取引外交2(ス−パー301条の効果?)

取引外交のトランプ氏の本音はすぐに分りますので,これが分ると直ぐに(トヨタの米国投資発表など)迎合の動きが始まります。
半端に正論を言って抵抗して最小限被害でまとめるよりは要求されている以上の逆提案で,(山内一豊の故事で知られているとおり)その懐に取り入るのが古来から専制君主に取り入るための智恵ですから,正義の基準を問題にしない取引外交のトランプがパッシングしていた国との取引が簡単に成り立つと見るのが普通です。
取引外交の本質は,さしあたり獲得利益の大きい国相手から始まりますので,大きくアタマの出ている中国が最初に叩かれる可能性が高いのですが、宙ぶらりんでは困る・・中国としては早く叩いてくれれば,(台湾と南沙諸島の埋め立て撤去以外は何でも受入れるしかない?)却って手打ちするのが簡単・逆説的ですが,早く具体的に叩いて欲しい状況でしょう。
今のように「1つの中国かどうかを中国に指図されることはない」とばあーんと言われっぱなしで止まっていると中共政権として言われっぱなしのマイナスダメージだけで解決にならないので,何をどの程度の成果を求めて台湾問題を脅しに使っているかの本音を探るのに必死です。
トランプは交渉対価を吊り上げるためにはすぐには要求を出さないでさしあたり台湾問題で揺さぶれるだけ揺さぶって相手の焦りを待つ戦略でしょう。
いずれにせよトランプ外交は解決を求める取引外交ですから、交渉が具体化すれば同時に着地点が見える安心感があります。
安倍総理を含めて世界中がトランプ氏との面会競争になっているのは,何を要求されるか心配だが先送りするとリスクが高いので一刻も早く知りたいからです。
交渉が始まり着地点が見えて来ると、次順位国や企業が狙われます。
ですから,今中国敵視発言していることが,日本に関係がない(次は日本か?と身構えるのが普通です)とは誰も考えないでしょう。
取引外交の本質は,取引成立を求めてやることですから、パッシング相手と決裂にならないでほぼ百%取引成立すると見ておくべきでしょう。
今の世界でアメリカ相手に決裂してやって行ける国はありません。
そうすると今度はそのクニ(中国)と親密になりますので、台湾問題を持ち出して中国パッシングしている場合,対中取引が成立する可能性が高いと見ておくべきですから,そのうちパッシング相手が半回転で日本に向かったり、逆回転して台湾に向かうリスクがあります。
ニクソンの米中和解〜ソ連崩壊後パッシング相手が日本に向かって来た歴史です。
中国と手打ちしても直ちに台湾にパッシングが向かうまでには,上記のとおり獲物の大きい順・螺旋状の順位ですからまだ遠いとしても中国パッシングが落ち着けば、中国の台湾侵攻があってもアメリカの姿勢変更・応援に動かなくなるリスクがあります。
今親密でもいつはしごを外すか分らないし,外さないとしてもトランプ政権が最大8年続いてもその後どうするか・・・遣り過ぎた反動・8年先の見通しが立たない結果、現在最も利益を受けるトランプの対中パッシングが始まると台湾政府の動きが却って慎重になったのは当然の智恵です。
パッシング政策では一見アメリカの力を誇示出来るものの、ヤクザの脅しみたいで結果的に世界中がアメリカの言動を信用出来なくなります。
結果的にアメリカ政府の信用ががた落ちですし,1月27日にフォードの動きを紹介しましたが,政商的動きに特化して行く国内企業が多くなると結果的にアメリカ経済力の足腰が自然衰退より早くなる・・急激に低下する筈です。
他方イスラエルはトランプ氏の応援で舞い上がっている様子でこの機会を利用して周辺国の反発を無視して、エルサレムに首都移転する計画実行に動き出しました。
トランプ氏のイスラエル贔屓は信念によるものであって単純取引外交ではないとしても、最大8年先の展望しかなくて大丈夫なの?と言うのが私の疑問です。
8年先も親イスラエル政権だとしてもその頃にも周辺アラブ諸国を無視出来るほどのアメリカ1強が続くと言う見通し+正義無視の横暴要求を露骨に出来る強さが更に続くと言う読みでしょうか?
トランプの強引さ・乱暴さは弱さの極限が来たから騒ぐしかなくなったと言う逆の読みもあり得ると言う慎重な判断を何故しないのか不思議です。
アメリカの弱体化進んでも巨大市場である点は簡単に変わらないと言う読みでしょうが,世界中から輸入しているから影響力が大きいのであって,輸入規制をするようになると世界に占める購買力比重が急激に縮小して行く→急激に発言力が低下します。
例えば日本の対米輸出が2〜3割を占めてている場合と1割〜5%と下がって行けば強引な政策に対する耐性が大きく変わります。
ブラジルやインドが人口や資源だけあっても国際発言力が低いように、アメリカが日本から大量に買ってくれるから仕方なしに言うことを聞いているだけです。
例えばクルマを1台も輸出出来なくなれば,日本はアメリカの政策に振り回される必要がなくなります。
例えば2国間交渉で「輸出入同額にしろ」と強制されてこれを認めた場合,次から何か強制されて拒否してもお互いの痛みは同じですから迫力がありません。
膨大な貿易黒字がなくなるのが怖いから・・毎日買ってくれるお客なら大事にしますが,もともと買ってくれたこともない客に「今度から買わないよ」と言われても痛くも痒くありません。
大量輸入しているからこそ大きな顔を出来る原理は個人商店と顧客の関係と同じで、黒字を不公正国としてパッシングする301条以来の政策発動で本当に効力があったらどうなるでしょうか?
もしも成功すれば,相手国の黒字が大幅縮小しこれに比例して上記のとおり、アメリカの発言力・脅しの効力が大きく減少してしまいます。
相手国の膨大な黒字温存を認めない限り次の脅し交渉が成り立たない論理ですから、スーパー301条は本来の効果を発揮した場合永続的効果がない筈のものでした。
これが未だに大統領令と言う形で存続出来ているのは、国民向けに「課徴金を◯◯とった」・・「◯◯の輸入を何台まで」に制限したなど成果を強調しながら一方で相手国からの部品輸入や迂回輸出などを認めるような裏取引があったからと推測されます。
本当に相手国の黒字解消の成果を上げているならば,何年かごとに脅しが必要になるワケがない・・必要だからこそ大統領令で復活し温存して来たのでしょう。
その都度次の黒字発生のメを用意しているから・・日本等も「それならば・・」と言うことで国際法に反するアメリカの非合法要求を受入れ合意出来たからでしょう。
クリントン以来の301条適用の脅し政策の存続は、特定国内企業を救済し政権の成果を強調しながら実質的に何の効果もなかった・・結果的に淘汰されるべき企業の温存により国民利益を欺いて来た可能性があります。
上記のとおり本当に対米黒字を認めない結果が本当に実現すれば,世界中の対米貿易が縮小して行くしかないので,アメリカの発言力が低下し競争力のない企業を保護した分経済の弱体化が進み・・繊維・家電・鉄鋼やクルマ・半導体など対日政治テーマになった産業は全部結局衰退してしまいしました・・最後に貧困国に落ちぶれれば,人口の多さだけではどうにもなりません。
トランプ氏の咆哮外交・政治はアメリカの弱った国力に比例して声が大きくなっているに過ぎない・・・ライオンや牛馬が最後に死に物狂いで暴れると図体が大きいので危険なのと同じで、暴れるしかなくなった状態とみるべきです。
これに気が付かない・・イスラエルの首都移転や入植拡大の動きは読みが浅いように見えます。
数百年〜千年単位で一カ所に住み続けている民族からすれば,目先(数十年〜百年程度)の強い国や勢力に露骨になびく・・イスラエル・ユダヤ系が世界で信用されない原因ではないでしょうか?
・・1分でも1時間でも早く売り逃げ、または買い注文の必要な金融取引では必要な能力ですが・・。

アメリカンファーストとは?3(スーパー301条)

アメリカの戦前(大恐慌)戦後からレーガン政権下でのスーパー301条成立以降クリントン〜ブッシュ〜オバマに至る保護主義強化の動きについては、2013年1月の山城秀市氏著の「アメリカの貿易政策と保護主義」と題する論文
http://www.law.nihon-u.ac.jp/publication/pdf/seikei/49_3/13.pdfで詳述されています。
昭和40年頃から,繊維交渉など今のトランプ旋風同様に日本にとって大変だった動きを私が日々ニュース等で見聞きしていてうろ覚えで知っている経過が,そのままの記録として出ているので,事実経過を正確に知りたいお方は上記論文をネット検索して御読み下さい。
かいつまんで書きますと,戦後1960年台半ばからアメリカの貿易赤字が始まると,(70年代に入ってニクソンショックがあり)完全な自由主義から「公正貿易」自由主義と言う名の保護主義へと大きく傾斜して行く様子が紹介されています。
対日繊維交渉・または鉄鋼輸出から始まった各種の自主規制の強制・・一定率(2〜3%)以上の輸出増加を認めない・・一方で一定率の自主輸入を強制する・・一定以上の黒字発生の結果を基準に課徴金を掛けたり「不公正貿易国」と認定する仕組みの始まりです。
トランプ氏の強迫・・不公正貿易国の認定を黒字の結果に求めるやり方は、徐々に強化されていましたが,これが法的に完成したのが,88年に成立したスーパー301条です。
この枠組みが完成した結果、歴代大統領が「不公正」と言う名の保護主義・相手国パッシングの道具に使って来たた流れをトランプ氏が露骨に表現したもので、彼が突然言い出したことではありません。
元々スーパー301条で重要な役割りを果たすUSTR成立の歴史を見ると、ケネデイ政権で日本の「令外の官」的位置づけ・・国際的通商拡大のためのプロジェクトチームのような位置づけで設立されたものです。
その後ベトナム戦争による赤字拡大の結果、60年代半ば以降赤字が発生するようになると,「不公正貿易阻止」と称して対米黒字国相手に輸入制限目的交渉の役割が中心になって行き・・アメリカ国内政治の利害に直結する重要な役割にとなって議会公認・・法律上の正式機関に成長して来た歴史です。
アメリカ一強のときに貿易推進のためのチームから始まったものが、あっという間に真逆の保護貿易方向の運動体・・法律上の重要機関・・輸入制限のためのみに機能する政府機関が出来たことになります。
保護貿易とは,文字どおり後進国に先進国の製品が怒濤のように入って来ると後進国が自国産業を育てるヒマがなくなるので,自国産業育成保護のためにあるもので国際的にも正統性を認められています。
先進国が国際競争力のなくなった企業を温存するためにあるものではありません。
最強国と自称するアメリカがこれをやるのは後ろめたいので,相手国を不公正競争国と勝手に認定して逆に相手の進んだ産業を潰してしまおうとするものです。
第二次世界大戦では,アメリカの方が国際法違反していたのに、逆に日本人を戦犯裁判したのと同じ行動原理です。
日本で言えば通産省と別に黒子役の輸入制限目的だけで活躍する省が公式に出来たのです。
アメリカにとっては通商政策の方向性が輸出拡大よりは輸入制限をどうするかが多くのウエートを占めるようになったと言うことでしょう。
今朝の日経新聞朝刊にはフォードの動きが紹介されていました。
勿論真偽は不明ですが,曰くフォードはアメリカ国内でもピックアップトラックしか売れていない・・このために一般のクルマの関税率は10%であるが,ピックアップトラックだけ20%に維持している//これがTPPで関税が下がるとフォードにとって死活問題なのでTPP反対で必死に政権にすがっていると言う筋書きでした。
これがフォード+トランプのクルマ産業に対する大きな筋書きと言う推測記事です。
この真偽は別としてアメリカは国内企業の競争力強化段階が終わって,如何にして外国の強い企業の輸入規制で生き残るかが国内重要テーマになっている現状が分ります。
アメリカは表向き対共産圏競争のために自由競争の旗手を任じていましたが足元では着々と保護主義に向けてきりけていた・・輸出促進政策から輸入規制政策に70年代から舵が切り変わっているのです。
それでも70〜80年代にはまだ余力があったので,個別業界の輸入制限の要望・突き上げを、受けやすい議会(地元議員の利害)の保護主義圧力によると言う表向きの立場で処理していました。
アメリカの身勝手乱暴な保護主義政策が第二次世界大戦に至った反省から戦後ガット等の世界ルールが始まった経緯をふまえ、相手国との親善その他総合判断(対共産圏対策もあって)で大統領がいわゆる「制裁」には慎重姿勢で簡単に動かないのが原則的パターンでした。
これに対する議会側の法的強制装置として通商法301条が議会通過→大統領の拒否権などの応酬、・・多分これも対外パフォーマンス・・政治駆け引きを経てレーガン大統領の時に現行の強力すぎると言う意味の「スーパー」301条が成立したものです。
レーガンのドル高政策は経済原理で言えばアメリカの国際競争力低下の促進とセット(歩競争力低下に合わせてドル安になって行くのが経済原理なのに,逆張り政策です)ですから,言わば矛盾を抱えていた・・その分国内企業の突き上げ・・輸入規制を求める動きが厳しかったと思われます。
国際収支の調整は,本来為替相場の自由変動制によって,解決される筈ですが,レーガンはアメリカの威信・ドル高政策にこだわる・・輸入が増えて国内企業は持たない矛盾激化の象徴がレーガン大統領政権時のスーパー301条の成立でした。
ドル高政策で競争力が落ちる分を腕力で輸入規制する無茶・・超法規的立法だからスーパーと言う異名がついたと思われます。
でした。
無茶は続かないのですが,ソ連を叩き潰すまでの戦時特別法的性格・一時的制度のつもり(・・2年間の時限立法でした)だったかも知れません。
トランプ氏当選以降のドル高進行が弱小国から資金流出を招き経済崩壊を招くリスクがあることから分るように,ドル高政策は自国企業の競争条件としては不利ではあるものの、旧ソ連圏を破綻させる強力な武器でしたし・実際に成功しソ連崩壊を招きました。
ドル高政策のもたらす国内企業に対する不利の緩和政策・・ソ連経済崩壊させるまでの我慢ですから,2年程度の時限立法は合理的でしたし、同盟国にも説明のつく制度でした。
ソ連崩壊後(日本に遠慮がいらなくなったので?急激な円高政策・・対日ドル安政策)に転じたにも拘らずアメリカの恒常的競争力低下が止まらないので、これを緩和するために301条の精神?を延長?して現在に生き延びて来たようです。
「スーパー301条の復活」でウイキペデイアを見ると以下のとおりです。
「スーパー301条の復活
このスーパー301条は、前述のとおり1989、1990年限りのものであったが、1994年3月3日、アメリカ合衆国大統領ビル・クリントンは、このスーパー301条手続きとほぼ同等の内容の行政命令を発出した。これは、通常スーパー301条を復活させる行政命令と呼ばれているが、厳密には法律の規定を行政命令で変更はできず(特にこの旨が授権されている場合はともかく)、この行政命令は、議会が法律によりUSTRに義務付けたものと同様の内容を、アメリカ合衆国大統領が、行政の最高責任者の権限でUSTRに命令しているものである。」
議会突き上げに対する大統領の抵抗排除目的の「スーパー」法でしたので、原則的に大統領府は自由貿易を守る旗印を掲げたままで謙抑的運用をして来た(表向きの)印象でした・・。
外交的には、内部突き上げが厳しいので・・と言う外交辞令に利用して来たのですが、クリントン大統領が議会の承認のいらない大統領令に署名したのですから本音が出たと言えます。
従来は議会の保護主義圧力を受けて大統領が対象国と大ごとにならないように交渉する表向きのパターンであったのが、トランプ氏は(就任したばかりですから)調査結果もなく個人的見解・直感で?大統領自ら特定国を名指し批判する点で異例であると言うよりも露骨すぎるやり方です。
昨日から書いているように元々不公正基準をアメリカが勝手に決めるものですから,調査してもそのときの権力の意向に合わせた基準で調査すれば結果は同じ・・中国のえせ法定手続採用同様です。
もともと、クリントン政権では議会の要求によるのではなく大統領が職権・行政命令でスーパー301条を復活させた以降は,ほぼ100%茶番劇に堕していました。
トランプ氏はそう言う茶番劇を棄てて、本音で「品なく」ズバリ言って来ただけの違いです。

トランプ氏とスローガンの実効性2(スーパー301条)

トランプ氏がもし正常な理性を持っているならば・あるいは,これを支持するアメリカ人がある程度マトモに歴史を勉強しているならば大恐慌時の大失敗・・第二次世界大戦の原因はアメリカの自分勝手な行為に始まります)を自ら再現することはないでしょう。
せいぜい,制裁すると脅して相手から少し譲歩を勝ち取る程度ではないかと見るべきです。
実際にやれそうなことは往復貿易量も少ないし,報復力のない弱小国相手に関税アップするくらい・・要は弱いものイジメでお茶を濁すことになるのではないでしょうか?
合理的に考えると貿易収支均衡点までの輸入制限の交渉合意をすれば,相手国との折り合いがつきます。
実際にアメリカはこれまでスーパー301条だったか?で脅しては対日個別交渉で事実上の輸入制限・・電気・半導体その他日本の世界競争力の産業を次々と潰して来ました。
https://kotobank.jp/wordからの引用です。
「スーパー301条とはアメリカの包括通商法の条項のひとつで、不公正な貿易への対処、報復を目的としたもので、1974年に定められた通商法301条を強化するものとして、88年に成立した。規定は次の2つ。#不公正な貿易慣行、過剰な関税障壁を有する国を通商代表部(USTR)が特定し、撤廃を求めて交渉する。#それでも改められない場合には、その国からの輸入品に対する関税を引き上げるなどの報復措置をとる。スーパー301条は88年当時、米国との輸出入が特に不均衡であった日本を主な適用対象として規定されたといわれている。 」
要するに一定の貿易黒字があると,問答無用式に不公正取引国と認定する仕組みです。
最近・それほど古いことではなく不公正貿易監視国リストに日本を指定したと報道されたばかりです。
http://mainichi.jp/articles/20160430/k00/00e/020/155000c
「米財務省は、相手国の為替政策が不公正でないか判断するため、対米貿易黒字が200億ドル以上▽経常黒字が国内総生産(GDP)比3%超▽年間の為替介入規模がGDP比2%超−−の三つの基準を新たに設定。日本は貿易・経常黒字の2項目に該当した。日本のほか、中国、韓国、台湾、ドイツの4カ国・地域も対象に指定された。監視国リストの指定は今回が初めて。」
上記のように数値目標で監視するぞ!と脅し、その先にはス−パー301条の適用があるぞ!と予め脅すやり方です。
戦前の大恐慌のときでも同じでしたが,日本は制裁されると引っ込むしかない弱いクニですから、戦後も良いように叩かれ続けられました。
貿易黒字や経常黒字が大きいと何故不公正取引国になるのか・・その基準で言えば、産業革命の先行者利益によるイギリスの世界制覇も戦後アメリカの突出して貿易黒字による世界制覇も皆不公正な取引の結果になります。
不公正取引とは,賄賂等不純要素によって左右されるものであって,商品・サービスが優れていて競争に勝っているのは不公正ではありません・・子供でも分るる論理・基準ですが,アメリカ的単純思考では,結果が一定額以上の黒字だと「不公正」と言うことになるようです。
結果の修正は変動相場制下の,為替相場等で調整すると言うのが・・中国の場合まだ為替取引の自由が認められない固定相場=政府指定ですから、貿易黒字を簡単操作出来ますが・・自由取引圏では長年の智恵であり国際合意です。
頭を使わなくて簡単で便利と言えばそうですが,(自分が黒字のときには自由貿易を言い募っていて負けそうになると)こう言う単細胞的正義の基準で国際社会を振り回すのでは世界中が不幸です。
いろんな分野で無茶苦茶過ぎる基準を振り回して来たので公正にやってくれる信用がない結果、圧倒的武力・国力がなくなると、世界の警察官・・調整役を張れくなった原因です。
トランプ氏は,中国相手には報復合戦に陥るのが怖くて多分制裁は出来ない・・世界で最も弱い・何の報復も出来ない・・それでいて貿易黒字の大きい日本を叩くのが安直で理にかなっています。
日本は原油鉄鉱石その他資源を大量輸入している赤字分を、対米工業製品黒字でファイナンスしている関係ですから,対米構造的黒字国です。
貿易黒字の批判・・日本叩きの攻撃を避けるために東南アジア〜中国・最近はメキシコ経由で迂回輸出でカバーしている日本です。
他方でアメリカ製造業は日本へ殆ど進出していないので、アメリカが輸入禁止してもアメリカ国内企業は困らないし,日本へ輸出しているのは農産物・食糧中心(今後シェ−ルガス系が加わりますが)で日本は報復的輸入規制できませんので、アメリカには何らの痛みもない一方的関係です。
上記のとおり太平洋戦争の原因になった高率関税に対しても同じで日本はアメリカに何の報復も出来ませんでした・・報復しなければ安全ではなく,報復の心配がないとなれば遠慮なく押し込んで来るのが世界政治です。
ちなみにアメリカの広島・長崎への原爆投下の決断は,最早日本にはアメリカ本土爆撃の報復能力がないと見極めたので決断したと言われています。
戦争終結を早めるためではなく,日本の抵抗力がなくなるのを待っていたのです。
反撃力こそが抑止効果の基礎であること・・非武装平和論の空想・欺瞞性が明らかでしょう。
アメリカの正義に基準は、相手が弱ければ不正と決めつけて「制裁する」強ければ黙っている・・単純基準です。
この二重基準を知っている北朝鮮は何が何でも核武装に走ったり理由ですし,経済規模や武力の大きい中国政府がサイバーテロその他どれほど不正があっても何もしません。
経済非合理な関係・・報復力が全くないのに日本が最近対米黒字を大目に見てもらっていたのは,アメリカの世界的ヘゲモニー維持に協力する役割を忠実に果たして来たコトに対する恩賞に過ぎません。
トランプ氏が「世界でのヘゲモニーはいらない・・各地域大国が好き勝手にやってくれれば良い」と言い出せば日本の貢献は不要になります。
これがアメリカが明治維新以来長年日本を敵視する基本原理・・ロシアの南下政策を阻止する限度で利用価値があり,日露戦争で目的を達すると用済みとなり,戦後は・ソ連の国際赤化政策阻止など・・ソ連崩壊後日本の利用価値がなくなるとすぐに米中結託で日本除外工作が盛んになるなど・・日本と仲良くしていても経済的に何も得をしていない原理が基礎にあります。
現在も、ロシア、中国敵視をやめるとなれば,(アメリカにとって日本への輸出は食糧等中心で断られる心配がないし,中国市場の方が魅力がある点は戦争前と変わりません)日本利用価値が激減しますし,ロシア・中国にとっても日本利用価値が下がります。
これがトランプ氏当選後、直ぐに対日態度を変えたプーチン氏の姿です。
上記は分りよく単純化して書いているだけであって国際政治はもっと「複雑怪奇」です。
国際政治は2国間の単線的利害調整だけでは解決出来ません。

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