原発事故損害賠償資金3(政府保証3)

国債破綻問題から原発賠償資金向け新機構発行社債に対する政府保証に話題を戻します。
政府保証債で調達した資金については、国債同様に借り換えの繰り返しを前提にしているので、東電としては、結局自己資金を全く使わないでも済む仕組みです。
国債暴落時期不明を良いことにして(数年先でも時期が分れば分った時点で大暴落・デフォルト状態になります)政府債務のデフォルト判明までの間に投資家が一定期間金利を取得してから売り逃げ出来る(終わり頃に買った投資家だけが損をする仕組み)チャンスがある点の違いがあります。
言わば、東電の責任を国税で面倒見るのではなく、投資家に分担させて負担(リスク)を内外に分散させようとする政策です。
現在の政治のやり方・・・借り増してはその場の資金調達して行くばかりですから、債務が際限なく膨らみ遠い将来破綻することがほぼ明らか・借り換えばかりで最後は踏み倒す予定ならば、結局東電は一銭も自分の売上金から負担しないと宣言しているのと同じです。
そんなことが目に見えているならば、東電の責任を名目上・法律上100%にしないで、3分の1〜5分の1に限定してやる代わりに(無限責任を定めた原発賠償法の改正)少しでも自費で今・現在払わせた方が放射能被害でおののいている国民としては納得出来る感じです。
僅か3分の1でも5分の1でも東電が直接支払うのでは、市場の信認を得られないほど東電の体力がない・・賠償金が巨額過ぎる予想ということでしょうか?
東電の責任を仮に5分の1と限定すれば、残り5分の4が国(国民全部)の責任となります。
そうなると直ちに、国・政府では予算化しなければなりませんが、これまで書いているように「原発は安いぞ!」と言うキャンペインをしている手前、損害総額の見積もりをしたくない・・August 16, 2011「学問の自由と社会の利益」で書いたように、そんなにコストがかかるのかと国民に公表し知られたくないのが今の国・・伝統的勢力の姿勢です。
それと予算化するにしても、とてもその分をそっくり増税する勇気がない・・他方で何かの支出を減らして穴埋め出来る政治状況ではないので、ほぼそっくり赤字国債の増発しかありません。
財政赤字累積で大変なときに巨額の赤字国債の増発を出来れば避けたいところですから、保証という隠れ国債化の道を選んだのでしょう。
ところで、目先の倒産を防ぎ、これからの賠償金(今後の債務と言えるか・・法的には既存債務になるでしょう)支払に当てるためならば、更生法申請や再生手続きでやる方が合理的です。
今回のスキームではこれまで連載して来たとおり、賠償金の資金手当の前の段階・・・次々と到来する既存債務支払のデフォルトを避けるために、先ず既存債務の返済を円滑にすることから始まっています。
そして当面の危機をやり過ごせば、行く行くは、賠償金支払が始まりますが、その資金手当のための新たな(借り換えのためではない)賠償資金手当としての社債発行もして行こうとするようです。
これまでの社債は設備投資資金等に充てるために発行している前向き用途向けが普通ですから、そこから予定通り生み出されて来る回収金がその社債に対する支払原資になりますが、今後借換債の外に賠償金用に新規発行する社債は過去の賠償金支払資金用ですから、そこで取り入れた資金で何の前向き投資もしないのですから社債とは言うものの、実質は赤字国債や消費者信用・サラ金債務同様に何の利益も生み出しません。
このために借りた資金からは元本を完済するまでの利息支払用の利益も生み出さないし、元本自体を削減して行くための利益も生み出しません。

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