人口ボーナス論の誤り4

本気でローエンド製品の価格競争でインドやミャンマー、中国等に勝とうと思えば、国民の生活レベルをインド、中国等以下の生活水準まで下げる覚悟が要ります。
中国が一人っ子政策をやめても、低賃金でミャンマー等に対抗するのは無理だと書いたばかりですが、日本の場合なおさらです。
・・労働者の殆どを低賃金でも働きたい外国人に入れ変えて行くとなると、元の日本人は自分の高付加価値労働での稼ぎを彼らに分配するばかり・・分配する相手が増えるだけですから、スイス等に逃げて行く?覚悟が要るでしょう。
とすれば、政府は何のために政治をしているのか?
日本人のための政治ではなく、国民を低賃金労働者に入れ替えたい企業の要望に応えると言うことではないでしょうか?
企業が低賃金で儲けたいならば低賃金国へ進出すれば良いことで、元から住んでいる日本人を追い出して外国人に入れ替える必要はないでしょう。
領土問題になると頭に血が上ることからすれば、愛国者の本質は国土を死守することだとすれば、国民より国土の方が重要・・人間は入れ替わっても良いとなるのでしょうか?
先の大戦で特攻で突撃し、硫黄島その他を玉砕しながらも死守したのは、その「寸土」を守るためではなく本土の家族を1分1秒でも守るためだったのではないでしょうか?
04/14/04「戦後の農業政策1(自作農創設特別措置法と土地改良法1)」その他のコラムで、農業の近代化として、農地の大規模化でアメリカ型粗放農業の真似をしても勝てない(大規模化の耕地整理の公共工事は無駄な投資)ので、小規模規模のママで良いから高品質にして行くべきだと書いて来たことと同じで、日本は低賃金国と低賃金競争をしても始まりません。
あらゆる事柄に共通することですが、違った角度で競争すべきであって相手と同じ土俵で勝負すべきではないのです。
女性の社会進出も、男の真似して男勝りと評価されるような働き方をする必要がないことを02/07/05「女性解放運動と性意識の重要性(性意識のミスマッチ3)」その他で早くから書いてきました。
2014-8-6「貿易黒字と内需3」以下で書いて来たように、今後は技術力格差分=高付加価値製品しか国際競争力がなくなる一方ですから、資源輸入に頼る我が国では、国民平均資質を高める努力こそが求められています。
極端に言えば底辺労働向け国民比率を減らして行く努力が必要です。
底辺労働者を増やし、その子孫を増やしていると平均レベルが下がり安物しか作れない国になってしまう結果、中国やインド、インドネシア等に叶いませんので、輸出減少に結びつく一方で、資源消費する国内人口が増える分輸入が増えるので結果的に貿易赤字が拡大してしまいます。
人手不足・給与アップに対しては、歯を食いしばってでも、(これをチャンスとして)より高付加価値製品製造に転換して行く努力をすることこそが王道です。
(介護や建設現場の人手不足はロボット化等のチャンスです)
職業訓練の必要など高付加価値生産にシフトできない低レベル国民を一人でも少なくする努力が求められているときに、何の目的で底辺労働者を増やそうとするのか・・将来彼らは生活保護受給者に転落する可能性が高くなります。
外国人単純労働力や介護要員の導入を要求する勢力は、人口ボーナス論に根拠をおき、労働人口さえ増えれば国力増進すると言う誤った思想を持っているかのようです。
底辺労働者ばかり増やしても国民平均能力が下がるので、却って国力は低下します。
国力であれ、学力であれ人口が多いか少ないかではなく平均値の高さこそが重要です。
7月20日の日経新聞朝刊13ページによれば、韓国朴政権が導入した年金制度は旧制度では65歳以上の高齢者で最大(掛け金支払期間等で人によって額が変わります)で月1万円だったのが2万円になると言う触れ込みで大統領選の公約に掲げて勝利した新制度の説明が乗っています。
最低生活費が8万3000円程度の国とその記事に書いていますから、これでは高齢化すると多くの人がまともに生きて行けないでしょう。
韓国は日本が失われた20年と言われている間、大躍進していたとすれば、現役世代がお金持ちになっているはずですから、そうであれば豊かになった現役世代が老人を養えば問題がない筈です。
日本を追い抜いたくらいの勢いで威張っていた韓国でこの間にまるで個人貯蓄が出来ずに個人金融負債がドンドンドン膨らんでいると言う報道ですから悲惨です。
円高で悲鳴を上げていた日本を嘲笑っていた筈の韓国の高成長・・果実は、誰が持って行ってしまったのでしょうか?
財閥化していて資産が特定階層に偏っていること、外資比率が高いことから労働分配率や企業の社会保障負担率が低過ぎることが原因でしょう。

海外資産残高2(民族資本)

韓国や中国その他新興国では対内投資が多いのは、資本の蓄積がないにもかかわらず背伸びして投資して一刻も早く国内工場を立ち上げるために外資導入が必要だから起きている現象です。
資本導入・・外資からすれば資本進出の要望は明治維新前後から・・グローバル化前にもありましたが外資=他民族支配を恐れた各国が外資導入を厳しく規制して来たことから、それほど激しくなかっただけです。
ソ連崩壊以降、アメリカの主催する自由主義経済に参加しないことにはマトモな経済発展が出来ないことが明らかになりました。
世界中が雪崩を打ってWTO・・共産主義を標榜する中国でさえ、貿易自由化を迫るWTO条約加盟せざるを得なくなったことから見ても明らかでしょう。
ずっと以前からアメリカ主導のIMFを中心とする金融取引・資本自由化圧力は強く、OECD加盟国は先進国クラブとして、原則資本自由化・金融取引自由化に取り組んで来ました。
開発途上国もアメリカ金融資本の意向に逆らえずにこれに唯々諾々と応じて来たことから、(外資導入による産業近代化で経済発展で来たメリットもありましたが・・)東南アジア諸国や韓国が97〜98年のアジア通貨危機でひどい目にあいました。
今のギリシャ危機同様で、IMF(アメリカ金融資本に都合の良いような仕組みに制度設計させられ)の言いなりにさせられ、まさに債務奴隷のような状態になりました。
国民の痛みを強引に切り捨てて行く大改革の結果、今の韓国財閥の躍進に繋がっている面がありますが、その裏では、富の偏在(1%の人が所得の6分の1に達しているという記事が昨日あたりの日経新聞に出ていました。・・アメリカに拮抗する格差社会になっているとの報道です)国民の殆どが少しでも「資金が出来たら外国へ逃げ出したくて外国籍取得希望をしている」という歪んだ社会を作り出しています。
中国の場合も韓国同様の国民意識(外国籍取得希望が多い状態)ですが、金持ちから順に自分の国を捨てて外国へ移住したいと望んでいる国って、国民のための政府とは言えないでしょう。
こんなことになったのは、政権維持のために外敵を作り出すことがあって国民がこれに迎合している行動から如何にも愛国心が強そうですが、本来の意味の民族を愛する意識が育っていないところに・・それだからこそ外資導入に抵抗が少ないのでしょうが・・)企業まで外資に支配されていることから来る結果です。
資本・金融自由化に戻しますと、中国の場合日本の漸進的な資本・金融自由化の経験を研究して(改革開放に際しては日本が親身になって協力してきましたので・・日本研究者によるアドバイスも行われていました)慎重に進めていたので、アジア通貨危機のとき大きなダメージを免れています。
実際にはそのときには中国でもかなりの資金流出があったようですが、まだ長期投資熱の盛んなときで流入分の長期投資が多かったのでプラマイゼロというか、危機に至らなかったようです。
今回のギリシャ危機では中国への投資熱が下火になりつつあるときですので、流出の方が大きいらしく人民元がじり安になりつつあります。
欧米からの投資が急減し(むしろ引き上げが加速し)、今大規模投資を続けているのは日本くらいですから、今のところ中国は日本に対して威丈高の態度(ゲンキンな国です)を取らないようになっています。
韓国もウオン暴落気味で、日本からの金融支援が必要な状態です(ここ数日の報道では日本政府は韓国国債を一定額購入する方向で調整しているようです)ので今のところ低姿勢です。
ついでに書きますと、資本自由化と言っても短期資金と長期資金の区別があって工場設備資金など長期資金は、経済危機があっても逃げ足が速くなく安全資金になっているので、国際交渉では短期資金の規制が重要になっているようです。
韓国の場合IMF8条国にも移行していますので、為替が完全自由化しているほかOECD加盟国のために短期資金流出入に関しても規制が出来なくなっていると思われます。
リーマンショック以降外国人投資家は、韓国の株式を売却して債券投資にシフトするようになっているようです。
サムスンや現代財閥等の躍進が頻りに報道されますが、実際には巨額赤字受注で日本の受注を横取りしていることが多いと言われます。
(ブラジル新幹線受注競争ではあまりに無茶なブラジル側の要求に対して採算が合わないので日仏が撤退した後も韓国だけがブラジルの無茶な要求をのんで残ったにも拘らず、今度はブラジルが韓国の受注を拒んで取りやめになった例でも分るように、企業利益を度外視した赤字受注が多いので信用されなくなっていることが分ります。)
韓国の国内基準金利は当時5%以上を維持していましたので、2012-3-22「国債残高の危機水準とは?1」に書いたように、韓国中央銀行は逆ざやで苦しんでいたのですが、(08年ころには逆ざやで約6〜8兆ウオン程度の損を出していたようです・・)外国人投資家はこの逆張りで、日本やアメリカの低金利で調達した資金で高利(当時5、5%前後・・今でも3、25%前後)の韓国の国債を購入してサヤ抜きに転じています。
この結果資本収支は黒字(外国短期資本流入超過)でしたので外貨準備が増える一方となったので、前回のアジア危機と違って今回(ギリシャ危機前に)は外貨準備が2000億ドル以上あると豪語していました。
しかし、ギリシャ危機が現実化すると欧米からの資金引き上げに直面して直ぐに資金繰りが間に合わなくなって危機に陥って日本に頼んで昨年秋には日本からの融資協定で息を付けたのですが、これは外資導入による外貨準備に過ぎなかったことによるものです。
今朝の日経朝刊でも、チェンマイイニシアチブ(アジアでの金融危機時の融通協定資金)の倍額増資が報道されています。
韓国は、アジア通貨危機以降の貿易政策としてウオン安を人工的に作り出して対日貿易競争上の優位性を獲得して来ました。
中央銀行の方は外資流入によるドル資金を市中から吸収・・(しないとウオンが上がるのでウオン安政策上)ドルの買い支えするしかないのですが、そのドルを韓国内市中に放出するとウオンが上がってしまうのでアメリカでドルのまま利用するしありません。
外資が高利のウオンで運用するために持ち込んだドルを金利の安いアメリカで運用するのでは逆ざやです。
そこで、リスクの高い外貨運用に走ってリスクを大きく取ってしまったのが、(3月17日現在のウイキペデイアによれば外貨準備の10%を不動産担保証券運用しているとあります)韓国中央銀行です。
何しろ2008年当時の韓国の対外資産の約半分弱が外貨準備でした。
これがゼロ金利前後のアメリカ国債を買っていた・・逆ざや運用では溜まりません。
外国人投資家がアメリカの安い金利で借りて高利の韓国で運用して利息の差を稼ぎ、韓国中央銀行は流入した外資を1%のアメリカ国債で運用していたのですから、外資に良いように儲けられる一方だったことになります。
環太平洋戦略研究センター上席主任研究員 高安健一氏によると
(韓国の)「外貨準備は2008年6月末時点で2、581億ドルと、対外資産残高の45.1%を占めた。
これは2007年の名目GDPの26.6%に相当する。
ちなみに、1兆ドル程度の外貨準備を保有する日本の場合、対外資産残高に占め
る割合は18.1%(2007年末)である。」
と言うことらしいです。

海外資産残高1

国債保有者を日本人に限定すべきだとしても、さしあたり日本の対外資産がどのくらいあるかが重要です。
我が国では直接投資(工場を現地に造るなど)の歴史が浅く、債券・株式投資が先行していましたので債券投資の比率が高いのが欧米に比べて特徴があると言われています。
先ずは、日銀の統計から見ておきます。
日銀は毎年末に集計しているようですが、2011年末の統計は5月ころまで出ないようです。
以下の表によるとリーマンショック以降かなり減っている感じですが、これは債権元本を回収した事による減少ではなく、急激な円高による評価減が影響しているようです。
円高の進行により対外直接投資は急激に増えている筈ですから、11年末の統計が出れば・・そしてドル表示で見ればかなり増えていると思われます。
国力・・対外評価としてみるにはドル表示で統一した時系列でみないと分り難い例です。
例えば直接投資資産が円表示で0、8%減となっていますが、リーマンショック直前には1ドル110円前後で10年末ころには90円前後でしたから、ドル建て資産中心の直接投資残が前年同様ならば、為替相場下落分だけ減少する計算です。
この間約20%もドルが下落しているのに円換算で対外直接投資残が0・8%しか減らないのは、ドル建てでは海外投資残が実質19%増加となっていたことになります。
(日銀や財務省統計はドル表示を併記・あるいはドル建てのグラフを作ってくれれば簡単なのに、これを怠っていると以前書いたことがあります。
1週間ほど前の日経にもデフレの結果バブル崩壊後日本の人件費は約2倍になっていると書かれていましたが、日本に有利な指標やグラフはなるだけ公開しないような国是があるのでしょう。
「日本は大変だ大変だ」と言ってる方が国際関係上、上策だという国民精神ですが、対外的にはそれで得していることは確かですが、智恵の足りない若者が本気にしてやる気をなくす方向に行キ過ぎるのが怖いので、私は若者に元気を出してもらうように、大分前から国是に反したこのようなコラムを連載しています。
(私のコラムは日本人しか読まないと思うので害がないでしょう・・・)
05/26/07「キャピタル ゲインの時代17(国際収支表2)」で、実際には国際収支の黒字は右肩上がりで来ていることを紹介したことがありますし、その他失われた10〜20年という表現はおかしいと随所に書いて来ました。
上記で紹介した国際収支の黒字拡大(これが円建てですからドル表示ならばもっと激しい黒字拡大であったことになります)と歩調を合わせるように、対外資産も拡大傾向にあったことが、以下に紹介する日銀のグラフでも分ります。
この結果に対してマスコミが何故失われた10年とか20年と宣伝するのかが分りません。
対外的には儲かっていると自慢するより「ぼちぼちです・・」というのが正しいとしても、庶民の多くがそう思い込んで自信をなくしかけているのが問題です。
若者に限らず庶民の方もマスコミ宣伝を本気にする傾向があるので、ここ20年ばかり年金を納めたら損だとかNHK料金を払わないなど公的負担を嫌う変な方向に走っています。
保険制度に限らず社会制度というものは、すべからく相互信頼で成り立つものですから、納付しない人・・ずるい人・公的活動に参加しない人を増やすためのマスコミ宣伝を鵜呑みにする人が増えると助け合い精神が基礎にあるいろんな公的組織が成り立ちません。
年金危機の大方は、未納付者の増加・・納付する人を減らすようなマスコミ宣伝が余計に危機を早める方向に働いています。
ちなみに自分で換算したグラフを作れば良いという意見もあるでしょうが、そうすると公的データのコピーそのものでなくなるのが難点です。

2011年5月26日

日本銀行国際局


1. 10年末の本邦対外資産負債残高

対外資産残高は、円高に伴い円建評価額が低下したものの、(1)対外証券投資の増加、(2)株価上昇・金利低下に伴う証券価格の上昇から増加した。一方、対外負債残高は、(1)対内証券投資の増加、(2)借入の拡大から増加した。対外純資産残高は、対外負債残高の増加幅が対外資産残高の増加幅を上回ったことから、減少した(08年225.5兆円→09年266.2兆円→10年251.5兆円)。


2. 項目別の特徴点

(1)直接投資残高(対外直接投資:67.7兆円、対内直接投資:17.5兆円)

対外直接投資残高は、0.5兆円(△0.8%)減少した。

対内直接投資残高は、0.9兆円(△5.0%)減少した。

(2)証券投資残高(対外証券投資:272.5兆円、対内証券投資:152.5兆円)

対外証券投資残高は、10.5兆円(+4.0%)増加した。

対内証券投資残高も、10.6兆円(+7.4%)増加した。

(3)金融派生商品残高(資産:4.3兆円、負債:5.3兆円)

資産・負債ともに前年並みであった。

(4)その他投資残高(資産:129.7兆円、負債:136.8兆円)

 

 

国債残高の危機水準5(海外保有資産はあてになるか?2)

中国や韓国などではイザというときのために大分前から金持ちから順に海外国籍取得が盛んですし、海外資金逃避が盛んです。
この意味するところは、国難・危機に際して逃げる準備・・3分の1〜半分でも海外逃避しておいてイザ危機が来たら残った資金も出来るだけ速やかに逃げ出そうとしているものであって、国難のときに買い支えるために海外に資金をプールしているとは考え難いところです。
大幅に値下がりすれば、儲けるための底値買いを入れることはあるでしょうが、それは純粋の(金儲け目的だけの)外国人投資家でも同じです。
中国(地域)の歴史は周知のとおり異民族の支配下にあったときの方が長いくらいですから、今一般に言うところの中国人というのは元々いない・・順次の被征服民がその地域にいただけですから、一族の紐帯以上のものがないのは当然です。
EUもいろんな国の集まりですが、一応民族別、国の原形を残したままの交流・一体化ですが、(ユーロ・通貨統合しながらも財政は別に行っている・主権が残る状態がその象徴でしょう)中国の場合、チベットやウイグルその他少数民族・自治区の例外がありますが、漢民族と言われる人たちは元はいろいろな人たちがごっちゃになっている点でアメリカ合衆国と成り立ちが似ています。
意外に思うかも知れませんが、アメリカにはムラ社会がない分、親族間の交際の密な社会です。
今から15年ほど前にニューヨーク郊外のある町のホテルに滞在しているときに、毎日のように朝食後ホテルでのレストランで長時間粘って・・朝食の後はコーヒーしか出ません・・コーヒーばかりがぶがぶ飲んでいたことがありました。
(アメリカのコーヒーは日本の麦茶みたいに薄くていくらで飲めるのです)
ボーイが通るたびに呼び止めるものですから、ボーイさんからMr.コーヒーと言われるほど仲良くなっていました。
(英語はマトモに話せなくとも気心は直ぐに通じるものです)
ホテルの部屋にいたのでは、都市型ホテルの弊で窓も狭いし狭苦しいのですが、レストランの窓際は眼下に道路が見えて行き交う車の流れを見ているだけで何時間でもボーッとしていられる良い場所です。
ある日いつものように夫婦で朝食後コーヒーを飲んでいると今日のお昼は貸し切りになっていると言うのですが、(英語は通じなくとも身振で何とか理解出来ました)困った顔をしてると結果的にお気に入りのいつも座っていた場所(コーナー)にいても良いと言って例外的に使用させてもらえました。
そのときレストラン中央部で集まって始まった貸し切りパーテイを見ていると、高齢の夫婦らしい人やその兄弟らしい人がいて彼らの子供夫婦や孫達の集まりらしく一族和やかにパーテイをしているのです。
後で聞くと、それは一族会みたいなものでアメリカではしょっ中こうした一族のパーテイを行っているそうです。
日本国民は、戦後地方から東京等大都会への人口移動の結果もあって、親族のつながりが薄れてしまいましたが、(今でも残るのは法事くらいでしょうか?)それでも愛国心というよりか郷土愛や同胞意識が強固ですからお金があるからと言って同胞を見捨てて海外国籍まで取得したい人が今でも少ない点は韓国人や中国人とは違います。
とは言え、それでも資金運用というものは合理的に行動するものですから、(前もって逃げ出さないまでも)海外に既に保有している資金をイザというときに国内救援のために逆ばり運用する人がどのくらいあるかとなると疑問なしとしません。
それどころか日本人でも国内株式が暴落傾向になれば自己防衛のために株式の損切りをするために売り急ぐ人が増え、銀行が倒産しそうになれば解約に走る人が増えるのはよその国とあまり変わらないのではないでしょうか?
現在国内企業が国内投資を控えて海外投資にシフトしているのも、その動きの一環と言えます。
ただし、繰り返し書くように日本国債も国内銀行の預金も円建てなので日銀券を印刷すればいくらでも払えることから、(円相場下落の心配は別として)国民は(預金保険の範囲内であれば)あわてて預金を解約する必要のない点が自国通貨を持たないギリシャとも違います。
国内金融資産だけは、既に質に取ったようなもので確かな資金と言えるからマスコミはこれを重視するのでしょう。

個人金融資産3(海外保有資産はあてになるか?1)

国債の危機に際しては、トヨタなど日本企業の場合、株主構成として2〜3割外国人株主がいてもその意向によらずに日本国益を守る方向に動く傾向がありますので、個人資産に限らず企業保有も含めて対外債権はある程度・・ないよりは意味があります。
日本は2012年1月末現在で財務省の発表によると外貨準備だけで1兆3066億ドルも持っています。(3月末では1,288.70ドルで少し減っています。)
 
 とは言え、これを円に換算すると僅か82兆円前後にしかなりませんから、分り易い数字で考えると国債残高が1000兆円あまりになると、わずかに8%の外国人保有でトントンになってしまいます。
個人金融資産を基準にすると日本の発行残高が個人金融資産1400〜1500兆円(負債を控除すると1000兆円前後?)を越えない限り、外国人が国債の半分あるいは9割を保有しても日本人がその同額分の外債を購入していれば問題がないのでしょうか?
国が持とうが国民が持とうが同じ効果があると言えるのでしょうか?
外国人に売り浴びせを受けて日本国債相場が下落すれば、日本人もその国の国債を売って値下がりした日本国債を買えばいい点は国が外債を持っている場合と変わりません。
個人で言えば、手元資金がなくなれば定期預金を取り崩すように、日本人は困れば外貨準備の一部を売れば良いだけのことです。
そのときのためにこそ、上記のようにお互い外貨・外債を持ち合っているのですから当然かも知れません。
しかし、個人は国がいくら困っても対抗的に外債を売りかける必要がない点・・逆に外国へ資本逃避する人がいてもおかしくない点が大きな違いになります。
何ら危機でもない今でさえも個人で外債投資する人が多い・・・・国内と外債に分散投資している人が殆どでしょう。
国債が暴落して、これを大量保有している銀行その他の金融機関が倒産すると自分の国内金融機関向け資産(保険や年金資産)が暴落して大損してしまいます。
ある企業に大量に貸し込んでいるときに倒産されると大変なので追い貸しすることが多いものです。
自己資産防衛のためにもある程度日本国債が下がったところで、値上がりした外債・外国証券を売って値下がりした国内債や株を買い支えるのは、合理的な投資活動と言えないこともありません。
たとえば、国内金融資産5000万円、対外金融資産5000万円の人は、日本国債が暴落して国内金融資産評価が4000万円に下がったときに、(対照的に上がった)外債評価6000万円のうち5000万円分の国債・株式・社債のナンピンをかければ良いことになります。
個人・民間保有の場合、4000万円が底値かどうか見極めのために様子見になるので買い支えに入るタイミングが難しいので、様子見をしているうちにギリシャ国債や過去の中南米諸国のようにデフォルトになってしまうリスクがあります。
ギリシャ危機に当てはめると、我が国のように国民平均に豊かあるいは貧しいのではなく、国平均では貧しくとも(オナシスのような)ギリシャ人大富豪も一杯いるのでしょうが、危機発生時にはこういう人たちは逆に率先して外国へ資本逃避する人が多くて買い支えるどころか、逆に売り浴びせ側に回っていたのではないかと思われます。

目の前で債券や株式の値下がりが始まっていると防衛のために早めに自分の保有株等を一日も早く売って損を少なくしたくなるのは本能と言うか合理的行動であって、非難することは出来ません。

東京電力の原子力事故の場合、あっという間に東電の株式が大暴落しました。

日本国債暴落の場合、預金等を解約して円紙幣に代えても円自体の値下がりが連動してるのが普通ですので、さらに外貨に替える手間がありますが、ギリシャの場合、独自通貨・ギリシャ通貨がないのでギリシャ人は自国通貨の値下がりリスクを心配する必要がないので株や預金・債券を現金化(タンス預金)さえすればリスク回避できるので簡単です。

この結果、肝腎の国民が逸早く自己防衛のための解約や処分売りを加速・・外から見れば売り浴びせ攻勢をかけて自国国債の下落を加速し、ドイツやその他の欧州諸国がその買い支えのための資金を拠出・・欧州中央銀行がギリシャに資金を投入して買い支えに回るという不思議な構図が現在のギリシャ・スペイン等の危機ではないでしょうか?

日本人は愛国心が強いとしても、合理的に行動する経済分野で心情だけを当てにすることが出来るのでしょうか?

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