発展を急ぐ社会2(アメリカの場合)

奴隷といっても3月1日書いた通り生存保障が前提でしたから、(牛でも馬でも死んだら元をとれません)奴隷廃止=保障なしに放り出せばいいのでテイのいい終身雇用の切り捨て政策だったことになります。
GMが過去の退職者に対する年金債務の重圧に耐えきれずに破産申請して身軽になったやり方と似ています。
「奴隷解放」とは言うものの終身養ってくれる前提で何の貯蓄もなく(賃金がないのですから貯蓄ゼロは当然です)文字も教えられず生きてきた奴隷が、奴隷解放の名目で無補償で露頭に放りだされた場合、彼らにとっては実は大変なことだったのではないでしょうか。
発展中の近代工場労働に転職できた人もいたでしょうが、何の教育も受けない元奴隷にとっては多分ごく稀な例で、大方の元奴隷にとっては単純に野に放たれた状態となります。
長年飼っていた牛馬や犬や猫を生物皆平等といって「解放すべし」と言って単純に野に放てば多くの犬猫ライオンその他動物は飢え死にします。
いきなり元のアフリカの大地に大量に戻しても、餌を取る能力退化もあり大量死が待っているでしょう。
人間だって同じことで母国と縁が切れて何十年もたった人が母国に帰っても生活基盤がありません。
奴隷解放するならば1世代以上の期間をかけて次世代の職業教育してからにすべきだったでしょう。
なぜそんなに急いだのか・西欧に一刻も早く追いつきたい焦り・この辺は中国も同じです・が社会の変化をゆっくり待てない心理だったのでしょう。
中国も米国も産業構造高度化に取り組んでも高度産業に対応できる労働者がゴマンといるから心配ないということでしょうが、仮にそうとしても社会には表通りと裏通り・高級品〜中級品〜最低の形だけのものなどを売る店のように雑多な混合が必要です。
支配層や産業資本家としてはどんどん近代化し、適応できない従業員を切り捨てれば良い・・・ローエンド製品しか関与できない人材には最低賃金を引き上げて対応すれば良さそうですが、ハイエンド製品対応社会になると物価があがるので最低賃金を少し引き上げる程度では、まともな生活ができなくなります。
高級住宅街や高級ショップの並ぶ商店街は底辺層に住みにくい地域になる一般的現象を見てもわかるでしょう。
そこで最低賃金を引き上げという発想になるのでしょうが、時給900円を1000円にしたところで一泊数万〜5万円以上のホテルに泊まる身分になれない点は変わりません。
逆に生産性以上の賃金にすると採算性の悪い商店などがバイトを雇えなくて廃業してしまい、アルバイト先がなくなってしまう弊害が起きているのが韓国です。
韓国文政権による最低賃金引き上げによる零細事業の閉店ラッシュ・失業増加です。
奴隷解放とか急激な近代化より、徐々に産業構造・労働者が入れ替わって行くのを待つ方が無理がなかったように思えます。
性急な社会変化がその後もアメリカ社会変化の常態になって現在に至っているように見えます。
一定レベルに達したらその次のステージ・・じっくり文化を育てる能力がないのを開き直って変化の速さを自慢してきたようです。
功成り名を遂げたら次は文化に勤しみ楽しむのが日本の価値観ですが、アメリカは成金になれば、文化に勤しむのではなく、追いかけてくる新興成金にせっかく掴んだ成金の地位を脅かされるのが怖い・いつも「前年比成長」していないと気が休まらない社会です。
何かある都度「変化の激しい国際社会」に乗り遅れるという説明が日本知識人?の基本意見・立場ですが、変化が激しいのは文化を楽しめるようになるまでの過渡期・病病理現象でないか?という意識がないのです。
敗戦で焼け野が原にされた結果やむなく国民一丸になって「24時間戦えますか!」のフレーズでむしゃらに復興に努めてきただけのことで、ここらで一息つき独自文化を育むべき時期がきた・これが平成の時代であったというのが私の価値観であり、いつまでも前年比何%成長にこだわるのは恥ずかしいことです。
個人でいえば若い時には寝食を忘れて稼ぐのも良いですが、一定の成功を収めたら事業拡張一点張りから家庭生活・文化を楽しむ生活に切り替えるべきというのが私の持論ですし、わたしの家庭はそのようにしてきました。
繰り返し書いていますが、平成の時代は失われた20年ではありません・・落ち着いて身の周りを振り返るべき時がようやく戻ったよき時代です。
余剰人員が出る都度放り出している社会では、放り出された落ちこぼれが大量に排出されます。
・・飢えた猛獣がたまに人を襲うように黒人のための技能習得政策なしに大量放置すれば治安が乱れ、黒人への不満が高まる悪循環でした。
「犯罪率も高いし黒人差別されるのは当然」という差別擁護論も起きてきますが、なんの教育もせず動物のように育ててこき使った挙句にいきなり放り出す方が悪いのです。
奴隷解放後もアメリカの産業構造はベルトコンベアー方式に代表されるように熟練の技を求めず大量生産・粗放農業による低価格出荷競争が主眼でした。
熟練の技では歴史の長い出身母国と競争できないので非熟練者の有効活用を狙った点は、新発見でした。
アメリカの成功以来、世界中が組織内での訓練によるレベルアップ競争よりも、(1時間に10個作れるひとを15個作れるように訓練するよりは)作業手順の分解・分業の合理化でトータル同じようになるならば安い人件費で済む)方が競争原理上有効という価値観が世界を支配するようになります。
熟練工や手の込んだ高級品質を求めず「低レベル労働者を安く利用して中間レベルの製品を大量に安く生み出す」工夫に重きを置いてきた歴史というべきでしょう。
小売業でもスーパー方式の開発でコストカットし、今でもスターバックスやマクドナルドなどレストランその他チェーン展開による大量出店(質より量)で稼ぐ本質です。
今飛ぶ取り落す勢いのアマゾンでも、要はより良いものを作る能力を売り物にしているのではなくビジネスモデルの優位性・・ネット通販による大量収集した顧客情報分析による売れ筋把握→売れ筋商品投入の速さを囃しているにすぎません。
最近刑事事件として脚光を浴びているゴーン氏の功罪は、短期的コストカッターとしての役割を果たしただけで、その後必要な新たな価値創造能力がなかったのに、その後も君臨し続けたことが白日のもとに晒されています。

発展を急ぐ社会1(中国の場合)

中国はいわゆるチャイナプラスワンによって国内経済成長失速が怖くて、焦って次々と次のレベルに突き進んでいるように見えます。

まだ使える機械類をもっと性能の良い機械に変える・・先進国がこれを行うときに、機械の場合には中古機械を後進国へ輸出すれば除却損を低減できますし・輸入国は高額投資しないで済むので中韓等が日本で陳腐化した最先端に近い半導体装置等を二束三文(日本企業としては持って行ってくれるだけでも廃棄コストが浮く)で入手して急速に生産を伸ばした事業モデルでした。

一般に知られているパターンでは、日本で古くなった電車車両等を後進国へ無料で提供しているのと同じ考え方です。機械と違って人間の場合、途中でいらなくなったからといって、タダでよその国へ押し付けられない点が違います。早く労働者を回転したいのに先進国より逆に高齢化のスピードが早いのが新興国の流れです。https://ecodb.net/exec/trans_image.php?type=WB&d=LE00IN&c1=CN&c2=JP&s=&e=(世界ネタ帳)からの引用です

改革開放開始直後には平均寿命が67歳前後だったのが、16年では75歳を超えていて日本との差が約10歳から7歳前後に縮まっています。
https://spc.jst.go.jp/event/crc_study/downloads/study63.pdfによる中国の労働者の学歴分布です

上記によると求職者に占める中卒求職者の比率が200年で73%、2010年でもまだ4割を占めています。
20年後の2020年でも35歳労働者中で、中卒が73%、25歳の中卒40%です。
この膨大な中卒労働者が高度産業従事者にいきなり変身できるはずがありません。

社会の安定的変化には1世代以上の時間軸が必要ですが、この時間を待てない新興国が米国であり中国のようです。
中国の政治家は産業レベルの変化に付いていけない彼らの失職後=老後?をどうするかの展望がないママ・・・国民が次のステージに備えて十分な力を蓄えないうちに次々と産業のステージを引き上げて行くのに必死ですが、取り残される彼らの生活をどうするつもりでしょうか?
多くの新興国が「中進国のわな」段階で足踏みしている・・最低賃金をむやみに引き上げないのは、「無理しない方が良い」という相応の理由があるのです。
https://spc.jst.go.jp/event/crc_study/downloads/study63.pdfからの引用です。

中国の人口変動と労働市場の構造変化
厳善平(同志社大学)2013年8月29日(木)

上記は13年までの統計ですがhttps://www.jetro.go.jp/biznews/2018/06/c29d7cd2530c6ef1.html2018年06月27日によれば、18年6月から深センでは月額2200元ですから、13年1620から25%くらい上がっていますし、時給も20、3元ですから、日本の千円前後の2倍になっています。

急激な引き上げによってチャイナプラスワンが進み、深圳等の万単位の工員を使って大量縫製していた工場がガランとしてしまった状況が映像報道されていました。
(バングラ等が今や大量生産基地になって久しい状況です)
現時点でもどんどん海外移転が進んでいます。
以下は中国企業自体の海外移転事例です。
https://diamond.jp/articles/-/179226?page=3

 

2018.9.10
深センで始まった工場移転、「世界の工場」を襲う人件費・家賃高騰
東莞からアフリカへ 5万人規模の工業団地を

このように最低賃金を引き上げると自国企業でさえ低賃金を求めて工場移転してしまうのですが、それに対し開き直って、ローエンドからハイエンド製品への産業構造変更・先進国が応じないならば自国開発を宣言したのが中国です。
そこらの後進国とは民度が違うという宣言です。

高齢者は85歳から3(長期支配の弊害2)

社長の(違法不当な)独走牽制のためには、外部監査〜外部役員の必要性が言われますが、その機能をどうやって発揮するかの具体策が見えません。
外部役員「人物」を当てるしかないのですが、独走したい社長に限って、煙たい人物排除に動く本質があるので、現役の社長会長の関与しない選任システムに変えて行くしないでしょう。
長い人類の知恵では、何期か前のトップ経験者・長老・元老システム・今風に言えば顧問団に期待が集まる以です。
寸秒を惜しみ世界中を駆け巡ってがスピーチしなければならない超繁忙社長を務める体力知力がないとしても、じっくり世の中を見ている時間のある何代か前の社長経験者の意見は相応の重みがあるでしょう。
世界企業クラスの社長経験者であれば、他社の事業に精通していなくとも長期支配のマイナスが出てくるようになれば直感的にわかる面があるでしょう。
年齢だけではなく、長期政権に必然的に生じる歪みを是正する方法がない・・一定のシステムが根付けばそれをかいくぐる裏技も発達しますので、大統領任期制のように、能力如何に関わらず一定期間で自動的に失職する絶対的任期制がスッキリしてわかりよい制度でしょう。
中国やロシアトルコ等民主的制度不十分な国で任期に代わるチェックシステムをつくらないまま任期制撤廃をすること自体が、自己独裁政権の長期化を狙った制度改悪と受け取られます。
我々弁護士会の場合には、会長や副会長を2期も続けてやっていると事務所維持できないので2期続けてやりたい人は滅多に出ませんが、(特に日弁連副会長は各地の選出なので、企業役員のように社長指名によらないので会長の意のままに動く人材ではありません)企業等では社長が取締役候補を事実上指名するのが慣例になっているなど独裁的執行体制になっているのが普通です。
これでは法の予定する取締役会の監視機能が事実上形骸化するのは当然です。
総理の指名する閣僚に総理の監視役を期待しているようなものです。
商法266の3(会社法になってからは429条に条文移動しています)の以下の最高裁判例以来各種判例が蓄積されてきました。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52058

昭和46(オ)673
事件名 損害賠償請求
裁判年月日 昭和48年5月22日
法廷名 最高裁判所第三小法廷

株式会社の取締役会は会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず、代表取締役の業務執行一般につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて業務執行が適正に行なわれるようにする職務を有するものと解すべきである。

会社法 (平成十七年法律第八十六号)

第四百二十九条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一 取締役及び執行役 次に掲げる行為
以下省略

上記判例の結果、何かと言うと取締役の責任追及訴訟が頻発するようになっており、「事実上社長は命令に歯向かえない」という取締役の抗弁を許しません。
「取締役になる以上は職を賭しても社長提案に問題があれば非を鳴らし拒絶すべき」という「きれいごと」正義論で押しきれられていました。
しかし、古来から処罰覚悟で君主に諫言できた忠臣が何人いるでしょうか?
万に一つくらいしか例がないから歴史に残っているのではないでしょうか?

左遷至藍關示姪孫湘
唐 韓愈

一封朝奏九重天
夕貶潮州路八千
欲爲聖明除弊事
肯將衰朽惜殘年。
以下省略

https://kanbun.info/syubu/sasen.html解説です。

元和十四(819)年、唐の憲宗は仏教を厚く信し仏骨を宮中に迎えて三日間の供養をした。韓愈は「仏骨を論ずる表」(論仏骨表)を憲宗に奉って諫言した。その結果、憲宗の怒りを買い、潮州(広東省)刺史に左遷された。

朝に諫言して夕べには左遷されたが、「あえて残りわずかな命を惜まんや!という強りですが・・。
閣僚の場合には自己の政治地盤が別にあるので、石破氏のように自ら入閣要請を拒否したり閣外に去る選択肢もありますが、サラリーマン取締役には固有の地盤がないのでそのような選択肢すらありません。
このように取締役の監視機能には実効性がない実態があるので、外部監査や社外取締役制度が普及して来たのでしょう。
企業活動は一定方向へ舵を切った以上は邁進する必要あり、異論を主張できない雰囲気自体を否定できないので、取締役とはいえ実質は執行役員の機能しか果たせていない現状(江戸時代の番頭の機能)肯定した上で、社外ご意見番の創設になったのでしょう。
戦前の内閣制度は総理に指名罷免権がなかったので閣内不一致を批判されても手の打ちようがなく、軍部の横暴を許したこと・・弱体化の原因になった反省で戦後憲法では、総理の指名・罷免権による内閣一体化を図った閣議決定に署名しない権利→総理は罷免で対抗する・これをしない以上は連帯責任です。
(閣僚は閣議が自己の信念に反すれば署名拒否して閣僚罷免されても地盤があるので政治家の地位を失いません・信念によって行動し地元で総理の方針に反した正当性を訴えて支持を得れば良いことです・・これをしないで署名した以上は連帯責任を免れません)
総理権限強化の代わりに総理自身の選任罷免権は枢密院・天皇による「大命降下」でなく、民意代表の議会が握る・・純粋な議院内閣制になりました。

高齢者は85歳から2(長期支配の弊害1)

移動手段の発達(同じく区間でも時間短縮・乗り心地の改善)が距離の不利益(体力低下による移動能力低下)を緩和します。
例えばJR千葉・東京間の特急は所用29〜30分ですし、千葉〜品川〜横浜間〜鎌倉/横須賀間の快速にはグリーン車があるので、日常的行動半径の東京駅や品川などまでの約4〜50分の乗車時間は、体力消耗どころか(・・美術館巡りで足が疲れているときなど)疲れた足の回復時間になっています。
(乗車時間中に普段読めない本を読んだりネットチェック時間になっています)
京成電車は自宅から最寄駅まで200メートルで直通で上野(主に東博)に行けるので便利ですが、横坐りの電車しかないので座っていること自体が楽しくないのがJRに比べた問題点です。
昨日から書いた通り、分野別・職業によってもいろんな補完手段が進んでいますので、年齢で画一的に切り分ける今の基本的仕組み(定年制が代表的なものですが・・)は無理があるように思われます。
かと言って、個別能力次第にすべきというのは「言うは安く」して具体的運用が大変です。
車の運転免許のように、視力聴力など身体機能テストだけで済むなら割合簡単ですが、(テスト項目を増やし有効期間を短縮するなど)知的労働に限らずどんな現場作業にも監督行為と末端作業とは違った能力が求められるなど複雑系能力をどうやって判定するかです。
一般的に高年齢化すると現場的分野から統括分野に役職が移行するのが伝統的役割分担です。
我々司法界・・知的職業である裁判や検察でも同様で、若手裁判官は下調べ的記録調査に精出した結果を土台に合議体で基礎的意見を述べて、これに対して10年以上経験の右陪席が質問その他の意見を述べて、合議体トップの裁判長(20数年超〜定年まで)がさらに意見を述べる形で合議が進み、右陪席や裁判長の意見で問題となった点の補充をする形で最終結論に進みます。
(以上は、私の45年以上前の裁判実習時の経験によるので今は変わっているかも?)
高裁も左陪席がほぼ主査としてまとめた意見を合議体で披露し、これの方向性を合議体で確認されると、その方向での和解勧告→和解不調=判決となるようです。
こういう具合に知的職業世界でも年齢構成による分担が長年の慣習?の結果決まっています。
公的機関や民間企業でも懲戒処分をするには相応の議決機関があって行われているのでしょうが、懲戒処分を受けるには、相応の地位ある人の合議の結果=重みを重視する風潮が重視されている印象です。
組織の長老というか高位経験者が懲戒委員や選挙管理委員をやっている必要があるかどうかは、慣習に従っているものの今までのところその合理性が私には具体的にわかっていませんが、高齢者=知恵者という古来からの常識に従っているだけか?私に不明なだけで、相応の合理性があるのでしょう。
これが従来円熟期と思われてきた中高期(5〜60歳)を越えて高齢化するとあらゆる分野で能力低下が起きるのではないかの疑問・・複雑系判断分野でも担い続けられるか・・もっといえば、65歳の判断より75歳〜85歳の判断の方がすぐれていると言えるかの問題です。
裁判官定年は私が弁護士になった頃の定年は60歳だったというウロ覚えの記憶でしたが、いつの間にか65歳になっているようですが、この年齢程度までは年功ヒエラルキーがあっても良いという国民合意があるのでしょうか?
民間では役職(別)定年制があるように、定年あるいは就労期間を伸ばすことと決裁権を並行的に伸ばせるかは別次元・人の能力は複雑系分野でも一定年齢でピークが来ることを前提にしているのでしょう。
取締役では画一的定年制がない(ただしヒラ取締役等では事実上の定年制があるようです)のは、社長や会長等の超高度判断になってくると現時点では70歳前後くらいまでは、人によっては能力低下が起きない・70歳台が60歳台を指導する高度判断可能という合意でしょうか?
今も元気に指導力を発揮している有名人では、鈴木自動車の鈴木会長や、日本電産社長永守 重信(1944年8月28日 – )が知られています。
問題は能力低下が始まった時にどうやって「首に鈴」をつけられるかでしょう。
大物の首に鈴をつけられるほどの重鎮(他分野での大物)によって構成される社外取締役制度が必須ですが社外取締役の多くが現役社長の推薦によるのでイエスマン的機能しか果たせていないと言われています。
政治家は瞬時の判断によるちょっとした発言ミスが政治生命に直結するなど市場評価の最も厳しい分野ですから、生き残っていること自体で能力テストをクリアーしていることになるから別でしょうが・・。
政治の世界では地方選挙と参議院選挙を含めてしょっちゅう民意反映制度がある民主国家ではイエスマンに支えられる政権の存立が不可能になっているので外部勢力介入は不要・害悪になり・戦後枢密院制度などが廃止になりました。
政治の世界ほど頻繁な市場評価に晒されない・・任期継続禁止が確固としていない企業統治その他組織では放っておくと澱んでしまうので、戦前枢密院制度のような元老会議のようなものがどこの分野でも実は必須なのです。
企業統治の場合には、よほどの企業業績悪化や不祥事がない限り市場評価による進退表明に追い込まれることは滅多に起きないので、取締役会がイエスマンばかりの場合、ゴーンさんのような暴走が起きるのを防ぐ方法が確立されていません。
ゴーン氏が日産のV字回復に貢献したのは初期(2000年就任後)の数年〜4〜5年だけのことで、後はどちらかといえば打ち上げた目標未達の連続であったのにカリスマ支配力によって部下に責任を押し付けていたという意見を読んだ記憶です。
https://www.kuruma-sateim.com/market/carlos-ghosn-income/によると営業利益率の推移は以下の通りです。
具体的な経営再建の結果を、営業利益率の推移で見ていきましょう。

年度営業利益率(連結)
2000年度4.8% 2001年度7.9% 2002年度10.8% 2003年度11.1% 2004年度10.0%
2010年度6.1% 2011年度5.6% 2012年度5.7% 2013年度5.0% 2014年度6.1%
2015年度7.0% 2016年度7.3% 2017年度6.2%

比較のためにトヨタの財務データと比較しておきましょう。
トヨタに比べて喧伝されているほど内容が良いわけではありません。
https://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/editです

主な財務指標(連結)

会計年度 指標項目
売上高
営業利益率
売上高
税引前利益率
税金等調整前
当期純利益
総資産
総資産当期純利益率
(R.O.A.)
株主資本当期純利益率
(R.O.E.)
株主資本
総資産
2018年3月期 8.2% 8.9% 5.2% 5.0% 13.7% 37.2%
2017年3月期 7.2% 7.9% 4.5% 3.8% 10.6% 35.9%
2016年3月期 10.0% 10.5% 6.3% 4.9% 13.8% 35.3%
2015年3月期 10.1% 10.6% 6.1% 4.9% 13.9% 35.2%
2014年3月期 8.9% 9.5% 5.8% 4.7% 13.7% 34.9%
  • * 米国会計基準に基づく連結財務数値にて、算出しております。

法網をくぐる1(法技術に頼る弊害1)

不法収益を手に入れている暴力団を追いつめるために、条例によってやんわりと一般取引からの閉め出し手法で迫って行った我が国の手法は、ソフトで鮮やかでした。
元々江戸時代の村八分だって同じで、学校教育では人権侵害の面ばかり習いますが、刑事処罰のバラエテイーがなかった時代には、(追放等の刑罰の種類を以前紹介したことがあります)死罪や追放・あるいは入れ墨程度しか処罰方法がなかった時代には、微温的で(・・村八分の場合、仲間はずれにするパターンもいろいろな段階・・子供の遊びは良いとか寺子屋を休むことはないとか祭りや法事参加・・村の道路や灌漑設備普請の義務を免除しない=共同作業参加で事実上息抜きになるなど)合理的な手段でした。
上記金融取引全面禁止は、個人責任主義の本家とされているアメリカ主導でマネーロンダリング禁止徹底のために世界的に広がって来た仕組みの一環であり、世界的潮流にもあっていて人権侵害と言う批判も難しそうです。
ロシアのクリミア侵攻に対して欧米諸国がとっている金融制裁も同じ手法です。
表向きロシアは侵攻を否定していますが、覆面した軍が侵攻してウクライナ正規軍を圧倒した上で、法的には住民投票によるロシア併合と言うやり方で超形式的に見れば合法的ですが、こう言う鉄面皮なやり方がまかり通れば世の中正義を信じる人がいなくなります。
日本で言えばヤクザ組織の犯行が見え見えでも、幹部が関与した証拠さえなければどんな裁きも受けないのと同じ「証拠主義」の悪しき結果がまさにクリミア・ウクライナ東部で起きています。
これを放置出来ないのでロシアが鉄面皮に知らないと言い張っても国際社会は経済制裁に乗り出しました。
日本はアメリカのような国際的に強力な強制システムを自己だけでは構築出来ませんが、アメリカに協力する形で指定暴力団の金融取引禁止をすることが出来ますし、逆に違反するとアメリカでの金融取引から閉め出されてしまうので、国際金融取引しないとやって行けない金融業界・暴系関係業界では、事実上の強制力が生じています。
アメリカは中国に対して、サイバーテロ容疑・・これも鉄面皮に中国はシラを切っていますが、中国に対して経済制裁することが出来ない代わり陰に陽に対中国敵視政策(村八分の弱い段階です)に切り替えています。
以上見て来たように、集団・組織利用の場合、個人責任法理ばかりでは法網をくぐる違法行為が横行するので、集団も相応の責任を持って貰うために、(テロを手始めにして)世界中が工夫し始めて数十年経過しています。
個人行為に対する集団責任帰属制度は今のところまだ犯罪集団限定ですが、個人法理と証拠の有無ばかり強調していて実行犯人周辺しか規制出来ないで放置しているのでは、世界秩序が守れない・・自国秩序も守れない時代が来ていることが明らかです。
10日ほど前に、アメリカが何百万人分の公務員情報がサイバーテロで流出したと公表した際に「中国のレベルの高さには敬服する」と皮肉を含めた発表をしながらも、中国政府関与とは言い切りませんでした。
この種の防御力では、世界最高水準にあるアメリカでさえも、サイバーテロの発信元が中国から来ていることまで分っても、(中国政府ダミーがやっているとほぼ分っていても?)断定出来ない・・実態を表しています。
国際関係では、重要証拠・拠点が相手の領域内にあるので、強制捜査が出来ない点をロシア(クリミアに展開した覆面部隊を逮捕することが出来ません)も中国も利用しているからです。
大きな仕事を達成するには集団・組織行動が中心の時代に「証拠のある個人だけ処罰」し、幹部その他構成員が関係している「証拠や法律さえなければ何をしてもいい」と言う(正義の基準など無視する)価値観が広がり過ぎています。
実は証拠がないのではなく証拠法則上当局が証拠収集出来ない面が多々あります。
あるいは法網を巧みにくぐれば良いかのような風潮も問題です。
我が国の民事事件で言えば、武富士事件のショックは大きなものがありました。
武富士創設者長男の所得税裁判に端を発して、国税庁が海外に絡んだ課税に関する裁判で負け続けていると言われています。
世界的に問題になっている世界企業の課税逃れ・・最近では世界的に租税回避問題が大問題になっていますが、根底には、「法網さえくぐれば結果の不道徳性には関係がない」だろう式の公然たる動きに世界中の国民が疑問を持ち始めたことになります。
租税回避やクリミヤ併合をきっかけに、法と道徳の基本に立ち返る必要性が再認識され始めたと言えるでしょう。

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