国(くに)(郡)とは?2

郡とは何かですが、大宝律令制定前の木簡には全て評(こおり)の表示しかないということですから、日本ではそれまでは評(こおり)と書いていたようです。
そうすると「評」(こおり)とは何かに戻りますが、評に関するウイキペデイアの説明では、

奈良県明日香村石神遺跡で平成14年(2002年)に第15次調査が行われた。7世紀後半の池状遺構や東西大溝から他の遺物とともに木簡も出土した。その木簡の中に、乙丑年(天智4年・665年)に国 – 評 – 五十戸(五十戸は「さと」と読み、「里」と同じ意味)の地方行政組織が全国に行き渡っていたことを示すものがあった。

とあり評里性という語も見えるので今の郡市町村制同様に、評(こおり)の下に里(50戸単位)がいくつか所属する形であったようです。
ちなみに50戸単位は今でも実務上重要指標です。
高度成長に伴う大都市人口集中→首都圏で宅地造成華やかなりし頃・・都市計画法が制定されて無秩序な宅地開発の規制が始まりました。
都市計画区域のうち市街化調整区域では原則として(農家住宅等の各種例外を除き)住宅建設が許可されない仕組みですが、50戸連坦(たん)といって現状として約50戸の連たんする地域であれば新築住宅許可になる制度が利用されていました。
連たんをネット検索するとすぐ出ますが、例えば佐賀市の説明です。
https://www.city.saga.lg.jp/main/51905.html

佐賀市では、既存集落の維持・活性化等を目的に平成20年7月1日より、市街化調整区域内の開発行為等の許可基準に50戸連たん制度を追加しております。(川副町、東与賀町及び久保田町は平成22年10月1日から適用)

話題が逸れますが、千葉市周辺では無秩序市域の広がりを防ぐ目的の都市計画法施行(昭和44年頃)直後から例外に当たる「50戸連たん」の運用を利用して雑木林や畑地等の宅地化が行われてきましたので「50戸連たん」しているかどうかが実務上重要でした。
佐賀市ではバブル崩壊後約20年経過後の平成20年になって、この制度利用が始まったと言うのですから時間差と利用目的の逆方向性に驚くばかりです。

都市計画法 (昭和四十三年六月十五日) (法律第百号)
(都市計画の基本理念)
第二条 都市計画は、農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活及び 機能的な都市活動を確保すべきこと並びにこのためには適正な制限のもとに土地の合理的 な利用が図られるべきことを基本理念として定めるものとする。
(区域区分)
第七条 都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」とい う。)を定めることができる。
第三十四条 前条の規定にかかわらず、市街化調整区域に係る開発行為(主として第二種特
定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為を除く。)については、当該申請に係る開
発行為及びその申請の手続が同条に定める要件に該当するほか、当該申請に係る開発行為
が次の各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ、都道府県知事は、開発許可を
してはならない
1〜10略
十一 市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一
体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね五十以上の建築物(市
街化区域内に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち、政令で定める基準に従い・・・以下省略

上記34条11号が50戸連たんの例外規定です。
都市計画法が昭和43年にできたのは急激な都市人口増加→無秩序に市街化が広がる圧力・需要が多かったからその規制が必要になったからですが、その分千葉県等の東京郊外型需要地では抜け穴探しの競争も熾烈だったので50戸練炭の例外申請が多かった・・我々弁護士にくる相談事例が多かったということでしょうし、急激な市街地拡大がなかった佐賀市の場合昭和40年代どころかバブル期の影響もなく平成20年頃になって放置していると市域縮小一方?になってきたので逆に50戸連たんを利用して住宅建設需要を取り込もうという時代になったのでしょうか。
しかし住宅需要の前提たる人口増がないのに、「郊外に家を建ててもいいよ!」というだけではユーターン需要が起きるわけがない・せっかくUターンする気になった人の新築妨害をしない程度でしょうか?
大宝律令以前においても我が国では集落単位として50戸が一つの目安になっていたことがわかります。
現代的産物と思われる都市計画制度の基礎として、古代の集落単位である50戸連たんを採用している・・物事には古い歴史があって決まっていくことが分かります。
どんどんテーマがそれますが、里の関係でいえば「郷里」「故郷」という熟語があります。
郷と里の関係はどういうものでしょうか?

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