中朝・修正装置なしの体制4(国外脱出の自由)

中朝での専制体制が続くようになると、困りきった国民が逃げ出せるかのテーマで6月15日以来書き始めていましたので、香港騒動はその関連意見になります。
南シナ海での埋め立てに対する国際司法裁判所の判断が出ても「紙切れに過ぎない」と公式発言するなど国際信義・正義など無視すれば良い・・行動基準は裸の武力のみという中国・朝鮮の歴史論理が国外に半分開かれた香港でも通用するかの実験です。
列強による侵略を受けていた自分が弱かった時点では養晦韜光戦術で「武力・権力さえあれば何をしても良い」という基本原理・中華の栄華の本質を隠していましたが、自分が世界最強国に近づいた時点で、我慢しきれずについに本性を表し始めたということではないでしょうか?
上記論理・武力・権力さえあればどんな残虐なこと、近隣国侵略をしても良い論理に従えば、他国との約束も守る必要はない・香港返還時の約束・・一国二制度を骨抜きにし、中共政府による香港支配強化をするのは中国の勝手になります。
ただし返還時の約束を破られても英国は報復能力がありませんが、交通機関の発達した現在中国の論理を貫徹・成功すれば、香港脱出する香港住民(資本流出)が増えたでしょうし、自由貿易都市としての香港の信用ががた落ちになっていたでしょう。
中国や香港住民のためには、香港行政府と中共政府が恥をかかずに条例制定強行成功した場合と、国際世論に負けて棚上げ・撤回した場合、どちらが国民・住民にとってよかったかの教訓です。
漢承秦制の原則とは、自由な言論による社会の発展など眼中になく政権さえ維持できればいいという権力維持の思想であって、国家人民の将来には関係がないという思想でしょう。
国家運営に反対する人・・うるさい人物は、自費で国外脱出してくれた方が国外追放したり国内監禁する手間が省けるので都合が良いという選択(開き直り)になりがちです。
去る者は追わずと言えば、懐の広い政治とも言えますが、長年月に亘って世界中に膨大な数の華僑が散らばっている事実を見れば、如何に苛酷な政治がまかり通っていたかが明らかです。
今になれば豊かな順に海外旅行し留学しますが、政府の補助金よる計画的移民政策の場合は別として、まともに働いていてもそれほど蓄えのできない時代に庶民が命がけで見知らぬ異郷に流れていくのは、よほどの政治圧迫や困窮があった場合に限られます。
中国歴代王朝の崩壊は、農民が食えなくなって家を後にして流民化・どうせ明日には一家飢え死にしかないという最後の最後に命もいらないという段階で起きたものですが、広大な砂漠や険阻な山を越えあるいは、ボートピープルになる国外逃亡の多くは、途中で命を落とすリスクが高かった・それほど切羽詰まっていた点は同じです。
北朝鮮脱出者かどうかか不明ですが、時折新潟〜佐渡近辺にボロ漁船に多くの死者の乗った船が漂着するのは今でも命がけでも逃げた方が良いということでしょう。
北朝鮮を除けば、現在では庶民でも気楽に海外旅行できる時代ですから、歴代中国王朝崩壊時ほど一家あげて流亡の民になる・・命がけになるほど困窮しなくとも、ちょっとした不満程度でも小金さえあれば国外移住が簡単です。
このように見ていくと旧ソ連や北朝鮮のように出国の自由のない国って、国民の為の政治ではなく、権力者の為の政治をしている・・自国民に対してひどい政治をしている自覚があることになるのかな?
商人や商品の信用は国家が決めるのではなく市場が決める時代ですが、国家の良し悪しも労働流動性と居住移転の自由の保障があれば、個々人が自己判断で決められるようになります。
現在すでにハイレベル職種では各国人材の取り合いですから、高級人材が国や企業を選べる時代です。
世界企業も早くから活動しやすい国や地域を選ぶようになっています。
イギリスのダイソンだったかがシンガポールに本社を移すとだいぶ前のニュースに出ていましたが、本社を移すのはまだ少ないものの企業の工場や店舗・研究所等は早くから本国だけでなく適地に移転したり立地しています。
最下層労働の場合、自国で最下層で働くよりよそ者になって不便でも、先進国へ行けば10〜数倍以上の給与になるので先進国の3K職場に向けて出稼ぎ移民が増えます。
これが外国人労働者増加の社会問題の根源です。
西欧にアフリカや中東から移民が押し寄せてこの数年大問題になっていますが、先進国ではいわゆる3K職場では求職者が減る一方で求人難に困り、外国人労働者を引き入れてその穴埋めに使ってきました。
西欧では必要な量だけ入ってくるなら(非正規雇用なの不景気が来れば簡単に解雇でできるし)都合の良い仕組みでしたが、必要以上入ってくるどころか押し寄せてくると「過ぎたるは及ばざるが如し」で「招かれざる客」に変化しました。
西欧とアフリカ諸国とは貧富の格差が激しいので、極端な話、元々裸足で歩き回っていて粗末な草葺の家に住んでいた人を想像するのは時代遅れかも知れませんが、先進国の待遇の良い?収容所に長期間留め置かれてもその程度の劣悪環境をものともしない貧困者の群れが大量に押し掛けるようになるとお手上げです。
(例えば私の知っている品川の入管収容施設は入管法違反事件で検挙された人たちの審査期間中の収容施設で難民の臨時収容施設とは違いますが、冷暖房完備の近代ビルですし、臨時でも先進国作る以上は保険衛生基準も一定以上でしょうし、ブリキ屋根の掘っ立て小屋・汲み取り便所にはならないでしょう)
日本では同胞意識が強いので3k職場の合理化・女性でも働きやすい環境整備や機械化に励み、できるだけ外国人労働者利用を避けてきましたが、西欧では安上がりという経済合理性だけで安易大量に引き入れた咎めが出てきました。
ちなみにドイツの外国人(2、3世を含めた)人口比は以下の通り約23%です

ドイツで増大する移民と経済への影響

2017年11月28日
住友商事グローバルリサーチ 経済部伊佐 紫
ドイツは欧州一の移民大国
ドイツの人口は長らく死亡数が出生数を上回る自然減にあるが、移民の流入に伴う社会増が自然減を上回り人口減少を食い止めている(図表1)。ドイツ連邦統計局の人口統計(2016)によると、現在、ドイツに居住する外国人は約896万人で全人口8,243万人の約11%を占め、ドイツの外国人比率は他の欧州主要国と比較して最も高い。英仏では旧植民地から多くの移民が流入しているのに対し、ドイツでは高度経済成長期の労働力として1950年代からトルコ、イタリア、ポルトガルなどから流入した。当時これらの人々は一時的な滞在を前提としていたが、その後ドイツに家族を呼び寄せ定住し、ドイツで生まれ育った2世、3世が増え続けた。現在、こうした移民の背景を持つドイツ人を合わせると全人口の約23%に達している(図表2)。
ドイツの生産年齢人口の約3割は移民
移民の年齢別人口統計(2016)をみると、15歳以上65歳未満の生産年齢人口の割合は移民全体の約65%を占める(図表4)。また、ドイツ人全体の平均年齢は46.2歳であるのに対し、移民の平均年齢は35.4歳と若い世代が多い。さらに、ドイツ全体の生産年齢人口に占める移民の割合は約24%に上る(図表5)。

移民の年収別人口統計(2016)では、ドイツにおける平均年収は月額2,620ユーロ(工業・サービス・建設部門の賃金/2014, Eurostat)であるのに対し、移民の年収は月額500ユーロ以下、同500~900ユーロ、同900~1300ユーロの範囲に多く、ドイツにおける平均年収よりも低くなっている(図表7)。

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