マイホーム主義の終焉3

現在の若手法律家は、昔ほどの高収入が保障されていないことは確かですが、(合格者数が我々の時代に年間500人だったのが今や2千数百人以上になっているのですから数字的に明らかです)今よりは高収入の保障されていた私たち世代の前後各15〜20年の女性弁護士や裁判官のほとんどは、出産後もそのまま夫婦で現役を続けています。
最近の女性が何故出産時の現場離脱が出来ないかですが、その頃は世の中の仕組みの変更が今ほど激しくなかったことから、出産前後に数年程度ブランクがあっても大したハンデイではなかったことが大きな違いと言えるでしょうか?
何しろ最近の制度変更はめまぐるしいものがあって、ホンの数年前にやったパターンの事件をやろうとすると裁判所の要求する書類や運用等が大幅に変わっている等で驚くことが多いのですが、毎日目一杯仕事をしていても驚くくらいですから、数年間仕事を完全に休むには勇気がいる時代です。
医師の世界も同じで、(制度変更は時間がかかりますが、現場の技術変更・進歩はもっと小刻みに激しいでしょう)医療技術水準の変更、薬品の変更が日進月歩ですから、(医療過誤の判断基準はその医療行為時の医療水準に合致していたかどうかです)数年もブランクがあると追いつくのは不可能と言えるかも知れません。
例えば薬剤を処方するのに半年前にはたとえば「a,r」と表示すればある薬に決まっていたのが、半年の間にその変化系の薬が何種類も出回っていて、「a,r」の次に別のアルファベットを書かないと従来とは別の薬になってしまうと言う極端な事例が起きてもおかしくありません。
それを知らずに以前の知識で処方すると大変なことになります。
この話は薬剤師から聞いた話ですが、薬剤師も現場を離れてわずかに半年で復帰してみるとちらっと見て知っている薬だと思っていると、実は英語の語尾が少し変わっていて別の薬だったこともあるそうで、過去の知識がじゃまになるリスクもあるようです。
カルテは頭文字だけの略語で書くことが多いので却って誤解が生じるようです・・医師に問い合わせると現役の医師自身でさえ別の薬が出来ているのを知らなかったりするそうで、これは医薬分業のメリットとして聞いた話です。
このように最近の変化はあらゆる分野でめまぐるしいので、現場を離れて数年もすると使い物にならないリスク・・これがいろんな職種・・専門分化しているあらゆる職種に蔓延している様子です。
これが高学歴層の少子化の基礎的原因ですが、これの解決策については04/05/09「ワークシェアリングと医師不足問題」や少子化対策に関して今年の5月初め頃から07/06/10「(1) 保育所の民営化」ころまでののコラムで連載しました。
今回のシリーズは、子を産むことも出来ない結果としての結婚事情の変化についての関心・・・別の視点で書いています。

夫や子供を管理したがる女性

縄文時代のように放浪していて何ヶ月〜半年に一回(女性の発情期だけ?)予告なしに帰るのではなく、毎晩帰らねばならない点が今は窮屈ですが・・・この窮屈感を緩和するのが帰りに立ち寄らずにいられない赤提灯・小料理屋の効用でしょう。
ここで会社でのいやなことふるい落とし・忘れてから・・ミソギをしてから帰路につくと言うのが定説ですが、私に言わせれば、それもあるでしょうが・・そこで一息ついて「さあ帰るか」と仕切り直しをする意味があるのです。
上司の管理が終わると直ぐに奥さんの管理が始まるのでは、男は気の休まる暇がないので、ここで一息つくのは合理的です。
ここで家に帰る勇気とすし等の手みやげを受け取ってカラ元気を付けてすし等をぶら下げて帰るのが、昭和年代の光景でしたが、帰る時間がイレギュラーですから奥さんはお冠です。
それでも一日中妻の監督下で自宅周辺の農作業をして、時々一服している時代よりは、一日中奥さんから見えない所にいられる分だけでも気楽になったでしょう。
美容師の若者がその母親(美容院経営)の紹介で来ていて、住所も同じなので当然親子で美容院をやっているのかと思ったら、意外と別のところに働きに行ってると言うのです。
何故か?と聞くと「一日中母と一緒では・・・」と言う回答です。
奥さんや母はウロウロしたがるオスを管理したいし、オスや子供の方は管理されたくないし・・と言うところです。
ただ、最近草食系若者と言うように最近の若者は、長年の受験勉強等で長時間管理に慣れて来ているので、勤務先から自宅直行も苦にならない人種が増えて来ました。
女性は何故夫や子を管理したがるかですが、これまで書いているように、長期にわたる子育て期間中(今は大学院出てもまだ一人前でないのが普通です)オスが外に気を散らさないようにするには、きめ細やかなサービスが欠かせなくなっています。
心を込めて手料理をしてみたら夫が赤提灯で呑んで来たから晩飯入らないと言ってすぐ寝てしまったのでは、「いくら何でも・・・」となりがちです。
この点昔は食事と言っても漬け物納豆や干物が中心では何時帰って来ても簡単でしたが、今では作り立てと時間をおいたものとではまるで味が違うのですから、よけい大変です。
夫用に作った夕飯がそのまま残るとその処理・・奥さんが翌日残り物を食べることになると、その都度不満の二重体験になります。
今日は食べてくるのかどうか何時頃に帰るのか等、細かく知りたくなるのは当然です。
夕方の連絡では買い物を済ませてしまっていると(さんまであれ肉類であれ)一人分余ってしまった食材の処理に困るので、昔のように保存食中心の時代とはまるで違っています。

(2)現在若者の家庭

これをうるさがっていると奥さんが不満を溜め込むことになり、高齢化した後の長い夫婦関係を円満維持出来るかどうかの差になってくると言えるでしょうか?
うるさがらない・・と言うことは、結局帰りに他所で飲食しないで、まっすぐ家に帰るように心がけるしかないでしょう。
最近の若者は実際に家庭重視で、あまり帰りに上司と飲食する傾向がないとも言われますが、実態はどうでしょうか?
マスコミはいつも「最近の若いものは・・」形式の報道をしたがるので、実はそれほど信用出来ないかも知れません。
我々弁護士仲間の若いものを見ていると、まだまだ昔ながらに仕事が終わってから、仲間同士で情報交換をかねて飲食をしている傾向が見られます。
それに仕事も掻き入れ時ですから、(若いうちにいろんな経験をしておかねばならないので彼らも必死です)普段から8時9時まで仕事をしているのが普通になっています。
今年の1〜2月頃にある警察署で午後8時頃に接見を終わって出てみたら、千葉の若い女性弁護士が待っているのに驚いたことがあります。
私としては、こんなに遅くなってしまった・・早く帰らねば・・と言う感じで出て来たのですが、話していると私の次に面会すべく待っていた女性弁護士は、特に遅く面会に来たと言う印象ではなく、普通の仕事タイムの印象で話していたのには驚いたことがあります。
(ちょっとした面会でも1時間くらいはかかるので、接見が終わると9時過ぎるようなスケジュールです・・それから一定の時間をかけて家に帰ると・・・?)
こういう状態ですから、若夫婦の家庭生活は意外に大変ではないかと思いますが・・・。
どちらも夜遅くまで働いていると家庭生活が極端に細ってしまい、家庭を持つ意味が減少して行きます。
これは弁護士に限らずどこの会社でも若手は無茶苦茶働かされている一方で、他方で不景気で仕事がなくて暇な人もいて・・・・アンバランスな社会になっています。
この話題についてはワークシェアリング等のテーマでたとえば、04/02/02「不景気と残業」その他で何回も書いて来たので、話を自宅から離れた場所での労働が中心になってくると女性の地位がどうなるかの関心に戻します。

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