世界の警察官不在と世界秩序維持4(やったもの勝ち)

ここで、オバマ大統領の「世界の警察官をやめる」演説内容を見ておきましょう。

「世界の警察官」を返上 オバマ政権、曲がり角に

世界の警察官」を返上 オバマ政権、曲がり角に
2013年10月1日津山恵子(ニューヨーク在住ジャーナリスト
9月10日午後9時、オバマ大統領はテレビ演説でこう語り始めた。
「化学兵器による死から子どもたちを守り、私たち自身の子どもたちの安全を長期間確かにできるのなら、行動すべきだと信じる」と大統領は、化学兵器の禁止に関する国際ルールは維持すべきだと強調。しかし、武力行使に対しては、驚くような考えを明かした。
「米国は、世界の警察官ではない」
「私は、武力行使の必要性に対して抵抗した。なぜなら、イラクとアフガニスタンの2つの戦争の末、ほかの国の内戦を解決することはできないからだ」
こうした国民の厭戦気分に配慮したオバマ大統領だが、返上したものの対価も大きい。「警察国家」であることを否定することは、イコール、米国の世界における存在感の変化でもある。

ここで初めて演説内容を見ましたが、変な理屈です。
警察は、犯罪がなくならないとか紛争が解決しないからといって不要になるものではありません。
なんとなく日本の非武装平和論同様の観念的な理屈に自己陶酔しているようで、これが現職大統領の発言か?と驚きます。
オバマの言い分によれば、アメリカで銃撃事件がなくならないから警察・・刑事処罰不要と言うのでしょうか?
確かに警察官がいても麻薬取引や金融不祥事や汚職や銃撃事件はなくなりませんが・・。
「逆は真ならず」とも言います。
犯罪率の増減は、刑事政策や、経済政策の成否や道徳意識定着、家族愛その他諸々の総合施策の結果ですが、その解決の1手段として司法や警察制度があるにすぎません。
日本のように誰の目がなくとも法令を守る..拾ったお金などを警察に届けるなど道徳の行き渡った国もあれば、警官が多くても守らない・・生ぬるい法的手続きでは対応できないので現場射殺を認めるしかないフィリッピンなど世界はいろいろです。
警察や刑務所さえあれば、強盗や詐欺、交通事故その他犯罪がゼロになると思う人はいません。
アメリカは世界の平和維持の責任を一手に担いきれない・・単に負担が大きいので警察官の役割を果たせなくなった・負担に耐えられなくなったといえば済むことです。
報道のニュアンス・事実報道ではなくメデイアの希望する趣旨に編集した大手メデイアの一致した報道傾向・・1種のフェイクニュースだったのか?・・だけ何気なく見て来た私は、そういう演説だったのかと勝手に理解していましたが、「効果がないからやめる」といったのが事実とすれば驚くべきことです。
メデイアは何故その発言のママ報道しないのでしょうか?
経済政策も教育も医療や保険制度も、企業の新規事業挑戦も子育ても何でも「良かれ」と思ってやったことがそのまま良い結果が出ることの方が稀で、先行投資が失敗するなど逆に思いがけない悪い面が出ることが日常いくらもあります。
そこを何とか苦労しながら少しでも良くなるようにメゲずに努力して行くのが人生であり政治です。
うまくいかないから「やめた!」とは何と無責任な言い方でしょう。
もはや自国だけでは担いきれないから正義を維持するには有志連合が必要・・資金や人員拠出分担を求めると言えば良いことでしょう。
この意味では防衛費に関する応分の負担を求めるトランプ政治の方が現実的で合理的ですし、秩序のない平和はあり得ないので、日本国憲法が「世界平和を希求する」ということは世界秩序維持を求めることと同義ですから、日本の平和運動家も憲法を尊重するならば平和維持のために応分の(危険を含めた)負担を拒否すべきではありません。
最近海外平和維持のためにイラク派遣した場所の危険性を盛んに報道して野党はその批判に躍起ですが、その地域の平和維持の必要性を認める以上、日本だけ丸腰で「何の危険もないところへ行くべし」前提自体背理です。
なんの危険もないならば、普通の水道工事屋とか道路工事・民間に委ねれば足りるはずです。
国内であっても警官派遣要請は危険だから要請されるのであって、危険のない所しか行かないのでは警官派遣は不要です。
平和国家論と非武装論は同一ではないという前提の違い論がここにも出てきますが、非武装平和主義に対する「自宅の戸締りがいらないか」の質問には答えないのが普通ですが、仮に非武装主義者の家に強盗が来ても、あるいは暴力事件が起きても警察を呼ばないかという質問と同じです。
国際平和部隊派遣の場合には、いわば強盗集団が白昼公然闊歩しているような地域の治安維持のために派遣する(電話してから警官が来るのではなく一定期間常駐要請)のですから、これに対して日本が「危険地域に派遣しない」と言って拒否しながら「国際平和を唱える」ような矛盾した主張が国際的に通用するかの疑問です。
オバマが世界の警察官をやらないと言い出したら待っていたかのように、中国が南シナ海で実力埋め立て開始するし、ロシアもトルコも皆メッキが剥がれて地金が出て来ました。
世界中で無法者が公然と蔓延るようになったというか、予備テストできたことになります。
ロシアは資源価格下落で「お金がないから我慢しましょう」という代わりに「欧米の不当な制裁に対抗するためだから我慢しましょう」というレトリックです。
いずれも民族感情を煽って政権維持を図っている事になりますが、こんなことでは国内不満のボルテージが上がるばかりですから、ガス抜きのためにプーチンがパフォーマンス的に対外武力行使に走っているイメージです。
威嚇をやればやるほど国際孤立が進むし軍事費がかさむばかりで却って墓穴を掘るので、より一層過激パフォーマンスに出るしかなくなる可能性が高まってきました。
日本と軍事的争いもないのに、この半年くらいかな?いきなり北方領土周辺での軍事訓練が頻繁になってきました。
世界中に向かって露骨な軍事アッピールするしか、国内不満を抑えるための打つ手が無くなったのでしょうか。
(その間に原油相場が持ち直せば良いという淡い期待でしたが・この数ヶ月原油相場が上がってきたので内心ほっとしているでしょう。)
日本の場合、自民幹事長二階氏の使節団200人がロシア訪問すると昨日の日経新聞に出ていましたが、最近のロシアの軍事訓練に対する日本人の冷めた視線が背景にあるので成果は乏しいものと思われますが、ロシアとしては「軍事威嚇をしたから驚いて使節団がきた・・この成果があった」と国内宣伝に利用することになるのでしょう。
やればやるほど世界的に孤立化が進む・・場合によっては経済制裁を受けるようになって、さらに困窮度が高まっている点は今の北朝鮮大型版です。
そこで、アメリカ・オバマがシリアから手を引くと言い出した隙を突いて(これならばアメリカは文句言えないだろうと言うこと?で)15年夏ころからシリア介入を始めたのですが、その後の国連の停戦合意を破るどころか、今年2月には4月16日紹介したように米軍現地基地に対してまでロシア民兵名目で攻撃を仕掛けるなどロシアの傍若無人ぶりが目に余ってきました。
これら一連の行為に対する米国の回答が、今回のシリア空爆だったことになるのでしょう。
化学兵器使用を命令した関係者や使用による軍事効果・支配地を放置する・利用効果そのままではやり得ですから、今後の抑止力にはなりません。
化学兵器製造工場の空爆だけでは(シリアは事前に物資を退避させていたと言われます)米国の関与限界も見えて来ました。
ヤクザの抵抗が怖くて?事前通告してから、銃や覚せい剤など隠匿していないかの組事務所ガサ入れするようなやり方です。
今度の北朝鮮との首脳会談もこのような表向きの効果を狙った見せかけ合意になるのでしょうか?
外面を取り繕う行動ばかりが増えると、米国の地位がいよいよ低下していきます。
対日核兵器使用の場合で言えば、相手に対して米国が「今後やるなよ!というだけで終わるのならば、やったもの勝ちです。

世界の警察官不在と世界秩序維持3(朝鮮民族)

日清戦争の直接の契機は事大主義者によって、超保守主義者が国内開化派に負けそうになると何かと清朝の承諾を引き合いにすることから決着をつけるために引き起こされた戦争でした。
今でも自国国防のためのサード配備にまで中国にケチをつけられて青息吐息の状態・・韓国政府は中国のご機嫌取りに必死ですが、伝統的従属意識が背景にあるからでしょう。
June 20, 2013「日本対中朝対立の始まり2と根深さ」前後で清朝の朝鮮に対する属国支配強化を紹介しましたが、一般に知られているように明治維新直後日本が新政府成立と開国に舵を切った国書を発した時に、中国の属国である以上は「王」の称号であるべきと言い張って受領拒否するなど一悶着起こしたことが知られていますが、朝鮮は受け入れたくない時には「清朝の属国だから」と言う言い訳をしていました。
戦後の朝鮮戦争は南北朝鮮が本来の当事者ですが、事実上中ソと米国の戦争・・両者が多大な犠牲を払う仕組みにすり替えてしまい、この延長で6カ国協議という枠組みが今も残っています。
今回の核問題も、交渉主役は米国と北が実質当事者であって韓国はただ囃し立てているだけの存在です。
こういう二枚舌的交渉に手を焼いていた日本は事態打開のために朝鮮の独立・中国を隠れ蓑にしないようにスッキリさせることが日清戦争の大きな目的でした。
下関条約については江華島条約などに関連して以前紹介した記憶ですが、もう一度紹介しておきます。
ウイキペデイアによる下関条約に関する記事からです。

清国は朝鮮国が完全無欠なる独立自主の国であることを確認し、独立自主を損害するような朝鮮国から清国に対する貢・献上・典礼等は永遠に廃止する。(第一条)
清国は遼東半島、台湾、澎湖諸島など付属諸島嶼の主権ならびに該地方にある城塁、兵器製造所及び官有物を永遠に日本に割与する。(第二条、第三条)
以下省略

上記の通り、第1条に朝鮮の独立を書いていることから見ても朝鮮を清朝支配から切り離すことがこの戦争の最重要テーマであったことがわかります。
日本が関係する朝鮮半島の歴史を見ると(古代白村江の戦いでも秀吉の朝鮮征伐でも日清戦争1940年台の朝鮮戦争でもいつも大国同士で戦わせて自分は戦いの傍観者的立場で批判だけするずるい傾向があります。
この戦争目的の結果日清戦争後講和条約の最重要項目として、条約第一条に朝鮮独立が宣言されたのですが、朝鮮がその恩義に報いるどころか、「宗主国清朝の同意がいる」と言えなくなると今度はロシアの支配下に入ろうとするようになったことが、次の日露戦争に繋がったものです。
朝鮮人自身の多くは民主化に期待したい→開化派=親日派が多かったようですが、政府権力者の方は自己保身のために
は、国の独立維持のために開化による民度の強化よりは、自分の地位を保護してくれるより強い国の従属下に入る方を常に選んできた・いわゆる事大党が力を持つ歴史です。
パク大統領就任後がいきなり親中国に舵をきり米国をないがしろにし始めたのはこの文脈で理解できる・・「今後は中国の方が強くなる」という先読みの原理によります。
将来はどうであれ、まだ中国は米国に正面からことを構える力がありませんので、米国の逆襲により日韓の不可逆的合意を強制されサード配備を受け入れるしかなくなって、国民の支持を失って任期途中での弾劾罷免になってしまいました。
今回トランプ政権になってからの核危機騒動でも、韓国の態度は「米国が怒っているから仕方なしに従っているだけ」のような振る舞いです。
現在の文大統領に至っては、対北用の防衛設備工事を中国に反対されると一時凍結するなど、いつも当事者意識が低いのが特徴で、本音では北朝鮮に併呑されても良いような傾向が垣間見えるのは、独立より従属を好むDNAの発露でしょうか。
ところで、エジプトやタイ軍事政権やミャンマーその他諸国の反民主化の動き、あるいはフィリピン大統領の刑事手続き不要の現場射殺命令等々は、それぞれの国情に応じた必要な政治形態のように見えますが、これに対する西欧の(自国社会を基準にした)人権批判は「余計なお世話」のような気がしています。
しかし、トルコの場合、着々と近代化合理化が進んでいて社会が独裁を必要としていたように見えない(ただし欧米系メデイア報道による知識だけなのでトルコ社会がEU加盟に向けて無理な近代化に対する疲れを起こしていた反動が表面化したか・・近代化疲れを起こしていたかは不明です)のにエルドアン個人の権力欲がいきなり独裁下方向へ引っ張っている点が異色です。
東南アジアでの軍事政権等を国情・歴史を無視して人権を重んじる欧米が批判する(経済・軍事支援など抑制する)とその後ろだてとして中国が付け入って代わって支援する・・勢力浸透を図っているのが現在の世界情勢になっています。
ロシアもこの機会を利用して中東に頭を突っ込んでいるのですが、ロシアの場合、中国のような資金のばらまきもなく裸の腕力・脅しだけですから、ピョートル大帝やソ連スターリンの恐怖政治時代のやり方のまま・・これでは稚拙すぎて目先威張れる程度で長期的には無理な感じです。
外交といえば軍事力で脅迫するくらいしか能力がない・・対日交渉をするには先ず北方領土周辺で軍事演習を始めるという程度のやり方ですから、ヤクザみたい・・数世紀前のやり方では、却って日本の機嫌を損ねることが分からないのです。
ところで、ロシア中国の対外実力行使が始まった時期を見ておきますと、オバマがした「アメリカは世界の警察官ではない」と言う発言が13年9月10日で、ロシアのクリミヤ併合は14年2月、シリア介入開始は15年9月末でした。
南シナ海での中国による大々的な埋め立て工事に対してフィリッピンが問題提起したのは、14年はじめでした。
ウイキペデイアの記事からです。

2014年5月15日、フィリピン外務省が、中国がジョンソン南礁(赤瓜礁)を埋め立てているということを示す時系列の写真を公開し[5]、2014年に入ってから大量の土砂を投入しているということが判明[6][7]。同礁は2012年3月の時点では目立つものはなかったが、2013年2月の時点では建造物が確認でき、2014年3月の時点では、すっかり埋め立てられていた[5]。フィリピン外務省は、この中国の行為をフィリピンの領域内で行われているということから国際法に違反していると批判

国際司法裁判所判決で中国は完敗しましたが、そんなの「紙くず」だと言い放ち、完全無視してさらに埋め立て続行していた上で、今では巨大な要塞化して来ました。
警察制度があっても陰でのコソ泥や汚職を100%防ぐとことはできませんが、警察官役が曲がりなりにもあれば、白昼公然と犯罪行為がなくなりますが、いなくなればこれが可能になるということで、意味が全く違います・・強いものはやり放題になります。
犯罪とは何かですが、要は正義の基準がない、あるのはむき出しの力が「強いか弱いか」だけということでしょう
19世紀型砲艦外交・・腕力次第で何でもできるという価値観(国内政治も正義の基準は強いか弱いかの基準・・専制支配の仕組みです)を持つ国・・街ではヤクザ=無法者が息を吹き返したということでしょう。
中国による公海での軍事基地造成は、水滸伝で有名な梁山泊みたいな山賊・海賊の根城が首都の広場に出現した・まさに米国の「鼎の軽重を問う挑戦でしたが、米国はこれにほとんど何もできませんでした。
工事現場近くを軍艦を航行させてみたくらいでは、皇居前広場でヤクザが暴れているのを横目にパトカーが素通りしたようなものです。

世界の警察官不在と世界秩序維持2(ロシアとトルコ1)

トルコ政府の隣国シリアの混迷に対するスタンスは反政府軍支持・現政権打倒が基本ですし、ロシアはソ連時代からの遺産・・シリアに食い込んだ既得権維持方針ですから、基本構造として相容れません。
トルコ政府のシリア現政権否定路線が転換されるまで、ロシアの対トルコ嫌がらせが続くと見るしかないでしょう。
歴史的に16世紀以降ロシアの南下政策の正面に位置するオスマントルコとは戦い抜いてきた仇敵同士であり(トルコはクリミヤ戦争以来英仏等西欧列強の支援でロシア南下を食い止めてきた歴史です。
ちょっと世界史のおさらいをしておきましょう。
http://www.y-history.net/appendix/wh1001-153.html
世界史の窓からの引用です。

ロシア=トルコ戦争(17~18世紀)
露土戦争とも表記。高校教科書では1877~78年の戦争に限定してロシアトルコ戦争と言っているが、ロシアとトルコ(オスマン帝国)間の戦争は17世紀末から20世紀まで、数度にわたって行われており、それらを総称してロシア=トルコ戦争と言う場合もある。また、ロシアのエカチェリーナ2世の時にも2次にわたってロシア=トルコ戦争が行われている。
ピョートル1世は、1696年、黒海につながるアゾフを占領した。
・・エカチェリーナ2世のときに再び南下政策が活発化し、オスマン帝国への侵攻が再開された。
第1次ロシア=トルコ戦争 1768~1774年 ロシア軍、クリミア半島、バルカンに陸軍を進め、黒海では海軍がオスマン海軍を破る。キュチュク=カイナルジャ条約でダーダネルス=ボスフォラス海峡(両海峡)の商船の航行権などを獲得・・・
第2次ロシア=トルコ戦争 1787~1792年 ・・・オスマン帝国がロシアのクリミア半島領有を認めた。このクリミア半島併合は、ポーランド分割とともにエカチェリーナ2世の領土拡張の成功となった。
19世紀前半のロシアとオスマン帝国
ナポレオンのエジプト遠征をきっかけにオスマン帝国領内のアラブ人が民族的自覚を高め、エジプトとアラビア半島で分離運動が表面化した。また民族主義の高揚はバルカン半島でもわき上がり、ギリシア人やセルビア人の自立を求める運動が活発になり始めた。これらはオスマン帝国にとって新しい質の脅威となり始めた。
このウィーン体制期のオスマン帝国の衰退に乗じて、西欧諸国が争って進出するようになり、東方問題と言われる国際問題化していく。 → オスマン帝国領の縮小
1828~29年にはロシア単独でオスマン帝国と戦い(これも露土戦争という)、ロシア軍は南下を続け、オスマン帝国の第2の都アドリアノープル(エディルネ)を占領した。29年に両国で締結されたアドリアノープル条約ではロシアは占領地の大部分を返還したが、黒海岸のドナウ川河口三角州と両海峡の航行権を獲得した。
エジプト=トルコ戦争が起こった。エジプト軍はシリアを占領、イギリス・フランスがそれを容認するようオスマン帝国に迫ると、オスマン帝国のマフムト2世は一転してロシアと結び、1833年、ウンキャル=スケレッシ条約を締結し、ロシア軍艦の両海峡の航行を認めさせ、他国の軍艦の航行は禁止させた。
エジプトの強大化とそのロシアの提携を警戒したイギリスは、ロンドン会議を召集して巧みな外交を展開し、翌年のロンドン4ヵ国条約でムハンマド=アリーのシリア進出を断念させ、5国海峡協定でロシア・トルコ間のウンキャル=スケレッシ条約も破棄させて、海峡航行を全面禁止とした。
・1853~56年 クリミア戦争 ニコライ1世はイェルサレムの聖地管理権を主張してオスマン帝国と開戦し、まずルーマニアに侵攻した。フランス、イギリスなどがオスマン帝国を支援したため、ロシアは大敗を喫し、しばらく黒海方面での南下政策を棚上げした。
・1877~78年 狭い意味のロシア=トルコ戦争(露土戦争) 上からの改革を行って国力を回復したアレクサンドル2世のロシアが、オスマン帝国に対して圧倒的な勝利を占めた。しかし、ヨーロッパ各国の介入を招き、ベルリン会議で後退を余儀なくされた。一般にロシア=トルコ戦争(露土戦争)と言ったときにはこの狭義の場合が多い。

上記の通り、第一次世界大戦でドイツと組んだために大打撃を受けてオスマントルコが崩壊して、現在のトルコ共和国になりましたが、ロシアが数百年に亘る宿敵であることは変わらずこの国難に対応するには欧米に頼るしないのが19世紀以来の国是でした。
第二次世界大戦後欧米で対ソ防衛網として結成されたNATOに参加して国防の基礎にして来ました。
多くのトルコ人をドイツ等先進国へ就労→移民させている他、熱烈なEU加盟希望・このためにも政治と宗教の分離を進めてきたり民主化を進めてきたことでも知られています。
国際政治的には、欧米のシリア政府の人権侵害批判に呼応してロシアと親しいシリア政権(トルコにとってもロシアとシリアに挟撃されるのは地勢上不利で落ち着かない)打倒の反政府軍支持をして来た経緯があります。
ところが、エルドアン氏の独裁傾向強化(クーデター騒ぎに始まり憲法改正に至る一連の)動きが西欧から批判を浴びたことに対する反発から、西欧離れに舵を切ったことによりロシアに付け入る隙を与えたことになります。
上記の通り歴史を見ると、ここ数年のエルドアン氏の方向転換は、長期にわたって民族一丸として西欧の仲間となるために約100年近く続けて来た方向性とは大きくかけ離れていてエルドアン個人権力欲維持のために、長期的国益・ロシアによる威嚇〜圧迫を防ぐ手立てを放棄・売り渡してロシア詣でを繰り返しているように見えます。
日清戦争時に李氏朝鮮王朝が日本が進める開化・民主化を嫌い自己権力保持のために清朝の属国化を進んで強化しましたが、頼りの身長が日清戦争で敗退すると今度は、ロシアにすり寄ったことが、日露戦争の端緒となりました。
日露戦争時に開化派が支援を期待する日本が勝ってしまったので、民主化するよりはロシアの属國化の方が良いとしてロシア勝利を期待していたことがポーツマス講和条約のコラムで紹介した記事で以下のように出ています。
4月1のコラムでポーツマス条約に関するウイキペデイアの以下の記事を引用しましたがもう一度引用しておきます。

「1905年9月5日(露暦8月23日)、ポーツマス海軍工廠内で日露講和条約の調印がなされた。ロシア軍部には強い不満が残り、ロシアの勝利を期待していた大韓帝国の皇帝高宗は絶望した」

明治維新までの 朝鮮と清朝の関係は朝貢と王位継承の承認という形式関係に過ぎませんでしたが、日本の開化要求をはねつける名目として宗主国の同意が必要といって、何かと日本から共同歩調要請を拒否していましたし、これを利用した清朝が直接支配を強めて・・・進駐した袁世凱が高宗の父で実力者の大院君を中国連行する事件さえも起きました。
このように朝鮮政府は難局を打開するのに安易に外国勢力を引き込む傾向があることが、却って国の独立を失ってきたように見えます。
オスマントルコの末期を見るとスルタンが宿敵ロシアといきなり結託するなど仁義に反する「向背常なき」政治に堕したことが帝国崩壊を早めたこともわかります。
日本では似たような政治が横行したのが南北朝期の足利直義の行動でしたし、現在では自民党を割って以来の小沢一郎氏の行動でしょうか?

世界の警察官不在と世界秩序維持1(ロシア🆚トルコ)

ロシアは2018-4-19「資源下落とロシア経済1」で紹介した世界ネタ帳のデータにあるように、農産物・・野菜果物等は西欧やトルコ等からの輸入に頼るようになっています。
4月21日のグラフで見たように14年ごろから始まった原油相場下落・・輸出減で苦しいのに外貨準備が増えているのは収入が減った分貯金を取り崩さないで、食うものも食わずに以前よりも必死に貯蓄に励んでいるパターンです。
欧米の対ロ経済制裁に対してプーチンはすかさず西欧からの食品輸入制限を発表したりトルコによる空軍機撃墜事件でトルコに対する制裁として直ちに輸入制限しましたが、そもそも食料品等を買う資金がないのが本音でしょうが、国民には経済制裁のやり合いだから(うまい果物等を食えなくとも)協力してくれということでしょう。https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM0602G_W4A800C1FF1000/

ロシア、農産物輸入を制限 制裁に対抗
2014/8/7付
【キエフ=小滝麻理子】ロシアのプーチン大統領は6日、ウクライナ問題を巡りロシアに対して制裁を科した国からの農産物などの輸入を禁止・制限する大統領令に署名した。欧米による本格的な対ロシア制裁が先週に実施されてから初めての対抗措置となる。ウクライナを巡る国際的な危機が一段と混迷を深め、ロシア経済にも打撃を与える可能性がある。
輸出禁止は輸入相手から言えば輸入禁止したのと同じですから、どちらが主導権を持ってやったかの違いでしかなく、内容が高度部品ではなく食料品の場合、我慢比べになれば(例えば果物野菜を買えなくとも買う方は困らないが売る方は売れなくなると困ります)買う方が耐久力があるのが原則です。
22〜23日から書いているように部品が買えないで性能の劣る国産に切り替えると輸出製品の性能が下がるので困りますが、野菜果物等は国民が我慢すれば済むことです。
この辺の意見はトルコがロシア空軍機を間違って?撃墜した事件での経済制裁合戦になれば食料輸入側のロシアの方が強いと書いていたとおりで、私の予想通りにトルコはすぐに屈服しました。
しかし、度重なるエルドアン大統領の訪ロにかかわらず、ロシアは農産物輸入規制を一部緩和しただけでいまだに嫌がらせが・これが続く限りトルコは度重なる表敬訪問(よく来たと厚遇だけしてくれるものの)・・ロシアの言いなりになるしかない属国的状況?に陥っている様子です。

http://jisl.org/2017/03/post-2889.html

ロシアいまだにトルコ農産品輸入禁止』
2017年3月13日
ロシアとトルコとの外交関係は、現段階では全く問題がないようだ。近くトルコのエルドアン大統領がロシアを訪問するが、ヨーロッパ諸国とは異なり、何の問題も無いばかりか、ロシア側はエルドアン大統領訪問時には、ヨーロッパとは異なり、最高のもてなしをすると事前に発表している。
しかし、ロシアのトルコとの貿易には、いまだに制約があるようだ。2016年初以来続いている、ロシア側のトルコ農産品輸入に対する制裁がいまだに効力を発揮しているのだ。
その理由は、植物衛生上の問題という事のようだが、トルコ側からそれまで輸入が認められていた、多くの農産品がいまでは輸出出来なくなっているのだ。例えば、イエロー・オニオン、一部フルーツ、七面鳥、鶏、塩、ベル・ペッパー、ターキッシュ・ピンク、ザクロ、オバジンといったものが輸入禁止品目だ。
ブロッコリーやカリフラワー、カーネーションもそうであったが、これらの品物は輸入が解禁になったようだ。
トルコにとっては、農産品は主要輸出品目であり、それが輸出不可能となることは、関係業者にとっては死活問題であり、政府にとっては外貨獲得が出来なくなる、という大問題なのだ。
ロシアのトルコ農産物に対する輸入規制は、単純に農産品の衛生上の、問題なのであろうか。そこにはいまだに、ロシアがトルコを恨んでいることによる、政治的な意味合いがあると思えてならない。(ロシアの戦闘機がトルコの戦闘機に、撃墜されるという事が起こっている)
トルコはいま、外貨の獲得が大問題になっており、エルドアン大統領は国民に対して、手持ちの外貨をトルコ・リラに交換するよう、呼びかけもした。しかし、そのことは、トルコ・リラの暴落を生んでいる。一時期は戻りかけたと思われたトルコ・リラは、最近では3・75レベルにまで、再度交換レートを下げているのだ。
もとは1ドルに対して3リラ程度だったものが、いまでは3・7リラ程度だという事は、大幅な落ち込みと言わざるを得まい。一時期戻ったのは、あくまでも投機家による、トルコ・リラ安買い狙いであったものと思われる。
ロシアが今後も、トルコからの農産品の輸入に、規制をかければ、ますますトルコ経済は悪化する、という事であろう。加えて、ロシアからの観光客が減ることも、相当厳しい状況を、トルコ経済に生み出そう。

http://www3.keizaireport.com/report.php/RID/341341/
http://www.murc.jp/thinktank/economy/analysis/research/report_180423.pdf

トルコ大統領選前倒しの背景にある経済の悪化~意識される通貨危機のリスク
(2)マクロ経済に目立つ軋み
エルドアン大統領が想定以上に大統領選挙と議会選挙の実施を早めた背景には、
景気が鈍化する前に選挙を行いたいとする意向があったものと推察される。
図表1にあるように、トルコの17年の実質GDP成長率は+7.4%と前年(+3.2%)から急伸した。
個人消費と総固定資本形成の好調が景気を押し上げたが、これは政府による経済対策によって実現したものである。
具体的には、白物家電や家具販売への減税措置が消費を刺激し、また政府保証の拡大を受けた銀行融資の増加が投資を拡大させた。
こうした財政頼みの景気加速を受けて、経済には様々な軋みも生じている。例えば17年の消費物価上昇率は11.9%と、中銀の掲げる物価目標(5%)を大幅に超えている。
エルドアン大統領が景気重視の姿勢をとる中で、中銀は物価が目標水準を超えても金融引き締めを行えない状況となっている。
また財政頼みの景気加速に伴い、足元にかけて財政収支と経常収支が悪化している。図表2で示したように、トルコの17年の財政収支の赤字幅はGDPの1.6%に、また経常収支の赤字幅は5.6 %にそれぞれ膨らんだ。こうした「双子の赤字」は2年連続で拡大しており、トルコ経済の不安定要因になっている。

こうした中で意識されるのが通貨危機のリスクである。
既に下落が続くリラであるが、再選後に政治経済運営の不透明感が増すことを嫌気した投資家がリラに売りを浴びせる可能性には注意を要する。

日経新聞でもトルコ選挙前倒しに絡んで同旨(経済が行き詰まっている)記事が出ていたので、日本での基本的理解になっているようです。

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