中国過大投資の調整8(資金枯渇2)

長期資本収支・・例えば、トヨタ等の進出資金・・工場用地購入資金等がドルで入って来てこれが現地通貨・人民元に両替して購入することによって中国の外貨準備が増えている場合には、トヨタが現地工場を叩き売りして日本に資金を持ち帰るときにドルに両替するだけなので、滅多にドル資金を払い戻す事態が起きません。
余程の喧嘩でもしない限り永久に貰ったような気持ちで良いので、対外純資産がプラスかマイナスかは短期的には大した意味がありません。
中国としては、進出企業がある程度儲けている限り、損切りして撤退しないので、一旦捕まえた魚みたいなもので、無理難題が可能と言う意識のようです。
しかし毎年のようにあらたな進出が必要な社会構造となれば、一旦進出した企業に無理難題を要求しているとこれを見ている次の進出予定企業が進出に二の足を踏むようになります。
借金も借りてしまえば、借りた方が強いのですが、次々と借り換えなければならないとなれば、期限に払わなかったりごねて引き延ばしたりすると次に貸して貰えなくなります。
パナソニックの技術移転があらかた終わったので、今後用がないとばかりに暴動を仕掛けたのでしょうが、他の日本企業がそのやり方を注視していることに気が付かなかったのでしょうか?
長期関係も大事にしないと信用がなくなりますが、反日暴動後の日本からの投資急減によって、信用の重要さを中国は漸く学んだところでしょうか。
「韜光養晦」戦術も同じで、あまりにも目先利益重視・・ちょっと自分が強くなればすぐに威張り散らしても良いと言う思想であまりにも幼稚でゲンキン過ぎます。
孫氏の兵法を直ぐに持ち出して有り難がる傾向がありますが、孫氏の兵法の極意は、数時間後とか数日間後などの短期の時間軸を利用して相手を騙して有利な戦法に持ち込む戦略に過ぎません。
韓国では戦った後に和解したフリをして相手を安心させてイキナリ背後から切り掛かるようなことが賞讃されている社会・・これが日韓条約を結んでお金を受け取った後に慰安婦や徴用工問題を蒸し返して羞じない基礎・道徳心理の根拠)ですが、中国の「韜光養晦」戦術とは、時間軸を数日後の開き直りから、その期間を数年とか十数年にちょっと長くしただけで、韓国の卑怯なやり方と本質が変わりません。
レアアース問題も極端な安値販売で中国のレアアース製品が世界市場を席巻した後にイキナリ禁輸して・何十倍に値上げしたものすから、「韜光養晦」の応用編・・だまし仕打ちです。
人類何千年の英知の結晶として積み重ねて来た国際ルール(結局は信義を守りましょうと言う精神)を、中国が無視し破壊する行為に付いては、(親中派文化人は、欧米秩序に対する新興勢力の挑戦であるとして賞讃頻りですが)数日後に書いて行きます。
対外債権債務の話題に戻ります。
対外純債権債務のバランスが仮に同じであっても、あるいは純債権国であっても流入資金の多くが借りた資金の場合は期限があるので、マトモニ返さねばならない点が大違いである点をここでは、書いています。
比喩的に言えば、対外債務が10兆円で対外債権が15兆円あっても、対外債権がいつ返してくれるか分らない・・貧困国援助資金(言わば不良債権中心)や資源開発等の長期資金投資で対外債務がアメリカ等から借りた資金の場合で考えれば、借入金返済資金手当が出来ませんので、黒字倒産の危機に見舞われます。
貿易決済のように同時にアフリカ等への援助資金の大多数が返済されれば良いですが、後進国援助や不景気対策の国内投融資資金等・・本来倒産予定企業救済資金ですからこの種の返済約束は長期でしかも焦げ付き易い・・市場調達による借入金返済期限や金利とかみ合いません。
ですから対外純資産のバランスが合うかの問題ではなく、中国の資金枯渇リスクの可能性に付いて必要なことは対外債権債務の中身です。
中国が2007年以降29兆ドルもの巨額対外債務・・借入金(期限付き)を増やしたと言う勝又氏の5月18日付き記事によれば、総合黒字を続けているとする統計発表が仮に正しかったとしても、資金繰りが間に合っていなかったことを表しています。
一般的な2〜3年もの社債・国債等での資金調達を考えれば、年間10数兆ドル以上の返済が回って来る大変な自転車操業状態です。

中国過大投資の調整7(資金枯渇1)

中国が韓国よりも先に参った・・安倍総理に二回も会わざるを得なくなったのは、(韓国は中国に共闘のはしごを外されて、仕方なしに方針転換に踏み切るような雰囲気です)これまで書いて来たように既に資金が底をついていることによります。
韓国はリーマンショックでも中国のように大規模財政出動しなかったので資金枯渇の心配が起きていませんが、中国の場合以下のとおりです。
外国報道に直接アクセスする能力がないのでいつもながら、他人(勝又氏)の記事で引用されている記事の孫引きです。
http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/day-20150518.html
「ドイツ財務相も見放す
『ロイター』(4月16日付け)は、次のように伝えた。
① 「ショイブレ独財務相は、ワシントンのブルッキングス研究所で行った講演で、緩和的な金融政策と、借り入れによる資金調達に支えられた財政政策が、これまで金融危機の発生につながってきた。現在も世界的な経済成長の重しとなっていると指摘。『世界的な債務水準は引き続き懸念材料となっている』と述べた。同財務相によると、世界的な債務は2007年から57兆ドル増加。この約半分が国の債務という。そのうえで、『中国の債務は2007年以降約4倍に膨れ上がっている。中国の経済成長は不動産市場とシャドーバンキング(影の銀行)の活況に支えられ、債務の上に立脚しているようにも見える』と述べた」。
以下は勝又氏の意見です。
「ドイツ財務相は、中国が「世界的な債務が2007年から57兆ドル増加したうち、約半分を占める」と指摘している。つまり、29兆ドルもの債務を負っているのだ。」
「マッキンゼー国際研究所が発表した中国の負っている総債務残高は、対GDP比で282%(2014年4~6月期現在)に達している。2000年時点では121%。2007年は158%であった。繰り返せば、121%(2000年)→158%(2007年)→282%(2014年4~6月期)へと、債務は雪だるま式に膨れあがっている。」

私は中国のアメリカ国債保有減のアメリカ政府発表(これは中国が誤摩化せません)から見て、かなり深刻な状態になっている筈と言う推測意見を5月4日「覇道と日本の補完性1」以下で書いてきました。
上記独財務相発言によると、リーマンショック以降の7年間で何と29兆ドルも債務が増えていると言う意見です。
借金が増えて来ているとすれば、金利の安いアメリカ国債を持ちきれなくなって来たらしいことがアメリカ国債保有減に現れていると推測出来ます。
この発言はIMFその他公的組織による中国を除いた各国が有する対中国債権(中国の自己申告に頼らない)集計の結果でしょうから、正確な数字と思われます。
ところで外貨準備とは、本来短期決済用資金・・流動性資金で良いので・・毎月の貿易決済額の一定割合あれば足りるので・・ソモソモ中国が(公式発表が正しいとすれば・)3兆ドルも保有する必要がないのに過大保有であると言うのが一般的理解でした。
貿易黒字国でも日々の決済では支払の方が多いときもあり得るので、その誤差程度の外貨準備・・企業で言えば手元流動性準備が必要と言う意味ですから、(企業の内部留保・現預金が多過ぎる批判と同じです)ホンのちょっとの準備で良い筈です。
銀行が預金全部・同額の払い戻し用として準備しておく必要がなく、その大方を貸付金に流用出来る仕組みと同じです。
(ただし、アジア危機でイザと言うときに多めの外貨準備をしておかないと間に合わないリスクが共有されたので、スワップ協定の発達や実際の保有額は世界的に増える傾向です)
貿易決済資金としてみれば対外債務が29兆も増えても、中国の公称(本当は水増しと思われています)外貨準備が3兆ドルあまりしかない(差額26兆ドルのマイナスである)ことは問題になりません。
対外債務の中身が問題ですが、一般的に資本収支の赤字・・外資流入超は成長原資であって目出たいことですし、イキナリ返済リスクに曝されるリスクも少ないので、これを(危険な)対外債務拡大とは言いません。
上記ドイツ財務相の発言記事では「借り入れによる資金調達に支えられた財政政策が」と書いているのですから、翻訳が正しければ工場進出等の資本流入ではなく文字どおりの借金が29兆円増えたと言う意味でしょう。
外貨準備のかなりの部分が上記29兆ドルの借金支払資金用の準備資金となると、意味が違ってきます。
貿易決済資金の場合支払と受取の双方があって、実際に必要な外貨は差し引きマイナス分だけですが、(仮に年間貿易赤字1割の国でも総輸入額の1割あまりしか、決済準備金が入りません)借金支払い資金となると差額だけではなく支払い期限直前には100%の準備が必要になります。
ちなみに、ここでは対外純債務が29兆ドル増えたことを言っているものではありません・・たとえば、借りた資金29兆ドルの100%でアフリカ等に援助している場合や、オーストラリラ等の資源企業買収資金に使っている場合は、対外債権債務のバランスは同額で変動しません。
従って資金枯渇問題が政治的に意味があるのは、対外純債務増減とは関係のなく決済リスク・資金ショートのリスク(債務の内容次第)にあります。

中国資金不足4(財政赤字)

道路や国営の鉄道工事等インフラ投資は完成まで長期間要する上に、その後の乗客数がどうなるか(・・開業直後は赤字に決まっているので、赤字累積が問題になるのは開業してから10数年先のことですから)経済合理性のない内需喚起用の投資向きです。
日本でも本四架橋工事その他長期を要する工事では需要予測が高め・・殆ど無茶な予測をして工事をした結果、出来上がってみるとまるで需要が少なかったような事例が多いことからも分かりますが・・。
経済不振で追いつめられた中国では、(なりふり構わず外資導入を進めてその資金を利用して)先のことを読めないのに乗じて鉄道建設や不要なインフラ工事に投資するしかなくなっているように見えます。
数年前には乗客もいないのに無茶苦茶に鉄道建設工事をしていて、新幹線事故では現地で埋めてしまい世界の笑い物になっていました。
その後一時工事凍結していましたが、経済の底割れを防ぐために背に腹を代えられので春先から鉄道建設工事を再開したようです。
これによってココ数ヶ月の経済指標が上向いて来たようですが、無駄な工事をいくらやっても中国の勝手ですが、無駄な工事は将来負の遺産にしかならない・・需要のない鉄道を敷設すると工事費の支出(これが内需下支えになります)だけではなく、際限ない赤字の垂れ流しになりますので、資金繰りがいつまで続くかの問題になります。
こうした政策継続は将来の財政赤字問題の種になります。
日本の外貨準備は黒字の蓄積結果ですから、財政赤字と言っても国内資金付け回しの問題に過ぎないことを繰り返し書いてきました。
(「次世代につけを残すのか」とマスコミが言いますが、次世代は債券も相続するので結果はプラスになります・・1000兆円の国債残高に対して個人金融資産が1500兆円あるのですから、実質プラスです)
韓国の場合個人金融資産は以下のとおり貧弱ですから大変です。

2013年12月23日15時17分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
統計庁によれば昨年基準で韓国の家計総資産は平均3億1495万ウォン(約3090万円)だが、このうち金融資産は7855万ウォンに過ぎないということだ。総資産対比の金融資産の比重は24.9%に過ぎない。一方、実物資産は2億3639万ウォンで総資産の75.1%に達した。パク・ジョンサン研究委員は「担保融資や信用融資・賃貸保証金などを合わせた借り入れ総額が家計あたり5291万ウォンで、これを除けば純金融資産は2564万ウォンにすぎず、これに比べて米国は金融資産の比重が68.5%、日本(59.1%)、豪州(38.7%)とやはり韓国に比べて顕著に高い」と話した。

http://www.globalnote.jp/post-10574.htmlからの引用です。

個人金融資産 国別ランキング統計・推移
最新更新日2014年7月16日内訳データあり(1データ)統計期間1995-2012年収納カテゴリGDP・国民経済計算,金融解 説データの解説文を見る詳細機能Login

【単位:mil.US$】
順位 国名   2012年    注
1  アメリカ 59,434,131
2  日本   15,553,936 →今ですと約1555兆円です。
3  イギリス   6,413,696
4  ドイツ   6,236,054
5  フランス  4,928,674
6  イタリア  4,836,495
7  カナダ   3,841,220
8  韓国    2,871,164
9  スペイン  2,569,986
10  オランダ  2,356,153

中央日報の報道によると、一方は家計単位で他方が国単位ですので、実態が分り難いですが、上記国別個人金融資産表を見ると韓国人口が日本の約半分で金融資産は7分の1強ですから、貧弱さが分ります。
以上は平均値ですから、財閥支配の韓国の場合、(もしかして金融資産の大方が財閥のオーナー一族が保有している可能性があります・・このような区分けした統計はないのかな?)庶民レベルで比較すれば実態はもっと悲惨な状態にあることが推測されます。

中国資金不足3

7月21日の中段から我が国と諸外国の賄賂習慣の違いに話題が流れてしまいましたが、再び中国の経済困難に戻ります。
社債(借金)の場合、企業が儲けてなくとも期限が来れば返済義務がありますが、倒産的状況になるほどの業績不振でない限り、借換債を発行すれば何とかなります。
社債の場合、低金利で借金しておけば途中で高金利時代が来ても支払金利を上げる必要がないし、返済期限前に強制的に返せと言われることもありません。
株式の場合経営不振でなくとも(儲かっていても)利益が減ったりその見込みだけで株が売られますし、途中で高金利時代が来ても配当率が低金利時代のママですと、(投資家は同じ金利ならば国債を買ったり銀行に預けている方がマシですから、(借金のように期限がないので)いつでも売り逃げが出来て、(みんながそうなれば)株の暴落になりますので経営者にとっては株主は怖い存在です。
この結果大手企業では同じ100億円調達するならば、新株発行よりは金利のつく社債の方が気楽だとなることを21日まで書いてきました。
昨日(24日)の日経新聞朝刊2ページには大きな紙面を使って、ゼロ金利を利用した転換社債発行して得た資金での自社株買いが進んでいる状況が大きく出ています。
新株発行によって資金を得るよりも社債での資金手当の方が良いとなれば、それで満足せずに進んで既存発行株を社債で得た資金で消却してしまおうとする方向へ一歩踏み出している状況です。
新聞の関心は転換社債に頼るのは無理があると言う意識で書いていますが、私がここで言いたいのは借金と違って返さなくて良い株式の方が経営者にとって煙たい・怖いと言うスタンスが実証されていることです。
中国や韓国など後進国が先進国からの外資導入に頼っている場合、借金と違って法的返済義務はない代わりに投資資金引き上げには期限がないことからいつでも売り逃げできる・・外資が流出を始めるとこれを止める方法がなくなるリスクです。
外資がドンドン流出を始めて国家経済が成り立たなくなると、政治リスクに影響する点では、株主の動きが気になる経営者と同じでしょう。
日本企業等が外資による本国への収益送金額を上回る新たな外資投資を(なりふり構わずに)次々と呼び込むしかない・・外資の流失が始まってデフォルトの噂が流れると大変ですから、これを放置できないのが、中国経済です。
(借金していた企業が金利支払のために追い貸しを受けるしかない状態・・・。)
社会全体でみると、土地を売った資金・・投資で贅沢していた場合でも、金利同様の適正な収益還元が必要な点から見れば、借金して贅沢していた人・・国が自転車操業的に追い貸しを受けないとやっていけない状態になっているのと国家経済的には同じです。
中国は1〜2年前から、低賃金競争が出来なくなって新規投資が止まった、または縮小したと言う巷の噂に踊らされて、一人っ子政策をやめる方向へ舵を切ろうとしています。
賃金が上がって競争力が失われたのではなく、バングラデッシュ、ミャンマー等でも大量労働者の必要なローエンド製品工場が造れるようになったことが大きいのです。
中国が今更人口を増やしても、バングラデッシュやミャンマーより人件費を安くは出来ないでしょうし、そもそも中国の場合、人口減による市場相場で人件費が上がったのではありません・・。
市場相場と関係なく、国内格差不満を抑えるための最低賃金引き上げを権力で断行したのですから、人口を増やして人件費を安く抑える政策採用は矛盾しています。
今の中国はバブル退治のために引き締めてみたりハードランデングしそうになると出所不明の資金を出して救済してみたり・・理解不能・・矛盾した政策をあちこちで行なっています。
土地錬金術が破綻しかけている・あちこちゴーストタウンだらけ・あるいはマンション値下がりが各地で始まったので、これ以上需要のない建設投資によるGDP嵩上げに頼れなくなってきました。
民需用建設投資は、完成在庫が増えて値下がりが始まるなど、需給がすぐに明らかになる状況ですから、これ以上の新規建設着工増を図るのは経済活性化のためとは言え、いくら独裁国家でも無理があります。

職務は神聖(瀆職罪)1

投資開始後5〜10〜15年は貿易黒字と、継続投資による現金収入の両輪で急激な外貨準備増になりますが、逆から言えば、一定期間経過で投資収益送金が始まり資金が出て行くようになり、他方で雁行的発展の宿命で一段遅れた国の追撃が始まって貿易黒字減少が始まる→投資魅力が減退して新規増産投資が減り始めると外貨準備関係がトリプルで逆転を始めます。
これが中進国の罠と呼ばれる現象の構造要因です。
外貨準備の内、外資の投資による増加分は20日に書いたとおり、借金による預金と経済的には本質が変わりませんので、金利支払代わりに収益送金が必要な上に収益見込みがないとなれば、いつ元金を引き上げられるか知れない(借金は期限まで返す必要があない)点で借金よりも脆弱です。
このために低金利社会の大手企業では、増資による資金獲得よりは、社債発行(有利子負債)を選ぶことがあります。
増資の場合儲からなければ配当する必要がないので楽なようですが、経営者にとっては経営責任追及を受ける方が怖いのです。
土地錬金術を繰り返して外資に工場用地などとして高く売りつけてしまえば、法的には売り主は買い戻す義務はありませんが、外資にとって魅力がなくなって売り逃げを始めれば外資も大損しますが、土地全体が大暴落してしまい、社会・経済・・ひいては政権が持ちません。
その集大成が為替相場の暴落ですが、人民元の場合固定相場制で自由な売買が出来ない・・国際相場がないのが強みですが、独裁国家であっても国内景気の浮き沈みまで支配できません。
吉宗が米相場に振り回されたのと同じです。
共産党政権は、景気沈滞・バブル崩壊によって損をする人が増え、失業等が増大し国民の不満が高まると元々正統性のない政権を維持できなくなるリスクが高まります。
さしあたり国民不満のガス抜きのために、習近平政権による汚職官吏の見せしめ的摘発が始まりました。
曹操の故事にも出て来ますが、不満のガス抜きでことを済ませようとするのは中国歴代王朝の常套手段ですが、根本的解決にはなりません。
日本では汚職のことを瀆職と言い、(刑法が20年ほど前に口語体になるまでは瀆職罪と言われていました)・・神を冒瀆する・・(神聖な)職をけがす意味ですが、中国では職を神聖と考える思想がなく、役得=賄賂を得るのは当然の権利であって職をけがすと言う道徳的意味が歴史上ありません。
これは中国や韓国に限らず日本を除く世界中同じではないでしょうか?
(西洋では漸く清教徒が仕事と宗教を結びつけたので贈収賄を処罰するようになっているに過ぎず、人権思想や女性尊重同様に歴史が浅いのです。)
日本人にとって「職」とは神聖なもので、仕事中は、どんな末端職務でも「私心を去って」日常の人格が変わって別人・・神が乗り移ったような印象になります。
津波のときに自分の生命の危険よりも救難活動に従事するなど、いろんな場面で発揮されますが、中韓等では危難があると自分が真っ先に逃げるのはこうした違いがあるからです。
日本の兵が強いのは愛国心が強いばかりではなく、職を離れれば不良的な若者でも職務になれば意識が変わり礼儀正しく真面目に働くようになる状態は、普通に町中での仕事ぶりを見ても分るでしょう。
極端なことを言えば、夜間泥棒して歩くような人や休日に飲食街で簡単に喧嘩を売るような人でも、昼間の仕事中は警察官のように礼儀正しく、困っている人を見れば手助けするし、誰も見ていなくとも客相手に不正なことを一切しません。
明智光秀やその他の反逆が日本社会で絶対許されないのは、一旦反旗を翻してからの下克上・・荒木村重のように・・は許されるのですが、味方のフリをして裏切ることは許されないと言うこと・・職務従事中は神聖な職務を全うすることが要請されています。
明日正々堂々と反旗を翻す予定であってもそれまでは命を張っても、主君を守るような行動・精神が要請されています。

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