国際政治力学の流動化8(TPP漂流1)

TPPは約30年かけて準備して来たアメリカの日本外しの完成・・究極の決め手になる予定であったとすると、日本がTPPに入ってしまうと、これまで営々と構築して来た対日FTA包囲網が意味をなくしてしまいます。
TPPの方が各種FTAよりも数段高度な関税緩和ですから、もしもTPPが発効するとそれまでアメリカと締結して来たFTA国でTPPに入っていない諸国はその差だけ不利になります。
TPP参加国は小国ばかりで主な国は日本だけですから、対米貿易上アメリカは世界主要国で日本だけ優遇する結果になります。
オセロゲームで白黒がひっくり返った状態です。
政治力学変化がそうさせたのですが、自由競争とは競争上優位の国が自由に売りたいからか主張する原理ですから、アメリカは昭和40年代初頭からの日米繊維交渉以来何かとイチャモンをつけて来た流れを見ると、日本との関係では自由競争を回避したいのが本音です。
日本をTPPに入れてしまい対米競争力のある日本と無関税で競争・・アメリカが標榜する自由競争関係になると却って損するので、TPPの発効はアメリカにとって競争的にはマイナスになっているでしょう。
TPPが発効すれば日本も無理してアメリカに工場進出する必要がなくなります。
既にアメリカとNFTAのあるメキシコで生産しても同じと言うことで、この10年ほど自動車産業が猛烈にメキシコへの工場進出ドライブを掛けている→アメリカの空洞化が起きています。
これをトランプ候補が怒ってメキシコを目の敵にしているのですが、これ以上日本まで関税優遇になると、どうして良いか分らなくなるほど苦しくなります・・。
アメリカは今後国際競争力が低下して行く一方ですから、自由貿易主義の堅持は百害あって一利無し・・TPPを批准するメリットがなくなっている判断は、アメリカにとって合理的選択でしょう。
とは言え自由貿易主義こそがアメリカ的正義の唯一の拠り所ですから、(ソ連との冷戦に勝ったのは自由主義の勝利と言います・・当時アメリカは世界最強だったからですが・・))この旗を簡単におろす訳には行きません。
オバマによる世界の警察官をやめる宣言は、次の大統領の時代になれば更に一歩進めて(トランプ風に言えば)エゴ剥き出しで、中国のように(ルール違反も気にせずに)目先の金儲けのためには大っぴらにやりたいと言う意思表示かも知れません。
マスコミ紹介するトランプ氏の風貌からしても、(偏った印象を与えるために歪んだ顔ばかり強調するので信用出来ませんが)アメリカの自由主義とはエゴ剥き出し・・力さえあれば何でも出来る裸の自由主義のような印象です。
アメリカが世界の警察官をやめる場合、西欧支配の18〜19世紀型場面ではロシアや中国の始めた領土紛争の再現・・やり放題ですが、これは従来型強盗殺人等の分野であって今でも一定量発生するのはふせげないので、世界中がすごい経費を掛けて国防軍を備え不足に備えて同盟関係を結んでいます。
戦争は悲惨とは言うもののある程度組み込まれた現実ですので、世界大戦にならない限り世界の発展に実際に大きな影響はありません。
実際に人類の発展に世界的影響を受ける・・現在から将来へ向けて重要な国際ルールを誰も守らなくなればどうなるでしょうか?
今後も生活水準を挙げて行くために新たなルール強化が必要な分野は、資金移動や知財剽窃やサイバーテロによる企業秘密の剽窃等の取締ですが、これについての取締には軍事力までいりません。
こう言う犯罪まで野放しにしろとなるといろんな分野で遵法精神がなくなって行き、世界中でルール違反が横行するようにならないか・・泥棒・人殺しのやり放題の社会になり兼ねません。
軍事力の維持には巨額資金がいるので、アメリカ1国では面倒見切れないと言う論理は分りますが、警察がいらないと言うことにはならないでしょう。
世界の警察官をやれないと言うのは比喩的表現であって、警察力と軍事力とは違います。
海上保安庁の出動と海上自衛隊の出動とでは意味が違うのと同じです。
トランプ氏の自慢する巨額自己資金自体が取引等のルールと警察力があってこそ保持出来て守られているのです。

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