中国輸出減+外資流入減による資金不足2

韓国の場合輸出で儲けても大手企業の株式の大半が外資になっている関係で、国民に再分配されないシステムになってしまい国民が貧困に喘いでいます。
中国の場合、韓国のような短期資金・借金そのものとは違い土地を売った地主と同じ立場ですが、一定期間経過で外資が収益を本国送金段階になると金利とは違うものの一定率の収益還元で資金を持って行かれるようになる点は経済的には同じです。
日本で言えば、株式配当利回りと金利動向(借金金利と預金金利の関係)が比例関係にある・・金利を下げれば株価が上がる要因になるのと同じことが中国経済でも言えます。
投資家から見れば、銀行金利よりも配当率が低いと相場変動リスクのある株を買う気持ちになりません・・一定率投資収益の期待があってこそ、リスクのある外国に投資するのです。
即ち投資金は借金でないから返す法的義務はありませんが、投資資金でも一定の収益利回りが見込めないと思えば、外国からの投資が続かなくなります。
収益の見込みがなければ外資は次の投資をしませんし、逆に引き上げが始まりますので、国内資金が足りなくなったからと言って収益還元・・本国送金を妨害することが出来ないどころか、積極的に儲けを保障してやらないと外資に逃げられるとアジア危機・・韓国通貨危機と同じ現象が起きてしまい大変なことになります。
これが韓国の弱みで、国民生活を犠牲にしてでも外資の収益保障して行くしかない状態・・経済植民地化に陥っています。
中国では、輸出黒字が減り始めて資金繰りが苦しくなり始めたそのときに、外資の収益本国送金が(投資直後は普通赤字でしょうが、おおよそ数年〜5年以上経ってから)の方が始まると、それ以上の新規外資流入がないと国内資金不足が顕在化して来ます。
資金流出の方が多く・・マイナスにまでならなくとも、入金超過が減っただけで国内で使える資金が減ります。
土地バブル崩壊が始まって、下支え資金が必要なときに入金超過が減り始まる時期が重なれば大変です。
May 15, 2013「外資流入減1と中国経済」で中国への外資流入が年間1000億ドル前後に達していたと紹介したことがありますが、比喩的に言えば、農家が毎年1000万円ずつ土地を売ってその内800万ずつ貯金していたような時期が約30年間続いていたのです。
農家の農協貯蓄に当たるのが、アメリカの財務省証券等保有額の塁増でした。
リーマンショック直前のサブプライムローンに絡んだアメリカ2公社危機のときに、09/05/08(当時・旧コラムはアメリカ式表記でしたから08年のコラムです)「GSE破綻リスクの怪」で具体的被害額を紹介して中国が最大債権者・・最大被害者であると紹介したことがあります。
日本の金融機関危機で農家の貯蓄が傷を受けましたが、リーマンショックで一番深刻な被害を受けたのが中国政府で、底割れを防ぐために50兆円に上る大型財政支出で世界需要を下支えをするしかなかったのです。
需要を無視した国内投資による矛盾がいま出て来て、バブル崩壊の危機に怯えているのですが、今は外資流入減になっているし、輸出黒字も減少傾向になっているので、2回目の下支えする・・バブルを更に拡大して行くには資金が足りないのではないかと言う視点でこのシリーズでは書いています。
輸出基地専用の投資を求めると投資資金が入るだけではなく、投資した工場が稼働すると輸出が増えるので貿易黒字額と両輪で外貨保有の累増に寄与します。
この両輪で外貨保有が急激に増えていたのですが、外資系工場が漸く稼働するようになって輸出が始まっても(中国にとっては輸出さえ始まれば貿易黒字が始まりますが、企業にとっては)最初の4〜5年は利益が出るまでは行かないし、利益が出るようになれば逆に追加投資を続けるのが普通です。
コンビニなどで言えば、利益が出るようになって本国送金をしているように見えても、他方で利益が出る以上は新規出店投資が続くので、本国への収益送金以上の追加投資入金が続きます。
この辺は、輸出用工場進出でも同じで売れれば増産投資するのが普通です。

貿易黒字と内需2

ちなみに、貿易黒字は国際競争力があって増えるとは限らず、輸出が同額でも国内疲弊・消費減退の結果、輸入が減ってその分だけ黒字が増えることもあります。
(赤字輸出も結果から見れば・悪しき・競争力の1種と言えないこともありませんが・・。)
輸入量が前年度比同じでも自国内消費分が減るとその分だけ在庫になるので普通は輸出ドライブがかかって輸出が増えます。
鉄鉱石輸入量が同じでも国内鉄材消費が減れば、(国内自動車の売れ行き減や建築工事減など)その分多く輸出に回せる(・・回さないと決済資金に困ります)ことになります。
輸入原材料が1割増えて輸出も1割増えていれば・国内付加価値分だけ国内に滞留している・・輸出拡大に連れて国内消費も伸びている・・大雑把な言い方ですが、国民が豊かになっていると言えます。
輸入数量が同じなのに、輸出だけ伸びているとその伸びた分だけ国内消費・需要が減ってこれを輸出に回したことになります。
まして中国のように鉄鉱石など資源輸入が急減しているのに、貿易黒字が増える場合を考えると国内消費減退が半端ではないことになります。
国内需要減退→過剰生産能力のはけ口を求めて、不採算輸出ドライブがかかると、貿易黒字が増えることが多くなります。
輸入減少しているのに、逆に輸出が増えているときには国内需要大幅減・・不況期に黒字が増える関係になっていることが分ります。
韓国売春婦が国内禁止に伴う取り締まり強化に連れて、国内需要減退→海外進出するようになっているのと同じ原理です。
中国はいろんな分野で製鉄に限らず過剰在庫の山になると、輸出ドライブを掛ける傾向があるので、周辺国は値崩れで困っていることが良く報道されています。
この場合、貿易黒字になったから国内が豊かになったとは言えず、逆に貧しくなったので国内消費が減って貿易黒字になっていると見るべきでしょう。
勿論企業も不採算輸出に走る場合、企業会計としては大赤字ですから大変です。
29日紹介した発表によると、韓国の輸入は0、8%減っているのに輸出が2、2%増というのですから、その差額分の国内需要がかなり減退中・・国民生活は悪化していると分ります。
(産業構造が劇的に代わって付加価値率が急激に上がったなら別ですが、1年でそんなに変わる訳がないでしょう)
不景気→国内需要減退の結果、減産が間に合わないで在庫の積み上がった分について、在庫にしておくよりは赤字でも換金した方が良い場合、仮に国内では3割引でないと売れないときに国外の方が景気が良くて2割引程度で売れるとなれば、不採算でも輸出に走ります。
少しでも景気の良い条件の良い方へと販路を求めるのは当然です。
2割引だと原価割れ輸出でも、国際収支では貿易黒字になりますから、企業黒字と貿易黒字は連動していないことがあります。
100で輸入した原材料(鉄鉱石など)を加工する国内生産コストをプラスして500で売れば採算ライン(5%利益)のときに、450で出血輸出すると貿易上は400の黒字ですが、企業としては45の大赤字です。
1つの経緯圏で言えば、需要と供給・生産と消費は均衡が原則です。
輸入数量や生産能力が同じで黒字が増えるのは、その歳の国内需要が減退・・需要不足分を輸出に回したことになります。
貿易黒字は内需減退による分と(採算を取りながら)国際競争力があることによる黒字蓄積の2種類があります。
日本が失われた20年と言われながら貿易黒字を続けて来たのは、その黒字分だけ内需が弱くなった場合と生産能力が過大であったかのいずれかになります。
我が国の場合、この間に着実に内需比率が上がっていますので、国民窮乏化による輸出ではなかったことになります。
それまでの右肩上がりの輸出競争力強化トレンドから競争力低下トレンドに代わったので、企業負担で内需を維持し、盛り上げて来たことになります。

為替変動と物価(金融政策の限界1)

収支均衡の国ならば、現状維持努力が成功しても円は上がらないでしょうが、日本の場合長期間約20兆円もの経常収支黒字が続いていましたので、現状維持努力が成功すれば黒字がそのまま続くことになります。
製品高度化=生産性上昇の努力により、海外よりも高賃金でも貿易黒字を維持出来る・・空洞化阻止に成功すれば、輸出競争力維持=黒字のままですから円が上がってしまうので、再びこれに対する適応努力・・成功すればこれの繰り返しですから、際限ない努力が必要です。
それでも円安の進行による(生活水準低下による)均衡よりは、生産性上昇による均衡努力の方が生活水準が上がる楽しみがありますから、頑張りきれるところまで頑張るしかないでしょう。
高度化努力を怠り貿易赤字になるのを甘受して、結果としてもたらされる円安やインフレよる実質賃金低下に安住するのは、受験で言えば一ランク下の高校や大学を受験して楽しようとするのと似ています。
安易な円安を期待しないで円高期待・・「高くなればなったでそれ以上に努力して切り上がった円相場でも更に儲けられるようにして行くしかない」と腹を決めるのが我が国の正攻法と言うべきでしょう。
円安期待とは、逆説的ですが、競争力を維持出来ないことを見越して・・競争力強化努力が失敗した場合貿易赤字になって円安になります・・を結果的に期待していることになります。
競争力維持努力が成功すれば、これまで通り・・即ち黒字維持によって更に円が上がることの繰り返しですから、この努力が続く限り日本経済はインフレにはならず、デフレ傾向が続くことになります。
貿易黒字の蓄積=円高は輸入物価の下落によってデフレ要因ですし、貿易赤字=円安はインフレ要因です・・インフレ期待も考えてみれば貿易赤字を前提とした変な議論です。
古典的な紙幣供給とインフレ理論が妥当する時代が長かったのですが、今は社会状況が変わっていて、紙幣をいくら乱発しても閉鎖された一国経済と違い海外からいくらでも安い輸入品が入るので、物価は上がりません。
金融政策と言うと難しい理論のようですが、結局は紙幣の量(紙幣も金同様に商品交換対象の商品の1つです)と商品数との需給による価格決定メカニズムの一場面に過ぎません。
例えば古典的理論では大根や牛乳その他商品の供給量が一定の場合、紙幣を2倍供給すれば大根や牛乳その他商品の値段が2倍になる理屈を利用して、金融調節によってインフレ抑制したりデフレからの脱却をして来たのです。
金利の上下や預金準備率の上下は、結果的に市場に出回っている紙幣を金融機関に吸収したり放出することによって量を間接的に調節をする政策であり、量的緩和はズバリ紙幣自体を大量供給する政策です。
しかし消費市場が成熟しグロ−バル化している現在では、これらの政策は底抜けのザルに水を注いでいるようなもので殆ど効果ありません。
大根や牛乳その他商品が消化し切れないほど供給されている日本社会では、給与が2倍になってもその前から飲みたいだけ飲んでいるので)牛乳を従来の2倍も買いたい人がいないどころか殆ど増えないので、価格は同じままで供給された紙幣は預金に回るだけです。
生産材も同様で、輸出低迷による供給過剰状態で低迷しているのですから金融緩和をしても、その資金で思い切って過剰設備を廃棄するのに使うくらいで、設備増強出来る企業は稀です。
(政府から資金を押しけられた銀行も借り手がなく、使い道が分らなくて主に国債を購入しています )

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