中朝・修正装置なしの体制4(国外脱出の自由)

中朝での専制体制が続くようになると、困りきった国民が逃げ出せるかのテーマで6月15日以来書き始めていましたので、香港騒動はその関連意見になります。
南シナ海での埋め立てに対する国際司法裁判所の判断が出ても「紙切れに過ぎない」と公式発言するなど国際信義・正義など無視すれば良い・・行動基準は裸の武力のみという中国・朝鮮の歴史論理が国外に半分開かれた香港でも通用するかの実験です。
列強による侵略を受けていた自分が弱かった時点では養晦韜光戦術で「武力・権力さえあれば何をしても良い」という基本原理・中華の栄華の本質を隠していましたが、自分が世界最強国に近づいた時点で、我慢しきれずについに本性を表し始めたということではないでしょうか?
上記論理・武力・権力さえあればどんな残虐なこと、近隣国侵略をしても良い論理に従えば、他国との約束も守る必要はない・香港返還時の約束・・一国二制度を骨抜きにし、中共政府による香港支配強化をするのは中国の勝手になります。
ただし返還時の約束を破られても英国は報復能力がありませんが、交通機関の発達した現在中国の論理を貫徹・成功すれば、香港脱出する香港住民(資本流出)が増えたでしょうし、自由貿易都市としての香港の信用ががた落ちになっていたでしょう。
中国や香港住民のためには、香港行政府と中共政府が恥をかかずに条例制定強行成功した場合と、国際世論に負けて棚上げ・撤回した場合、どちらが国民・住民にとってよかったかの教訓です。
漢承秦制の原則とは、自由な言論による社会の発展など眼中になく政権さえ維持できればいいという権力維持の思想であって、国家人民の将来には関係がないという思想でしょう。
国家運営に反対する人・・うるさい人物は、自費で国外脱出してくれた方が国外追放したり国内監禁する手間が省けるので都合が良いという選択(開き直り)になりがちです。
去る者は追わずと言えば、懐の広い政治とも言えますが、長年月に亘って世界中に膨大な数の華僑が散らばっている事実を見れば、如何に苛酷な政治がまかり通っていたかが明らかです。
今になれば豊かな順に海外旅行し留学しますが、政府の補助金よる計画的移民政策の場合は別として、まともに働いていてもそれほど蓄えのできない時代に庶民が命がけで見知らぬ異郷に流れていくのは、よほどの政治圧迫や困窮があった場合に限られます。
中国歴代王朝の崩壊は、農民が食えなくなって家を後にして流民化・どうせ明日には一家飢え死にしかないという最後の最後に命もいらないという段階で起きたものですが、広大な砂漠や険阻な山を越えあるいは、ボートピープルになる国外逃亡の多くは、途中で命を落とすリスクが高かった・それほど切羽詰まっていた点は同じです。
北朝鮮脱出者かどうかか不明ですが、時折新潟〜佐渡近辺にボロ漁船に多くの死者の乗った船が漂着するのは今でも命がけでも逃げた方が良いということでしょう。
北朝鮮を除けば、現在では庶民でも気楽に海外旅行できる時代ですから、歴代中国王朝崩壊時ほど一家あげて流亡の民になる・・命がけになるほど困窮しなくとも、ちょっとした不満程度でも小金さえあれば国外移住が簡単です。
このように見ていくと旧ソ連や北朝鮮のように出国の自由のない国って、国民の為の政治ではなく、権力者の為の政治をしている・・自国民に対してひどい政治をしている自覚があることになるのかな?
商人や商品の信用は国家が決めるのではなく市場が決める時代ですが、国家の良し悪しも労働流動性と居住移転の自由の保障があれば、個々人が自己判断で決められるようになります。
現在すでにハイレベル職種では各国人材の取り合いですから、高級人材が国や企業を選べる時代です。
世界企業も早くから活動しやすい国や地域を選ぶようになっています。
イギリスのダイソンだったかがシンガポールに本社を移すとだいぶ前のニュースに出ていましたが、本社を移すのはまだ少ないものの企業の工場や店舗・研究所等は早くから本国だけでなく適地に移転したり立地しています。
最下層労働の場合、自国で最下層で働くよりよそ者になって不便でも、先進国へ行けば10〜数倍以上の給与になるので先進国の3K職場に向けて出稼ぎ移民が増えます。
これが外国人労働者増加の社会問題の根源です。
西欧にアフリカや中東から移民が押し寄せてこの数年大問題になっていますが、先進国ではいわゆる3K職場では求職者が減る一方で求人難に困り、外国人労働者を引き入れてその穴埋めに使ってきました。
西欧では必要な量だけ入ってくるなら(非正規雇用なの不景気が来れば簡単に解雇でできるし)都合の良い仕組みでしたが、必要以上入ってくるどころか押し寄せてくると「過ぎたるは及ばざるが如し」で「招かれざる客」に変化しました。
西欧とアフリカ諸国とは貧富の格差が激しいので、極端な話、元々裸足で歩き回っていて粗末な草葺の家に住んでいた人を想像するのは時代遅れかも知れませんが、先進国の待遇の良い?収容所に長期間留め置かれてもその程度の劣悪環境をものともしない貧困者の群れが大量に押し掛けるようになるとお手上げです。
(例えば私の知っている品川の入管収容施設は入管法違反事件で検挙された人たちの審査期間中の収容施設で難民の臨時収容施設とは違いますが、冷暖房完備の近代ビルですし、臨時でも先進国作る以上は保険衛生基準も一定以上でしょうし、ブリキ屋根の掘っ立て小屋・汲み取り便所にはならないでしょう)
日本では同胞意識が強いので3k職場の合理化・女性でも働きやすい環境整備や機械化に励み、できるだけ外国人労働者利用を避けてきましたが、西欧では安上がりという経済合理性だけで安易大量に引き入れた咎めが出てきました。
ちなみにドイツの外国人(2、3世を含めた)人口比は以下の通り約23%です

ドイツで増大する移民と経済への影響

2017年11月28日
住友商事グローバルリサーチ 経済部伊佐 紫
ドイツは欧州一の移民大国
ドイツの人口は長らく死亡数が出生数を上回る自然減にあるが、移民の流入に伴う社会増が自然減を上回り人口減少を食い止めている(図表1)。ドイツ連邦統計局の人口統計(2016)によると、現在、ドイツに居住する外国人は約896万人で全人口8,243万人の約11%を占め、ドイツの外国人比率は他の欧州主要国と比較して最も高い。英仏では旧植民地から多くの移民が流入しているのに対し、ドイツでは高度経済成長期の労働力として1950年代からトルコ、イタリア、ポルトガルなどから流入した。当時これらの人々は一時的な滞在を前提としていたが、その後ドイツに家族を呼び寄せ定住し、ドイツで生まれ育った2世、3世が増え続けた。現在、こうした移民の背景を持つドイツ人を合わせると全人口の約23%に達している(図表2)。
ドイツの生産年齢人口の約3割は移民
移民の年齢別人口統計(2016)をみると、15歳以上65歳未満の生産年齢人口の割合は移民全体の約65%を占める(図表4)。また、ドイツ人全体の平均年齢は46.2歳であるのに対し、移民の平均年齢は35.4歳と若い世代が多い。さらに、ドイツ全体の生産年齢人口に占める移民の割合は約24%に上る(図表5)。

移民の年収別人口統計(2016)では、ドイツにおける平均年収は月額2,620ユーロ(工業・サービス・建設部門の賃金/2014, Eurostat)であるのに対し、移民の年収は月額500ユーロ以下、同500~900ユーロ、同900~1300ユーロの範囲に多く、ドイツにおける平均年収よりも低くなっている(図表7)。

表現の自由と組織内意見

話題が報道の質にずれましたが、表現の自由・・海外で日本人が日本批判する自由に戻ります。
August 17, 2018「表現の自由と国外での自国批判(NGO2)」の続きです。
政党であれば思想信条の一致で参加しているはずですから、対外的意見が違えば内部で意見を言うべきでしょうし、意見が合わなければ離党自由ですから党内に留まりながら外部に不満を言うのはルール違反です。
企業人その他組織構成員もみなそうです。
December 19, 2017に紹介した共産党の袴田事件はこれをいうものでした。
しかし日弁連は思想信条の一致共鳴で組織ができているのではなく、各都道府県に(都だけ3個)一つの強制加入組織ですから(千葉県に事務所がある限り、千葉県弁護士会から離脱自由がありませんし、弁護士をやめない限り日弁連から出られません)いわば地方公共団体のような組織・千葉市に居住する限り千葉市住民になるのと同じです。
同じ千葉市住民だからといって、皆同じ意見でなければならない道理はありませんし、千葉市長や県知事がどこかの政党を支持していても、市民や県民がそれに従う義務はありません。
市議会や県議会がいくら民主的に運営された結果であろうとも出来上がった条例等を批判するのは自由でしょう。
・・民主的に選任された市長の行動について、居住地でない東京や大阪で批判意見を発表するのは、文字通り言論の自由です。
労働法関連意見発表について、一般会員に対するアンケート調査があったかどうかすら覚えていないのですが、日弁連は政治的意見に関しては会内アンケート調査しない不文律でもあるかのような印象を受けますので、一切やっていないのではないでしょうか?
私が不勉強なだけか知りませんが、日弁連が19年12月13日に紹介した意見書発表にあたってどうやって会内意見集約しているかすら全く知りませんし(関連委員会意見・労働関連委員会の積み上げだけか?)、一般会員に対するアンケートが仮に来ていてもその当時関心のない時には答えないことが多いし、私の記憶を素通りしているのでしょう。
市民が民主的に構成されている市議会で決議したことに(条例等の効力を受けますが)固有の意見を言えるように、日弁連が民主的手続き・・関連委員会議論を経て決めていることは有効な決議であることと、会の外で反対の意見を言う権利がなくなるものではないでしょう。
日弁連やや千葉県弁護士会の意見は発表されている通り「会の意見であることを認めるが、自分の個人意見はこう言う意見だ」と言う表明権がなくなるとは思えません。
ところで、千葉市をよくするために県内の他市長と連携したり、国内での応援も必要かもしれませんが、それを国外に広げることが許されるのか?
千葉県を良くするために、国外で政治運動することが許されるのか?が今の所私にはよく分かっていません。
文化活動では、国内で評価されない発表が国外で先に評価されて、そのうち国内でも評価されるようになることがあります。
それとどう違うかでしょう。
政治的な利害関係のある国で、そのテーマで自国批判をしてその国で喝采を受けるのではおかしなことになりますが、文化相違の場合、直接的利害のないことがその違いでしょうか?
人権意識のレベル・・どの程度の男女格差が許容範囲かも、文化意識の一態様ですが、その気になれば政治に絡めるのは簡単です。
最近ユネスコのあり方が政治問題化し始めたのは、これを中韓等が露骨に利用するようになったからです。
先進国は文化で後進国に批判されるようになるとは、当初想定しなかったでしょうが、
中韓が自国の人権侵害を棚に上げてシャープパワーを駆使した結果事実上ユネスコを牛耳ってしまっているような印象になってきました。
中国のシャープパワーについては、December 22, 2017,表現の自由と外国の影響(中国シャープパワー)2」まで紹介しました。

近代立憲主義6と憲法改正5(内心の自由と規制の必要性)

慰安婦報道でも報道機関は要所要所に「〇〇が事実とすれば・・」などの逃げ道を要所要所に用意していたのでしょうが、それを視聴者や読者は「書きっぷり」で判断しているのです。
「実務法曹にとっての近代立憲主義」その他の主張は、本気でそのように思いこんで欲しいかのようなトーン・ぼやーっと読むとそういう方向へ引きずり込まれそうであり、実際にそのように思い込んでいる人がいること・成功していることが上記引用文でわかります。
人権は崇高である→生命侵害は人権侵害の最たるものであり許されない=死刑廃止論・・このような単純論理が成立すれば、一般的刑罰ならば何故許されるかの説明がつきません。
生命を奪うのも自由を奪うのも人権侵害に相違ないのですから、何故生命侵害だけゆるされないか意味不明の論旨です。
彼らは生命だけは特別扱いすべきというのでしょうが、憲法のどこにも書いていません。
都合の良いところは憲法に書いていなくとも重視するし、都合の悪いところは書いていても無視するという非合理な価値基準です。
もしも刑罰一般が人権侵害で許されないならば、ホッブスのいう「万人の万人に対する闘争」の原始・自然状態になり、近代社会・刑法や刑事訴訟法が成り立ちません。
(実は、人間の原始社会どころか、動物界でも(狼でも魚類でも猿でも馬や鹿のグループでも同種同士ではそんな闘争世界はありませんから「リヴァイアサン」の前提は、実際にそういう社会があるというのではなく、観念的に「そういう段階があり得る」というだけでしょうか?)
思想信条の自由があっても、国家転覆罪はまだ内乱行為をしていない陰謀段階でも処罰されるのが世界標準です。

刑法
第七十八条 内乱の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の禁錮に処する。

共謀罪法案の時に近代法の原理に反するという意見が流布されましたが、世界標準がどうなっているかという説明が一切ありません。
政府の説明は以下の通りです。
http://www.moj.go.jp/content/000003507.pdf

共謀罪等の創設を求めている国際組織犯罪防止条約は,既に120か国によって締結されており,欧米先進国でも既に共謀罪等が設けられています。
我が国も,法案の「組織的な犯罪の共謀罪」を設けることによって,これらの国々と足並みを揃え,国際社会と協調して重大な組織犯罪から国民をより良く守ることができることになります。
国民の方々が不安に思うようなことは全くありません。

   アメリカ  ○ 共謀罪  (連邦法第18 編第371 条)

二人以上の者が犯罪を犯すこと等を共謀し,何らかの ある者が,他の者と犯罪行
そのうちの一人以上の者が共謀の目的を果たすために何らかの行為を行ったとき

  イギリス  ○共謀罪 1977年刑事法第1 条第3条

ある者が,他の者と犯罪行為を遂行することにつき合意したとき

  ドイツ  ○犯罪団体の結成の罪  (刑法第129 条)

犯罪行為の遂行を目的・活動とする団体を設立した者,このような団体に構成員とし して関与した者,支援者を募り又はこれを支援 した者,

  フランス  ○凶徒の結社罪 刑法第450ー 1条

重罪等の準備のために結成された集団又はなされた謀議参加したとき (準備のため、客観的行為がなされることをする 。)
日本の共謀罪

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS14H4D_U7A610C1M11000/
2017/6/15 18:56

15日に成立した改正組織犯罪処罰法のうち「共謀罪」を規定する条文は次の通り。
(テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画)
第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

上記を比較しても先進諸外国と比べて日本の法律だけが、近代法理に反するとは到底思えませんが・・。
近代法の法理違反の運動をする勢力がどの部分が違反になるかの主張責任があるのではないでしょうか?
諸外国の法制度の要点は、内心の自由も絶対ではない・・テロ目的などの内容によって幅する方向性であり、処罰の要件・なんらかの外形に現れた時に処罰する・・無辜を誤って罰しないように足並みを揃えていることが分かります。
「内心の自由が絶対ではない」というのが現代的法理であり、左翼系の主張は文字どおり現代以前の過ぎ去った近代法の法理から進化しない超保守論理です。
マスメデイアが諸外国事例を一切報道しないで反対論ばかり大きく報道しているように見える(私が見落としているだけかもしれませんが・・)ことじたい中立性違反の疑い濃厚です。
思想表現の自由があっても他人の名誉毀損や詐欺行為は許されませんし、わいせつ表現の場合、・・違法の評価を受けます。
基本的人権といっても公共の利益に反しない限度で許されているにすぎませんし、これに反する場合には、刑罰を受けたり損害賠償を命じられることで社会秩序が保たれているのです。

憲法
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

最近の立憲主義の強調は、学問というよりも人権は、(運動体の本命ターゲットは死刑廃止よりは平和主義→人命尊重でしょうが・・)憲法以前の(天賦不可譲の)権利だから憲法改正でも許されない・・社会にそのような誤ったイメージを定着させるための政治運動論としていきなり声が大きくなってきた印象です。
人命=人権の最たるもので最尊重されるべき→戦争状態は人権侵害の最大 被害行為→平和主義は憲法以前の人権原理である。
「憲法改正対象にすること自体が許されない」という飛躍論法のようですが、流石にプロたるものそこまではっきりと言えないものの、思わせぶり表現で素人・大衆がそのように飛躍して思い込むように期待し、仕向けているように見えます。
憲法以前の権利ならば、憲法がどうなろうと守るべき規範である・改正の影響を受けないはず・・関係ないのになぜ反対するのか不思議ですが、こういう論理矛盾など一切気にしません。
・・学者としては「そこまで私は言っていないよ、『平和主義は日本を守るための方便でなく、人権を守ることと同じ』と言っているだけなのに素人が誤解しているだけだ」という世論誤導が目的の政治運動でしょうか?

フェイクニュースと思想の自由市場論6

中国に世界支配されたくない日本人としては、今のところアメリカによる中国叩きの激化を喝采している雰囲気が多いようですが、これまで世界支配者であったアメリカ圧倒的優位を前提にした「思想の自由市場論」にのっかって、情報操作してきたのを中国もロシアも同じことをアメリカにしたことを怒っていることになります。
情報操作・・フェイク報道の破綻を見てきましたが、17年12月19日頃から23日頃まで紹介した「法曹実務にとっての近代立憲主義」という本でも思想自由市場論とヘイトスピーチ論の関係が論じられています。
同書59pからの論文では、思想の自由市場論を守るためにか?安易なヘイトスピーチ禁止論を取らない立場を堅持していますが・・。
2018年1月にトランプ氏がCNNなどを対象にしたフェイクニュース大賞を発表したことをFebruary 13, 2018,「表現の自由と思想の自由市場論2」 に引用紹介しましたが、トランプ政権と大手メデイアとのフェイク発信に対する非難報道が加速して来ました。
これに対する日本メデイアの報道は政権による報道圧迫として批判一色の印象ですが、以下の記述もあります。
https://news.infoseek.co.jp/article/japanindepth_38145/

日本にもフェイクニュース大賞を
Japan In-depth / 2018年1月22日 18時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
日本の主要新聞はフェイクニュース自体認めず、トランプ氏によるメディアの抑圧であるかのように扱っている。
・メディアの正誤のチェックは重要。日本でもフェイクニュース大賞を設けたらどうか。
主要メディアの報道や論評のなかで、最もひどい虚偽や誤断、さらには捏造とみなせる実例を指摘して、順位をつけ、「賞」の対象にするというこの行為は一見、ふざけた冗談のようにみえても、ちょっと考えると、実はきわめて重要な意味があることがわかる。
日ごろアメリカでも日本でも、新聞やテレビ、雑誌などニュースメディアが強大な影響力を発揮するなかで、虚報や誤報は明らかに多数、存在する。だがその誤りを制度的に認定し、訂正するメカニズムがないからだ。つまり報道される側の一般国民や組織、団体にとってメディアのミスにきちんと反撃する方法が訴訟という極端な方法以外にはないのである。メディア側のたれ流しともいえるのだ。
こんな背景のなかでは、報道され、論評される側がメディアのミスを定期的、制度的に正そうとすることは民主主義の基本ルールにも合致するだろう。それでなくてもメディアのおごりが目につく今日このごろである。
主要メディアの側はこのフェイクニュース大賞に対して、「トランプ大統領が自分を批判するメディアに対してただ攻撃しているだけだ」と、なお傲慢な反応をみせる。だが現実には同大統領側が指摘した報道や評論類はみなまちがっていたことが証明されているのだ。その点に触れず、ただ批判すること自体がけしからんと開き直るメディア側の態度はまさに傲慢と評するほかない。

なかなかの卓見です。
今回表面化しているトランプとクリントン候補のどちらがより多くフェイクニュースに関与したかで終わらず、中期的にはネットに限らず放送全般へのフェイク・変更の有無→その後の結果との合致率のチェック報道・チェック論・健全な思想競争の土俵作りが始まると見た方がいいでしょう。
アメリカ(日本のメデイア・思想界も同様)は自分が世界の言論市場を完全支配している時には「思想の自由市場に委ねるべき」などといってきたのですが、アラブがアルジャジーラの放送開始で自己発信力を入手し一方でネット発信が普及して発信者が草の根化してくるとスパイ等を利用したメデイア支配に無理が出てきました。
アメリカは自分のコントロールできている間は、「思想の自由市場を守れ」といってきたのに、アメリカのいうことを聞かなくなると取り締まりの必要を言い出したイメージですから自分勝手な印象です。
アルジャジーラに対するコントロールが効かないことに対するアメリカとその応援を受けるサウジの鬱憤が以下の事件を引き起こしました。
サウジのカタールに対する昨年5月の断交・包囲網作りは、アメリカ得意の思想の自由市場論ではどうにもならなくなって、(アメリカが背後で?)アルジャジーラの全面圧迫に動き出したことがわかります。
アルジャジーラに対するアメリカの露骨な圧迫があったでしょうが、アラブ社会の支持でしぶとく生き残り、いつの間にかサウジ王家の存続を脅かすまで育って来たようです。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/07/1-44.php

サウジアラビアなどによるカタール断交から1カ月以上が経過した。受け入れ困難な13項目の要求を前に、カタールは国家主権を盾に拒否している。衛星テレビ局アルジャジーラの閉鎖など、大半の要求は主権に関わる問題で受け入れ難く、長期化は必至の情勢だ。サウジ側は、カタールをバーレーンのような属国的な存在にすることで独自の外交政策の骨抜きを狙う。最終的にタミム首長体制の転換に至る可能性があるとの見方も浮上している。

https://www.newsweekjapan.jp/hosaka/2017/06/5_2.php

もともとサウジアラビアのメディアが英BBCのアラビア語放送を引き継ぐかたちでアラビア語のニュース・チャンネルをつくろうとしていたところ、カタルが横から入り込んで、ジャジーラを設立した経緯があり、しかも、そのジャジーラが周辺国にとって都合の悪い放送をすることで人気を得たため、サウジのみならず、同盟国のGCC(湾岸協力会議)諸国まで激怒させる結果となっていた(ちなみにアラビーヤはサウジがジャジーラに対抗するためにつくったニュース専門チャンネル)。
よくジャジーラを自由なメディアという人がいるが、もちろんそんなはずはなく、局員のなかには特定の政治的イデオロギー(有体にいえば、ムスリム同胞団)をもつものが少なくないし、何よりカタル現体制にとって都合の悪いことは一切いわない。

アメリカがメデイア支配によって言論界を支配しているときには、アメリカ発の「思想の自由市場論」のまやかしで、自国有利な情報だけ一方的に流す制度保障をしていたことになります。
これがネットの発達でマスメデイア支配だけでは統制支配できなくなった・大規模資本がなくとも個人が発信できるようになると、これをロシアや中国の影響を受け始めたことに対する反撃の必要性に目覚めたことが背景にあるのでしょう。
これまでは他国思想侵略するばかりだったのが、自分が攻撃支配される側に回ってしまったということです。
この辺は自分が核武装するのはいいが、北朝鮮が核武装することにイキリたっているのと構図が同じです。
日本にとっては中国や北朝鮮にのさばって欲しくない人がおおいでしょうが、それとは別にアメリカの自分勝手さをここでは書いています。

フェイクニュースと思想の自由市場論5

モンゴルが急速に支配地を増やしたのも同じ原理で、交換すべき産物のないモンゴル族は接触した異民族と交易交渉出来ないので、略奪しかない・武力勝負・・勝つか負けるか・・隷属させるしかなかったことによります。
蒙古襲来も世界帝国になると交換手段の金貨が必須・・日本の金や銀が欲しければ、交易交渉すれば良かったのですがそのノウハウがなかったので、海戦の経験もないのに武力勝負に出て失敗したことになります。
清朝皇帝がイギリスの使節に対して何も欲しい物はないと威張ったことが有名ですが、実際にイギリスが交換すべき特産品が何もない点は今も同じです。
イギリスは仕方なしにアヘンを売り込むしか出来なかったのは、むべなるかなと言うところです。
アヘンを売れなくなったので、今では金融でかすめ取ろうとするのが金融支配の問題です。
金融は血流同様に重要な機能ですが、それと関係者がどん欲過ぎて良いかは別問題です。
必須と言えば、飲料水も電機もガスも物流も電池も医師・法律家も政治家も清掃業も不動産業も皆重要です。
アメリカのペンス副大統領の10月4日の演説以降、中国のアメリカに対する情報操作スパイの浸透工作→「侵略」に対する関心が高まってきました。
February 15, 2018「思想の自由市場論4(中国の挑戦)」の続きです。
フェイクニュースが議論の表面に出てきたのは、トランプ氏の方ではメデイア支配に対する不満がその動機と思われますが、アメリカ全体で言えばアメリカによる思想の自由市場支配がネットの発達で変わりつつあることへの焦りが大統領選挙戦で表面化した結果と思われます。
トランプ氏と支配メデイアが攻防を繰り返しているうちに、実は真の敵はアメリカによる「世界情報支配の終わりが始まっていること」に双方が気がついて、アメリカあげての中国非難の大合唱になったと見るべきでしょう。
中東・・アルジャジーラの放送開始以来・・中東アラブ世界では徐々に英米系メデイアの支配力が落ちてきていた・・逆転してきた結果に対する焦りもあるでしょう。
世界各政府に対するアメリカの影響力の強さ→中央政府による電波割り当てによるアメリカの間接支配の及ばないロシア、中国(孔子学園による中華思想浸透への反発が米国でも強まっています)によって、ハッキング、サイバーテロその他の方法による思想浸透の逆襲を受けるようになっていました。
ついに我慢できなくなっていたところに国際的ネット網利用によるゲリラ的思想発信によって(それまでロシアその他でアメリカの「気に入らない政権があるとすかさずスキャンダルを撒き散らして反政府運動を煽ってきたアメリカが)逆に国内政治に介入されるに至りこれに対する規制必要論が盛り上がって来たと見るべきでしょう。
情報戦で圧倒的に優位な時にはやりたい放題でしたが、負け始めていることの自白ではないでしょうか?
この数週間では、中国による大学やメデイア企業その他隅々に至るまで中国の浸透工作に対する批判がペンス副大統領によって講演されて以来、規制どころか対中全面戦争すら辞さない強硬論で、世界中の話題になりました。
いわば全面戦争の宣告みたいな公開演説ですが、今までのように鷹揚に構えていらなくなった・・水面下でやり返せな良い状況でなくなった・・そこまで追い詰めれられているということでしょう。
情報機関で言えば、相手のスパイ批判しなくともスパイ同士の戦いで勝っていれば、相手のスパイを捕捉して闇から闇で処理できるので強い方は黙って処理すればたります。
「スパイを送り込むとはけしからん」という必要がありません。
映画で言えば、侵入してきた忍者を自分の忍者が撃退すればいいことで、自分の忍者が負けて相手忍者の屋敷への侵入を防げなかった結果、相手忍者が自分の屋敷に侵入したことを公式非難するのは忍者同士の戦いで勝てないことを表明しています。
この頃、ロシアによる西欧での傍若無人な「自国もと諜報機関員の殺傷や、中国政府による中国系アメリカ人のアメリカやオーストラリア国内での拉致誘拐の頻発・各種情報窃取のカラクリなど批判は、自分の方はやり返せないことの暴露でもあります。
ただし、要人警護の場合も不意打ち襲撃に備える方が不利ですが、双方暗殺拉致の打ち合いの場合、アメリカや先進国にはそういう無茶をやる仕組みがありませんし、知財盗み合いで言えば盗まれるべき先端知財や技術のない後進国の方が有利です。
「金持ち喧嘩せず」と言いますが、こういう泥仕合になると生活水準の低い方が強みを発揮します。
数年前に、ロシア空軍機をトルコが撃ち落としたときにトルコとロシアの禁輸の脅しあいでは生活水準の高い方が同じ不便に対する耐性が弱いことをちょっとコラムで書きかけてそのままになっている原稿があります。
以下は、10月4日ペンス副大統領の演説全文の紹介記事ですので関心のある方はお読みください。
https://www.newshonyaku.com/usa/20181009
・・・・しかし米国国民が知っておくべきことがあり、そのことをお伝えするために私はここに来ました。それは、中国政府が、政治、経済、軍事的手段とプロパガンダを用いて、米国に対する影響力を高め、米国国内での利益を得るために政府全体にアプローチをかけているということです。
中国はまた、かつてないほど積極的にこの権力を利用して影響力を及ぼし、我が国の国内政策や政治活動に干渉しています。
以下いろんなことを言っていますが、省略します。
これに便乗したのか?中国製半導体チップにチップの入り口を仕組んでいるというニュースも駆け巡りました。
これまでは、(ネット言論は別でしたが・・)トランプ氏と対立するメデイア界の報道姿勢からトランプ氏がアメリカ国内で孤立しているかのような印象操作されてきましたが、ペンス副大統領の演説以降、アメリカ国内では共和党だけではなく民主党支持者でも対中強硬論が多くなっている・・対中強硬論は国民的主張になっているという意見が増えてきました。
「アメリカがやる気になったのでもう中国は終わりだ」という期待論がネットで多いですが、負けすぎていて手が出ないのであれば、貿易等の不正や知財強制移転を今後やりません」という中国との合意程度・・抽象論で終わりで実効性のある対策をアメリカには打つ手がないことになります。
スパイをやめろといって相手が同意してもこちらに防諜能力がなければ、相手の違反阻止する方法がないことになります。
北朝鮮の核合意同様で口先約束だけで矛を収めるしかないとすれば、相手は守る気持ちにならないでしょう。

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