中国過大投資の調整9(資金枯渇3)

借入金だけで総額29兆ドルもあると、仮に5年もの国債ばかりでも、年平均6兆ドルの満期・返済期限が回ってきます。
しかもこれが過去の負債全部ではなく、07年以降増えた分だけと言うのですから、それ以前の負債全部になるとどうなっているの?払える訳がない巨額じゃないの?と疑問を持つのが普通でしょう。
07年以降増えた分だけでも支払期限が来るのが年平均6兆ドル=720兆円となり、天文学的数字ですから、(中国の・水増し?公称GDPでも2014年で約10兆ドルしかありませんし、我が国の14年GDPは、約4兆ドルあまり)GDP以上の数字を毎年払えない・・購入者がいないので借換債を発行出来る訳がない・・と推測出来ます。
統計数字は円(ドル)単位と千単位の2種類が多いのですが・・勝又氏の引用記事は単位「千」(ドル)かどうかの読み間違い・・3桁間違っている可能性があります。
数桁間違っているにしても、兎も角中国は対外借入債務を大幅に増やしていること・・これを関係のないドイツ財務相がよその国(アメリカ)で公式懸念発言していることが重要です。
数字の単位正確性を別として、国際金融界では中国のデフォルトリスク(借り換え困難懸念)が極秘で懸念・共有され始めているのをうっかり発言してしまったのではないでしょうか?
中国がデフォルトまたはデフォルト寸前になれば、国際経済に与える悪影響の大きさはギリシャやブラジルの経済危機の比ではありません。
中国のアメリカ財務省証券保有額減少が、アメリカ政府によって発表されて・・中国政府が外貨準備の取り崩しに走っていることをMay 4, 2015「覇道と日本の補完性1」で紹介してきましたが、独財務相発言とあわせて見ると中国の資金繰りが厳しくなっていることが明らかに見て取れます。
日米の国債は、ほぼゼロ金利ですから、市場調達の高利資金でゼロ金利のアメリカ国債を見栄で持ち続ける余力がなくなって来た・・逆ざや債券の保有を続ける体力がなくなったので減少に転じたのではないでしょうか?
元々高金利でしか経済が持たない中国が、日米等先進国の低金利国債を外貨で持つのは逆ざやで大変な損失が生じていることをApril 12, 2012「基軸通貨とは3(逆ざや)」に書きました。
このために中韓等高金利国(経済内容が弱くて金利を下げられない国)では、自国以上の高金利国の外貨を持つ誘惑が高まり・・ひいてはハイリスク・ハイリターンのジャンク債中心保有になる傾向が高いので、リーマンショック以降あるいは今回のロシア・ブラジル・インドネシア等新興・資源国の通貨下落が始まると外貨準備の劣化・・大損が生じている可能性が大です。
最近のギリシャ危機では、国民が自国金融機関を信用出来なくなって、預金払い戻しに走る結果、国内金融機関の資金が枯渇して更に金融危機が強まっている矛盾が報道されています。
ウクライナ危機後のロシアのルーブル急落も、国内からの(国民のルーブル信認喪失による)資金流出が大方の原因と言われているのと同じ現象です。
中国では、裸官と言う高官の国外資金逃避が従来から大々的に報道されていましたが、これは実は目くらまし報道であって、本当はちょっとした資金保有者による国外逃避のうねり・・これが深刻な状態になっている様子です。
経済実態・デフォルト危険感を身近に感じている庶民を虚偽統計発表では誤摩化せませんし、国際機関が極秘検討しているだけでは済まなくなってきます。
限られた大金持ちの資金逃避は規制が容易ですが、庶民大衆による資金の国外逃避が始まると庶民の場合は額は小さくとも大量なので総額では巨額になりますし、ザルから漏れる水のようでそれを防ぐ方法がありません。
国外向け景気の良い虚偽発表をし、海外マスコミを買収して世界を誤摩化していても、足下から資金が漏れ出るようになると、政府はどうにもなりません。
中国では古代から歴代王朝末期にいつも生じていた農民流民化の始まり・王朝崩壊が、最近では資金の国外逃避(特に容易な香港市場への参入)と言う形式で始まっている様子が報じられています。
王朝末期の流民化は同じ国内移動だったので難民化→流民化で自動的な関係でしたが、今は国外逃亡するには言葉の壁もあって簡単ではないので、さしあたり資金から逃げ始める時代・・国民意識を早く反映する・・中国政府発表を忠実に報道する日本のマスメデイア報道よりももっと深刻な自国不信を表していると見るべきでしょう。

マスコミと学者の役割3(報道タイミング)

報道のタイミングに関して言えば、5月24日朝刊21pには、ページの広告部分を除いて半分以上を使ってAIIBに関して、「加速する中国の新興国援助」と大きな見出しで書いたうえで、サブタイトルには「日本はインフラ卒業を」と言う大見出しです。
内容を読むと

中国の後進国への援助は問題がない訳ではないと一応書きながら、中国による新興国援助の加速を紹介した上で、「日本の支援が、アジア各地で産業発展に大きく寄与したこと」を(仕方なしに)評価するものの、「財政再建が課題の今日限られた予算の有効活用の必要からビッグドナーからスマートドナーへの転換が求められる」と言う黒崎外の論文要旨を引用した上で、インフラ投資の重要性は揺るがないが全てではないと書いて(インフラにこだわる必要がないと暗示した上で)、インフラ投資は中国に任せて、人材育成技術供与、裾野産業育成などの分野で日本の経験活かすことは日本独自の貢献となりうる。
AIIBとの補完や連携を視野に入れつつ「日本はインフラ投資をあえて卒業」・・すべきだ

と言う論旨です。
今後日本産業のあり方は、消費材製造から手を引いて鉄道輸出等のインフラ分野やいわゆるBtoBで生き残って行く・・産業発展を図るしかない時代が来ていることは、大方のコンセンサスと思われます。
これに関する何の意見も書かないで、単純に今後はインフラ投資は中国に委ねて日本はインフラ投資から卒業して行くべきだと言うのですが、日本の産業構造がどうなるべきかの展望を一切書いていません。
財政赤字とさえ言えば、錦の御旗のような意見も聞き飽きていますが、赤字だからこそインフラ輸出で稼ぐしかない筈ですが、海外インフラ投資・輸出をやめることと赤字解消にどう言う関係があるのかも分りません・・(防災訓練要員年間何人受け入れて研修してやるなどの)人材育成の協力や技術移転ばかりでどうやって食べて行くのかの)展望を書いていませんが、兎も角中国主導のAIIBに協力すべきと言う結論が先にある印象のバラマキです。
5月30日のコラムで書きますが、中韓両国が反日連携行動・竹島上陸や反日暴動直前には、日本に更なる技術移転を求めるのではなく「技術移転すべき」だと高圧的姿勢に要求していましたが、日本が応じないので慰安婦騒動や反日暴動で強迫してみた結果、日本に逃げられて裏目に出たので、これの焼き直し・代弁をも含んだ行為でしょうか?
好意で虎の子の技術移転をしてやるにしても、人材育成や草の根の教育制度協力(年間◯人と言う研修生受入れ)等の無償協力は、財政余力があってこそ成り立つものであって、基幹産業をやめてしまって、どうやってその原資を作るかの展望がありません。
23日夕刊報道のアジア島嶼国支援は防災協力資金ですし、これまでも日本は防災訓練や医療協力その他いろんな分野で無償訓練を引き受けてきました。
カンボジア法制度の構築や教育制度協力などもいろいろやって来ています。
ボランテイアがアフリカ等で活躍出来ているのは、豊かな日本があってこそ、(時々戻って来ては資金を募るなどのバックアップがあって)成り立っていることを無視してはなりません。
上記24日朝刊のインフラ卒業論の報道をタイミング的に見れば、直前の23日朝刊には「アジアの未来」の国際会議で安倍総理が13兆円のアジアインフラへの拠出表明が出て、あっと驚いたかと思うと、同日夕刊では福島で開催中の自然災害会議で550億円のアジア島嶼国への拠出発表が相次いだので、AIIBの存在意義が霞んだ印象が強まりました。
直後にその翌朝・・しかも日曜朝刊にぶっつけた論文?です。
AJJBが世界からかき集める予定の資本金が1000億ドル=約12兆円に過ぎないのですから、日本一国の投資資金13兆円拠出表明のインパクトの大きさが分ります。
同じ資金規模なら中国のように露骨な支配意志を示さない日本の資金・格段に緻密で環境に優しい日本による技術援助協力の方が有り難いのが普通の国です。
この報道が相次いでAIIBの存在意義がカスンでしまった直後に、いきなり内容もないまま・兎も角今後インフラ投資は中国に任せて日本はもうやめよう・・AIIBには(黙って)協力した方が良いと言う印象を強調した大見出しだったことになります。
ちょっと見ると、週刊誌的で、見出しだけどぎつくて殆ど内容のない報道です。
(学者名なのにマトモな論理構成するヒマもなく)あわててこんなムードだけ強調の記事を論文形式(論文らしい緻密な分析もなく)で大きな紙面で出す意図は何でしょうか?
如何に慌てて書かせたか・・舞台裏が透けて見えるようなやっつけ論文ですが、こんな注文に応じて内容のない論文を一晩で書かされる教授様も大変です・・マスコミの注文どおりにいろんな意見を繋ぎあわせて意見を書く人に学問の自由が必要でしょうか。
25日日経朝刊4pには、今度は中国人エコノミスト謝国忠氏による今後中国は5%成長をするので、「22年にも米国を追い越すに決まっている・・日本はAIIBに協力しておいた方が良いと言う論説・・これも根拠がないので論文と言うより願望にしか見えませんが・・)が出ました。
業種別データが何年も前から、大幅マイナスになっていることを2015/05/15「中国のバブル崩壊18(中国関連報道の変化)」前後で連載して来きましたし、23日にも中国の過剰生産の鉄鋼製品がアメリカに流れてアメリカが困っていることを紹介しました。
がこれらを前提にすれば、政府発表とは違って、本当の成長率がマイナスになっていると見るのが普通でしょうが、これには全く触れずに、今後も5%成長する根拠は「中国人は商売が上手だから・・」と言うだけです。
最初のころは、AIIBに乗り遅れたのは政権の大失策と強調していましたが、AIIBのいかさまぶりがネットで批判されると正面からの議論をやめて、(AIIB参加が正しいならば正しい論拠を正面から書けば良いのに)今度は正面からの政権批判や参加の有意義性の主張をやめて、上記のようなじんわりとしたムード造りに転換したように見えます。
この中国の大躍進・中国がアメリカを追い越すと言う賞讃記事の隣には、日本の財政赤字は大変だと言う「日本駄目論」の記事が並んでいます。
上記のように切れ目のないマスコミの中韓傾斜ぶり・・国民への日本は如何に駄目な国かの刷り込み・イメージ刷り込み記事の連続には驚くばかりですが、これを紹介していると切れ目なく続いていて終わりがないので、この辺で終わりますが、マスコミは、AIIBに日本を参加させたい・・中国のなりふり構わない裏からの?要請に必死になって応じている様子です。
朝鮮総連のように立場のはっきりしている場合は分りますが、中立であるべきマスコミが、中韓の要請に何故必死に呼応するのか不思議です。

中国のバブル処理4(過大投資の調整3)

先進国が50〜100年かけて徐々に作って来たインフラ整備を、数年〜10年の突貫工事でやれば高度成長と言うか目の回るような成長になりますが、その代わりこれらの工事が一段落すると関連業者の仕事・需要が急激になくなるのは(オリンピック終了後工事が激減するのと同じで)当然です。
この勢いが無限に続くかのような錯覚?中国の成長が無限に続くかのように、中国政府と一緒になって宣伝して来て更なる中国への再投資を煽って来た日本マスコミは、幼児以下のレベル・頭がおかしいか中国から何か貰っているのか疑われていたのは、むべなるかな!と言うところです。
中国政府自身本気だったのか?日本に再投資させるために成長魅力を宣伝して来ただけと思いますが、外見上有頂天になっているときに、リーマンショックが起きました。
リーマンショックで急激に輸出需要を失って焦った中国は、4兆元・日本円で何十兆円に上る内需投資すると発表しました。
日本マスコミは中国が世界のために巨額投資すると賞讃頻りでしたが、(多分中国の苦境を報道しないように圧力があったのでしょう・・・・)中国国内企業の輸出先が一瞬にして蒸発したようなものですから、政府がこの穴埋めに必死になっていたに過ぎなかったと見るのが正解でしょう。
中所得国の罠と一般的に言われていますが、時あたかも、中所得国の入口にさしかかり、ローエンド製品輸出に頼る経済構造では無理な状況になって来たときに、リーマンショックが起きたのですから、言わば二重のショックでした。
世界の救世主どころか自分が一番参っている・・大規模国内投資・・巨額穴埋め資金が必要なほど、生産力過剰に直面していたと見るべきです。
この辺は、私の思いつき推論でしかないので、5月21日書いたようにプロのデータ・かっちりした意見が欲しいものと思って検索してみると、以下の論文がネットで見つかりましたので紹介します。
以下のとおり、私の推論同様に輸出不振が大きな問題であって金融危機の問題でないと書いています。
この論文は私のように思いつき推論ではなく、中国各地・・沿海地域や農村地域など具体的な実態調査結果を引用しながらの着実な研究による結論を「はじめに」書いているものです。

https://www.andrew.ac.jp/soken/pdf_3-1/sokenk186-2.pdf
[共同研究:政策金融に関する日中比較研究]
 中国経済における内需拡大の課題* 消費率の低下要因分析を焦点に
                   唐成
「1.は じ め に
・・・前略・米国に端を発する金融危機・経済危機は中国にも伝播し,経済成長率は2007年の13.0%から2008年の9.6%へと大幅な落ち込みを見せた。
・・中略・・中国経済に世界金融危機と 呼ぶべき事態が到来したというよりも,輸出低迷という外需の急激な減少によって経済環境 が悪化したのである。それは中国経済の外需依存型,労働集約型モデルを反映した結果に他 ならない。したがってこの原因を本質的に解消しなければ,中国経済の危機は去ったことにならないのであろう。」
以下具体的データやグラフを用いての意見が書かれていますが、引用が長くなるので省略します。
関心のある方は上記論文に直接アクセスして下さい。
私のコラムで繰り返し書いているように政府データは全く当てにならないものですが、上記論文は政府データを利用しています。
そこに出て来る政府統計自体は当てなりませんが、上記論文は(これを噓だろうと書くと前提データ自体がなくなってしまい、論文にならないので、)成長率、景気変動率など各種データは(政府虚偽発表を)前提にした分析になっています。
・・政府発表はほぼ同率での誤摩化しがあると仮定すると時系列的趨勢が分ることをかなり前に書いたことがありますが、そのつもりで読めば良いことです。

中国のバブル処理3(過大投資の調整2)

中国の経済不振がスパイラル化して行くと、局部的バブル崩壊と言うよりは需給の巨大不均衡・・一種の大恐慌を招来することになります。
ですから中国の場合は局部膨張・破裂現象を意味するバブル崩壊ではなく、経済大崩壊と言うべきです。
局部的手術では済まない分、中国はバブル崩壊とは桁違いに深刻なダメージを受けていますが、マスコミはこれを過小評価するためにバブル崩壊と名付けていると想定されます。
ただし、政府による国威発揚宣伝を信じて止めどない経済拡大を前提に再拡大投資・投機に参加していた国民の心理状況を、バブルっぽいと表現すること自体は正しいでしょう。
戦前アメリカで起きた大恐慌と世界経済に与える影響の違いは、中国経済は・・経済連鎖の下流に属しているので中国の変調は、上流部門では直接影響受けない・・精々資源国からの爆買いが落ち込む程度→資源関連業界や資源で儲かっていた人が高級品を買わなくなると言う循環的変化に留まっていることとの違いでないでしょうか?
ここ数年以上の中国の実質マイナス成長によって、(マスコミは中国政府の代弁で年7%以上の成長を強調していましたが)資源価格が下がって資源国が参ってるのはその客観的結果です。
今朝の日経新聞22pにも鉄鋼原料(合金鉄製品)が過剰生産した中国から押し寄せて9〜18%前後相場が下がっていると書いています・・このように中国のマイナス成長は個別資源軽取引分野からも国際的に明らかで隠し切れなくなっています。
私がマスコミ姿勢を問題にしているのは、政府発表がない限り政府発表の矛盾をマスコミが一切報道しない姿勢・・政府発表がなくとも業界別に港湾に山積みになっている輸入鉱石など矛盾データ(政府発表ではないですが関連業界情報として)があらゆる分野で出ていたのに、最近までマスコミ報道していなかったことで、ネットジャーナリストだけが問題視していました・・これでは何のための表現の自由か?中立を守っていないのではないかと言う疑念を書いています。
中立を装ったマスコミが中韓政府の意向どおり・アジアで孤立するなどの政治状況も含めて報道するのでは、ネットアクセス出来ない国民はマスコミこそ客観報道かと誤解してしまいます。
私もネット報道を知るまでは、戦後約70年間もマスコミ報道を丸々信用して洗脳されていました。
このコラムは開始の始めっから、マスコミや文化人の主流意見批判で(例えば開始後約1年目ですが、01/04/03「外国人労働力の移入 1」での外国人移入反対論に始まって)一貫していましたが、それでも情報源はマスコミや文化人の書いたものを前提に自分の直感に反することに対する批判しか出来なかったのです。
中国政府も実需の縮小・マイナス成長を認めざるを得なくなったらしく、昨日紹介したように個別統計を部分的に発表するようになっています。
中国の輸出産業が駄目になって資源輸入が減り中国の大規模出血輸出がここ数年始まった結果、世界経済は短期的には混乱しますが、その代わりインドネシアやバングラデッシュやベトナム等新興国が輸出商品生産するために資源輸入を補完して行きますし、これらの国民所得が上がって世界全体では購買力が上がりますので、長期的な世界経済に大した影響がない筈です。
原油価格が下がったアラブ農様の需要が減ってもその代わり、燃料費下落の恩恵を受けた大幅需要創出効果が起きます。
普通ならば、出血輸出や赤字受注は一定期間経過でなくなりますが、中国の場合国有企業中心・・しかも不透明な共産党幹部の私利私欲で動く傾向がありますから、市場原理が働き難い・大規模且つ長期化する点が異質で世界経済撹乱が長引きます。
5月17日から書いているとおり、中国は新興国型経済=インフラ投資・大規模工場新設その他あらゆる分野で自国内の需要を無視して、新興=雨後の筍のように同時に大量に作り過ぎた・これが見た目には高度成長になりました。
何もないからこそ、一斉工事が必要でしたが、道路・港湾・工業団地造成・・関連諸工事が一段落すると開発工事の必要がなくなるのは当たり前のことです。
新興国の外資導入直後の高度成長は期間が10年以上に及ぶので、無限に続くかのように錯覚しますが(地震がホンの100年もないとこの辺は安心だと思い込むのと似ています)消費税増税前の駆け込み需要→反動減や、昔の年末の忙しさは、正月明けの不需要期を意味していたのと同じでちょっと期間が長いだけです。

中国バブルの本質3(新興国経済2)

フリーのジャーナリストが、数週間の旅行観察程度でも、社会のムードを読むには有効ですが、その先、企業内実のデータに基づく微妙な変化を読み、紹介するには無理があります。
深圳特区などの大規模工場群のあたりをタクシーで走り回ったら、少しは印象がつかめるかも知れませんが、広大な敷地の塀の外からの観察では隔靴掻痒の感がします。
倒産して閉鎖されている工場については、通りがかりに見れば分るでしょうが、(これもタマタマうまくその工場正門前を通りかかった場合だけです)2〜3割減産しているかどうかなどの変化は分らないでしょう。
市街の雰囲気を逸早く報道するウオッチャーの役割は貴重ですが、この方向性をある程度理解したら、(ムード報道は何回聞いても仕方がないので、)その次にはこれを裏付けるデータから迫る報道が欲しいものです。
素人は慾が深いと言われればそれまでですが・・。
国内景況感把握に関しても、年または数ヶ月遅れの統計が出るのを待つよりは最先端感覚・直感に頼る街角景気把握が重視されていますが、直感把握の後ではその直感を裏付けるデータ報道が欲しいのと同じです。
この辺はフリージャーナリストの手には負えない・・商事会社など海外展開している企業実務家の方が詳しいでしょうから、彼らのネット(企業名を知られたくないならば匿名で且つ業界情報で)参加が望まれます。
中国、韓国、インドネシア等々国別で(政府統計ではない)業界別にその国での月別売上高推移など具体的データを知りたい人が多いでしょう。
先進国のバブルとは、均衡の取れた種々雑多な産業群がある中でオランダのチューリップ・・日本の不動産バブルのように特定分野で急激な需要(仮儒)拡大した現象を言うものです。
中国の場合17日から書いて来たとおり、経済全般の不振=過大供給能力化の結果、(不動産需要は経済全体の動きを反映し易いので)不動産や株式バブルが目立っているだけですから、先進国のバブルとは違います。
中国は図体が大きいだけであって、外資導入に始まる一斉開花式の新興国型経済で成長して来た点では同じですから、不動産業や株式相場等に限定せずに同時並行的に各種投資が一斉に(輸出目的=内需無視の過大投資)行なわれて来ました。
新興国型経済は外資流入によって新規成長した分野では、成立目的から言って、国内需要目的ではないので、内需から見れば、過大になっている本質があります。
この辺は新興国としては老舗ですが、韓国産業界が内需無視の外需依存体質になっている・・国民が貧困に喘いでいて、売春輸出に励まざるを得なくなっているのに、貿易だけ黒字になっているのと同じです。
新興国では外資導入に際して、ひ弱な内国産業が壊滅するのが怖いので、輸出製品製造目的を条件に進出許可することが多いので、経済特区では元々国内需要に整合していません。
バングラデッシュの巨大な縫製工場が時おり報道されていましたが、これらは当初から輸出目的であって、内需のために巨大工場が生まれているのではありません。
バングラデッシュ等に移転した生産分、中国の大規模縫製工場では仕事がなくなっている筈と言う印象付けで終わらずに、バングラデッシュやベトナムの報道にあわせて中国縫製工場業界の生産量推移のデータが欲しくなるのが普通です。
新興国型経済では、外資導入目的が輸出産業育成にシフトしているので、ひとたび輸出競争力が損なわれるとあらゆる分野で過大投資問題=いわゆるバブル崩壊(本来のバブルではない・・大規模景気変動の一種であると言うのが私の意見です)が始ります。
植民地経済時代のプランテーション農業経済の脆弱性が問題であった歴史の繰り返しです。
これを防ぐために内需型経済への変換が必要であると言う意見が一般的ですし、抽象的にはそのとおりです。
家内工業から始まって内需・・地域需要を満たしてから近隣県に進出し、更に自社の属する関東や九州等の地域全般に販路を伸ばして全国メーカーになって、その余力で輸出力もつけて行った・・段階的に発展して行くのが日本や世界の先進国の発展形態です。
20日に書いたとおり、この段階を飛ばしている新興国では、いきなり内需転換と言われてもこれに見合った産業構造になっていません。
日本の高度な消費者向けに日本人が指導して日本向けホーレンソーなどの洗浄や包装をして出荷して行くやり方(衣類その他も皆同じです)で、元々中国国内需要向けに生産した経験がありません。
中小企業から大きくなった企業が倒産したら経営者は元の中小企業・・自分で「昔取った杵柄」で物造りを再開出来ます。
(大工さんやペンキ屋が大きな会社にしてから、倒産しても、元の職人に戻ったり年齢が高くなって現場が無理ならば、監督などやれます・・原点に返れば良いのです)
中国等新興国では経営者が、何の技術経験もなく資本さえあれば、日本から大規模機械化した工場設備を導入して日本技術者から機械操作をおしえられて生産を始めただけで従業員も流れ作業しか経験していません。
日本のように段階的発展の経験がなく、国内需要向けでなく、画一的低レベル品を作るために立地した大規模工場が、内需型・・きめ細かな多品種少量生産にイキナリ切り替われる訳がありません。

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