軍国主義とは6?

2015年の安保法案反対論のチラシには、頻りに「軍靴の音が聞こえて来る」「軍国主義復活」と騒いでこれを有り難がる人が多かった・・我々弁護士にはしょっ中この種のチラシが舞い込んで来ましたが、こう言う人のうちで軍国主義を正確に定義出来る人がどれだけいるでしょうか?
ここからは、September 2, 2016, 「軍国主義破壊5」と文化人の役割1」の続きになります。
ついでに安保法案戦争法案反対運動などでマスコミで流布している「軍国主義」などのキーワードで安保法反対関連の学者声明(ならば何かマトモに書いているかなと期待して)その他をその頃に、試みに検索してみたところ、従来の政府解釈を変更するのは憲法違反だとか言うだけで、何が軍国主義になるのか、戦争法案になるのかの意見を探せませんでした・・多くは「総掛かり運動の成果」とか今後のデモの予定ばかり・・私の検索能力が低いからかも知れませんが・・。
定義出来ない概念で異民族を期間の定めなく支配するポツダム宣言受諾を強迫すること自体がウエストファーリア条約以来人類共通遺産である「相手が同意しても犯してはならない」限界を侵す違法な強要です。
米軍政・・農地解放や財閥解体のコラムで大分前に零細農民や零細企業しか認めない・・工夫発展の芽を摘む工作・・農業国としての存在しか許さない政策の一環として軍国主義とは別の視点で書きましたが、要するに民主化に名を借りた日本の支配層追放・・企業解体による日本の民族支配層の全面追放・・ニッポン民族組織解体を裏の目的にしていたように見えます。
中共政権成立後、満蒙民族対象に徹底的に行われた大規模虐殺・・中共軍指導によるポルポトによる大規模虐殺は、文字を読める人を探し出しては皆殺しにしてしまうやり方は、いずれも知識人を根絶やしにする明白な民族レベル低下戦略の実行でした。
米占領軍も軍国主義思想一掃を名目に、文化人・支配層一掃を狙ったものでした。
日本は階級社会ではない・・法制度がなくとも古代から民意重視・・平等な社会ですので、支配層をまとめて追放してもその後をいくらでも補充する人材がいる点に気が付かなかったのでしょう。
企業や組織で言えば、事業本部長クラス以上を全員追放しても直ぐ下の部課長〜その下のクラスがいつでもその任務を補充出来るのが日本では普通です。
幕末ロシアやアメリカ等へ漂着した一介の漁師が、いざとなれば、日本民族代表のような立派な行動ができた社会です。20年くらい前にハローウインで、盗賊と間違えられて銃殺された服部君の事例で驚いたと思いますが、その親は普通のサラリーマンだったはずですが、その対応は見事でした。
日本人は庶民に到るまでいざとなれば、国益を背負って立つ気概のある民族ですから、「支配層だけ骨抜にすれば良い」と思ったアメリカの思惑に反したことでしょう。
勝った方が強要してはいけないことを決めたルール・・講和条約で負けた方が(銃剣を突きつけられて)承諾すればどんな内容でも良いのであれば戦時条約を予め決める意味がありません。
アメリカは軍国「主義」認定による占領は無理があると分って来たらしく、この4〜50年?頻りに「軍事政権」を批判して経済制裁を科すのが普通ですが、これもおかしな基準です。
緊急時や戦争が始まればどこの国でも緊急事態を掌握出来る軍部が発言権を持つのは当然ですし、アメリカでも大統領が軍のトップであり非常事大権をもっていることは言うまでもありません。
違いは選挙で選ばれたかどうかであって、戦争や非常時には軍の専門家が遂行するのはどこの国でもあるいは、古今を問わず同じです。
一般犯罪であっても「話せば分る」と言って解決出来れば、警察さえいりません。
民主主義国とそれ以外をここ10数年アメリカ・特にトランプ政権が強力に言い始めたのは、この結果によります。
軍事政権か否かは選出方法で見る限り区別は簡単ですが、「軍国主義か」どうかは何を基準にするのか意味不明です。
しかし選出基準によれば、ヒットラーも国会で選任されて全権委任を受けている点では、(憲法の勉強では広範な白紙委任が許されなかったと教えられますが・・)どう違うのかはっきりしなくなります。
戦争中には、アメリカ大統領もどこのトップも非常大権を持ちますし、フランス大統領は15年からの相次ぐテロに対して今・現に・・非常事態宣言を6回も延長し17年11にようやく解除したばかりです。
この適法性を事後の国会でチェックされる抑制手続が法定されている程度の違いです。
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=79745

フランス、非常事態宣言が終了、新法施行でテロ対策強化
2017年11月1日(水)
フランスで11月1日、2015年11月のパリ同時多発テロ事件以降発出されていた非常事態宣言がようやく終了した。宣言は警備の強化に向けたもので、16年7月のニースでの車両突入テロ事件などを受けて、6回に渡り延長されていた。
なお、同国政府は引き続きテロ対策を強化するため、宣言下で例外的に容認してきた警察などの権限を認める20年末までの新法「治安およびテロ対策強化に関する法律」を施行。外務省も訪仏日本人旅行者には海外安全ホームページで、引き続き注意を怠らないよう呼びかけている。
https://www.bbc.com/japanese/41495068
フランス、厳格な反テロ法案可決 非常事態宣言の解除控え
2017年10月4日
フランスの国民議会(下院)は3日、2年近く続く非常事態宣言の解除を目的とする新たな反テロ法案を可決した。
新たな法律には、非常事態宣言下で許可されていたいくつかの措置が盛り込まれる。裁判所の許可を得ずに、家宅捜索がより容易に行え、個人の移動を居住地域内に制限することができる。
新しい法律の下、個人の移動を在住地域に限定し、一日に一度警察に出頭することを義務付けるのを、判事ではなく政府が判断できるようになる。
当局は鉄道の駅や空港など危険と判断される場所に警戒区域を設定することができ、区域内では人や車両を調べることができる。
モスクなどの礼拝の場所で宗教的指導者が極端なイデオロギーを説いていることが分かれば、当局は閉鎖を命じることが可能になる。
人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」フランス支部のベネディクト・ジャヌロ代表は、フランスで対テロ措置への司法チェックが徐々に「弱め」られており、「非常事態での権限が正常化され、新たな一線を越えた」と語った。

非常事態宣言が漸く解除されたものの、非常事態宣言下同様に警察は裁判所の令状なしに強制捜査や検挙ができる・非常事態宣言なしの恒常的非常事態下の法制度が整備されたことになります。
due process of lawの発達した先進民主社会といえども、社会合意・基本ルールを守らない相手・・「話せばわかる」と言っているウチに瞬時に射殺され、あるいは甚大被害の生じる爆発物を仕掛ける暴徒に対しては、紳士的ルールで対応してはいられない実態に合わせる必要があることを示しています。
長期間死刑のなかった日本でも平安時代末期から世の乱れに応じて死刑(その先行役所として、令外官として著名な検非違使庁が置かれました)が復活し、今のように平和で治安の良かった江戸時代でも鬼平犯科帳で知られるように手続きなしで処理できる火付盗賊改方という例外制度ができたり、統治制度でも危急時には、合議による政治から臨時に大老による独裁的権限行使制度を用意しているものです。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC