円高対策4(資金還流2)

個人で資金に余裕のある人は、海外債券投資して満期が来ても、あえて円に両替しないでそのまま外貨で保有していて、チャンスが有ればまた別の外貨建債券を買うようにしていけば、いくら元金償還や利息収入があっても国際収支に関係がなくなって円高にはなりません。
現在各国の紙幣の信用がなくなって金地金などの実物へのシフトが起きていて、金が高騰していますが、日本人は昔(バブル直前頃)高値でつかんで損をしていたので「やれやれ売り」の人が多いらしく、最近の日本は金の輸出国になっている模様です。
このような動きは金地金をドル等で売って入手したドルを円に替えることになるので余計円が値上がりする要因です。
金の売却もレッキとした商品輸出ですが、この種の輸出は、国内産業には何の貢献もしないのに円が上がるだけですから、一般の貿易黒字による円高よりも悪い円高となります。
金地金の輸出も貿易収支にカウントされますが、国内経済に与える効果は所得収支と同じですから、円の急騰時にこの種の物を売り急ぐのは、円急騰の応援団みたいで「一種の非国民?」かも知れません。
金地金類は、イザというとき・・日本が資金繰りに困ったとき・・超円安時にこそ持ち出すべきものであって、外貨が集まり過ぎて困っているときに売るべきものではありません。
個人で言えば、お金に困ってお宝を換金するべきものであって、お金がだぶついているときに換金するべきものではないでしょう。
円高を国民みんなが困ると思っているならば、このような円高のときこそ高くなった円で安くなった海外品(金地金や土地や鉱物資源)を買い漁る方が合理的ではないでしょうか?
個人で海外債券や物品を買うのが怖いならば、トヨタなど日本企業の起債に応募して集めた資金でトヨタ、本田などが海外投資するのを応援して行く・・日系企業の海外投資を増やして行くしかないのかも知れません。
この場合は、一時的に資金が出て行きますが、満期が来たり利子受取で結局国内に還流して来るので、一定期間経過すると所得収支の黒字増大で、結局は円高になります。
(これが積もり積もって年間10兆円前後の所得収支の黒字になっているのです)
ですから資金に余裕の有る方は国内企業に投資せずに海外債券(たとえばトヨタのを買いたければトヨタの外貨建債券を買えば良いのです)を直接買って外貨のままで回して行く方法が一番円高阻止力が有ることになります。
ただ、この方法は、貯蓄が有ると言っても実際には使えない・・使うために円に替えると円高になってしまい、国内企業は実力以上の為替相場に苦しめられてしまうので、愛国心のためにいつまでも外貨で持っているだけ・・言うならば高嶺の花を眺めているような心境になれと言うことです。
自分の稼いだ貯蓄であれ、親からの遺産であれ、働かずに使うのは必ずその報いが来ることになるので、貯蓄は(金地金同様に)イザというときのためにとっておくだけの価値と思い定めるしかないでしょう。
国内預金だって満期が来たら元利をそのまま再預金して行く人の方が多いのですから、実際は同じことです。
この方法は、アメリカの債権(国債・公的機関債)ばかりに投資するリスク回避になるばかりか、分散投資先からの収入源にもなる外に円高対策になりますし、将来のためにも有益です。
以前書きましたが,アメリカがドルと金との交換を停止して以来アメリカに限らずどこでも野放図に不景気が来る都度,景気対策として過剰流動性政策をとって来たので、世界中に紙幣が溢れ過ぎています。
これの状態を一旦解消するには世界中の紙幣を一旦無価値化して、適正量に新紙幣発行をし直すしかないところまで行く(世界中央銀行の統一紙幣の発行)しかないのかも知れません。
ここは、10月23日に書き始めたアメリカの危機が現実化して(紙幣)を基準にした貯蓄・債権は一旦ゼロ・無価値になる可能性に基づいて書いています。
現在の国別紙幣制度の崩壊は、アメリカのデフォルトまで待つことになるのでしょう。
10月23日まで見て来たように、アメリカは既に赤字の累積が半端ではないので、(借金が雪だるま状に増えて行くサラ金地獄に陥った個人同様です)今ではいくら努力しても返せそうもありません。
この際開きなおって、これからも借りられるだけ借りまくって適当なところでデフォルトして、日本や中国の鼻をあかそうと考えていてもおかしく有りません。
個人が一定以上の借金をしてしまうと自助努力では返せないので、破産してしまうのと同じです。
破産して困るのは債権者の方であって、破産者では有りません。
だから債務者は苦しい中から、親族から借りてでも、弁護士費用と裁判所予納金等を工面してでも破産する人が多いのです。
困るのが債権者であるからこそ、貸す方は相手が返せそうかどうか予め信用調査をしてから貸しています。

円高対策3(資金還流1)

円高問題に戻しますと、貿易赤字傾向になっても所得収支黒字がある為に円高が続く国では、これまで書いたような不都合が有るので、貿易赤字傾向が見えて来た段階で所得収支が黒字でも早めに円高を抑える必要が有ります。
2日くらい前の日経新聞では、8月単月ではなく4〜9月の半年間での合計でも貿易赤字になったことが報道されていました。
地震の影響とは言え、1〜2ヶ月の例外ではなく半年間でも赤字となると大分基礎体力が弱って来た感じです。
為替相場を貿易収支の均衡化を図る道具と考えれば、仮に1兆円の貿易黒字なら,1兆円の黒字に対応する円高は貿易収支の均衡という意味では合っていますが、その他に所得収支が10兆円も有るからと言って、為替相場が10倍の倍率で円高になると,1兆円の貿易黒字の解消どころか、あっという間に貿易赤字に転落してしまいます。
1兆円の貿易赤字でもなお上記の10兆円の所得収支の黒字があると差し引き9兆円の黒字ですから、その分だけドル売り円の買いの圧力が高まってなお円高が進むことになります。
とは言え、為替相場は人為的に介入して上下させることは短期的には可能なことも有りますが、長期的には市場原理に逆らえません。
為替の市場原理に基づいて、資金の集まるところの紙幣の価値が高くなるのは当然ですから、この原理に逆らわずに応用して対策を考えれば良いことです。
現在のように円高が困ったと悲鳴を上げているだけでは、どうにもなりません。
赤ちゃんが泣けば何とか周囲がしてくれるような甘ったれた心情に浸っていても国際政治は非情で、誰も助けてくれません。
円高が本当に困るならば、円高の原因を究明して円高にならないようにするしかありません。
貿易赤字傾向にも拘らず円高になるのが困るのですから、その原因になっている逆ばりをすれば、簡単に解決します。
すなわち、貿易黒字が減っても所得収支などで黒字がたまると・・・海外の稼ぎを円に替えないと国内の経費を払えないので・・儲けはすべて一旦ドルなど外貨を売って円紙幣に切り替わりますので円高になる一方です。
(10月19日に紹介したように2010年でも17兆円もの黒字でした)
円高対策・・貿易黒字以上の円高を阻止するには、毎年貿易外で儲けた黒字分(海外からの元金回収や配当収益等)とほぼ同額を海外再投資(工場用地の買収や鉱山・企業買収など)に振り向けて海外に資金を逃して解消して行けば、貿易黒字による以上の円高進行が止まります。
もともと、海外進出した企業は海外で発生した利益を日本へ送金しないで現地再投資して行ければ簡単です。
・・・個人の海外債券投資で言えば、満期が来ても元利金を円に替えないで外貨のままで保有しているようにすれば円高になりません。
とは言え、企業の場合,海外での利益・あるいは債権回収を外貨で持ったままでは、株主への配当も出来ないし、研究開発費・国内本社部門の経費を払えないなどいろんな問題があって、ともかく一旦円に変えてしまう必要があって実際には複雑です。
日本の証券会社のファンドなども満期が来れば、一旦は日本人顧客に円で償還する必要が有ります。
結局は、ドルを円に換金すること自体は防げない・・禁止や指導は出来ないとして、両替の結果日銀に貯まったドルの使い道の問題に帰するのでしょう。
日銀が民間の株を買うのは難しいので、結局は配当金や元金を貰った個人や機関投資家が、海外株式・債権などを再購入して海外に還流して行くしかないと思われます。
国民個々人には直接還流能力がないならば、(個人では勿論海外の鉱山権益など買えませんし、海外のどこの株を買って良いのか分りません)証券会社が海外債券を組み込んだファンドあるいは外貨建債券などを一般向けに販売することが有効です。

原発事故損害賠償資金3(政府保証3)

国債破綻問題から原発賠償資金向け新機構発行社債に対する政府保証に話題を戻します。
政府保証債で調達した資金については、国債同様に借り換えの繰り返しを前提にしているので、東電としては、結局自己資金を全く使わないでも済む仕組みです。
国債暴落時期不明を良いことにして(数年先でも時期が分れば分った時点で大暴落・デフォルト状態になります)政府債務のデフォルト判明までの間に投資家が一定期間金利を取得してから売り逃げ出来る(終わり頃に買った投資家だけが損をする仕組み)チャンスがある点の違いがあります。
言わば、東電の責任を国税で面倒見るのではなく、投資家に分担させて負担(リスク)を内外に分散させようとする政策です。
現在の政治のやり方・・・借り増してはその場の資金調達して行くばかりですから、債務が際限なく膨らみ遠い将来破綻することがほぼ明らか・借り換えばかりで最後は踏み倒す予定ならば、結局東電は一銭も自分の売上金から負担しないと宣言しているのと同じです。
そんなことが目に見えているならば、東電の責任を名目上・法律上100%にしないで、3分の1〜5分の1に限定してやる代わりに(無限責任を定めた原発賠償法の改正)少しでも自費で今・現在払わせた方が放射能被害でおののいている国民としては納得出来る感じです。
僅か3分の1でも5分の1でも東電が直接支払うのでは、市場の信認を得られないほど東電の体力がない・・賠償金が巨額過ぎる予想ということでしょうか?
東電の責任を仮に5分の1と限定すれば、残り5分の4が国(国民全部)の責任となります。
そうなると直ちに、国・政府では予算化しなければなりませんが、これまで書いているように「原発は安いぞ!」と言うキャンペインをしている手前、損害総額の見積もりをしたくない・・August 16, 2011「学問の自由と社会の利益」で書いたように、そんなにコストがかかるのかと国民に公表し知られたくないのが今の国・・伝統的勢力の姿勢です。
それと予算化するにしても、とてもその分をそっくり増税する勇気がない・・他方で何かの支出を減らして穴埋め出来る政治状況ではないので、ほぼそっくり赤字国債の増発しかありません。
財政赤字累積で大変なときに巨額の赤字国債の増発を出来れば避けたいところですから、保証という隠れ国債化の道を選んだのでしょう。
ところで、目先の倒産を防ぎ、これからの賠償金(今後の債務と言えるか・・法的には既存債務になるでしょう)支払に当てるためならば、更生法申請や再生手続きでやる方が合理的です。
今回のスキームではこれまで連載して来たとおり、賠償金の資金手当の前の段階・・・次々と到来する既存債務支払のデフォルトを避けるために、先ず既存債務の返済を円滑にすることから始まっています。
そして当面の危機をやり過ごせば、行く行くは、賠償金支払が始まりますが、その資金手当のための新たな(借り換えのためではない)賠償資金手当としての社債発行もして行こうとするようです。
これまでの社債は設備投資資金等に充てるために発行している前向き用途向けが普通ですから、そこから予定通り生み出されて来る回収金がその社債に対する支払原資になりますが、今後借換債の外に賠償金用に新規発行する社債は過去の賠償金支払資金用ですから、そこで取り入れた資金で何の前向き投資もしないのですから社債とは言うものの、実質は赤字国債や消費者信用・サラ金債務同様に何の利益も生み出しません。
このために借りた資金からは元本を完済するまでの利息支払用の利益も生み出さないし、元本自体を削減して行くための利益も生み出しません。

原発事故損害賠償資金1(政府保証債1)

冷却装置停止・・高熱化に任せて現場の人はみんな逃げてしまって連続臨界になってしまう・・手が付けられなくなるのを防ぐには、(国民感情から言えば悔しいけれど)先ず倒産させないことが原発対策の第一でした。
経済界・市場の動き・・これを受けた政治の世界での東電の賠償責任の範囲と政府責任の範囲を決める法案が急がれていました。
どんなに大きな損害があろうとも東電はその一部・一定額までしか負担しないという法律を作るのでは、今までよりもよけい安全対策がおろそかになる・モラルハザードを助長するばかりです。
大被害が発生したばかりで、国民感情が許さない印象であったことから、どうなることか不明なことから東電の株価は400円台まで下がったまま低迷(様子見)していました。
法的枠組みはどうなろうとも、ともかく東電を倒産させない方向性が決まって資金ショートを免れる見通しがついて、東電株も5円〜10円台まで下がらずに400円台で安定しその後マスコミからこの話題は消えていました。
8月3日に国会通過して公表された結果によると、損害限度額を定める原発賠償法の法改正は世論が納得しないからでしょうが、これを(当面)諦めて、別の賠償支援法を制定したようです。
(政府ホームページから入って行けば条文が公開されているでしょうが、安直にグーグル検索から入って行くと20日現在では、マスコミ報道ばかりで条文が出ていないので正確には不明です)
すなわち
先ず原子力業界で機構を作って、(東電名義の社債発行では買い手がつかないので)機構の名義で社債を発行させて機構に基金を用意させる。
東電が機構から資金を取り入れて当面の資金ショートを防ぐ、(それだけではなく将来の賠償資金の借り入れも含まれているでしょう)東電が機構に返済出来なければ機構が投資家に対して社債を償還出来ませんが、そのときに備えてその社債償還について政府が保障する間接的政府責任で解決することになったようです。
政府が損害の何割負担するあるいは東電が一定額までしか負担しないで残りを税府が全部負担する直接責任ではないので、表面上は東電が従来通り100%被害者に支払責任がある形式です。
機構名義で社債を発行しても、そこで得た資金を原発大事故による損害賠償資金に使うとなれば、5〜10年先に期限が来れば償還不能が目に見えているので、これに政府保証を付けることになったようです。
ついでに社債の償還について書いておきますと、一般的な社債の期限・・長めでも5年くらいの期間の場合、元利をその間のもうけから完済出来る訳がなくて借り換えで繰り返してるのが普通です。
・・まして社債で集めた資金を賠償資金に使うとすれば、工場新設などの投資資金と違って対応する入金がないのですからなおさら5年や10年で元利全部を返すなどは無理です。
政府保証であれば社債の償還期限が来ても、借換債を再発行出来るので返済期限を事実上無限に延ばして行けることを考えたのでしょう。
新機構を造っても次々と到来する東電の社債償還資金を貸してやるべき資金が機構自体にはないので、機構の名義で社債発行して資金確保してこれを東電に貸してやる仕組みですからサラ金などで借りられなくなった人が友人や妻の名義で借りてもらう形式と同じです。
しかし、これは東電が賠償資金を借りた場合完済能力がないという見立てによること・・即ち社債借り換え不能になったことが話の発端ですから、新機構が貸しても結果的に焦げ付く見通しであることは同じです。
とすれば、新機構の発行する社債の信用力は、将来発生するであろう東電の損害賠償資金決済不能のときには、名義を貸してやるべき機構自体が、自前で決済してやれるほどの資金力を持っていないと意味がありません。
融手(融通手形)を借りてもその発行人・振出人の会社信用の範囲内しか、融手の割引を受けられないのと同じです。
妻や友人の名義でサラ金から借りようとしても、その名義人の信用の範囲しか借りられません。
新設した機構自体にはこれと言った独自資金がないのですから、将来東電が借りた賠償資金を返せないときに代わって全部負担してやるほどの資金力がないのが明らか・・業界全部束になっても今回の賠償金を捻出出来ないというのが市場の見立て・・信用がないのです。
東電の支払能力不足を市場が見越して東電の社債発行が不可能になったのと同じ理由で新機構を造ってもその機構の信用範囲しか東電救済のための社債を発行することが出来ない点は同じです。
そこで新機構の発行社債に政府が保証を付ける・・政府信用で発行出来るようにしたことになります。
電力業界と言えば超優良企業の集まりの筈ですが、これが束になっても原発事故賠償金を賄うほどの巨額社債発行には、支払能力に市場で疑問符がつく・・信用がないということです。
市場の見立てでは、今回の賠償金額はそれほどの巨額が見込まれているということを理解しておく必要があるでしょう。
業界が束になっても保証しきれないような賠償金を、日常の運転資金のコスト計算に入れたらどうなっていたか・・本当に原発の方が安いのかが今回のテーマです。

不安解消資金

 

そこで一人当たり貰ったお金がどのくらいあって、万全の移転準備や補償・・不安解消に足りる額であったのかを見て行きましょう。
福島第一、第二原発立地自治体住民は赤ちゃんまで含めて、ウイキペデイアによると双葉町(2011年2月1日現在推計・6,884人)と大熊町(11,574人・推計人口、2011年2月1日)第二原発の立地する富岡町15,959人(推計人口、2011年2月1日)楢葉町7,679人(推計人口、2011年2月1日)ですから4町合計で約4万人に過ぎません。
このうち大熊町の例によれば、原発立地による巨額資金流入によって、人口が減るどころか逆に1、5倍くらいに増えた結果であることを6月14日のコラムで紹介しました。
他の町も同じ傾向かどうかはっきりしませんが、似たよう推移であったとすれば、・・震災前人口の3分の2=約2万6000人であった可能性もあります。
(双葉町をウイキペデイアで見ると1970以降の国勢調査しか出て来ず、用地買収の始まった1960年〜1965年当時の国勢調査結果が町の歴史・ネットでは出て来ないので正確には不明です)
この4町ぷらす周辺人口(お互いが周辺住民としてお金の配分を受ける関係)で巨額資金(モデル計算によれば施行段階から運転開始後10年経過までに元金で約9000億円)を・・何の対価もなく(ここでは土地買収資金などの入金は除外しています)全国民の血税から受け取って来たことになります。
モデル計算と実際の支給額とは誤差があるでしょうし、この4町以外にもある程度配っているでしょうが、その大方がこの4町に配られていたと見るべきでしょう。
「不安だ不安だ」と抽象的に騒ぐだけではなく本当に不安があったなら、不安の内容は何かを前回書いたように検討するべきでした。
そうすれば移転のリスクでしかないことが直ぐに分りますし、不安の内容が分れば一刻も早く避難行動に移れるように放射能汚染状況の計測を自前でするようにしたり、避難予定用地手当、避難経路の確定・避難・輸送手段の確保その際の防除服・マスクなど準備しておくべきことを簡単に決められたことになります。
周辺への配分など考慮して仮にこの4町だけで貰っていた金額が元金ベースで7000億に過ぎなかったとしても、この元金だけを26000人で割れば一人当たり(赤ちゃんまで含めて)2700万円前後貰っていたことになります。
これを約30年間普通にプロに運用を頼んでいたら(1964年=用地買収の頃から貰っていますが、仮に運転開始からとしても福島第一原発の最後の運転開始からでも既に30年は経過しています)8〜10倍になっていた勘定です。
2011年6月13日に会計検査院の記事の一部と共に紹介しましたが、何の能力もない消費者が信託銀行に預けておいても、5年で1、5倍、10年で2倍に(20年で4倍に)なると宣伝されていた時代でした。
私のような末端消費者にさえ10数%前後の商品が販売されていた時代で、プロの資金運用会社の場合、年利15〜18%くらいで回っていた時代ですから、貸付信託の2倍の利回りとすれば10年で4倍、20年で16倍、30年で64倍ですが、さすがに15年目以降はバブル崩壊後ですので、年利5〜6%でまわすのがやっとだったかもしれません。
それにしても1960年代から貰い始めたとすれば、バブル崩壊までだけでも、7〜8倍にはなっていた勘定です。
9000億円の交付金は運転開始後10年までのモデル計算が公表されているだけで、その後(素人には不明と言うだけで)も交付金がなくなる訳ではなく減少するだけですから、さらに莫大な資金が地元に落ちていました。
福島第一原発の最後の6号機運転開始が1979年ですから、その後の10年経過後1789年からだけでも今年までに20年以上経過です。
この間にどれだけの資金が交付されていたかについてははっきりしたことが公表されていませんが、(出来るだけ分り難くしている感じです)ウイキペデイアの電源三法の交付金(6月11日現在)の記事では以下の通りとなっています。
「朝日新聞の調べ[1]によると、2004年度(予算ベース)での電源三法交付金は約824億円に上るとされている。うち、福島第一、第二原発を抱える福島県では約130億円、柏崎刈羽原発を抱える新潟県では約121億円、敦賀、美浜、大飯、高浜原発を抱える福井県では約113億円、六ヶ所村核燃料再処理施設や放射性廃棄物管理施設を抱える青森県では約89億円となっている。」

これによると福島は第一第二合わせて130億円の交付とのことですが、2004年だけしか分りませんが、仮に同じような金額を22年間もらい続けていたとすれば、2860億の巨額になります。
この外に2003年からは原発特別措置法による巧妙な資金交付があります。
これは6月9日に書いたようにいろんな分野の補助率の引き上げですから、よほど綿密な調査しないどれだけ貰っているのか分らない仕組みです。
原発は本当に火力発電よりも安いのかについて疑問がありますので、(今回のような後始末の費用を含めて)国費の投入内容を明らかにすべきです。

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