金融・知財収入で養う人口が増える・・負担が増える一方になります。
知財(アップルの大成功で労働者が増えたのは低賃金工場のある中国であってアメリカでは殆ど雇用に役立っていません)や金融に頼る社会は、一握りの億万長者と無職失業・低賃金労働者の2極分化社会ですから、当然格差社会化が進みます。
イギリスはアメリカよりも1世代以上早く製造業で負けてしまい金融に特化して来たので、格差が顕著になって来た・・これがEU離脱を勢いづかせている基礎的経済背景です。
EU離脱論は憂さ晴らし的に難民流入が行けないと言うスローガンに飛びついていますが、社会構造が中間層不要・・未熟練動労働者=非正規・移民で充分の状態が背景にあります。
マスコミは、「移民反対と言うけれどもこの地域の農業は移民が過酷な労働に耐えているから成り立っている現実がある」と言うイギリス農業の紹介が時々出ます。
工場の低賃金労働も移民が働いているから成り立っている現実→これがまた移民が職を奪うと言う主張と重なっていますが・・・。
アメリカの工賃が中国に負けないくらいに下がっていることをアメリカが豪語し国内製造業回帰を宣伝出来るのは、低賃金労働を厭わない移民増加の御陰でしょうが、裏から言えばその分低賃金層増加・格差拡大に繋がっています。
アメリカの移民排斥を主張するトランプ氏の本音は格差拡大の不満を移民排斥論にすり替えている点ではイギリスのEU離脱論と同じでしょう。
格差拡大反対だとスケープゴートを仕立て上げ難い・精々金融機関が儲け過ぎと言う程度ですが、移民反対の方が標的を作り上げ易い・・大衆をあおり易いからです。

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