欧米と日本の対応6(欧米の移民受入れ3)

移民の推移については以下の記事から引用します。
グラフをそのまま引用し難いので解説文字だけの引用です。
グラフなどご覧になりたい方は如何に直截あたって下さい。
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/1171.html
「人口動態の推移から、近年、ヨーロッパ先進国で移民流入が増加していると見られる点について図録1172でふれた。先進国全体では図録1171bで見た通り1990年頃を境に増加テンポが早まっている。ここでは、直接各国の移民人口の比率がどのように推移しているかの図録を作成した。」
「図を見れば、いずれの国でも移民人口の比率は上昇傾向にあることがよく分かる。欧米の多くの国で10%以上の高い水準に達していることが分かる(図以外の国を含めて最新年の移民人口比率については図録1170a参照)。」
上記図によれば、イギリスなどでは、移民比率が12〜3%に達していますが、移民して来るのが、男女共に働き盛り若年層が多いので、(元々の国民の場合、人口の過半が小さな子供や老人,家庭内の主婦層ですから)実際に町中で見かける人口比では、2〜3倍以上ですし、その上異民族の場合生活態度や発音から目立ち易い印象になっているでしょうから大変なインパクトです。
日本でも(住宅街で)中国人数人が自転車等で大きな声で話しながら通ると言語からして違うので、実人口比以上に非常に目立ちます。
京都など観光地に行くと(実際には日本人の方が圧倒的に多くとも)中国人ばかりかと間違うほど賑やかです。
欧米の移民受入れ急増時期を年代的に見れば、欧米で進行した少子高齢化進行の緩和目的もあったでしょうが、90年代以降ですから、まさに中国による低賃金競争の影響が出て来た頃と同時期に移民受け入れが急テンポになったことが読み取れます。
若年層を増やして若年労働力が人口比の見かけだけ一時的に増えても、問題解決を先送りしているだけであって、低技能労働者が高齢化し始めると(底辺層は高齢化してからの生活費・・最低の年金掛け金・・貯蓄が不足するのが普通です)増えると社会保障負担が増えてその次の世代が経済的に困窮して行きます。
20世紀に入って以降の欧米の歴史をみると、外部環境の変化に対し日本人のように適応努力しないで、外部環境を整備し直せばいいと言う対応であったように見えます。
テストのカンニングがバレたら、今度バレないように工夫する対応です。
日本では万年以上前の縄文遺跡・文化の延長上に現在日本があり、有史以来古い文物をそのまま大事に修復して継承してきましたが、日本以外の世界文明発祥の地がいずれも荒れ果てた砂漠になっていてその継承者達は今でも環境を破壊し尽くせばゴーストタウンにして移住する習慣で来たのとの違いです。
現在中国も飲料水がのめなくなるとこれを解決するよりは首都移転や長江から水を引っ張って来るなど外部環境整備が計画されています。
日本が台頭すれば日本を叩き潰せば良いし、資源が枯渇すれば資源国を支配すれば良い(イラク戦争など)・・普通の英国人が植民地に行けば多数の現地人を奴隷のように使える状態・・植民地を失えばその代わりに自分が働くようにならず、旧植民地の人民を超低賃金でベビーシッター等として本国に取り込んで使う・植民地支配の内部化です。オリンピックなどで「どうだこんなスポーツ出来ないだろう」と威張っていたら日本が参加して来て負け始めるとルールを変える・・それでも間に合わなくなって来るとアフリカ人などを自国選手に登録して自国の金メダル獲得数を誇る・・移民に働かせる製造業のハシリです。
自分が強いときには「自由競争が良いぞ!と主張しておきながら、戦前日本に負け始めるとイキナリ植民地を利用した経済グロック化したり、ブロック化がイケナイとなるとEUと言う疑似国家的組織を作り、内外格差障壁を人工的に作り人件費競争に負けると低賃金の移民を入れるなどやってきました。
米欧のやり方の共通項として言えることは、自分自身が改善努力をする気持ちがあまりない・・もしかしたら改善する能力がないのを知っているから外部環境を変える方向へ努力して来た歴史と見えます。

欧米と日本の対応5(欧米の移民受入れ2)

間にいろいろ書いてしまいましたが、7月2日に書いた北海油田による西欧復権との関係のデータを紹介します。
北海油田に関する7月2日現在のウイキペデイアの記事によれば以下のとおりです。
「原油推定埋蔵量は130億バレル。日産約600万バレル。1960年にイギリスが開発開始。次いでノルウェーが開発に乗り出す。ノルウェー南西沿岸のスタヴァンゲルとイギリスのアバディーンは石油産業で発展し、イギリスは1980年代から石油輸出国となった。イギリスは2014年現在でもEU加盟国最大の原油生産国ならびに原油輸出国であり[1]、ノルウェーはロシアを除く欧州最大の原油生産国・輸出国で、原油生産量は2013年現在で世界第16位[2]、石油輸出量は2010年現在で世界9位である[3]。」
「イギリスの鉱区では、石油生産量が1990年代後半にピークを迎え、その後は既存油田の成熟化に新油田の発見が追いつかず徐々に減少している。 1981年~2005年の間、原油の純輸出国であったが、2005年以降は純輸入国となっている」
上記のとおり、イギリスは約25年間資源輸出国として潤ったことが復権に繋がったのですが、北海油田の枯渇(2005年以降イギリスが原油輸入国に転落・・輸入代金を払う立場に変化)が始まりこのボーナス効果が徐々に減ってきました。
資源特需による場合製造業等の一般産業の実力以上に国際収支が良くなるためにポンドが割高になり却ってその他産業が蝕まれて行き・・若者の職場が奪われて行きます。
まして同時期に中国の改革開放・市場参加が進み始めた頃です。
上記原油輸出最盛期にあたる1992〜3年頃に1週間ほど家族でロンドンへ行ったときの光景では、日本とはまるで違う活気のない都会・日本で言えば地方都市レベルのイメ−ジでした。
他方で中国の改革開放以来始まった超低賃金競争(原油輸出でポンド相場が上がるとイギリスの賃銀が国際的に割高になります)対応(その他高齢化対策その他)のために移民導入策が続きました。
移民導入+ポーランド等の低賃金国のEU取り込み政策(EU東方拡大)は、アメリカの移民導入による絶え間ない労働者供給策とも一致しています。
アメリカが物量作戦で2度の大戦で存在感を発揮したことから、戦後ずうっと農地に始まって・資源力+大量生産大量消費(人口大国化)・・「大きいことは良いことだ」と言う間違った思想が世界中ではびこっていたことが分ります。
この辺の意見は、この後で日本の対応として書いて行く予定の
「アメリカ式資源+大量生産の挑戦に同じ土俵で競争するのではなく逆に量が少なくともおいしいトマトや果物、牛肉・その他を作るのが良い」
と言う基礎的意見を前提に書いています。
安物の絵を1000枚積み上げておくよりは、心に響く一枚の絵を飾った方が良いと言えば分りよいでしょうか?
以前書きましたが、中学生の頃のアメリカの人口は2億以下の人口でしたが今では三億3500万人(以下のデータとちょっとあいませんがどかでこう書いていましたが・・)にも増えているのは、アメリカ自身も中国に負けない大規模市場を維持するために移民導入で対応して来たことが分ります。
世界ネタ帳http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=LP&c1=US&c2=JP
によると1980年には227.62(日本116.77)→2016年には324.33(日本126.54)となっていますので、対日本比の増加率の差は半端ではありません・・この差は移民流入によるものです。
日本のように60歳前後でなくなっていた人が90代まで生きるようになって・死ぬ人が減って人口が増えているだけですと、せいぜい1割くらいしか増えませんので、同期間に約1、5倍になっているアメリカの場合には社会増によることが明らかです。
日本の高齢化進行が世界一早いと一般に言われていますが、高齢化は社会の豊かさの進行に比例するのがふつうですから、欧米の方が日本よりも早くから少子高齢化が進行して来た筈です。
グリンスパーン元議長やキッシンジャーあるいはジョージソロス氏などみんな超高齢者であって高齢化は日本の専売特許ではありません。
実際私の中学生の頃には、フランスが人口減に悩まされていると言う報道が頻りにされていました。
アメリカでも早くからフロリダあたりに高齢者が移住する現象が知られていました。
西欧の少子高齢化がマスコミで言われなくなったのは,主に旧植民地であるアフリカや中東からの移民を受入れるようになってからです。
欧米に比べて日本の長寿が目立つのは、日本の食生活・公衆衛生環境が良いだけではなく、健康管理能力が低く先進国に住むようになっても1世代目には長寿社会の恩恵を受けられない若年移民の比率が少ない面も大きいでしょう。
アメリカの場合以前から移民受入れ大国だったので移民が増えていることが目立たなかっただけで、実際にはベトナム戦争以来アジアから移民を大量に受入れてきたので、急速にアジア系移民が増えています。
以下https://ja.wikipedia.org/国勢調査の結果からアジア系移民比率部分だけコピーします
 人種   2010年      2000年          増減 
     人口   割合    人口   割合     人口  率

アジアン  14.7  4.8%   10.2   3.6%      4.4  43.3%

僅か10年間でアジア系比率が4、5%も上がっていることが分ります。
欧米では、賃銀の国際平準化に対抗するために移民を入れて低賃金競争をしたのと同様に、少子高齢化問題にも日本のように正面から向き合うことなく、移民=若年層中心ですし、しかも出生率の高い移民流入で人口減を補う政策で誤摩化して来たことが分ります。

欧米と日本の対応4(欧米の移民受入れ1)

EUの理念が仮に貿易自由化促進だけならば自由貿易連合で足りるのであって、EUを結成努力する必要がないし・・イギリスが出て行っても大騒ぎする必要がない筈です。
今回のイギリス離脱決定に対して「その恩恵がなくなるぞ!」と(EUの意向を受けている?)マスコミがしきりに脅していることからも、グローバル化よりも市場規模強調=域内外の差別化造りを優先して来たことが明らかです。
こうした発想によって、中国巨大人口→将来一人当たりGDP上昇→巨大市場参入の誘惑に目がくらんだEUがAIIBに尻尾を振って参入し、中国の解放以来中国寄り(中国の意を迎えるために反日に陰で協力する)政策を推進して来た原因です。
イギリスのEU離脱論は、金融市場運営で生きて行くのを棄てる訳ではないようですから、EUの外に出ても日本やアメリカがEUと貿易しているように自由貿易協定でEUを含めた世界と交流して行けば良いのじゃないかと言う意見とすれば、グローバリズムに対する反発ではありません。
むしろ、グローバル化進行意見とは関係なく・・貿易自由化・グローバル化推進することと、(出張で人が来るのは構わないが)多民族混在まで強制される必要がないじゃないか・・移民制限論に本質があると言うべきです。
EUを出て行くならば、元々外にいる米日、中韓などより不利に扱うかのような脅かし・・世界混乱を強調するマスコミ報道は、世界正義を標榜するEUにとってマイナスイメージ・・逆効果であることは確かです。
イギリス人にとっては、日米中韓など諸外国と同じ扱いで良いから、日常生活まで大陸諸国の多数決で強制されるよりもマシと考えるのは1つの合理的選択です。
大きな屋敷で肩身の狭い窮屈な生活するよりはアパートの小さな1k〜2DKでも自由な生活をしたい人の方が多いでしょう。
EUやマスコミの興奮を見ると家を出てアパート生活をしたいとオヤに言ったら、二度と実家の敷居をまたがせないとオヤが怒っているような印象です。
氏族共同体〜大家族でないと生きられない社会から、核家族+親戚の緩やかな連帯→少数で生きて行ける社会→単身(もっと弱い身障者も老人)でも不自由なく生きて行ける社会への変化こそが、人としての自由度の尺度ではないでしょうか?
企業も従業員数や売上高、生産力など大きければ良いのではなく、利益率・社会貢献度など内容が問われる時代です。
西欧諸国は2度の世界大戦で疲弊し尽した状況でしたが、このときに急速に力をつけて来た新興の大国・中国アメリカ,ソ連はいずれも従来基準の想定・・西欧近代に相争って来た国家基準を越えた巨大領土・人口の大きさを伴うものでした。
これからは規模の時代・・マンモス・大量生産大量なんとか・・・「大きいとは良いこと」だと言う思想が普遍化したことが分ります。
大きさで対抗しようとする発想に取り憑かれて始めた西欧同盟創設運動時の理念・・70年前の時代遅れの思想のママ、これを(「戦争の災禍をふせぐため」と事実に反した思想にすり替えて美化して)未だにやっているので、ガタが来たのでないでしょうか?
マスコミはきれいごとの理念・戦争の災禍を免れるためにと言うきれいごとを並べますが、第二次世界大戦後西欧内の国と国の戦い(例えばもう一度独仏間で戦ったとしても地域限定紛争でしかなく世界大戦を起こす力など最早ありません・・。
世界平和のために「米ソにやめろ!と脅されると相互の兵を引くしかない弱小国です・・英仏連合軍のスエズ侵攻時にソ連による核攻撃の脅しで英仏両軍は1も2もなく引き下がった例を想起すべきです。
EUの前身・・欧州同盟必要性の思想は、コミンテルン・・ソ連の世界革命戦略・・侵攻される恐怖に対抗するために欧州の団結が必要になったに過ぎません。
アメリカも対ソ戦略上西欧を応援するにしてもバラバラでは小さ過ぎるのでまとまって欲しいでしょうから西欧の希望と相俟ってNATOを結成していたのですkから、ソ連崩壊によって防衛の必要性がなくなった時点で本来お役御免になっても良かった筈です。
ところがソ連崩壊後もNATO軍は拡大の一途です。
これがウクライナ危機を増大させた元凶です。
今なお19世紀型軍事力による世界への影響力行使誘惑(リビア空爆や。シリア内紛激化の後押しなど)を棄て切れない西欧の意識の古さが分ります。
強い国が隣国を侵略したのを防止するために兵を出すならば分りますが、リビアの場合内政問題で一方勢力を支持するためにNATOが空爆するのにどう言う大義があったのか不思議です。
「大きさこそ力」という時代遅れの西欧の発想が今でも中国に対する畏敬の念・・基礎信条に繋がっています。
今では組織の大きい方が組織維持が難しく自己瓦解リスクが高いと思うのが普通です。
同じ素材で同じ太さの鉄骨等を使った2階建てと7階建ての建物があれば、2階建ての方が地震にも強いように、素材や組織管理能力が同じならば、能力比大きな組織や図体の方が脆弱です・・目一杯・最大限大きくした組織の方が変化に弱いのです。
マスコミによる、イギリスEU離脱国民投票結果に対する一致した脅し方を見ると、余程衝撃が大きいのかな?の印象で国民投票直後から書いてきましたが、7月1日あたりからイギリスの株価が急反発始めたことは、マスコミが一致して宣伝すれば何でも出来る訳ではないことが証明されたことになります。
経済分野の場合、市場原理に反した意見をマスコミを通じて垂れ流しても長続きしません。 
この辺は、1昨年に安倍政権が消費税増税延期を決めたときに財務省やマスコミの意を受けた格付け会社が、すかさず日本国債を格下げしてもその逆に国債価格が上がって格付け会社の方が信用を落としたことがありましたが、同じ繰り返しです。

欧米と日本の対応3(EU→求心力低下)

トルコが自立したいのは当然ですが、これを表面化した手始めは難民急増に対する取り扱いに関するEUとの対等な(強気)交渉でした。
以下は日経新聞記事です。
http://www.nikkei.com/article/DG 2016/4/4 21:39
「2015年にシリアなどからトルコを経由してギリシャに渡った難民・移民の数は85万人に達する。最大経由地のトルコとEUは、今年3月、トルコが ギリシャに渡った難民・移民の送還に応じる一方、EU各国がトルコ国内の難民キャンプからシリア難民を直接受け入れることで合意した。
送還に応じる見返りに、EUはトルコに対する資金支援を60億ユーロ(約7600億円)に倍増させるほか、トルコ国民がEUに渡航する際の査証(ビザ)免除措置の導入を6月へ前倒しし、トルコのEU加盟交渉も加速させることを決めた。」
大手新聞はなおトルコのEU加盟希望に脈があるかのように書いています・・大手はうっかりしたことを書けないのは仕方がないですが・・、トルコの本音が変わって来たと読むべきでしょう。
ましてイギリスの離脱方向が出た今となっては、無理してEUに入れてもらう必要性が減じたことは確かです。
トルコはクリミヤ戦争で西欧列強の応援を受けて以来西欧列強に従属しっぱなしの屈辱の歴史でしたが、ここに来て正面の敵であるロシアとの関係修復・・ロシアの背後にいて日露戦争で勝ったことのある大国日本との関係強化など、中東の混迷もあって、地域大国としての復活・・独立志向が明白化してきました。
ロシアも国内のトルコ系民族の不服従(勇猛で知られるチェチェンその他中央アジアに広がる少数民族はトルコ系です)に苦しんでいるので、トルコとの修復は望むところです。
この動きに面白くない国々による、歴史的仇敵であるロシアとの仲違いを引き起こす陰謀(・・ロシア軍機の撃墜事件は何故起きたか闇の中でしたが、賢明にも双方感情的にならずにうまく修復してしまいました)だけでなく周辺国からも引き放す陰謀画策が激しくなり、昨年からイキナリトルコ国内でテロが頻発し、エルドアン大統領批判が大きく報道されるようになって来た原因とも言われます。
唆しがあれば直ぐに乗る中韓とは違い・・ロシアもトルコも冷静なので、欧米の陰謀や唆しに簡単に乗らないので、今のところトルコ、ロシアの関係悪化は見られません。
応酬の一致団結による対外政治力発揮効果を見てみると、確かにサミット7カ国首脳会議に西欧から、6人も出席出来るので数の上で有利になっていますが、加入者にとって見るとメリットがあるかと言う視点が必要です。
加入国が27カ国の場合、自国意見は27分の1しか反映しない上に小国は国力比例してもっと発言力が低く・・言わば独仏の官僚主導になってしまいます。
その代わり小国・・生活水準の低い中東欧やバルカン等諸国にとっては、文化度の高い英仏独に自由に出入り出来るメリットは大きなモノがありますので、自分の意見があまりとおらなくとも不満はそれほど大きくはありません。
日本にアジア諸国の人が出稼ぎに来るのは、政治意見を言えず言葉が不自由でもそれ以上のメリットがあるからです。
イギリスにとっては独仏とは対等者間であるのに文化基盤の違う(大陸と海洋民族の大きな生活習慣のが違い・・独仏とポーランドとの違いより大きいでしょう)独仏主導で自国の生活ルールの端々まで口出しされる不愉快と引き換えに独仏と自由に往来出来ることによる生活水準向上メリットは多くありません。
イギリスの発言力は大国なので27分の1ではなく2〜3倍の27分の3あったとしても独仏連合に多数決で負ける点は同じです。
イギリス以外は皆大陸諸国・・大陸的画一的処理方式が海洋国イギリスの生活方式にあわないのに、いつも多数で押しきられてしまう・・この状況にイギリス人の不満がたまっていたと見られます。
イギリス国民投票の結果は、トルコの加盟意欲にも大きな影響を与え・・EUの拡張主義・画一処理が曲がり角に来たことを世界に示した大事件であるからこそEU・・マスコミが焦っているのでしょう。
EUの設立理念が自由貿易促進ならば、・・・「民族の個性を残したまま関税さえ下げて行けば良いのでないか?」と言うのが、イギリス国民の思考方式でしょうから、何故何もかも1つの国になる・・民族移動の自由まで認める必要があるのか?と言う疑問です。
この辺が大陸の観念論・・中央集権的的画一処理優先発想とイギリスの経験論・・必要が生じてから(つぎはぎ的に?)考えて行けば良いという意識・・私たちも海洋民族として共感出来るところです。

欧米と日本の対応2(EU→一体化・対外障壁)

今回のイギリスの国民投票結果によるEU離脱騒動・・マスコミ報道によれば、EUはグローバリズムの本家みたいな印象を受けます。
しかし、EU結成〜拡大の流れを見ると、グループに入った各国別の貿易障壁を低くする努力・・低くした結果を他の国にも解放する努力をやめる方向へ努力して来たことが分ります。
EU参加のメリットを周辺国に強調することは、結果的に参加しない国との差を強化することに繋がって来たからです。
吸収合併の繰り返しによる大規模市場メリット強化=域内外差の強化をして来たのですから、その目的は、内外格差・・外堀的国境の拡大政策(戦前のブロック経済の強化政策)・・帝政ロシアの版図拡大・・東進〜南進政策の焼き直しです。
19世紀ロシア南進の衝突・限界点がいわゆるクリミア戦争でしたが、今回西欧による東進の衝突・限界点がウクライナであり、ロシアによるクリミア編入事件でした。
以前ロシアのクリミヤ編入に関してどこかに書きましたが、ウクライナはロシア民族の故地・・発祥の地ですからこの地をEUに取り込まれることは現在でもロシアにとって、譲れない境界線と言うことでしょう。
西欧諸国が世界の共通市場化・グローバル化を目指しているのであれば、国の合体ではなくWTOの進行を図れば良いのです。
国境の壁を低くするよりは、自分の市場規模を大きくする・・内部自由化に邁進するのは、国の内外の障壁を低くする運動とは矛盾します。
EU結成進行と同時にWTO交渉が意図的にサボタージュ・停滞してしまった原因ですし、他方で自己市場規模拡大=EU拡大を続け、EUに入っているかどうかで大きな差を設ける・・戦前植民地ごとのブロック化の焼き直し・・ブロック経済拡大強化こそがEUの目標であったことになります。
(June 16, 2016「国際政治力学流動化5(ウルグアイラウンド中断→FTA)」で、ウルグアイラウンドの失敗・・その後の停滞はEU拡大促進と裏腹の関係にあることを書きました)
バルカン諸国で言えば、巨大市場のアメリカも日本も中国も遠過ぎる・・隣国がEUに入って自国が入らないままですと陸続きの対西欧貿易で大きな格差・不利が生じます・・この脅しを利用して隣接の中東欧諸国の加入希望を煽り・・当然国際政治問題でも、西欧の主張に反対出来ないので国際政治力発揮戦略にもなります。
古来から強国や豊かな国が誕生すると周辺国は競って使節団を送って来た所以ですが、多くは「交際しましょう」と言う程度の引力であって、吸収合併まで強制するものではありませんでした。
TPPは通商条約参加であって,アメリカ国内の州の1つになれと言うものではありません。
EU加盟勧誘は、武力による強制ではありませんが、貿易交渉の不利益を餌に事実上吸収合併を強制したものです。
使節を送って文化影響を受けるのと吸収されて支配が直截及ぶのとでは、周辺民族に対する衝撃度がまるで違いますが、EUは核となる英独仏等が予め決めた先進国ルールをそのまま受入れない限り加入を認めない強硬な仕組みです。
言わば軍事占領よりも(古来から民族支配の場合総督を於いて支配地の文化に応じた別の法制度を執行するのが普通でした)強力な強制でした。
私的理解によればこれは大陸的・・仏独的中央集権支配の理解でことが進んだものと想定されます。
EU離脱騒動が始まって以来ちょこちょこと書いていますが、海洋民族・・経験主義の(ある程度ルーズに決めて行きたい)イギリスが何でもキチキチと決めて行く独仏的官僚主導政治に我慢出来なくなったのではないかと言う理解です。
軍事行動出来る限りの周辺国を際限なく吸収合併して来て属国的併存を許さなかったのは、アジアでは秦の始皇帝の統一国家であり、その次にはモンゴルです。
その後の清朝も中共政権もこの系譜を引いていて、軍事力の及ぶ限り出来れば直截支配・・最大限勢力拡大したいことから、少しでも力をつけた思うと対外膨張策に出たくなるのです。
我が国では古来から生物に多様性があることを前提にそれぞれを大切にする「八百万の神」の精神でやってきましたし、封建制と言われる徳川政権に限らず古来から基本は中央集権よりも地域にそれぞれの神がいる・・間接統治社会です。
西欧の人道主義もその基本は民族にも多様性があり、併存しながら共存して行くのが良いとされて来た筈です。
多様な民族の共存のあり方としての国際ルール・・グローバル化のあり方に関する議論で多様な意見を尊重しつつ決めて行くためにガット→WTOが運営されて来たのです。
EU結成は多様性を前提にするWTO交渉・・粘り強く交渉する努力を放棄して、日々の生活ルールまで一体運営に参加・・吸収合併に応じる国だけの小宇宙を作里、加盟しない国を不利益に扱う思想でやって来たように見えます。
イギリス国民が離脱の意思表示をすると激しくその不利益を強調するのはその対の関係です。
単なる貿易協定ではなく、準国内扱いする以上は時間の経過で日常的生活ルールまで干渉するようになって行きます。
この不満を回避するために最低基準を「キリスト教国」と言う枠をつけたつもりでしょうから、トルコに対しては理由なき理由をつけては加入を長年認めませんでした。
・・この1年程度の動きによれば、トルコは熱望していたEU加盟を諦めて・・見切りを付けて?EUとは(ぺこぺこするのをやめて)是是非の交渉相手として行くことに方針を決めた可能性があります。

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