不安解消資金

 

そこで一人当たり貰ったお金がどのくらいあって、万全の移転準備や補償・・不安解消に足りる額であったのかを見て行きましょう。
福島第一、第二原発立地自治体住民は赤ちゃんまで含めて、ウイキペデイアによると双葉町(2011年2月1日現在推計・6,884人)と大熊町(11,574人・推計人口、2011年2月1日)第二原発の立地する富岡町15,959人(推計人口、2011年2月1日)楢葉町7,679人(推計人口、2011年2月1日)ですから4町合計で約4万人に過ぎません。
このうち大熊町の例によれば、原発立地による巨額資金流入によって、人口が減るどころか逆に1、5倍くらいに増えた結果であることを6月14日のコラムで紹介しました。
他の町も同じ傾向かどうかはっきりしませんが、似たよう推移であったとすれば、・・震災前人口の3分の2=約2万6000人であった可能性もあります。
(双葉町をウイキペデイアで見ると1970以降の国勢調査しか出て来ず、用地買収の始まった1960年〜1965年当時の国勢調査結果が町の歴史・ネットでは出て来ないので正確には不明です)
この4町ぷらす周辺人口(お互いが周辺住民としてお金の配分を受ける関係)で巨額資金(モデル計算によれば施行段階から運転開始後10年経過までに元金で約9000億円)を・・何の対価もなく(ここでは土地買収資金などの入金は除外しています)全国民の血税から受け取って来たことになります。
モデル計算と実際の支給額とは誤差があるでしょうし、この4町以外にもある程度配っているでしょうが、その大方がこの4町に配られていたと見るべきでしょう。
「不安だ不安だ」と抽象的に騒ぐだけではなく本当に不安があったなら、不安の内容は何かを前回書いたように検討するべきでした。
そうすれば移転のリスクでしかないことが直ぐに分りますし、不安の内容が分れば一刻も早く避難行動に移れるように放射能汚染状況の計測を自前でするようにしたり、避難予定用地手当、避難経路の確定・避難・輸送手段の確保その際の防除服・マスクなど準備しておくべきことを簡単に決められたことになります。
周辺への配分など考慮して仮にこの4町だけで貰っていた金額が元金ベースで7000億に過ぎなかったとしても、この元金だけを26000人で割れば一人当たり(赤ちゃんまで含めて)2700万円前後貰っていたことになります。
これを約30年間普通にプロに運用を頼んでいたら(1964年=用地買収の頃から貰っていますが、仮に運転開始からとしても福島第一原発の最後の運転開始からでも既に30年は経過しています)8〜10倍になっていた勘定です。
2011年6月13日に会計検査院の記事の一部と共に紹介しましたが、何の能力もない消費者が信託銀行に預けておいても、5年で1、5倍、10年で2倍に(20年で4倍に)なると宣伝されていた時代でした。
私のような末端消費者にさえ10数%前後の商品が販売されていた時代で、プロの資金運用会社の場合、年利15〜18%くらいで回っていた時代ですから、貸付信託の2倍の利回りとすれば10年で4倍、20年で16倍、30年で64倍ですが、さすがに15年目以降はバブル崩壊後ですので、年利5〜6%でまわすのがやっとだったかもしれません。
それにしても1960年代から貰い始めたとすれば、バブル崩壊までだけでも、7〜8倍にはなっていた勘定です。
9000億円の交付金は運転開始後10年までのモデル計算が公表されているだけで、その後(素人には不明と言うだけで)も交付金がなくなる訳ではなく減少するだけですから、さらに莫大な資金が地元に落ちていました。
福島第一原発の最後の6号機運転開始が1979年ですから、その後の10年経過後1789年からだけでも今年までに20年以上経過です。
この間にどれだけの資金が交付されていたかについてははっきりしたことが公表されていませんが、(出来るだけ分り難くしている感じです)ウイキペデイアの電源三法の交付金(6月11日現在)の記事では以下の通りとなっています。
「朝日新聞の調べ[1]によると、2004年度(予算ベース)での電源三法交付金は約824億円に上るとされている。うち、福島第一、第二原発を抱える福島県では約130億円、柏崎刈羽原発を抱える新潟県では約121億円、敦賀、美浜、大飯、高浜原発を抱える福井県では約113億円、六ヶ所村核燃料再処理施設や放射性廃棄物管理施設を抱える青森県では約89億円となっている。」

これによると福島は第一第二合わせて130億円の交付とのことですが、2004年だけしか分りませんが、仮に同じような金額を22年間もらい続けていたとすれば、2860億の巨額になります。
この外に2003年からは原発特別措置法による巧妙な資金交付があります。
これは6月9日に書いたようにいろんな分野の補助率の引き上げですから、よほど綿密な調査しないどれだけ貰っているのか分らない仕組みです。
原発は本当に火力発電よりも安いのかについて疑問がありますので、(今回のような後始末の費用を含めて)国費の投入内容を明らかにすべきです。

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