個別処理から事業転換等の処理システムへ

2017年12月10日現在の(内容は施行後5年経過時点のようです)裁判所のホームページhttp://www.courts.go.jp/saiban/wadai/2203/index.htmlによれば以下の通りです。

  1. 労働審判制度とは
    労働審判制度は,個々の労働者と事業主との間に生じた労働関係に関する紛争を,裁判所において,原則として3回以内の期日で,迅速,適正かつ実効的に解決することを目的として設けられた制度で,平成18年4月に始まりました。制度全体のイメージは下図のとおりですが,労働審判手続では,裁判官である労働審判官1名と,労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名とで組織する労働審判委員会が審理し,適宜調停を試み,調停がまとまらなければ,事案の実情に応じた解決をするための判断(労働審判)をします。労働審判に対する異議申立てがあれば,訴訟に移行します。

労働審判制度

 2. 制度の運用状況

 制度開始から約3年半の労働審判事件の運用状況をみると,審理に要した期間は平均で約2か月半です。調停が成立して事件が終了する場合が多く,労働審判に対する異議申立てがされずに労働審判が確定したものなどと合わせると,全体の約8割の紛争が労働審判の申立てをきっかけとして解決しているものと思われます。
こうした労働審判事件の解決の状況からすると,制度導入の目的は一定程度達成されていると考えられます。また,当事者等からも事案の実情に即した柔軟な解決が図られているとして,おおむね肯定的な評価を受けており,事件の申立件数も年々増加しているところです。
なお,現在は各地方裁判所本庁のみで取り扱われていますが,制度開始5年目を迎える平成22年4月から,東京地方裁判所立川支部と福岡地方裁判所小倉支部でも労働審判事件の取扱いが開始されます。

私の経験で知っている限りでは、ほとんどの事件では金銭解決で終わっています。
借地借家法の正当事由の判定で書いたように現在社会では不確実性を嫌います。
借家法との正当事由の認定と違い、上記の通り労働審判制度は数ヶ月でケリがつくことが多いので、非常に使い勝手の良い制度で司法界の大ヒット作品というべきでしょう。
昨日紹介したように労働審判制度は現在まで、約10年以上におよぶ試行的運用の結果、労働者も自分を必要としていない企業にしがみつきたい人は滅多にいない・相応の金銭解決で納得する人が多い現実を直視した方がいいのではないか?
という意見がふえてきます。
上記統計では約2割が裁判手続きに移行しているようですが、私の経験ではこういうことがありました。
その事例では、企業側に何の落ち度もない勝訴予定事例でしたが、裁判所の提案は日本的解決の推奨・ともかく解決金として、「1ヶ月分の支払いをしてくれないか?」という和解案の提案でした。
企業としては、数十万の支払いで済むならば、その方がコストが安く済むので訴訟に移行しても負けることがないとしても時間コストその他で和解案に応じましたが、(企業の方は不当な訴訟をされたと怒っていましたが・・)これが金額の大きな事件であれば、訴訟に移行する場合も結構あるでしょう。
このように訴訟に移行した場合でも金銭解決の方向が同じで若干の修正で終わった事件がいっぱいあるはずです。
一般民事の控訴事件でも地裁での和解案の数字の開きが大きすぎる場合に一旦判決をもらって高裁での若い前提で控訴になる事例が圧倒的多数で、(1審の和解ではまだ・判決は予想でしかない・弁護士からこれまでの流れでは、こちらが勝ちそうとか負けそうという予想でしかないので、判決が出ると読み違いがあります・・勝敗がはっきりしないで、どちらも強気になるメンがあるのですが、高裁では一審での勝敗が決まっているので、(高裁が記録を読んだ結果勝敗をを逆転させる気持ちがなければ)すぐに1審判決線上での和解手続きに入るのが普通です。
上記の通り労働法分野では、借地法の正当事由のように長期裁判を必要としなくなって来たのですが、その代わり(三菱銀行の例で分かるように)事業分野変更の場合、(遅刻が多いとか失敗が多いなど)個別事情によらずに画一的大量処理が必須ですので、もともと個別事情中心の裁判に馴染みません。
企業も個人もお互いに個人的感情の行き違いでもめているのではなく、トラブル・裁判までしたくないのですから、トラブルのない場合も金銭で解雇できるスキームができないかというのが、最近の議論です。
今朝の日経新聞朝刊19pには、成長分野シフト企業の収益貢献例が出ています。
以下は私の要約です。

「① ミネビアではスマホ向け液晶部品を中心とした電子部品事業が急成長している。7年前には機械加工事業が営業利益の8割を稼いで電子部品は2割に満たなかったが、携帯電話の普及を見越して世界最大手だったパソコン用キーボードから撤退した」
② 大和ハウス工業は、人口減を見据えて住宅部門から事業施設へ転換して成功している
③ TDKはスマホ向け2次電池などフィルム応用製品で6割を稼ぐ,数年前まではパソコン用ハードデイスクの磁気ヘッドを中心とした磁気応用製品が利益の7割を占めていた。
④ 日産化学は、動物向け医薬品強化・・1割に満たなかった農業化学品事業がでは稼ぎ頭だ

果敢な事業転換には畑違いの方向への社内配置転換では(基礎的技術が違いすぎて)無理なので、短期間での人材入れ替えが必須です。

中韓バブルの行方3

メデイアは格差を強調するため(いわゆる角度付け報道の一例です)に僅か何%の富裕層が富みの50%を握っているなどと強調しますが、何%の富裕層と言うときには全人口を前提にしているとすれば・・その家族やその周辺で恩恵を受ける人皆貧困層の分母に数えていることになりそうです。
大手企業社長夫人などの多くは無職ですが・・その人たちが貧困層に計算されることになるのでしょうか?
「層」と言うからには、実際にその収入で消費出来る人など一族を富裕「層」の人数に加えるべきではないでしょうか?
大金持ちであればあるほど比例的に恩恵を受ける取り巻きが増える関係ですが、これを富裕層に加えると・・例えば数%の富裕層が富みの半分を握っていると言う表現が10数%の富裕層が・・と変わります。
これを消費の場面で見ると、一人で食べたり旅行しても楽しくないので家族4〜5人で食事し、旅行し観劇するのが普通ですから、クルマやパソコンなども子供に買い与えるので、消費の量から逆算すると4〜5倍の富裕層がいるような計算になります。
旅行者数やクルマ購入数からの逆算が本来の分布でしょう。
中国の富裕層0、1%で140万人しかいないとしても、その家族で高額旅行し飲食し、クルマを買うのが普通ですから、統計数字の何倍もの人が富裕「層」の生活をしていることになります。
裸官一人に群がる周辺が10人前後いてもおかしくありません。
富裕名義本人は権力抗争に命がけ・・忙しいので楽しむ暇がなく、その奥さんや子供らがスポーツカ−を乗り回し、海外留学したりし食事し観劇し旅行したり良い思いをしているのが普通です。
消費量が大量だから底辺底上げが進んでいるとは限らない・・の旅行者数やクルマ販売量等が、同数の富裕層(者)がいるとは限らない・・極端な格差社会でも結果はそれほど変わらないことを前提にする必要があるでしょう。
格差社会でもその国のトータル経済力にある程度消費が比例する・要は自分の稼ぎで遊べるか、親や雇い主・お金持ちのお相伴でゴルフしたり・・あるいは寄付などで遊べるかの違いです。
大分前に書きましたが、金融・知財等の特殊一握りの巨額稼ぎをする人から税で取り上げて(アップルの巨額利益・・株式時価総額を例にするとその恩恵は株主にしか及びません・・労働現場は中国です)生活水準平準化を図るためにフードスタンプや生活保護レベルの引き上げをして貰うよりは、自分の稼ぎで楽しみたいのであってそのための職場の提供こそが重要です。
ところで、韓国の場合も、海外旅行熱が盛んで15年には日本を追い抜いたと報道されています。
http://www.recordchina.co.jp/b146929-s0-c30.html
配信日時:2016年8月8日(月) 9時20分
「韓国観光公社、韓国統計庁、日本の法務省などによると、15年の韓国人の海外旅行者は1931万人で、前年より20.1%増加した。一方、日本は4.1%減の1621万人に留まった。」
ビールでもピアノでも普及し始めると上昇率がすごいですが、一旦普及すると安定するのと同じで日本の場合は既に「海外旅行熱は10数年前に一巡しているから」と言うのが私の意見ですが、いずれにせよ、今のところ台湾・中韓〜新興国の海外旅行熱が盛んであることが分ります。
内需奨励・・消費者社会になると不足品の供給入手優先を卒業し、より高度な楽しみを身に付けたい階層が増えると先進地域へ行きたくなる・・しかもリピータになる傾向があります。
海外旅行者数を日本と比較することに意味があるのではなく、ここでは中韓の観光客がへらない・・世上中韓経済が大変と言われている割に、一定の安定階層の存在が認められる点が重要です。
個々人が非正規雇用化の増大で大変なのと、国全体が大変なのとは違います。
本当に生活が苦しくて大変ならば、海外旅行する人は滅多(ただし不法就労・・売春・窃盗集団が旅行名目的で日本に入って来る・こう言う人は貴金属強盗や窃取などするとその日のうちに出国するなど超短期に出入りを繰り返すのでその分統計数字としては大きく出ます)にいない筈だからです。
無職無収入でも親の余録で何回も日本に来て高級ホテルに泊まる人が一杯いるでしょう。
この階層の存在が先進国の低金利で借りた借金や投資資金流入が回り回って潤っているとすれば、金利が上がると・・どうなるか?・・底が浅いことになります。
平成27年分ですが、韓国人の日本での消費額を見ておきましょう。
訪日韓国人観光客かどこから日本に入国しているのかも特徴的です。
日本へ入国の際には自国からより近い空港、福岡空港や関西国際空港の利用率が他の国と比較して高く、特に福岡空港は各国からの観光客全体の平均が7.8%に対して訪日韓国人観光客は19.7%です。

訪日外国人1人当たり旅行支出と旅行消費額:観光庁 訪日外国人消費動向調査より引用
訪日外国人1人当たり旅行支出と旅行消費額:観光庁 訪日外国人消費動向調査より引用

韓国の場合、日本との関係が深く気楽に往来しているリピーターが多い関係・割安系を自分で選ベルようになっている点が考慮されるべきですが・・。
韓国内需拡大を見ておきます。
韓国は反日運動以降外需に頼る経済がうまく行かなくなっています。
基幹産業とも言うべき造船事業の受注ゼロ化に始まって韓信海運の倒産・・現代自動車の減益・サムスンスマホの爆発など弱り目に祟り目とはこのことです。
ただし、この数十年に及ぶ日本企業模倣の産業スタイル・・俗にいうところのコバンザメ商法が壁に打ち当たったことによる脱皮の苦しみですから、うまく行けば、次のステージに上がれます。
これをチャンスとして独立国らしい自前の産業構造に転換出来るかどうかがこの先の明暗を分けることになります。

海外進出と構造転換1

グローバル化前の日本の従来型産業の殆どは、時間の経過で国内生産を縮小して海外で代替生産する方向になって行くので、国内生産の縮小・・これに関連する国内需要減退は留まるところがありません。
内需と言っても末端消費よりは、国内生産あるいはこれに必要な投資に伴う内需・消費が大きいので、これが縮小して行くと内需も大きく減少して行きます。
(白物家電の国内生産撤退どころか、今年になってテレビ生産すらパナソニックが全面撤退したように、従来型産業の国内生産は最近の超円高もあってドンドン縮小しています)
金利を下げたり紙幣供給を増やしてもどうなるものではありません。
最初はどうして良いか分らずにバブルを招きましたが、その後は賢くなって円キャリー取り引きなどで海外へ資金を逃がしていたのです。
昭和50年代初めころにコリー犬を飼っていたことがありますが、お腹が大きいのにこちらがパンをやると喜んで食わえるのですが、どうするかみていると庭の暗闇に行って土を掘って鼻で土を押し付けて埋めているのです。
埋め終わると如何にも食べたかのような顔をして戻って来て、尻尾を振っているのには驚いたことがあります。
政府は、バブル崩壊後不景気となれば、バブルで失敗したのを忘れてバカみたいに再び金利下げをして紙幣大量供給しますが、国民はバブルで一度懲り懲りしているので、喜んでお金を受け取りますが、最早宝飾品や土地にお金は向かいません。
(笛吹けど踊らず・・日本人は犬に負けていませんよ!)
犬が庭にパンを埋めていたように低金利を利用して円キャリー取引等で利ざやを稼いでいたのです。
政府はいくらゼロ金利にして量的緩和をしても景気が良くならない、消費が増えないというのですが、国民の方が政府の言うとおりに踊らない・利口であっただけでしょう。
以上の経緯をみれば金利の調節が悪くて平成バブルになったのではなく、国民の意識がまだ稚拙だったことが原因でバブルになったことが分ります。
以上の推移を見る限り国内産業構造の転換がない限り金利を下げても紙幣大量発行しようがしまいが,国内総生産・・これに必要な国内需要が現状維持どころか急激に減少して行かざるを得なかった筈です。
日本経済は、バブル崩壊後国内生産力の海外展開が進み、物によっては逆輸入が普通になってきました。
(日産マーチが全量タイ生産になった・・裏返せば輸入に頼るようになったニュースも数年前にありました)
上記のように従来型国内生産が縮小し、逆輸入が増える一方でしたが、October 18, 2011「国際競争力低下と内需拡大1」その他で国際収支表を紹介したようにバブル崩壊後リーマンショックまでの約20年間の日本の貿易黒字は縮小ではなく、ほぼ現状維持でしたし、この間の国内総生産はそれまでの高度成長ではなくなったというだけであって、次に紹介するように約25%ものプラス成長を続けていました。

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