アメリカの指導力低下7(ミカジメ料1)

アメリカは同盟国から見れば矛盾した、腰の定まらない動きがあって信用を落としていますが、アメリカ自身が国力低下によって世界の警察官役を従来どおりはやれないことがはっきりしているが、どの程度縮小するか・どの程度引き受けて行くかについて軸足が定まっていないからでしょう。
はっきりしていることは、自国軍自体を危険な最前線の第一列島線から背後のグアムの線まで引き下げて、その代わり現地軍・・日本やフィリッピン等の軍に危険な最前線の守備・ウオッチャー(昔で言えば狼煙を上げる役割)の肩代わりを求めて行く動きです。
自国防衛のためにはフィリッピンや日本を味方にしておけば良い(敵基地にしなければ良い)のであって、フィリッピンの小さな島・特に中国とフィリッピンの間の島をいくつ中国に取られてもアメリカの防衛に関係がないと言う基本的立場に見えます。
尖閣諸島線が破られると中国潜水艦が自由に太平洋に出られる→いつでもアメリカ本土近くに出没可能となってリスクが高まりますから、アメリカは自国の利益のためにも簡単には島を放棄しないでしょう。
肩代わりして前線を守っている日本軍やフィリッピンが、アメリカの防衛に関係ないことで中国とこと起こしたら、背後の米軍が直接出て行く気があるのかどうかが分らない(ないでしょう)のでみんな心配し始めたのが現状です。
アメリカは前線基地の役割を果たさせるためには、自国防衛に直接関係がなくとも、日本や東南アジア諸国を味方にして中国に対抗して行く姿勢を示す必要があります。
そして、兵器補給等の応援(これはアメリカにとって金儲けになるし)は喜んでするが、日本やフィリッピン等がアメリカのためではなく、自分勝手に中国と起こした紛争には巻き込まれたくない(これが本音でしょう)がどの程度まで応援するフリをするか、あるいは積極的に中国と組んで太平洋を2分するか、国の基本方針・腰が決まっていないように見えます。
外形から見えることは、口先だけでコミットメントするものの、実際にことが起きたら中国と正面から対決することまではしたくないという姿勢が見え見えです。
日中の対決になって自分の出番になるのは困るから、中国が無茶言っても日本が全て引き下がってくれというのがアメリカの姿勢のように見えます。
アメリカは自国防衛のために尖閣諸島を中国に渡したくないでしょうが、そこだけ共同演習等で応援すれば充分であって、それ以上中国を刺激するなということでしょう。
ちょうど日本の左翼が米軍駐留によって米ソ、米中戦争の巻き添えになるリスクがあると主張をしていたことの米国版主張です。
日本が引き下がらないで日中対決が激しくなると口先介入だけで漁父の利を得られないのでアメリカは「失望する」のです。
「失望」の意味は、イザとなっても「喜んで」日本の味方をしたくない・・応援するとしても渋々ですよ」という露骨な意思表示ではないでしょうか?
両方に良い顔したいだけ・・実戦になれば「俺の言うことを聞かないで戦争になってしまったのだから知らない・・」と高みの見物をする予定の同盟国ってあるの?ということになって、アメリカが世界中の不信感を招き始めました。
アメリカは中国の軍事力を恐れているのではなく、あるいは人権侵害を気にしない・価値観が共通だからではなく、そこで儲けているGM等の利益を保護し、さらに新たに進出して儲けたいからです。
この後で書いて行きますが、アメリカの行動原理は市場原理とか民主主義という美名で表現・宣伝されて来ましたが、その実質は金儲け(金亡者・・どん欲な経営者の巨額報酬を見れば分るでしょう)になるかどうかが最優先の国民性です。
個別政治問題の決定基準はロビー活動・・金のかけ方次第になりますし、大統領選その他全て巨額資金を集められるどうかが勝敗を分ける国です。
アメリカの中国への傾斜を防ぐには、中国と組むよりは日本と東南アジアの合計の方が実利があるとアッピールすれば良いのでしょうか?
交渉問題では、警察官役を引き受けてくれる対価(税の一種)としてある程度譲るしかないのも現実です。
アメリカの腰が定まらないのは、アジア諸国がお礼としてどれだけアメリカに良い思いをさせてくれるかによって決めたいというアメリカ側の側面もあるでしょう。
まだどちらに着くか決めていないときこそ交渉効果のある時期です。
敵方についてしまってからこちらに引き戻すには何倍も努力・・見返りが要ります。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC